統一地方選挙とは、4年に一度、4月に全国で一斉に執行される首長・地方議会議員の選挙である。
概要
日本国憲法施行を間近に控えた1947年4月に、復帰前の沖縄県を除く全国の首長選・議員選を同時執行したことに端を発する。現在では4月の第2日曜日に都道府県・政令指定都市の選挙(いわゆる「前半戦」)を、第4日曜日に一般市区町村の選挙(いわゆる「後半戦」)を執り行う形式が定着している。なお4月の第4日曜日は衆議院・参議院の補欠選挙を行う日に指定されているため、場合によっては国政・地方のW選挙となる。
有権者の関心を高める、選挙執行の効率化を図るなどの観点から統一率の向上が叫ばれているが、後述の通り首長の辞職や議会の解散、自治体合併などにより統一選のスケジュールから外れる選挙が(特に首長選で)年々増加している。例えば2010年代最初となる2011年統一選では、全国の自治体数1,797に対し、首長選が行われたのは251、議員選が行われたのは791であり、統一率はそれぞれ14%と44%に留まった。
ただ現在でも岩手県・宮城県・福島県・茨城県・東京都・沖縄県を除く41道府県で道府県議選が行われ、東京都の特別区議選もほとんどが同時に行われていることから、国民の大半がこの時期に1つ以上の選挙を経験するという状況に変わりはない。そのため衆院選・参院選に次ぐ大型選挙として、今もなお重要な位置付けを保っている。
統一地方選挙(完全統一とは言ってない)
首長・地方議員共に任期は4年で固定のため、何事もなければ1947年以降の全ての首長選・議員選が同一スケジュールで行われるはずであった…が、実際には以下の理由により年を経るごとに任期・改選時期のズレが生じてきており、結果的に統一率の低下に繋がっている。
- 首長の辞職・失職
- 議員と異なり知事や市区町村長は1人しかいないため、辞職や失職によって空席になれば直ちに選挙で後任を選ばなければならない。そしてこの選挙の当選者は前職の任期を引き継ぐのではなく、新たに自分の任期4年を得る(例外的にいわゆる「出直し選挙」で前職が再選した場合に限り、任期の延長が行われない)。そのため任期途中の首長が国政などに鞍替えしたり、病気や不祥事で辞職・失職したりするたびに任期のズレが生じ、統一選スタートから70年以上経った現在では統一選スケジュールで行う首長選は1割強程度という状態になっている。
- なお議員の場合、補欠選挙で当選した議員は前職や同僚議員と同じ任期しか与えられないため、辞職や失職によって任期や改選時期にズレが生じることはない。
- 議会の解散
- 市民からのリコールや首長不信任決議へのカウンター、自主的決議によって議会を解散した場合、全議員が失職し、やり直し選挙で当選した議員は新たな任期4年を得る。そのため大抵は統一選のスケジュールを外れる。
- ただし地方議会の解散は首長の辞職に比べると珍しく、解散による統一選からの離脱はさほど多くない。
- 自治体の合併
- 地方自治体同士が新設合併(対等合併)した場合、参加した旧自治体の全首長・議員は原則として失職し、改めて新自治体の設置選挙を行うことになる(議員は新自治体の議員として任期を続けられる特例制度があるが、市民からの批判を浴びがちなため近年はあまり適用されていない)。設置選挙で当選した首長・議員は新たに任期4年を得るため、統一選と設置選挙のタイミングが合っていないと以降は改選時期がズレることになる。
- 災害による選挙の延期
- 統一選直前に大規模災害が起きると当然ながら選挙どころではなくなるため、被災地の首長・議員の任期を延長して選挙の執行を遅らせるのが通例である。そして延期された選挙で当選した首長・議員の任期はその選挙の日から4年となるため、以後被災地の選挙スケジュールは統一選を外れることになる。
- 2011年3月に発生した東日本大震災の影響により、4月に選挙を行う予定だった岩手県・宮城県・福島県の多くの自治体が選挙を数か月間延期したため、これらの自治体は2015年以降も統一選から離脱することになった。
- なお1995年1月の阪神・淡路大震災の時も兵庫県内の自治体が選挙を6月11日まで延期したが、1999年以降は統一選に合わせられる任期のリミットが6月10日に設定されたため、現在は統一選に復帰している。
- 例外:沖縄県の場合
- 沖縄県は米軍統治下の1946年9月に市町村の一斉選挙が行われ、以後現在まで本土の統一選の前年9月に県内統一選を行うようになっている。ただし県知事選・県議選は1972年の復帰時に改めて行われたため、始めから県内統一選のスケジュールを外れており、また本土と同様の理由で統一率は年々低下傾向にある。偶然に本土の統一地方選挙と時期が重複する場合には沖縄県で唯一の統一地方選挙の対象となるケースもある(2019年の東村村長選挙など)。
なお統一選を一度外れた場合でも、統一選のタイミングで首長が辞職したり議会が解散したりすれば再び統一選のスケジュールに復帰することになる。
統一選では最大4種(知事・都道府県議・市区町村長・市区町村議)の選挙が行われるが、4種全てが行われる自治体は少ない(北海道・神奈川県・福井県・三重県・奈良県・大阪府・鳥取県・島根県・徳島県・福岡県・大分県の一部自治体のみ。このうち北海道札幌市・神奈川県相模原市・大阪府大阪市は前半戦の12日に4種全ての投開票を行う)。
逆に4月中には何一つ選挙が行われない自治体も一定数存在する(岩手県・宮城県・福島県・沖縄県の多くの自治体、茨城県つくば市、東京都足立区・葛飾区・西東京市など)。
引越し時の注意点
統一選の時期は引越しのピークである3月・4月と重なるため、引越し後にどの選挙に投票できるのか混乱が生じやすい。制度がややこしいため詳述は避けるが、だいたい以下のようなルールとなっている。
- 選挙で投票できる自治体は住民票の場所を基準にしているため、引越しても住民票を移さない場合(学生や単身赴任者など)は当然ながら引越し前の自治体の選挙に投票することになる。前の自治体の投票所に行くのが難しい場合は不在者投票の活用をオススメする。
- 公職選挙法の規定により、地方選挙の選挙権は3カ月以上当該自治体に継続居住していないと与えられない。そして3カ月カウントの起算点は各選挙の告示前日になるため、選挙の種類ごとにいくらかズレが生じるものの、おおむね前年12月~1月頃までに転入届を出していないと、引越し先の自治体の選挙で投票することはできない。また転出届を出した時点でその自治体の居住者ではなくなるため、引越し前の自治体の選挙でも投票できない。そのため年度末あたりに転出・転入届を出した人は、基本的に統一選はお休みとなる。
- ただし同一都道府県内の自治体間を引越ししたケースでは、3カ月要件を満たせない2月や3月に転出入をした人も知事選・都道府県議選のみ投票が認められる。これは継続して当該都道府県民であることに変わりはなく、選挙に参加する利害が認められるためである。ただしこの場合、引越し前の自治体を含む選挙区の方で投票をすることになるので、不在者投票を活用することをオススメする。また前もって「引き続き同じ都道府県に住んでいる」ことを証明する書面を、役所の市民課などで発行してもらう必要があるので注意。
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