細胞とは、生物を構成する微小な部屋のような構造体であり、生物の基本単位である。
ヒトは230種、約60兆個の細胞でできており、そのうち最も多いのが赤血球である。
概要
一番外側は細胞膜で覆われており、細胞膜の中は細胞質とその中で浮いている細胞核がある。細胞質には様々な細胞小器官がある。(原核細胞には細胞核と細胞小器官がない)
細胞内では様々な化学反応が起こっており、その化学反応こそが正に生命活動であり生きている証である。身も蓋もない言い方をすれば化学反応を発生させる単なる装置である。
単細胞生物
ひとつの細胞のみで構成される生物のこと。
近年では細胞内に細胞核を持つ真核生物か、それ以外の原核生物かという分類の方が重要となっているので、単細胞生物という分類はあまり使われない傾向にある。
多細胞生物
複数の細胞で構成される生物のこと。現在の生物分類で動物界、植物界に属する生物は全て多細胞生物である。(界は生物分類で上から3階層目の超大きなカテゴリー)
単細胞生物と異なる大きな特徴のひとつに有性生殖による増殖を行うものがあることが挙げられる。細胞分裂で増殖する単細胞生物と異なり、多細胞生物の有性生殖では生殖細胞を次世代に引き継ぐことができる。
現在、多細胞生物であることが確認されている動物、植物、菌類はそれぞれ進化の過程で別の時期に独立して多細胞化を獲得したと言われている。
以下の図は、比較的新しい時代になってから多細胞化を獲得したと言われている緑藻の一種ボルボックス(オオヒゲマワリ)の群体。
ウイルス
細胞構造を持つことが生物の条件であるとする細胞説の考えの下ではウイルスは非生物である(ただし太古より生物と深い関係にあるのは確実である)。
細胞小器官
真核生物の細胞内には特定の機能を持った構造が幾つか存在し、細胞小器官(英名:オルガネラ)と呼ばれている。細胞によって備えている細胞小器官は様々であり、赤血球のように成熟する過程で細胞小器官を捨て去ってしまうものもある。また前述のとおり原核生物には細胞小器官がみられない。
核
最大の細胞小器官で、直径は10μmほど。生物の設計図であるDNAとタンパク質の複合体が折りたたまれた「染色体」を収納している。人間の場合、23対(46本)の染色体が収まっており、身体のパーツを作る時は核内でRNAという形にコピーして核外に持ち出される。
小胞体
脂質やタンパク質などの輸送を行う。後述のリボソームが表面にブツブツ付着していているものを粗面小胞体、付着していないものを滑面小胞体と呼ぶ。
リボソーム
核から持ち出したRNAを基にアミノ酸を組み合わせて、身体の原料となるタンパク質を製造する。タンパク質というと筋肉などを想像するかもしれないが、消化器官酵素などもタンパク質の一種であるため、消化器官の細胞には盛んに発達している。完成したタンパク質は後述のゴルジ体へ小胞体によって運搬される。
身体を作る工場のような存在であり、ここを攻撃されると生物は大きなダメージを受ける。これを活用したのがテトラサイクリン系、マクロライド系、アミノグリコシド系など一部の抗菌薬(抗生物質)である。人間と細菌ではリボソームの構造が異なるため、ここを狙い撃つことで人間のタンパク質合成には影響を与えずに菌を殺すよう設計されている。
ゴルジ体
小胞体で運搬されてきたタンパク質を受取り、糖鎖をくっつけるなどの加工(化学的修飾)や、小胞を作って細胞外への分泌などを行う。
ミトコンドリア
生体のエネルギー源となるATPを産生する。生物は細胞質内でもグルコースから解糖系と呼ばれる代謝経路でATPを産生できるが、ミトコンドリアは解糖系の途中で生じたNADHという代謝産物を利用してさらにATPを産生する。この代謝経路は電子伝達系と呼ばれる。
また解糖系の生成物であるピルビン酸を取り込んでさらに分解することで、ATPの産生に必要なNADH、FADH2を産生し、電子伝達系に供給するクエン酸回路という経路も併せ持つ。そのため、合計すると解糖系単体より19~18倍ものATPを産生することができる。
元々ミトコンドリアは好気性細菌が大きな細胞に潜り込んで共生しているうちに、いつの間にか細胞小器官となったと考えられている。実際、ミトコンドリアは細胞内にあるにも関わらず、細胞のように独立したDNAやリボソームを持ち、タンパク質合成を行い、分裂・増殖を行っている。「このミトコンドリアのDNAが反乱を起こしたらどうなるのか?」を描いたのが瀬名秀明のSFホラー小説「パラサイト・イヴ」である。
受精の際、精子は核のみを、卵子は細胞全体を提供するので、子供には母親のミトコンドリアが受け継がれる。これを利用してDNA鑑定を行うことができる。
リソソーム
非常にややこしいがリボソームとは別物。中に加水分解酵素が入っており、細胞内の異物やゴミを代謝する。2016年に東京工業大学の大隅栄誉教授がその仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞を受賞した「オートファジー」にも関わっている。
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関連項目
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