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統合失調症とは、幻覚や妄想などの陽性症状、自閉や感情鈍麻などの陰性症状を主徴とする精神疾患。俗に、統失と呼ばれる。インターネットスラングとして、しばしば糖質と表記される。かつては精神分裂病と呼ばれていたが、誤解を招き、患者への偏見や差別につながるとして改称された。
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概要
統合失調症は、思考、感情、意欲など人格全体に影響を及ぼす精神疾患。幻覚や妄想などの陽性症状、自発性減退や感情鈍麻などの陰性症状を示し、思考や行動が障害される。増悪と回復を繰り返し、人格崩壊に至る例もある。ただし、そのような例は多くはなく、治る見込みのある疾患である。
10代から30代にかけて好発し、性差や人種差はない。また、有病率は1%(100人中1人)程度であり、まれな疾患ではない。統合失調症の発症機序は完全に明らかにはされていないが、遺伝的素因(先天的要因)と環境的要因(ストレスなど)の両方が関与している。メタアナリシスによれば、統合失調症の遺伝率は81%。
症状
統合失調症の主な症状は、陽性症状と陰性症状の2つ。陽性症状は急性期に、陰性症状は慢性期に顕著だが、慢性期でも増悪すると陽性症状を呈する。このほか、役割を遂行する能力の低下や記憶力の低下などの認知機能障害をきたす。ただし、症状には個人差があり、すべての患者が同じ症状を呈するわけではない。
- 陽性症状 - 幻覚、妄想、自我意識障害、思路障害、興奮など。一見して異常と分かる症状。
- 幻覚 - 幻聴、幻嗅、幻味、幻触、体感幻覚など、存在しないものを感覚として捉えてしまうこと。「誰かが自分に話しかけてくる」「自分の噂話がされている」という、言語性幻聴が多く見られる。ほかにも、「生臭い匂いがする」「気持ち悪い味がする」「誰かに触られている」「内臓が溶けている」などと感じる。
- 妄想 - 被害妄想、関係妄想、心気妄想、誇大妄想など。幻覚をなんとか説明づけようとして妄想を形成する可能性がある。「周囲の人間が自分を陥れようとしている」「誰かが自分を監視している」「電磁波で攻撃されている」「料理に毒が入れられている」「大きな病気に罹っている」「自分は神である」などと思い込んでしまう。
- 自我意識障害 - 思考奪取、思考吹入、作為体験(させられ体験)など。「自分の思考が他人に抜き取られている」「他人の思考が自分に入り込んでいる」と考える。また、「他人が自分の思考や行動を操っている」と感じる。
- 思路障害 - 連合弛緩、滅裂思考、言葉のサラダ(ワードサラダ)など。思考を適切に統合できなくなり、発言が支離滅裂なものとなる。
- 陰性症状 - 自閉傾向(引きこもりなど)、感情鈍麻・平坦化、疎通性の障害(意思疎通が困難になる)、自発性の欠如、意欲低下など。本来備わっている機能が減弱ないし喪失することで現れる症状。数年にわたり継続することがあり、治療が難しい。
- 認知機能障害 - 遂行機能が低下する。すなわち、目的や問題に対して、計画、判断、実行、解決する能力が低下する。そのため、無計画で非効率的な行動をしたり、行動そのものが取れなくなったりする。注意力や記憶力などが低下するケースもある。
病型
統合失調症は、症状によっていくつかの病型に分類されている。妄想型、破瓜型、緊張型の3つが代表的。
- 妄想型 - 30代に好発。幻覚や妄想を呈することが多い。人格水準が低下することは相対的に少ない。
- 破瓜型(解体型) - 10代に好発。感情や行動の変化が著しく、会話が支離滅裂になる。幻覚や妄想は少ない。無治療のまま放置すると、人格が荒廃することもある。
- 緊張型 - 外部からの刺激に反応しなくなったり、不自然な姿勢で静止したり、目的なく同じ動作を繰り返したりする。
- 分類不能型 - 複数の病型の条件を満たす、またはいずれの条件も満たさないなど、特定の病型に分類できないもの。
- 残遺型 - 陽性症状がほとんど見られなくなり、陰性症状が主な症状として持続している状態。ほかの病型から残遺型に移行する。
- 単純型 - 陽性症状がほとんど見られず陰性症状のみが進行していく。残遺型との違いは過去に陽性症状がみられたかどうか。
治療
陽性症状と陰性症状には、脳の神経系の機能異常が関与すると考えられている。
統合失調症の薬物療法では、陽性症状を抑える目的でドパミンD2受容体遮断作用をもつ薬物を、陰性症状を抑える目的でセロトニン5-HT2A受容体遮断作用をもつ薬物を用いる。基本的には単剤投与。第一選択薬は非定型抗精神病薬である。詳しくは、抗精神病薬の記事を参照。
- 定型抗精神病薬 - D2受容体を遮断することで、陽性症状を改善させる。陰性症状には効果がなく、副作用も強い。副作用として、α1受容体遮断による起立性低血圧、D2受容体遮断による錐体外路障害、高プロラクチン血症、悪性症候群、H1受容体遮断による眠気、抗コリン作用による口渇、便秘などがある。
- 非定型抗精神病薬 - 陽性症状と陰性症状をともに改善させる。SDAとMARTAは、D2受容体と5-HT2A受容体の両方を遮断する。ドパミン受容体部分作動薬は、5-HT2A受容体を遮断し、D2受容体には弱く作用することでドパミン神経機能を調整する。副作用として高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスをきたすため、糖尿病患者への投与は禁忌ないし慎重投与となっている。
抗精神病薬による治療を主軸に、症状の程度に応じて精神療法やリハビリテーションも行われる。
ちなみに、抗精神病薬のなかった時代、統合失調症の治療としてロボトミーが行われていた時期がある。ロボトミーは、脳の前頭葉の神経を切断することで、統合失調症を改善させるというもので、1949年にノーベル生理学・医学賞が授与されるなど革新的な治療法だった。しかし、患者の人格変化や、知能の低下などの不可逆的な障害をきたすため、現在は行われていない。
罹患者
統合失調症を発症した人物。ただし、推測によるもの、医師による診断を受けていないものを含む。
著名人
生年順。
- フィンセント・ファン・ゴッホ - 画家。自身の耳たぶを切り落とすなどしたが、統合失調症だったのかは諸説ある。
- ルイス・ウェイン - 統合失調症の症状の進行の説明として多用される猫の絵の作者である。
- エドヴァルド・ムンク - 画家。代表作『叫び』で知られる。一時期、精神病院に入院した。
- セラフィーヌ・ルイ - フランスの素朴派の画家。その生涯が『セラフィーヌの庭』として映画化された。
- 夏目漱石 - 生前、精神病だったらしいが、確定事項ではなく、死後は医師の間でも意見が分かれている。
- ミカロユス・チュルリョーニス - リトアニアの19世紀末の画家・作曲家。
- ヴァーツラフ・フォミーチ・ニジンスキー - バレエダンサー。統合失調症を発症し、精神病院を転々とした。
- 芥川龍之介 - 彼のらしい作風から症状を疑われているが、医師の診断で断定されたわけではない。
- エド・ゲイン - 殺人犯。猟奇的な犯罪で知られる。逮捕後は精神病院で過ごした。
- ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニア - 数学者、経済学者。ノーベル賞受賞者。統合失調症はのちに寛解した。
- 草間彌生 - 医師の診断認定済だが、その症状をデザイナーという職で活かしている。
関連疾患
統合失調症と似た症状を呈するが統合失調症とは異なる疾患、統合失調症を内包した疾患概念などをいくつか例示する。同一視しないように注意。治療にあたり、鑑別が必要な場合がある。
- 妄想性障害 - 妄想を形成するが、ほかの精神症状がみられない。
- 短期精神病性障害 - 幻覚や妄想を示すが、発症している期間が短い。
- 統合失調症様障害 - 統合失調症と断定できないが、似た症状を示す。
- 統合失調感情障害 - 統合失調症と、うつ病あるいは双極性障害を発症している。
- パーソナリティ障害 - 思考や行動が他人と異なるため、対人関係に問題が生じる。
- 解離性障害 - 自分が自分であるという感覚を失い、現実感を喪失する。
- 偏執病 - 妄想を抱く。統合失調症のみを指す呼称ではない。
- 心気症 - 病気に罹っていると思い込む。
- 大麻精神病 - 大麻の使用により発症した精神病。
- 精神刺激薬精神病 - 覚醒剤などの使用により発症した精神病。
- 双極性障害 - 躁と抑うつを繰り返す気分障害。
- アスペルガー症候群 - 社会的なコミュニケーションが困難であるが、知的障害のない発達障害。
- 自閉症 - 社会性の障害、意思伝達能力の障害、こだわりの強さを示す発達障害。
- 注意欠如・多動性障害 - 不注意、過活動、衝動性を示す発達障害。
関連動画
関連項目
- 医学 / 薬学
- 抗精神病薬
- 妄想
- 幻聴
- 支離滅裂な思考・発言
- Qアノン
- カタトニア
- 集団ストーカー
- 糖質淫夢
- 糖質ブーム
- 岩MAD
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