純狐とは、
- 夏王朝の頃に存在したとされる古代中国の人物。玄妻とは同一人物とされる。
詳しくは「玄妻」の記事を参照。 - 1を元ネタとしたサークル「上海アリス幻樂団」制作の弾幕STG「東方Project」の登場キャラクター。
東方Project>東方Projectの登場キャラクター>純狐
概要
「東方紺珠伝 ~ Legacy of Lunatic Kingdom.」登場のキャラクターであり、同作の6面ボス(最終ボス)である。
二つ名:(無名の存在)
能力:純化する程度の能力
テーマ曲:ピュアヒューリーズ ~ 心の在処
同作のラスボスであり、月の都が地上浄化作戦を画策するに至った原因を間接的に作った存在。種族は神霊。
金色ウェーブの長髪に漢服のような装いで、服には九尾の狐が描かれている。
月の民にして月の女神でもある「嫦娥」と、嫦娥を擁する月の民に憎しみを抱いている。
かつて純狐は嫦娥の夫(純狐の夫でもある)に息子を殺され、その夫と嫦娥を憎むようになる。夫への復讐は既に果たしたのだが、もはや恨みは長い年月を経て純化し、一人歩きしていた。
嫦娥に対する強い恨みから、彼女を殺すためにヘカーティア・ラピスラズリと共謀し、今回の事件を起こした。
ヘカーティア配下の妖精達を自身の能力により純化することで生命力の塊(穢れ)とし、月の民にとって寿命を生む毒と化した彼女達で月の表側を覆う事によって、月そのものを地上と同じ生命の星にする。
これにより月の都を逃げるしかない状況に追い込み、その隙に匿われている嫦娥を討つというのが今回の目論見であった。
月の民はこの計画に手も足も出ず、月の賢者達は月の都を凍結し、夢の世界へ逃げ込むことになる。
純狐はそれも計算済みであり、先を読んでへカーティアを夢の世界に送り込み、夢の世界にある偽月の都の周りも生命力で満たした。これにより月の民は閉じ込められる形となった。
しかし、以降月の民は半年以上何も動きを見せず、純狐は攻めあぐね、月の民は夢の世界から出られない膠着状態が続き、そのうちに純狐の怒りは治まってくる。
これからどうしようか考え直そうとしていたところに、永琳によって送り込まれた主人公達(紺珠の人間)がやってきたことで、月の賢者が自分が予想もしなかった策を打ってきたことに満足し、負けを宣言。
今回の復讐をやめることにした。
復讐心自体は長い年月を経て希薄になっており、現在では月の賢者がどのようにして自らを撃退するのかを楽しみにしている節もある。
鈴仙完全無欠モードのエンディングで永琳が言うには、襲撃は以前から何度も行っているのだが、その度に月の賢者が知恵で純狐を満足させて復讐をやめさせる、ということを繰り返しているようだ。
本編後は鈴仙の事を気に入ったりしばらく襲撃は行わないと確約したり永琳に会いに行ったりとおおむね幻想郷に馴染めそうな様子。
純化する程度の能力
じゅんか 【純化・醇化】・・・混じり気のない、純粋なものにすること。
─── 「純化の力」って結局なんなんですか?
ZUN 「なんなんだろうね、一番気になるところだよね(笑)」
─── ちょっと(笑)。何かの性質を突き詰めるということなんですか?
ZUN 「香霖堂で少し触れましたが、言ってしまえば神の力です。モノに名前が付く前にあった、純粋な力。名前が付いてしまったら、神としての性質は無くなる。その純粋な部分をずっと持っているし、他に与えることができる。神を生むくらいの力です。」
純狐は妖精達に純粋なる生命力を与えて月を生命力(穢れ)で満たしていた。
また、彼女の発言によると、死穢の匂いを身に纏った人間を殺める事も可能とされている。
「そんなに死穢の匂いを身に纏った人間では私を倒せない」
「私の名は純狐 私の純化の力で無条件に貴方を殺す事が出来てしまう」
死を穢れ・不浄そのものと見做す文化において、死が決定づけられた生物は穢れた身ということになる。
⇒穢れ(東方Project)
作中でのクラウンピースの言葉を借りると「生まれる事、死ぬ事 それは穢れるという事」。生死の穢れを持った生物は、全て無条件に殺せる対象になるという見方もある。
ただ作中では被弾して来た自機に対し死穢の匂いという上記の台詞を発している事、またこの台詞の前に人間や一度地上に落ちて穢れた月の兎を寄越したという作戦自体は褒めている事(ただ生物という穢れだけで殺せるならこの台詞は矛盾する)から、相手を無条件に殺せるというのは被弾というあくまで傷の穢れがあるのが前提条件、瑕穢を純化して殺すという解釈もある。
尚、ノーミスで辿りついた場合にも被弾の有無に関係なく人間というだけで殺せるのであれば、人間に能力が効かない事への疑問、穢れを浄化する紺珠の薬の存在への言及があって然るべきだがそういった描写もない。
『紺珠伝』以後
『紺珠伝』にて鮮烈なデビューを果たした彼女だが、以降の登場は回想やイメージに止まり、本格的な再登場は『The Grimoire of Usami 秘封倶楽部異界撮影記録』まで待たれることになる。
東方のラスボスは小数点作品や書籍群にて設定が補完される傾向があるので、この扱いは異例とも言える。強大過ぎる力を持つ点はヘカーティアと通ずるものの、重すぎる過去と起伏の激しい性格が災いしている・・・のかもしれない。
とはいえ、それによって不人気や空気等の不名誉な扱いは受けることは無く、むしろ描写の少なさを「ミステリアス」「不気味」と好的に受け止めている意見も見られる。
以下、各媒体の登場描写。
『東方茨歌仙 〜Wild and Horned Hermit.』
口元に袖を当てた姿で、どことなく上品な印象。
『東方鈴奈庵 〜 Forbidden Scrollery.』
未登場。
『東方三月精~ Visionary Fairies in Shrine.』
他の公式書籍よりかは露出は多いが、やはり登場シーンはイメージのみ。本編でクラウンピースやヘカーティアが活躍する中、残念ながら純狐は出てこない。
しかし、眼力が物凄いと一部で話題になった。具体的には、口元は申し訳程度に笑っているものの、目が笑っておらず完全に据わっている。
なおイメージの一つに黒いストッキングとローファーを着用しているものがある。『紺珠伝』の立ち絵では、下半身がスカートで完全に隠れてしまっている為、貴重である。
『東方文果真報 Alternative Facts in Eastern Utopia.』
『求聞史記』『求聞口授』の流れを汲む設定資料集的作品。主に神霊廟以降のキャラクター達が、週刊誌の特集という形式で紹介されるユニークな一冊。が、純狐のみ未登場。
前作、求聞口授でもクローズアップされないキャラ(天子や衣玖、中ボス等)は確かに居たものの、何らかの形でフォローがなされていた。しかし、こと純狐に関しては姿どころか名前にすら一切言及されないという異様な扱いである。
ただ、表紙のカエデ模様の中に一人の女性が映っており、これを純狐とする見方がある。表紙の裏にはヘカーティアとクラウンピースが居るので可能性は高い。因みに純狐はスペルカード使用時にオーラが現出するが、これもカエデの形をしている。
件の純狐と思しき長髪の女性は、顔の右側面を向けた構図で映っている。口元が見切れているため表情が読めず、赤い瞳でこちらを流し目で見つめている。本書内にて名前すら一切言及されない点を踏まえて見ると、どこか不気味な印象を受ける。
本編中にて、ヘカーティアとクラウンピースが団子屋で談笑する様子が写真に収められている。
この時二人の座るベンチに空間があり『純狐が居るのでは?』と考察した諸兄が多数存在した。『紺珠伝』のEDにおける永琳の発言(穢れた存在では純狐の姿を見ることが出来ないという旨のセリフ)が発端らしい。
ロマンあふれる考察だが公式のアナウンスは無く、さらに永琳の発言についても解釈が別れるため、非常に荒れやすい。この考察に触れる発言をする時はTPOに注意しよう。
『秘封ナイトメアダイアリー ~ Violet Detector.』
ドレミーが菫子に差し向けた刺客の一人として「裏・金曜日」「悪夢金曜」に登場。本人ではなく夢人格としての参戦となる。
相変わらずスペルカードのルールを理解しているのか首を傾げたくなるほど殺意にまみれた弾幕を放ってくる。今作ではタッグも含めて七枚の新規スペルカードが登場した。
タッグにおいては完全に隙間を潰した円状弾幕を連発。操作に難が有るとされるテレポートを強要されるうえ、相方も容赦なく弾幕を撃ったり霧になったり突っ込んだりしてくるので非常に厄介。
今作は各スペル取得ごとに菫子のコメントが付くのだが性格きつそう、先生みたい、近寄りがたいと言われてしまう。
『The Grimoire of Usami 秘封倶楽部異界撮影記録』
『The Grimoire Marisa』の流れを汲む弾幕紹介本。加えて霊夢の企画した花火大会の顛末も描かれる。
花火大会の後半、針妙丸・正邪・隠岐奈の画策によって会場は大混乱に陥り、危険な弾幕が当然のように展開された。
そんな中、まるでヘカーティアが落とした月(弾幕)に呼応するように、約四年に渡る不気味な沈黙を経て純狐が登場。『紺珠伝』を思い起こすような尊大な態度と物騒な口上で「掌の純光」「純粋なる狂気」を披露。最後は砕けた調子で「震え凍える星」を放って〆た。
その強大な力は弾幕花火でも遺憾なく発揮されており、現状の防衛班では力不足と判断したのか審査員席に居た紫が直々に出張る(それまで防衛に当たっていたのは歴戦の自機である)、身体が小さいことにコンプレックスを抱く針妙丸に「(純狐の弾幕の隙間が狭すぎて)大きくならなくてもいいかも」と言わせしめる、隠岐奈に「その力が見たかった」と驚嘆させる、と暴れに暴れまくった。
同時にお茶目な一面も見せており、それまでの高圧的な態度は「演出」と主張、驚かしたお詫びに震え凍えそうな綺麗な花火を見せてくれた。
純狐が花火大会に参加したのはヘカーティアの影響のように見えるが、大元を辿れば隠岐奈に行き着く(隠岐奈のセリフから、二人を誘うためにクラウンピースに声をかけたことがわかる)。
余談だが隠岐奈と純狐は、格好が似ていると言われるほか、性質が真逆(混沌アナーキーと純粋ピュア)という共通点がある。また、双方共に自らの性質を頭に冠した「~バレットヘル」の名を持つスペルカードを使用する。
元ネタ
純狐の元ネタは、古代中国「夏王朝」の伝説に登場する同名の人物。
『楚辞・天問』によると、純狐は寒浞と共謀して夫である后羿を死に追いやり、寒浞に娶られたという。
≪楚辭·天問≫ 浞娶純狐,眩妻爰謀。何羿之射革,而交吞揆之
───浞純狐を娶るは眩妻と爰に謀るなり。何ぞ羿の革を射るも而も交々之を呑揆せる
※寒浞が純狐を娶ったのは愛欲に目が眩んだ為とされ、妻と共に羿を謀殺した事による
『楚辞章句』や『今本竹書紀年』では純狐を氏(共通の祖先を持つ血縁集団)つまり部族名だと取れるような記述がなされている。
純狐と玄妻
古代中国「夏王朝」の時代の人物「玄妻」の説話は、周囲の人物や背景など純狐と共通する点が多い。
その為、以下の記述に代表されるように研究者達の間で「純狐=玄妻説(同一人物説)」が定説となっている。
≪春秋左氏伝≫ 昔有仍氏生女,湛黑而甚美,光可以鉴,名曰玄妻。乐正后夔取之,生伯封。实有豕心,贪婪无厌,忿类无期,谓之封豕。有穷后羿灭之,夔是以不祀。
───昔、有仍氏に娘が生まれ、髪は黰黑にして甚だ美しく、光以て鑑とす可し、名付けて「玄妻」。楽正の后夔が之を妻にし伯封を生む。子に豕心有り貪惏にして非道、之は封豕と謂う。有窮の后羿が之を滅し夔是を以て祀られず。
※玄妻という名は「鑑に映せるほど美しく輝く黒髪」から付けられた名。彼女の子は貪欲で非道、人間的に褒められたものではなかった≪古史辨≫ 顧頡剛、童書業《夏史三論》雲,眩妻即《左傳》中玄妻;純狐乃黑狐,亦即玄妻。
───夏史三論によると眩妻は即ち左伝でいう玄妻、純狐は黒狐、やはり玄妻に他ならない
玄妻は子(伯封)を后羿に殺された事に対する復讐のために、寒浞と共謀して夫である后羿を死に追いやった。
これは『楚辞・天問』の記述とも一致している。
玄妻と嫦娥の夫
世界に残る神話の多くは伝承・民俗学等の祖を体系化したものであるが、中国神話は非常に断片的で、他国と比べると神話学の研究も進んでいないと言われている。とはいえ后羿に纏わる説話は体系化されていて、細部の違いこそあれど大きく二つに分けることはできる。
以上の二つの伝説に登場する羿が同一人物なのかは明らかになっていない。一説に純狐(玄妻)が登場する夏王朝の伝説は羿の伝説を基にした歴史創作、或は玄妻が嫦娥の原型説、夏の時代にもう一人の妻がいてそれが嫦娥だった、とする創作話まである。
東方での后羿
一方で、東方では純狐の夫は、月の女神「嫦娥」の夫と同一人物となっている。
- 鈴仙の完全無欠orノーミスEDで、永琳が「純狐の夫の妻が嫦娥」と鈴仙に説明した。
- 純狐と共謀したヘカーティア・ラピスラズリは「嫦娥の夫が太陽(アポロ)を撃ち落とした一件」と純狐の影響で嫦娥を恨むようになった。
現時点では夫の名が后羿だとは言われていないが、少なくとも「后羿射日の羿と夏王朝伝説の羿」を総括したのが、東方での后羿に該当する人物という事はほぼ確定している。
元ネタの純狐(玄妻)がいた古代中国「三代」について未解明の部分が非常に大きい。特に「夏」は実在が確認されて研究が飛躍的に進歩したのも近年になってからで、殆ど古代神話のようなものである。
要するに東方の純狐やその夫(后羿に該当する人物)のキャラ造形は、断片的な古代中国神話・伝説をZUN氏が総括あるいは習合させて創り上げたという事になる。
スペルカード
東方紺珠伝 Stage6 | |||
「掌の純光」 | Easy,Normal Hard,Lunatic |
||
「殺意の百合」 | Easy,Normal Hard,Lunatic |
||
「原始の神霊界」 | Easy,Normal | ||
「現代の神霊界」 | Hard,Lunatic | ||
「震え凍える星」 | Easy,Normal Hard,Lunatic |
||
「純粋なる狂気」 | Easy,Normal Hard,Lunatic |
||
「溢れ出る瑕穢」 | Easy,Normal Hard |
||
「地上穢の純化」 | Lunatic | ||
純符「ピュアリーバレットヘル」 | Easy,Normal | ||
純符「純粋な弾幕地獄」 | Hard,Lunatic |
東方紺珠伝 Extra Stage | ||
「袋の鼠を追い詰める為の単純な弾幕」 | ||
「人を殺める為の純粋な弾幕」 | ||
「最初で最後の無名の弾幕」 | へカーティアとのタッグスペル。 |
秘封ナイトメアダイアリー | ||||
「震え凍える悪夢」 | 裏・金曜 | |||
「サイケデリックマンダラ」 | 裏・金曜 | |||
「極めて威厳のある純光」 | 裏・金曜 | |||
「確実に悪夢で殺す為の弾幕」 | 裏・金曜 | |||
紺珠符「純粋と不純の弾幕」 | 悪夢金曜。ヘカーティアとのタッグスペル。 | |||
萃珠符「純粋な五里夢中」 | 悪夢金曜。萃香とのタッグスペル。 | |||
永珠符「穢れ無き珠と穢れ多き霊」 | 悪夢金曜。妹紅とのタッグスペル。 |
関連動画
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関連静画
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関連コミュニティ
関連項目
- 東方Project
- 東方紺珠伝
- ピュアヒューリーズ ~ 心の在処
- ヘカーティア・ラピスラズリ
- クラウンピース
- 鈴仙・優曇華院・イナバ
- 嫦娥(東方Project)
- 玄妻
- 后羿
- 嫦娥よ。見てるか!?
- 穢れ(東方Project)
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