剣一本でも
この目に留まる人々くらいなら何とか守れるでござる
緋村剣心(ひむら けんしん)とは、和月伸宏の漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の登場人物であり主人公である。
作中では緋村抜刀斎(ひむら ばっとうさい)の名でも呼ばれている。
概要
- 生年月日:1849年6月20日(本編開始時点で28歳)
- 身長:158cm
- 体重:48kg
- 血液型:AB型
- 星座:双子座
- 出身地:不明(関西地方の寒村?)
- 特技:口八丁
- 流派:飛天御剣流
- 装備:逆刃刀 →逆刃刀・真打
- 苦手なもの:薫の料理
不殺(ころさず)を誓い、刃と峰が逆になった特殊な刀・逆刃刀を振るって弱い人々を守る旅を続けていた流浪人。明治十年に東京を訪れ、縁あって神谷活心流道場に居候する。
見た目は赤い長髪を持つ矮躯の優男といった感じでとても強そうには見えないが、その正体はかつて幕末において、長州派維新志士として佐幕派の要人を数多く暗殺してきた伝説の剣客「人斬り抜刀斎」。
作中では敵と認識した者や絡んでくる悪漢を伝説の剣術「飛天御剣流」で"殺さない程度"に撃退していく。
普段は温厚な性格で、「~ござる」口調で喋る口癖があり、また女性に対しては「~殿」と敬称を付けて呼ぶ。(薫や燕など、一回り年下の女性であっても。)
しかし物語の初期から中盤にかけては、感情が昂ぶると人斬り時代の荒々しい性格が露になり、普段の剣心とは似ても似つかない好戦的な人物へと変貌、このとき「拙者」という普段の一人称も「俺」に戻っていく。そして上述の「不殺の誓い」の箍が外れた事で普段の剣心以上の凄まじい戦闘能力を発揮するようになる。
(もっとも一人称については、人斬りへ立ち戻る以外にも比古との再修業の際は普通に「俺」と呼んでいるし、人誅編でも人斬り抜刀斎が覚醒せずとも「俺」と呼ぶ場面があるが。)
そのため、「不殺の流浪人としての自分」と「人斬りの本来の自分」の間で心は揺れ続けており、刃衛や斎藤一からは「人斬り抜刀斎」としての本来の強さを求められていたが、京都編で翁に評されたように一度でも人を斬ったらもう不殺の流浪人には二度と戻れず、強敵との斬合いの中人斬りに立ち戻るたびにだんだんと自分の意思で流浪人に戻れなくなりつつある事、そして不殺の流浪人のままでは志々雄一派に到底刃が立たないジレンマに葛藤していくことになる。後にかつての師匠・比古清十郎から奥義の伝授と共に「生きる意志」を諭されたことで、この人斬りの人格は封印され、抜刀斎に立ち戻らずとも本来の全力を引き出す事に成功した。
トレードマークでもある、左頬の十字傷は「剣心の昔の恋人と、その恋人につけられた傷跡」。
演者について
- テレビアニメ版の声優は元宝塚歌劇団のトップスターである涼風真世。
- ラジオドラマ版は、“予定通り”の緒方恵美であった。
- 実写映画版のキャストは佐藤健である。
- 京都編ミュージカル版のキャストは小池徹平が務めている。
- 2023年のテレビアニメの声優は斉藤壮馬が務める。
モデル
幕末時代に実在した「人斬り彦斎」こと河上彦斎がモデルと言われる。モデルとなった河上彦斎も背が低く、しかも女性のような顔立ちをしていたという。
河上彦斎は本編には登場しないが『剣心皆伝』の企画「剣心再筆」で作者にデザインされており、戦い方が似ていることから抜刀斎と混同されることが多く、お互い迷惑だと思っていると設定されている。
(作中では他にも、原田左之助と相楽左之助の似たような関係の二人が存在する)
略歴
幼少時、両親を流行り病(コロリ)で喪い、野党に殺されかけたところを飛天御剣流の継承者である比古清十郎に救われ、以後弟子として剣術を叩き込まれながら山奥で暮らす。(ちなみに本来の名前は心太というが、比古と出会った際に「優しすぎて剣客にはそぐわない」との理由から剣心という名前を新たに授かり、以降は剣心の名で過ごす事になる)
やがて十四歳の頃に身につけた剣術を使って動乱を終わらせ人々を救いたいという強い気持ちから山を下りることを決心し、比古にその旨を伝えるも、意見が合わなかった為に喧嘩別れして下山。長州藩の奇兵隊に参加した折、圧倒的な剣術に目をつけた桂小五郎の求めに応じ、京都で幕府要人の暗殺に手を染める事になる。
幾多の命を奪い、最愛の人を喪い、左頬と心に消える事のない傷を負って自らの罪を悟った剣心は暗殺稼業を後に敵対する事になる志々雄真実に譲った後、幕臣達と戦う遊撃剣士として活躍。
鳥羽伏見の戦い以後、それまで使っていた刀を捨て、幕末の刀匠である新井赤空から託された逆刃刀に持ち替え、同時に「もう誰も殺さない(斬らない)」不殺の誓いを立て、各地を放浪する流浪人となり、本編第一話に至る。
その他の詳細は、原作やアニメ、Wikipediaなどを参照されたし。
飛天御剣流
かつて戦国時代に端を発し、一人対大勢の戦闘を想定して作られたとされる殺人剣(古流剣術)。飛天の名が示すとおり、天空へ飛び上がるほどの跳躍力や「神速」とうたわれるほどの超人的な体捌きが特徴で、作中では剣心以外にも彼の師匠・比古清十郎が使う。
時代時代の苦難から人々を守るために振るわれる、どの組織にも派閥にも属さずいかなる権力にも与しない自由の剣にして、「戦闘になれば、まず間違いなく加担した方に勝利をもたらす『陸の黒船』」である。
(しかし飛天御剣流の理を真に理解しないまま比古と別れた剣心は、当時の政治勢力の1つである長州派へと加わり、本人も意図しないまま権力に手を貸してしまう事となった。)
そして何より剣の技や身のこなし以上に、30代に入ってなお、10代20代と大して変わらないかなり若々しい容姿を保っているため、弥彦らが指摘するように飛天御剣流には若づくりの秘法があるのではないかと専らの語り草になっている。
高荷恵によると、飛天御剣流は比古のような頑丈な体躯と筋肉量をもってして初めて使える流派であり、小柄な剣心が使うには反動が大き過ぎるとのこと。剣心自身も志々雄一派との戦いの頃から体に異変を感じており、奥義である天翔龍閃の使用が体への負担をさらに加速させたことが示唆されている。
恵からは「普通に剣を振るい続ける分には問題ないが、飛天御剣流は確実にあと5年以内に打てなくなる」と告げられ、明治15年の時点では飛天御剣流のほとんどの技を使用できなくなっているとされていたが、北海道編の明治16年の時点で少なくとも九頭龍閃の使用までは可能である。ただし、薫、弥彦の両名から体力面の低下は指摘されており、九頭龍閃を短時間に連続で繰り出した結果、後で反動で苦しむ姿が描かれている。
詳細は『飛天御剣流』を参照。
逆刃刀
剣心の、不殺の誓いの象徴ともいえる愛刀。
幕末の動乱にて幾多の悲劇を乗り越えた末に、鳥羽・伏見の戦い後に人斬りから足を洗って流浪人になると告げた際に、刀匠・新井赤空から授けられた刀で、峰と刃が逆向きになっているのが特徴。刀を逆向きにしないと人を斬れず、また刀身の形状から抜刀術には向かないとされているが、剣心は難なく使いこなしている。
普通の斬撃が峰打ちになるので相手を殺さず無力化する事に特化した刀ではあるものの、それでも鉄の塊で殴られれば結構なダメージになったり相手を撲殺できるとは当時から突っ込まれていたが、「北海道編」にて「相手の戦力を削ぐのは勿論、絶対に殺さぬよう威力を精密に加減する」「その神髄を極めるには、実際に人を斬り殺す経験の重ねが必要」と解説されている。さらに飛天御剣流の修行では剣心は比古の絶妙な手加減を加えた技を実際に喰らってそこから体で学習した経験も下地になっていると思われるため、手加減の技術には長けているのだろう。
東京編の時点で剣心が持っている逆刃刀は赤空が「出来損ない」と称していたようにいわゆる影打で、続く京都編の最中に志々雄一派の瀬田宗次郎から真っ二つに折られてしまう。
その後生前の赤空が残した言葉の通り京都へ来た剣心は白山神社で刀狩の張との戦いの最中、御神刀として神社に奉納されていた赤空の最後の一振り、逆刃刀・真打を譲り受けた。
幕末という混迷の時代の中で後に退く事も留まって悩む事もできない中、平和な新時代のために殺人剣を作り続けた赤空の苦悩を現した、彼の辞世の句が茎に刻まれている逆刃刀・真打は赤空の技と魂、そして未来への祈りと生涯の全てを込めた究極の一振りである。
張が使用する殺人奇剣や志々雄の無限刃のような数々の殺人剣を作り出した果てに赤空が最後に辿り着いた刀は、刃と峰が逆になった見た目の単純な造形の刀剣というのも、人生を感じさせる。
この逆刃刀・真打は剣心の新たな愛刀となり、比古清十郎との再修業にて奥義を会得した際には剣心の「不殺の誓い」を体現するかのように飛天御剣流の師弟の運命すら打ち破った。また影打とは違いどんな攻撃を受けたり強敵と斬り合っても絶対に折れない強度を誇り、志々雄のアジトで迎えた宗次郎との再戦では宗次郎の剣を奥義で真っ二つにしている。
その後も振るわれ続け、最終話では弥彦が15歳の誕生日を迎えた元服の祝いとして、剣心から弥彦へ託されている。
作者によると、その後は剣心と薫の息子・剣路と明神弥彦と三条燕の息子である明神心弥が、逆刃刀の継承をめぐって対決する、というアフターストーリーがあったらしい。
OVA作品「星霜編」では元服の祝いとして15歳になった剣路が弥彦から受け継いでいる。
「北海道編」では弥彦から再び剣心へと返却され、北の大地で新たな敵相手に再び戦いのため振るわれ続けている。
ちなみに作中で剣心が所有している逆刃刀は上述の通り新井赤空によるオーダーメイド品だが、2023年に放送された新アニメ版では剣心曰く値段が「結構するでござるよ」と、逆刃刀を購入するための資金を稼ぐために赤べこで働いている弥彦に語っている。逆刃刀を打てる刀匠が数多くない事を考えての発言なのかもしれないが、売却すると二束三文にもならないらしい。
なおフィクションの刀と思われがちだが、現実でも2013年に千葉県白井市の旧家から峰と刃が逆になっている小刀が発見されたことが翌年2月に発表され、ネット上で一時期話題になった。
また2021年には、『るろうに剣心』25周年を記念して東京ドームシティで開催されたるろうに剣心展で、無鑑査刀匠である尾川兼國氏が製作した、逆刃刀・真打の完全再現品が展示された事がある。
ネット上でのネタなど
- ニコニコ動画では海外版「るろうに剣心」の空耳で有名であるが、動画をアップロードすると新撰組がやってきて悪・即・斬の信念の下に切り捨てられる模様。
- ニコニコ動画などのネットカルチャーにおいては、蓬莱山輝夜、ベジータなどと並んでニートネタが多い。
- 実写版では、後半かなり流血戦となっているにもかかわらず、着物は終盤のシーンで新品同様に綺麗になっている。実写版剣心の御剣流には秘法の洗濯術や裁縫技術があるのだろうか?
余談
- 育ての親でもある師匠・比古清十郎曰く「最後に寝小便垂れたのは11歳の秋」(旧アニメ版では「8歳の秋」に変更されている)、「飢えのあまりワライダケ食って笑い死にしかけた事がある」。
- 上述の通りニートネタが定着してしまっているように、流浪人として全国を流れていたからかお金に対する執着が無く、作中では神谷道場の食客あるいは専業主夫として生活しつつも、定職に就いたり金銭を得ている様子が無い。本編時点では黒笠や志々雄討伐は明治政府から正式に依頼されている仕事なので、作中で描かれていない部分でそれなりに報酬は得ていると思われる。だが一人旅の際もお金は多く持ち歩いておらず、逆刃刀・真打を手にしたあと誰も巻き込まないためにと葵屋を無言で出ようとした時は翁に「料亭に他人をタダで停める筋合いはないから」と十日間の宿泊代を請求され石になってしまった。(ちなみにこの時請求された滞在費の七円五十銭は、現代の日本円の価値で約15万円前後とされる)
「北海道編」では弥彦から「剣心がキチンと働けば神谷道場の金銭面は改善する」とハッキリ指摘されてしまったが、由太郎が塚山商会の若旦那として神谷道場の金銭事情を支えてみせると宣言しているので、専業主夫を務めながらも生活にはさほど困っていないらしい。 - 「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」で知られる所謂ジャイアニズムという言葉の元祖でもある。ちなみにこの言葉を最初に発したとき左之助は「オレのものはオレのもの」から先に言っているので厳密には異なるかもしれないのだが。
関連動画
関連静画
関連項目
|
親記事
子記事
兄弟記事
- 赤末有人
- 阿武隈四入道
- 石動雷十太
- 戌亥番神
- 夷腕坊
- 魚沼宇水
- 鵜堂刃衛
- 御庭番衆
- 柏崎念至
- 神谷薫
- 刈羽蝙也
- 外印
- 駒形由美
- 斎藤一(るろうに剣心)
- 相楽左之助
- 佐渡島方治
- 沢下条張
- 三条燕
- 志々雄真実
- 四乃森蒼紫
- 十本刀
- 瀬田宗次郎
- 尖角
- 高荷恵
- 武田観柳
- 塚山由太郎
- 月岡津南
- 比古清十郎
- 飛天御剣流
- 不二(るろうに剣心)
- 二重の極み
- 本条鎌足
- 巻町操
- 明神弥彦
- 悠久山安慈
- 雪代縁
- 雪代巴
- るろうに剣心(実写映画)
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-
▶もっと見る
- 7
- 0pt