翔んで埼玉とは、魔夜峰央による漫画、ならびに同作品を原作とした実写映画である。
概要
1982年、漫画雑誌『花とゆめ』(白泉社)にて連載された漫画。計3回にわたって連載されたが、作者が埼玉県から引っ越ししたため、未完のまま中断となった。
その後、1986年に短編集『やおい君の日常的でない生活』で単行本化された。
そこから約30年後の2015年、SNSやテレビ番組を通じて本作の内容が拡散され、宝島社より復刊。これがヒットし、2019年2月22日には実写映画化にまで至っている。映画の詳細は後述。
あらすじ
出生地による差別が公然と行われている仮想日本。
日本最大の都市・東京都もその例外ではなく、赤坂・青山住民は贔屓される一方、八王子や多摩、都外の住民は見下されていた。特に埼玉県人の扱いはひどいもので、東京都へは通行手形がないと立ち入ることができない有様だった。
都内名門私立高校・白鵬堂学院では、出生地によってクラス分けがされている。都知事の息子で生徒会長の白鵬堂百美(映画では壇ノ浦百美)は豪勢な教室のA組、ヒエラルキー最下層の埼玉県人はオンボロ教室のZ組といった具合である。
そんな白鵬堂学院A組にアメリカからの帰国子女・麻実麗が転入してくる。当初は麗の鼻持ちならない態度に反発していた百美だったが、彼と関わっていくうちに麗を特別な存在だと意識し始める。
しかし麗は隠れ埼玉人で、手形制度撤廃を目論む「埼玉解放戦線」の主要メンバーだった。その正体が世間にバレて逃避行を始める麗に、百美は富も名誉も捨てて付き従っていく。
映画
翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ | |
基本情報 | |
---|---|
監督 | 武内英樹 |
脚本 | 徳永友一 |
音楽 | Face 2 fAKE |
製作 | 「翔んで埼玉」製作委員会 |
配給 | 東映 |
公開 | 2023年11月23日 |
上映時間 | 117分 |
映画テンプレート |
原作が復刊した2015年、『電車男』『のだめカンタービレ』でタッグを組んだ若松Pと武内監督によって本作の映画化が持ち上がった。
未完の原作を映画化するということで、映画では原作の続きも描くことになった。そのため原作にはないオリジナル要素も盛り込まれている。
地域ネタが不快ではなく愉快なものになるよう、配役や舞台セットをぶっ飛んだものにしたり、物語を現代のカーラジオから都市伝説を伝え聞くという体にしたりしている。そうすることで、作品がリアルではなくフィクションであることを観客に印象づけている。
公開前には上田清司・埼玉県知事(当時)に関係者一同が表敬訪問を行い、詫びを入れて公認を得ている。更に封切日には協賛企業「トキタ種苗」からの提供で、県内の上映館にて「そこらへんの草」もとい「県民が愛する高級野菜」(ルーコラ・セルバーティカ)の種が先着1万名に配布されるなど、割とノリノリの反応を見せた。
第43回日本アカデミー賞において、同回最多となる12の部門で優秀賞を受賞。
イタリアの「ウーディネ極東映画祭」においても上映され、ネット投票による観客賞を受賞している。武内英樹監督にとっては『テルマエ・ロマエ』シリーズの2作に続く3度目の受賞。
2019年8月25日、埼玉県知事選挙の啓発広告として本作が採用。投票率が16年ぶりに30%台に回復するという驚きの結果をもたらした。
この影響を受けてか、同年10月27日の参議院埼玉県選挙区補欠選挙でも採用されている。
2020年2月8日、『土曜プレミアム』にて地上波初&ノーカット放送。案の定大いに話題を集め、当日のTwitterトレンド入り(世界1位)を果たした。
なおこれに際し、GACKTはTwitterにて以下のように反応している。
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https://twitter.com/GACKT/status/1226415732008767488
2021年8月11日、続編の制作が発表された。タイトルは『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』。主演のGACKT・二階堂ふみ、メインスタッフは続投となる。2022年公開予定だったが、発声障害によるGACKTの芸能活動休止に伴い、撮影も一時中断。その後、芸能活動再開に伴って撮影も再スタートし、2023年11月23日に劇場公開。
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主な登場人物(映画)
伝説パート
- 麻実麗(あさみ れい) / 演:GACKT(沖縄県出身)
- 本作の主人公。名前の印象とは違い、男性である。
- アメリカへの留学を経て、白鵬堂学院へ転入。その圧倒的都会オーラは、都知事の壇ノ浦家にも目をかけられるほどである。
- しかしその正体は埼玉県の大地主・西園寺家の子息で、手形制度撤廃を求めて暗躍する埼玉解放戦線の主要メンバーだった。
- 壇ノ浦百美(だんのうら ももみ) / 演:二階堂ふみ(沖縄県出身)
- 本作のもうひとりの主人公。名前の印象とは違い、男性である。
- 都知事の息子で、その家柄から白鵬堂学院トップのヒエラルキーに降臨する。
- 特に埼玉県人に対する差別は苛烈だが、麗と関わるうちに考えを改めていく。
- 壇ノ浦建造(だんのうら けんぞう) / 演:中尾彬(千葉県出身)
- 東京都知事。父として、息子・百美を厳しく育て上げた。
- 崎陽軒のシウマイが好きで、醤油入れの「ひょうちゃん」を蒐集している。
- 壇ノ浦恵子(だんのうら けいこ) / 演:武田久美子(東京都出身)
- 建造の妻で、百美の母。
- 建造との夫婦生活にマンネリを感じており、執事の阿久津とは「ただならぬ関係」にある。
- 阿久津翔(あくつ しょう) / 演:伊勢谷友介(東京都出身)
- 壇ノ浦家の執事。しかしその正体は手形制度撤廃を訴える千葉解放戦線のリーダー。
- 武闘派の埼玉解放戦線とは異なり、東京都に媚びを売ることで目的を達しようとしている。
- 埼玉デューク(さいたま ―) / 演:京本政樹(大阪府出身)
- その圧倒的なオーラにより東京都の上流階級に間違えられる、伝説の埼玉県人。
- 手形制度撤廃を叶えるべく、東京都でクーデターを引き起こそうとしたが、何者かにそれを防がれて以降は行方不明となっている。
- 西園寺宗十郎(さいおんじ そうじゅうろう) / 演:麿赤兒(奈良県出身)
- 埼玉県の大地主で、麗の父親。白い肌に厳つい目つきの風貌。
- 埼玉解放戦線のリーダーとして、着々とメンバーを東京都中枢に潜伏させている。
- 神奈川県知事(かながわけんちじ) / 演:竹中直人(神奈川県出身)
- 神奈川県の県知事。都知事の建造とは蜜月の仲で、ご機嫌取りに建造の好きな崎陽軒のシウマイを贈っている。
- おかよ / 演:益若つばさ(埼玉県出身)
- 麗の家政婦。
- 下川信男(しもかわ のぶお) / 演:加藤諒(静岡県出身)
- 白鵬堂学院Z組の埼玉県人。
以下、二作目『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』からの登場人物。
- 桔梗魁(ききょう かい) / 演:杏(東京都出身)
- 二作目のもう一人の主人公。男性である。
- リーダー・和歌山の姫君が軟禁されているなか、滋賀解放戦線をまとめあげる。
- 嘉祥寺晃(かしょうじ あきら) / 演:片岡愛之助(大阪府出身)
- 大阪府知事で、神戸市長の夫。ちなみに演者側(藤原紀香)でも夫婦の関係にある。
- 元大阪府知事である母の無念を晴らすべく、日本大阪化計画を遂行する。
- 神戸市長(こうべしちょう) / 演:藤原紀香(兵庫県出身)
- 兵庫県神戸市の市長。嘉祥寺の妻。ちなみに演者側(片岡愛之助)でも夫婦の関係にある。
- 京都市長とはただならぬ関係にある。
- 京都市長(きょうとしちょう) / 演:川崎麻世(京都府出身)
- 京都府京都市の市長。洛外の人間は京都市民ではないと見下している。
- 神戸市長とはただならぬ関係にある。
- 元大阪府知事(もとおおさかふちじ) / 演:モモコ(ハイヒール)(大阪府出身)
- 元大阪府知事で、嘉祥寺の母。
- 祭壇の水晶玉に怨念を込め、後を嘉祥寺に託した。
- 京都の女将(きょうと―おかみ) / 演:山村紅葉(京都府出身)
- 京都市の洛中にある料亭の女将。
- 建前と本音を巧みに使い分けている。
- 和歌山の姫君(わかやま―ひめぎみ) / 演:天童よしみ(和歌山県出身)
- 滋賀解放戦線のリーダーだが、嘉祥寺によって拉致・軟禁されており、嘉祥寺の水晶玉によって姿が変えられている。仮の姿はトミコ・クレア(アメリカ出身)が演じる。
- 白浜は和歌山の姫君の祈りの力によって白さが保たれている。
現代パート
- 菅原好海(すがわら よしみ) / 演:ブラザートム(ハワイ州出身、埼玉県育ち)
- 菅原家の世帯主。埼玉県への郷土愛はとても深い。
- 好海はもともとサーファーで、九十九里まで行きサーフィンをしていた。
- ただその名前とは裏腹に、埼玉県には海がないのである。
- 菅原真紀(すがわら まき) / 演:麻生久美子(千葉県出身)
- 好海の妻。千葉県出身。
- 好海がサーフィンやっていたら溺れてしまい、真紀に助けてもらった。それが縁で付き合いが始まり、好海と結婚をする。
- 普段は優しいが、千葉県のことを馬鹿にすると豹変する。
- 菅原愛海(すがわら あいみ) / 演:島崎遥香(埼玉県出身)
- 好海・真紀の娘。埼玉県への郷土愛はなし。結納を期に、東京へと移り住もうと計画している。
- 「愛海」という名は(特に父・好海が)埼玉県にはない「海への想い」が深まりすぎてつけられたものと思われる。
- 五十嵐春翔(いがらし はると) / 演:成田凌(埼玉県出身)
- 愛海の婚約者。埼玉県浦和市在住。
- 浦和に本拠地を置く某サッカーチームのことを応援している。
以下、二作目『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』からの登場人物。
- 内田智治(うちだ ともはる) / 演:アキラ100%(埼玉県出身)
- 内田家の世帯主。さいたま市の市役所職員。
- 熊谷の綱引き大会の運営に携わっており、浦和代表と大宮代表が対決しないよう奔走している。
- 内田直子(うちだ なおこ) / 演:和久井映見(神奈川県出身)
- 智治の妻。滋賀出身の両親を持つ。
- 若月依希(わかつき いの) / 演:朝日奈央(埼玉県出身)
- 智治と直子の娘。若槻健太の妻。
- 赤ちゃんを身ごもっており、名前に悩んでいる。
- 若月健太(わかつき けんた) / 演:瀬戸康史(福岡県出身)
- 依希の夫。熊谷の綱引き会場へ一人向かっている。
スタッフ
プロデューサー以外、第一作・第二作共通である。
- 原作:魔夜峰央「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」(宝島社)
- 製作(第一作):石原隆、村松秀信、遠藤圭介
- 製作(第二作):大多亮、吉村文雄、川原泰博
- プロデューサー:若松央樹、古郡真也
- 監督:武内英樹
- 脚本:徳永友一
- 音楽:Face 2 fAKE
- 撮影:谷川創平
- 編集:河村信二
- 美術:棈木陽次(棈は「木へんに青」の表記)
- 人物デザイン監修/衣裳デザイン:拓殖伊佐夫
- 制作プロダクション:FILM
- 製作:「翔んで埼玉」製作委員会(フジテレビジョン、東映、テレビ埼玉)
- 配給:東映
主題歌・挿入歌
第一作
- 主題歌『埼玉県のうた』
- 作詞・作曲・歌:はなわ / 編曲:小林俊太郎
- 挿入歌『なぜか埼玉』
- 作詞・作曲:秋川鮎舟 / 編曲:小谷充 / 歌:さいたまんぞう
- 挿入歌『人生たまたま…さいたまで』
- 作詞:島崎伸一 / 作曲・編曲:さくまひでき / 歌:さくまひでき と ゆうかりしずる
- 挿入歌『山田うどんの歌』
- 作詞・作曲:鬼塚公仁、菊池淳介、村上雄信 / 編曲:鈴木俊介 / 歌:かかし
第二作
- 主題歌『ニュー咲きほこれ埼玉』
- 作詞・作曲・歌:はなわ
- 挿入歌『人生たまたま…さいたまで』
- 作詞:島崎伸一 / 作曲・編曲:さくまひでき / 歌:さくまひでき と ゆうかりしずる
- 挿入歌『埼玉県歌』
- 作詞:岸上のぶを / 補作:神保光太郎 / 作曲:明本京静
- 挿入歌『かけっことびっこ』(平和堂イメージソング)
- 挿入歌『琵琶湖周航の歌』
- 作詞:小口太郎 / 作曲:吉田千秋 / 歌:加藤登紀子
余談
2020年1月~2月に開催のGACKTの全国ツアー「GACKT 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2020 KHAOS」において映画版とのまさかのコラボが実現し、「埼玉県民限定席」が登場。通常指定席1万円のところ、なんと3100(サイタマ)円という驚きの安さである。
埼玉県民を対象としているだけのことはあり、席は各フロアの最後列、埼玉県民専用の入場口が隔離用に用意され、「埼玉県民専用」とプリントされたルミトン(光る棒)がついてくるという代物。
勿論身分証明(コピー不可)による本人確認が必須で、「埼玉県民である」と証明されなければならない。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
外部リンク
- 映画『翔んで埼玉』公式サイト
- 映画『翔んで埼玉』公式X(Twitter)(@m_tondesaitama)
- 2019年2月22日(金)公開 映画『翔んで埼玉』プレイリスト - YouTube東映映画チャンネル
- 11月23日(木・祝)公開『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』プレイリスト - YouTube東映映画チャンネル
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