筒井康隆(つつい やすたか)とは、日本の小説家・俳優。星新一、小松左京と並んで日本SFの御三家と呼ばれる。
経歴
1934年大阪府に生まれる。幼少より漫画・映画を愛し、蔵書家の父の影響から読書にも没頭してゆく。また中学時代演劇にも興味を持ち、学生・社会人時代劇団に所属している。
1960年父と兄弟とで同人誌『NULL』を発行。SF一家として注目を浴びる。これが江戸川乱歩の眼にとまり、短編「お助け」が雑誌『宝石』に転載されデビュー。
その後数多くの作品を発表、特にブラックなドタバタSFや、従来の小説の枠組みに囚われない実験的な作品群で知られる。1970年代になって作品が文庫化され始めるとたちまち売れっ子作家となり、星新一・小松左京とともに70年代から80年代のSFブームを牽引した。
その一方、純文学方面にも進出し、純文学でも数多くの賞を受賞した。1993年には出版社をはじめとする社会の言葉狩りに嫌気がさし断筆宣言をするが、1997年に執筆再開。
この断筆中から本格的に俳優としての活動を活発化させる。執筆再開後にホリプロとマネージメント契約を結び、現在もタレント活動を同時に行っている。
21世紀になってからも、いとうのいぢ挿絵でライトノベルを執筆したりするなど、80歳を超えた現在も現役作家として活躍中。
作風
破茶滅茶なスラップスティックや人間の醜悪な内面、社会の狂気を描いたものが多い(特に初期作品)。故にユーモアを理解できない人には薦められない。一部著作には「この本は真面目な人間とは無縁である」といった旨の序文まである。例として、かつて悪書追放運動が起こった際には「くたばれPTA」という題名の小説を書いていたり、嫌煙運動が活発化した際には「最後の喫煙者」なる、題名内容共に皮肉に富んだ小説を発表するなど、挑発的な作品が多い。
もちろん上記のような作品ばかりではなく、前述の通り純文学的作品も書いており、実際にいくつかの文学賞を受けている。(下記参照)
また、自ら仕掛ける事は無いが評論家や他作家から批判を受けたときは、相手の態度にもよるが自ら開発した罵倒語を駆使して罵る事がある。そのあまりにも豊富な語彙は、酷い罵倒文なのに思わず笑ってしまうほどである。
影響
後続の作家に対する影響は大きい。ニコ動ユーザー的に分かりやすい例で言えば、
- 短編「薬菜飯店」における食事による治療のシーンと荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」第4部のイタリア人料理人による治療シーンの類似。
- 長編「残像に口紅を」の技法と冨樫義博「幽☆遊☆白書」における海藤と蔵馬の戦い方。
などが挙げられる。
主な作品
※ニコニコ大百科に記事のある作品は太字。
長編・連作短編
- 48億の妄想(1965年)
- 馬の首風雲録(1967年)
- 霊長類南へ(1969年)第1回星雲賞(日本長編部門)受賞
- 脱走と追跡のサンバ(1971年)
- 俗物図鑑(1972年)
- 家族八景(1972年)第67回直木賞候補
- おれの血は他人の血(1974年)第6回星雲賞(日本長編部門)受賞
- 七瀬ふたたび(1975年)第7回星雲賞(日本長編部門)受賞
- エディプスの恋人(1977年)
- 富豪刑事(1978年)
- 大いなる助走(1979年)
- 虚人たち(1981年)第9回泉鏡花文学賞受賞
- 虚航船団(1984年)
- 旅のラゴス(1986年)
- 夢の木坂分岐点(1987年)第23回谷崎潤一郎賞受賞
- 残像に口紅を(1989年)
- 文学部唯野教授(1990年)
- ロートレック荘事件(1990年)
- 朝のガスパール(1992年)第12回日本SF大賞受賞
- パプリカ(1993年)
- わたしのグランパ(1999年)第51回読売文学賞受賞
- 銀齢の果て(2006年)
- ダンシング・ヴァニティ(2008年)
- ビアンカ・オーバースタディ(2012年)
- モナドの領域(2015年)
中・短編
- 幻想の未来(1964年)
- お紺昇天(1964年)
- しゃっくり(1965年)
- 東海道戦争(1965年)
- 時をかける少女(1965年-1966年)
- マグロマル(1966年)
- くたばれPTA(1966年)
- 最高級有機質肥料(1966年)
- ベトナム観光公社(1967年)第58回直木賞候補
- あるいは酒でいっぱいの海(1967年)
- 台所にいたスパイ(1967年)
- アフリカの爆弾(1968年)第59回直木賞候補
- 色眼鏡の狂詩曲(1968年)
- にぎやかな未来(初出時期不明)
- ホンキイ・トンク(1969年)
- フル・ネルソン(1969年)第1回星雲賞(日本短編部門)受賞
- 20000トンの精液(1970年)
- ビタミン(1970年)第2回星雲賞(日本短編部門)受賞
- 万延元年のラグビー(1971年)
- ヤマザキ(1972年)
- おれに関する噂(1972年)
- デマ(1973年)
- 農協月へ行く(1973年)
- 日本以外全部沈没(1973年)第5回星雲賞(日本短編部門)受賞
- メタモルフォセス群島(1975年)第7回星雲賞(日本短編部門)受賞
- バブリング創世記(1976年)
- 関節話法(1977年)
- 上下左右(1977年)
- 最悪の接触(1978年)
- 薬菜飯店(1987年)
- 最後の喫煙者(1987年)
- ヨッパ谷への降下(1988年)第16回川端康成文学賞受賞
- ジャックポッド(2021年)
- 世界はゴ冗談(2021年)
- あるいは酒でいっぱいの海(2021年)
- 人類よさらば(2021年)
関連動画
関連項目
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