結界(けっかい、けっぱい)とは、「何らかの境界」あるいは「境界をおくこと」を言うことばである。
概要
仏教用語で、中国から仏教とともに渡来した言葉であると言われる。仏教本来の言語サンスクリット語(またはパーリ語)「सीमाबन्ध」(シマバンダ、シマバンド)の翻訳とされ、「सीमा」(シマ)は「境界」「限界」「制限」の意、「बन्ध」(バンド)は「結ぶ」「つなぐ」の意なので、「सीमाबन्ध」は字面そのものは「境界を結ぶ」の意味である。これが漢字表記「結界」に転訳されたものと思われる。
「戒律が及ぶ範囲の境界」や、「清浄な、聖の」場所と「不浄な、俗の」場所を分ける境界といった意味で用いられる。
「境界」自体だけでなく、その境界で区切られた場所・区域も指す。例えば「女人結界」はいわゆる「女人禁制」の場所、つまり戒律上として女性が立ち入ってはならない区域を指す。
また「境界そのもの」だけでなく、「境界を定める行動、行為」を指して「結界」と呼ぶこともあり、例えば「結界を行う」などと言った表現がある。
転じて、茶道において茶室の中の道具畳と客畳の境を示すための置物や、商家や旅館にて帳場を仕切る「帳場格子」の別名などとしても用いられている。
さらに、ファンタジー系の創作作品などでは、「魔法的な不思議な技による、なにかを遮ったり防いだり封印したりするためのバリヤー的なやつ」とか「なんらかのエリア効果の範囲」などの意味で用いられることも多い。現代の日本では「普段から仏教に慣れ親しんでいる人」より「ファンタジー系の創作作品に慣れ親しんでいる人」の方が多いと思われ、本来の仏教用語としての「結界」よりそういったファンタジー作品的な意味での「結界」の方がむしろメジャーとなっていると思われる。
こういった「元は仏教用語だが、ファンタジー作品に転用された言葉」は他にもある(例えば「定命の者」というフレーズに含まれる「定命」(じょうみょう)など)が、「どのファンタジー作品がきっかけになったのか」ははっきりしないことが多いようだ。
発音
転訛(音の変化)で「けっぱい」と読むこともある。「七里結界」という「自分の七里四方に結界を貼って魔障など嫌なものを近づけないようにすること」を指す言葉があり、これは「しちりけっかい」と読むはずだが「しちりけっぱい」とも読んでいた例が確認できる。
とはいえ、普通は「けっかい」と読む。その「けっかい」について、突然ですが、この記事を読んでるあなたはどんなアクセントで発音していますか?
おそらく「決壊」「撤回」「熱帯」のような平板型の発音をしている人が多いのではないだろうか。ファンタジー作品がアニメ化などされた時にもこういった発音がされることが多いようだ。
各国語の様々な単語について、その言語ネイティブの人間の発音を音声で教えてくれるサイト「発音ガイド Forvo」でも、日本語の「結界」の発音は日本の女性2名による2例が登録されているが、どちらもこの平板型の発音をしている(本記事初版作成時点)。
だが、少数ながら「接待」「決済」「切開」のように、最初の「けっ」が上がる頭高型の読み方がなされることもある。創作作品でこの読み方をしている例としては、乙女ゲーム『あさき、ゆめみし』や、アニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』など。聴きなれないためか、これらの作品では「なんでこういう変わった発音をしているんだろう?」といった声が挙がることすらある。
だが、正式な発音はこの「あまり使われない」方、後者の頭高型であるという話もある。有名な百科事典サイト「Wikipedia」(ウィキペディア)の姉妹プロジェクトである辞書・辞典サイト「Wikitionary」(ウィクショナリー)には日本語以外での「結界」のページがあるが、日本語での発音が別の言語で解説されている。そしてそこでは『大辞林 第三版』や『NHK日本語発音アクセント辞典』を出典として、「発音は頭高型である」旨が記されているのである。
これが正しいなら、「正式とされているアクセントは廃れつつあり、他のアクセントが広まっているが、そのことについてあまり認識もされていない」ということになる。文字情報ではアクセントについて伝えづらいので、そういうこともあるのだろう(この記事でも、これまでの記述であなたに伝わっているか不安である。わかりにくかったらごめんなさいね)。
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関連項目
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