総大主教(グランド・ビショップ)とは、キリスト教における総大司教ないしは総主教の和訳のひとつである。本項では小説「銀河英雄伝説」に登場する地球教の教主について述べる。
CV.大宮悌二(石黒監督版OVA第1期・第2期)、塾一久(Die Neue These)
概要
地球教の最高権力者であるひからびた皮膚を持つ老人。常に「総大主教」としか呼ばれないため本名が不明。地球の衰退ぶりを嘆き、かつてのようにすべての人類に崇拝される地位を占めるのが正義であるという妄執に取り憑かれている。
「帝国と同盟をあい争わせ、フェザーンの経済力をもって世俗面を、地球教の信仰をもって精神面を支配する」という遠大な構想は彼より数世紀前の地球教団指導部が立案したものであるが、アムリッツァ星域会戦の結果を踏まえ、両三年中には地球を見捨てた者たちに思い知らせることができると分析していた。
他の地球教の聖職者同様に黒衣を纏っているが、「黒衣によってようやくその存在が視覚化しうる。それほど存在感を欠く」「立体映像ではないか」と思わずユリアン・ミンツが疑ってしまうほどに存在感がない。だが、地球教徒たちにとってはそうではないらしく、高位聖職者であろうと彼が現れると即座に拝跪し、一般信徒はそのご尊顔を拝して「一生に一度あるかどうかですぞ。なんと、望外のこと……」と感涙するほどである。それが彼個人の人望によるものか、あるいは地球教の首位を占める権威によるものかは判然としないが、少なくとも教徒たちからは団結の核として「われら信徒すべてに、教理と慈悲をあたえたもう御方」と語られ、その慈悲は位階を問わず信徒全てに平等に及ぶと信じられていた。
信仰心が強いが現実感覚もそれなりに有しており、ルビンスキーの才幹と覇気を警戒して「裏切るなよ」と脅す一方で、「掌のうえで踊る限り、どんなかたちで舞おうと意に介するにおよばぬ」とこともなげに言って宥め、高位聖職者から嫌われていたド・ヴィリエの権謀術数を評価して教団内で自身に次ぐ地位を与えていることからもうかがえる。
新帝国暦1年、キュンメル事件での皇帝暗殺失敗から続く帝国軍の来襲で、本部ごと自爆して死亡。その後、生き残ったド・ヴィリエが勢力を再建するための求心力を得るため、白痴の人間を洗脳して総大主教の影武者とするかたちでその権威と人望を利用された。
関連人物
- ド・ヴィリエ - 大主教・総書記の地位を与えて重用していたが、本質に気づいていたかは不明。
- デグスビイ - ルビンスキーの監視を任せていた主教。彼の口から秘密が漏れないか懸念していた。
- アドリアン・ルビンスキー - その才幹と覇気を警戒しており、彼からも強く警戒されていた。
- アウグスト・ザムエル・ワーレン - 地球教本部を襲撃した帝国軍の司令官。
関連項目
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