翼竜とは、恐竜ではない。
概要
爬虫綱 翼竜目に分類される絶滅した爬虫類である。プテラノドンの仲間といえば分かりやすいだろうか。
特徴
大きさは小鳥サイズから翼を広げると10mを超えるものまで様々である。
飛行するための適応の一つとして、大きさの割に体重は非常に軽く、翼を広げた大きさが最大で12mに達するケツァルコアトルスでも重めに見積もった計算でも成人男性約3人分、軽めに見積もった場合成人男性約1人分ほどの体重しかないと推定されている。これは骨が空洞になっていることが大きい。なお、近縁な恐竜や鳥類も骨が空洞になっていて、そこには気嚢(高効率な呼吸システム)が備わっているのだが、翼竜にも気嚢があったかは今のところ不明である。
翼はコウモリに似た構造になっていているが、前肢の五本の指の間に皮膜を張っているコウモリと違い、翼竜は薬指と胴体~後肢の一部にかけて皮膜を張っている。飛行の自由度ではコウモリに劣っていたと考えられているが、鳥類やコウモリと違い翼には親指・人差し指・中指が存在し手として使用することができた。なお小指は退化している。
類縁関係
翼竜を指して空飛ぶ恐竜などと呼ぶ例がまま見られるが恐竜ではない。大事なことなので二回言いました。
そもそも、空飛ぶ恐竜というものが当てはまるのは鳥類の方である(分岐分類学的には鳥類は恐竜に含まれるため。近年では通常の恐竜を指して非鳥類型恐竜と呼ぶこともある)。だが翼竜と恐竜は分類学上は非常に近い生物であることは確かであり、現生の動物の中で一番近い生き物は鳥類である。ちなみに、次に近いのはワニの仲間。
歴史
三畳紀以前に恐竜と分岐したと考えられている。ジュラ紀には小型の翼竜が多く存在したが、白亜紀になると大型のものしか姿が見えなくなる。これは同時期に生まれた鳥類との生存競争に敗れ、鳥と生存域が被らないように進化したためとも考えられている。
最期は約6500万年前の巨大隕石の衝突により、恐竜やその他の多くの大型爬虫類らと運命を共にし絶滅した。
主な翼竜
- プテラノドン
- ザ・翼竜オブ翼竜。翼竜といえばまずこの名前を思い浮かべる人も多いだろう。
- 頭の後ろに長く突き出たとさかが特徴。知名度の高さから恐竜がらみの創作作品にはよく登場する。
- 最初の化石が発見されたのは1870年。発見者は多数の恐竜の化石を発掘したことで有名な古生物学者マーシュ。
- 翼開長は8~9m。白亜紀に生息。
- 詳細は個別記事『プテラノドン』参照。
- プテロダクティルス
- 世界で最も早く報告された翼竜。その発見の報告は1784年にまでさかのぼる。命名は1809年に行われた。
- 翼開長は50~75cm。ジュラ紀に生息。
- ランフォリンクス
- 嘴から牙が飛び出しているという深海魚の如き凶悪そうな口を持っていたとされる翼竜
- 身体自体はかなり小型だが、取り分け異様に長い尻尾を持っていたとされ、これをバランサーにしていたと言われている。
- 翼開長は40cm~170cm。ジュラ紀に生息。
- ディモルフォドン
- 陸生の肉食恐竜にも見える爬虫類的な頭部を持っていた小型の翼竜。
- 発見者はあのプレシオサウルスやイクチオサウルスなども発見したというメアリー・アニング女史で、当初は上記のプテロダクティルスの一種だと思われたが、後に新種だという事が判明した。
- 翼よりも後脚の方が発達していたという事実から飛行は苦手で、翼を地面に付けての四本足で陸上移動が主だったのではないかと考えられている。
- 翼開長は1m。ジュラ紀に生息。
- ニクトサウルス
- プテラノドンと同時期に生息していた中型の翼竜だが、本種にはプテラノドンには無いスゴイ特徴があった。
- その特徴とは頭に生えたすごくデカくて長い鶏冠である。どれだけその鶏冠が長かったというと下手すれば自身の身体と同じくらいかそれよりもあるんじゃないかというくらい長大だったとされている。
- 本種の存在自体はかねてより知られており、当初は鶏冠のない普通の翼竜と思われていたが、最近の化石調査でこの事実が明らかとなった。化石では樹の枝のような形状だったが、一説には膜が張ってあったとか、性差や年齢で有無に違いがあったなどとも言われている。
- 翼開長は3m。白亜紀に生息。
- プテロダウストロ
- 南米地域に生息していたという翼開長130cmほどの小型翼竜。
- 本種最大の特徴と言えるのが下顎にブラシ状の歯がびっしり生えたヘアピンのようにしゃくれた奇抜な口で、その事からヒゲクジラやフラミンゴと同じく水中の小生物を濾し取って食べるという生態だったのではと推測されている。
- 翼開長は130cm。白亜紀に生息。
- ケツァルコアトルス
- 上でも名前が出てきた最大級の翼竜。発見は1975年。名前はアステカの神ケツァルコアトルにちなむ。
- 地球の歴史上最大の飛行する生物と考えられていたが、現在ではケツァルコアトルスを上回る可能性がある翼竜が発見されている。
- 翼開長は10~11m。白亜紀に生息。
- ハツェゴプテリクス
- 2002年に発見された最大級の翼竜。ケツァルコアトルスと同じアズダルコ科に属す。
- 特徴として骨ががっしりとして重い。翼竜にあるまじき骨を持った翼竜である。
- 翼開長は10~12m。白亜紀に生息。
巨大翼竜は本当に飛べたのか?
翼竜のあまりの巨大さに常に付きまとう疑問である。
近年でも東京大海洋研究所の佐藤克文准教授がこの話で一冊本を書いている。本の中では現代の海鳥との比較を通して、巨大翼竜はその巨体ゆえに飛行できないとの結論を出している。
またその一方で、近年の研究にはこれまで考えられていた木の上や崖から飛び出し滑空するという翼竜のイメージを大きく壊すものもある。
古生物学者マイケル・ハビブらは翼竜の飛行は現在の鳥とは大きく違う可能性があり、現在の鳥を参考に「巨大翼竜は飛べない」との結論を出すのは間違っていると主張している。彼らの研究によると巨大翼竜はこれまで考えられていたものよりもずっと筋肉質で重く、地上からその筋力を使って4本の手足で自分の身体を空中に打ち出し、それから羽ばたいて飛行していたという。
もちろん、上記の研究を否定し、従来通りの翼竜像を保持する研究もなされており、これからの更なる研究結果の発表が期待される。
創作の中の翼竜
恐竜が登場する冒険小説などにはよく登場する。恐竜小説の元祖『失われた世界』にもプテロダクティルスが登場しており、物語のクライマックスにおいて重大な活躍を果たしている。
特にプテラノドンが登場する場合、空から主人公一行を襲い、仲間をつかんで空へ連れ去るのが定番である。このイメージは古典SFから2015年の映画『ジュラシック・ワールド』にまで引き継がれている。
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