紫外線とは、赤外線の反対の「紫」色の「外」に存在する電磁波のうちX線よりかは波長の長いものである。我々ヒトの目では見ることができない。
英語ではUltravioletで、業界の人はこれを略してUVと呼ぶ。Violetはスミレなので「菫外線」と呼ばれていた時期があったが、菫が常用外漢字なせいか今ではだれも使わない。
概要
まずニュートンが太陽光を赤から紫の可視光線に分解したのだが、その後「この外側にもなんかありそう」と、物理学者たちは見えない何かをどうにか発見しようと探し始めた。見えないので時間はかかったが、まず最初に赤外線が存在することが証明された。
「じゃあ反対側にも絶対なんかあるよな」という雑な類推をしたリッターというドイツの変人物理学者が、白い塩化銀を真っ黒にさせる「何か」を発見した。これが紫外線である。
現在、波長で言うと380nm(紫色近傍)から10nm(X線近傍)までの電磁波を紫外線と言うが、その境は結構曖昧である。(1nm=1/1000μm)
赤外線同様、ヒトの目に見えないだけで(長めの波長であれば)紫外線を見ることができる動物は数多く存在する。例えばモンシロチョウはヒトのぱっと見ではオスとメスの見分けがほとんどつかないが、紫外線で「見る」と一目瞭然である。オスの翅は紫外線を吸収しメスのは反射するからだ。
蛍光
原子に紫外線を照射すると、その原子を取り囲む電子が紫外線からエネルギーをもらって普段回っている軌道から「浮いた」ところで回るようになる。これを励起という。
浮ついた電子は元に戻ろうとするのだが、このときもらったエネルギーの一部(←重要)を電磁波として放出する。つまり、当てた紫外線より長い波長の光を放つのだ。これを蛍光という。
化学反応の促進
「化学線」の異名の通り、紫外線は様々な化学反応を促進する。紫外線の照射により励起された電子が他の原子にとっ捕まりやすくなるためだ。
水素と塩素の混合気に紫外線を当てると爆発的に反応したり、酸素に当てるとオゾンができることは高校の化学で習うところだが、このほかにも、
- 柔らかい樹脂を虫歯削った跡に詰めて紫外線を当てることで硬化させて詰め物にしたり、
- 酸化チタンが紫外線で触媒と化すことを利用して防汚効果を得たり、
- 紫外線に晒されて溶解度が上がった箇所だけ溶媒で洗い流すことで精細な半導体回路を作ったり、
という使い道がある。しかし…
生体に優しくない紫外線
ビタミンD生成に役立つというような側面もあるものの、生体にとっての紫外線は基本ありがたくない存在である。分子構造を切りはなしてばらばらにしたり酸化しやすくしたり変なところにつなげたりするせいで、紫外線に暴露された箇所は(補修機構が働いたとしても)少しずつボロボロになっていくのだ。その結果、黒日焼け・赤日焼け・白内障・DNAコピーに失敗して細胞死・ガン化などの悪影響を生体に及ぼす。
この性質を利用して殺菌灯として用いられている。遺伝情報がむき出しのウイルスやバクテリアにはよく効くし、細胞壁くらいでは到底紫外線を止めきれないので細胞壁を持っている菌類細菌類にもボチボチ効く。但し高耐性で知られる有芽胞菌の一種(炭疽菌とか)やクマムシには効きが悪いようだ。それでも線量を上げれば死滅するけど。
紫外線遮断性能の低いサングラスを使用すると、瞳孔が開いた状態で紫外線がレンズをほぼ素通りしてくるため、目に甚大なダメージを与える危険性がある。かけることで「眩しくない」状態は作れても、紫外線は遠慮なく貫通して目に飛び込んでくる。安さやデザインだけで選ばず、十分な遮断性能を持った信頼できる製品を使うようにしたい。
フィクションの中の紫外線
褐色肌や日焼け跡のような萌え要素を作り出す大元である反面、色白のキャラクターには天敵となる。
また、吸血鬼の弱点の一つとして日光が挙げられるが、炎や電灯が作り出す光には無反応であることが多いため、日光に含まれる光の中でも紫外線が吸血鬼に対して特に有効ではないかと言う解釈がされることがある。
吸血鬼対策として紫外線が使われる作品として『ジョジョの奇妙な冒険』『ブレイド(アメコミ)』などが存在する。
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いいドキュメンタリーとかないかな…
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関連項目
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