職務専念義務とは、労働に関する言葉である。
概要
定義
労働者に対して勤務時間のすべてや職務上の注意力のすべてを労務提供のために用いるように義務づけることを職務専念義務という。
公務員の職務専念義務
国家公務員法第96条 すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
地方公務員法第30条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
①職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
地方公務員法第35条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
自衛隊法第60条 隊員は、法令に別段の定がある場合を除き、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用いなければならない。
私企業の労働者の職務専念義務
私企業の労働者に対して職務専念義務を課す法律は日本に存在しない。
ただし、私企業においても、労働者と使用者が合意して結ぶ労働契約や使用者が定める就業規則によって労働者に職務専念義務を課すことが多い。
また、私企業においても、一般的な社会常識の1つとして労働者に職務専念義務を課すことを当然視することがある。
効果
労働者に職務専念義務を課すと、単位時間内の労働支出が増えて労働強化が達成される。労働時間が一定なままで職務専念義務が遂行されて労働強化が達成されるのならその職場の生産量が増える。
実質GDP(Y)を「労働者数×労働時間」で計算できる労働量(L)で割った数値を労働生産性Y/Lという。労働者数や労働時間が一定なままで職務専念義務が遂行されて労働強化が達成されるのなら、労働量(L)が一定で実質GDP(Y)が増えるから労働生産性Y/Lが上昇する。
職務専念義務の免除
職務専念義務を免除することを職務専念義務免除とか職専免とか職免という。
公務員に対して職務専念義務免除を行うときは法令や条例で定める必要がある。私企業の労働者に対して職務専念義務免除を行うときは労働契約や就業規則や労働協約で定める必要がある。
職務専念義務免除の例としては、産前産後休暇、育児休暇、生理休暇、勤務時間中にトイレに行くこと、年次有給休暇、などが挙げられる。
職務専念義務の遂行を支援するもの
効率賃金仮説
企業経営の思想の1つとして効率賃金仮説というものがある。「賃金を増やすと労働者が上司の目を盗んで仕事をサボることをしなくなる」という考えで、賃金の上昇が労働者の職務専念義務の遂行を生み出すという考え方である。
年功主義と解雇規制
賃金に関する思想の1つとして年功主義(年功序列)というものがある。また解雇に関する制度の1つとして解雇規制というものがあり、解雇規制によって生まれる雇用形態を終身雇用という。
これらの思想や制度は、使用者の権力を大きく制限するものである。これらの制度を導入すると労働者は「使用者の機嫌を損ねると賃金を減らされたり解雇されたりする」とおびえなくなり、使用者の顔色をうかがわなくなり、気骨ある労働者になり、注意力のすべてを労務提供に振り向けるようになり、職務専念義務を十分に遂行できるようになる。
日本の公務員の賃金体系は年功主義を堅持しているが、それは公務員に職務専念義務を遂行させるためである。
副業の禁止
労働者に対して副業を禁止すると、勤務時間中に副業のことを考える可能性が無くなり、勤務時間において注意力のすべてを労務提供に振り向けるようになり、職務専念義務を十分に遂行できるようになる。
日本の公務員は原則として副業を禁止されているが、それは公務員に職務専念義務を遂行させるためである。
関連リンク
関連項目
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