ストーリー
『日本民族の滅亡を回避し、この国にあるべき終戦の形をもたらす』
あらかじめ敗北という選択肢を持てなかった戦争は、ついに一人一殺一億玉砕を謳い、大本営が精神主義を唱えるまでに日本を追い込んでいた。それが勝ち得るものは何もない、と分かっていても。
ナチスドイツの開発した特殊音響兵装PsMB-1、通称[ローレライ]。
[彼女]は落としどころを見失ったこの戦争を終わらせる、たったひとつの希望であるという。
太平洋の魔女・ローレライを乗せた戦利潜水艦[伊507]とその乗組員たちは、国家の、そしてひとりの男の壮大な陰謀に巻き込まれていく。
映画「ローレライ」との差異
ハードカバー上下巻合わせて1000ページ以上ある本作を、2時間少々の映像に詰め込むのはなかなか無理があったのだろう、ストーリー等大きく改変されている。
原作では登場人物一人一人にスポットを当て、その人物の過去のトラウマや葛藤を細かく描写している場面もあるのだが、映画では主要人物の年齢や出自を変更したため、それらが大きく改変、またはカットされていたり、原作で非常に重要な役割を果たしていた人物が登場すらしなかったりと、変更点は非常に多い。
登場人物
- 絹見真一 戦利潜水艦[伊507]艦長。日本海軍少佐。43歳。
- 高須成美 同艦先任将校兼水雷長。大尉。36歳。
- 田口徳太郎 同艦掌砲長。兵曹長。42歳。
- 折笠征人 同艦乗務員。上等工作兵。17歳。
- 清永喜久雄 同艦乗務員。上等工作兵。17歳。
- 岩村七五郎 同艦機関長。機関大尉。51歳。
- 木崎茂房 同艦航海長。大尉。37歳。
- 早川芳栄 同艦乗務員。特殊潜航艇[海龍]艇長。中尉。33歳。
- フリッツ・S・エブナー 元ドイツ親衛隊士官。少尉。21歳。祖母が日本人のドイツ人クオーター。
- パウラ・A・エブナー フリッツの妹。17歳。
- 浅倉良橘 軍令部第一部第一課長。大佐。45歳。
- 大湊三吉 軍令部第三部第五課長。大佐。45歳。
- 土谷佑 海軍技術中佐。38歳。
- 菊政 一等水兵。今作では、前部魚雷発射管室で架台から落ちた魚雷の下敷きになった。
戦利潜水艦[伊507]
元はフランス海軍の潜水艦であり、[シュルクーフ]と呼ばれていた。
メキシコ湾で米商船と衝突事故を起こすが、なんとか沈没を免れ海上を漂流していたところをナチスドイツのUボートに拿捕される。フランスから接収した四番目の艦として[UF4]と名を変えたのち、PsMB-1搭載艦として極秘計画[リンドビュルム計画]の元、最新鋭の技術をもって大規模な改装が行われた。
PsMB-1の中枢機関となる小型潜水艇[ナーバル]を搭載するため、鈍重となった艦にそれまでの1.6倍もの馬力を持たせると、潜水艦にあるまじき水上・水中速度に航続距離をもたらした。その機動力とローレライ・システムを駆使し、世界中の海を荒らした果てに付いた渾名は[海の幽霊]。
ローレライ・システム搭載の実験艦として就役してから約1年後、ナチスドイツは降伏し、[UF4]の乗員はローレライ・システムを提供し亡命するため日本に渡った。艦の補修を受けたのちに、日本が接収した7番目の潜水艦として、[伊507]の名が冠された。
ローレライ・システム
正式名称は[PsMB-1]、ドイツ語読みで[ペー エス エム ベー アインツ] 探知システムの一種である。
通常のソナーは探信音波を放ち、目標物に反射して帰ってくるまでの時間を計測・聴音することによって、目標物の方位や距離を測るが、ローレライはソナーシステムの根本から全く違うものである。
システムの核となるパウラが水を媒介に[感知]したものを電気信号から磁気に変え、発令所にある直径1メートルの球体ガラスで出来たコロセウムで三次元再現することで、周囲を視覚的に把握する事ができる画期的システム。
最大望遠は半径100km、最少は半径1km。
しかし、核であるパウラの感知能力は偶然開花したものであるため量産できない上、敵艦を一隻撃沈すると核に精神的衝撃波(ゼーレンブレッヒャー)という非物理的衝撃を与え、しばらくシステムを起動することが出来なくなるという、兵器としては致命的な欠点が存在する。
敵艦
- トリガー
- アメリカ海軍に所属する、全長94mのガトー級潜水艦である。艦長はスコット・キャンベル少佐、副艦長はエドワード・ファレル大尉。別名[しつこいアメリカ人]。
- 豊後水道で攻撃を受け、一度戦没認定が下される。復帰されないまま、[海の幽霊]を捜索するという特殊任務を与えられ、UF4が日本を目指す2か月もの間、追跡を重ねてきたためその渾名が付いた。
- 同じくガトー級の僚艦[ボーンフィッシュ]と共に[UF4]へ攻撃を仕掛けるが逃亡を許す。しばらく[UF4]が廃棄した[魔法の杖]を捜索していたが、ONIの指示により硫黄島沖に姿を見せたシーゴースト、[伊507]を再び追うこととなる。
- ボーンフィッシュ
- アメリカ海軍所属のガトー級潜水艦。
- 富山湾で爆雷攻撃を受け、浮上もままならない程の大きな損傷を受けた。タンクから重油を流したり、魚雷管から毛布や日用品などを射出して沈没を偽装しなんとか生き延びるが、3週間もの間交信が途絶えた[ボーンフィッシュ]は戦没認定が下されていた。対馬海峡を出た直後に艦隊司令部から命令が下り、戦没認定が解かれないまま[トリガー]と共に[UF4]を追うこととなった。
- スヌーク
- アメリカ海軍所属のガトー級潜水艦。[ボーンフィッシュ]に次いで、トリガーの僚艦として[伊507]を追う。
- キャンベル艦長曰く、「3か月前に戦没認定を受けたばかりの新顔」。
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関連項目
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