耳コピ(耳コピー)とは、音楽を耳で聴いてコピーする(=演奏を再現したり楽譜を起こす)作業・技術である。タグとして用いられる場合は、「全ての音を忠実に拾い、原音と同じような音色で演奏した」という意味である。
概要
楽器演奏者やDTM愛好家の間で用いられる俗語。バンドスコアなど譜面を見て各パートをコピーする行為に対して、「聴き取り」によるコピーを指す言葉として普及した。聴音とも言い、音楽大学などアカデミックな場面では試験として課される。
俗語なので明確な定義はないが、一般的には、「楽譜等を使わず、完成された音楽を聴き、楽譜を記譜したり楽器で演奏する作業または音楽技術」のことを指す。パートにもよるが、本格的な耳コピにはある程度の音感なり、音楽知識なりが必要とされる。
耳コピした音を譜面に書き起こすことを「採譜」という。市販されているバンドスコアなどは、専門のプロが耳コピして採譜しているもので、元のバンドやアーティストが直接スコアを提供しているわけではないので、しばしば譜面に誤りがあったり解釈違いがあったりする。また、通信カラオケや着メロといった分野でも、専業の職人たちが耳コピを行い、元オケを再現している。
なお、CD等を聞いて歌詞のテキストデータを作成する作業を耳コピと呼ぶこともある。英語のヒアリングが弱い人による洋楽歌詞の耳コピは空耳歌詞になりがち。
元曲のある歌ってみた・演奏してみた・VOCALOID・MIDI動画などでは、動画中や作者コメなどで特に明示されなくても、多かれ少なかれ耳コピを用いていると思われるが、「耳コピ」を動画タイトルやタグとして明示する場合は、「原曲の全ての音を忠実に拾い、それを同じような音色で演奏した」事を強調する目的の事が多いだろう。
耳コピの手順
音楽理論のとてもいい加減な要約です。もっと具体的な事は自分で本を購入して勉強して下さい。
準備
音楽制作ソフトの耳コピ支援機能や、専用の耳コピ支援ソフトに搭載されている、範囲再生とか減速再生とかイコライザーとかボーカルキャンセラーやらがあるととても非常に便利。ぜひ用意しよう。
1. テンポの特定
曲とメトロノームを合わせてみるとか、曲の小節数を数えてみて演奏時間をそれで割ってみるとかすればいいだろう。
ただし、市販されている曲やDTMではきちんと定められたテンポの事が多いが、生演奏の場合はある程度テンポがゆらぐものなので、あまり厳密に測定しようとしない事。
2. キー(調)の特定
メロディの最後に出てくる音はキーのルートである事が多いので、その音と手持ちの楽器の音とを比べ音名を特定する。メロディの最後がルートでない場合もあるが、たいていルートから3度か5度の位置にある音なのでそちらも疑ってみる。ルートを特定できればそれがその曲のキーとなる。絶対音感があると楽器を準備する必要がないのでほんの少しだけ有利。
先にコードが特定できるようならば、解決進行(V7->I)を探す方がより確実にキーを特定できる。
C(ハ長調)から離れたキーでの演奏が困難である金管楽器や木管楽器を含むオーケストラや吹奏楽などの曲では、Cに近いキー(C,G,F,Am,Em,Dm…)である事が多いのに対し、移調の得意な楽器を多用するポップミュージックや、調の縛りのない打ち込み音楽(DTM)ではキーは割りと自由に定められている。半音下げチューニングを売りとするバンドの曲は基本的なキーからことごとく半音ずつ下だったりするので注意する。
3. スケール(音階)の特定
明るい感じのする曲ならメジャースケール(長音階)、悲しい感じの曲ならマイナースケール(短音階)でたいてい間違いないが、不思議な感じのする曲では別のスケール(ブルース・スケールや日本の陽音階・陰音階など)を疑ってみる。
キーとスケールが特定できれば、その音階から外れた音は曲中にあまり出てこないはずなので、音探しが容易になる。例えば、Cメジャー(ハ長調)の曲ならば、ドレミファソラシド以外の音が出てくることはあまりない。出てきた場合は違和感を覚えるはずなので、音の特定が容易になる。
4. コード(和音)進行の特定
ギターやキーボードがあるなら、その曲に対し伴奏をつけてみてぴったりと合うコードを抜き出していく。先にメロディだけを拾い出しておいて、それにコードをつけていくという手もあり。また、ベースは基本的にその場のコードのルートを演奏するものなので、ベースの音を先に拾ってしまえば、コード進行の特定が容易になる場合もある。
簡単な曲ではメジャー・コード(長三和音)・マイナー・コード(短三和音)とドミナント・セブンス・コード(属七)だけで構成されている事もしばしばだが、オシャレっぽい響きならばメージャー・セブンス・コード(長七)とかadd9とかsus4とかを疑ってみる。不協和音っぽい響きならディミニッシュ(dim)とかオーギュメント(aug)とかをチェック。
実際はキーとスケールが分かっていれば使用されるコードの種類はおおよそ見当がつくし、そうでない場合も代理和音の範囲に収まる事が多い。ケーデンスの法則とかII-V (ツーファイブ) とかを知っているとコード進行からコードを探す事もできる。そんな裏技が…と思う人は大人しく音楽理論の本を入手する事。
5. 各パートの音の特定
手持ちの楽器やDTMで耳コピ中のパートと同じ楽器の音を出してみて音を比較しながら進めるのがよい。
フレーズ中で長く演奏される音はたいていその部分のコードの構成音か、そのコードと相性のいい音である。他方、短い音はスケールやコードから外れた音でも構わない。具体的にどの音?とか思うんだったら音楽理論の本を(ry。また、実際の楽器の演奏では距離の離れた音を演奏する事は難しい事が多いので、前後の動きからある程度演奏される音の見当をつける事もできる。
オーケストラや吹奏楽などでは、特定のパートの音の響きを補うために、同音やオクターブ違いの音や完全5度上の音を重ねるという手法があるが、この場合は音がよく溶け込んでしまいパート毎の特定が難しくなる。迷子のパートがいる場合、疑ってみるといいだろう。
なお、ドラムパートはキーやスケールの制約を受けないので、音楽理論はあまり助けにならない。自力で頑張るべし。
音楽理論について
音楽理論とは、音楽を聞く上で誰もが何となく知っている事(例:ハ長調の曲はドで終わる事が多い)を、書き下してくれているものと考えればよい。もちろん、その背景には数学的・心理的な理由があるのだが、市販の本ではそのような事にはあまり触れず、実用を第一とした構成になっている本が多いようである。下のニコニコ市場に示されている「耳コピの本」においても、少なからず音楽理論についての記載があると思われるので、耳コピや音楽の実力を高めたいと思うのならば、実際に手にとって読んでみるのがいいだろう。
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