脱毛サロンとは、美容目的で体毛を除去するサービスを提供する施設のことである。
主に女性向けのサービスとして知られているが、近年では男性の美意識の高まりから「メンズ脱毛」を専門に扱うサロンも増えてきている。エステサロンの一分野であり、医療機関である美容クリニックが行う「医療脱毛」とは区別される。
サロンで行われるのは、主に「光脱毛(フラッシュ脱毛)」と呼ばれる、特殊な光を照射して毛根にダメージを与える方法であり、医療レーザー脱毛に比べて痛みが少なく、比較的安価な料金設定が特徴である。
しかし、その手軽さの裏で、近年は過当競争や急な倒産による返金トラブルが急増し、社会問題化しつつある。本記事では、脱毛サロンの基本的な仕組みから、なぜ倒産が相次いでいるのか、そして消費者が気をつけるべき点について解説する。
概要
脱毛サロンは、エステティシャンが光脱毛機などを用いて施術を行う、いわゆる「エステ脱毛」の場である。医療行為ではないため、医師や看護師は常駐していないのが基本。
「永久脱毛」を謳うことはできず、あくまで「抑毛・減毛」を目的としている。とはいえ、継続的に通うことで自己処理がかなり楽になるため、多くの人が利用している。
医療脱毛との違い
よく比較される「医療脱毛」との違いをざっくりまとめると以下のようになる。
| 項目 | 脱毛サロン(エステ脱毛) | 美容クリニック(医療脱毛) |
|---|---|---|
| 施術者 | エステティシャン | 医師・看護師 |
| 使用機器 | 光(フラッシュ)脱毛機 | 医療用レーザー脱毛機 |
| 出力 | 弱い | 強い(毛根組織を破壊可能) |
| 痛み | 比較的少ない(温かみを感じる程度) | 強い(輪ゴムで弾かれるような痛み) |
| 効果 | 減毛・抑毛(効果実感まで時間がかかる) | 永久脱毛(比較的短期間で効果) |
| 料金 | 比較的安い | 比較的に高い |
| 麻酔 | 使用不可 | 使用可能(麻酔クリームなど) |
ぶっちゃけ、「多少痛くても金は出すから、早く・確実に毛をなくしたい」なら医療脱毛、「痛いのは無理!時間はかかってもいいから安く済ませたい」なら脱毛サロン、といった選択になるだろう。
相次ぐ倒産、その背景は?
「有名サロンと契約したのに、突然倒産して前払いしたお金が返ってこない…」近年、そんな悲鳴がネット上でも数多く見られる。なぜ、あれだけ広告を打っていた大手サロンが次々と倒産しているのだろうか。その背景には、いくつかの構造的な問題が存在する。
過当競争と広告費の高騰
脱毛業界は参入障壁が比較的低く、多くの企業が乱立しているレッドオーシャンである。結果、顧客を獲得するための広告合戦が激化。Web広告、SNSでのインフルエンサーマーケティング、電車の中吊り広告など、莫大な広告費が経営を圧迫する一因となっている。「初回無料!」「月々1,000円~」といった過激なキャンペーンの裏では、自転車操業に陥っている企業も少なくない。
「全身脱毛通い放題」というビジネスモデルの罠
多くのサロンが採用している「通い放題」や「複数回コース」といった料金プランは、顧客からサービス提供前に代金を一括(またはローンで)受け取るビジネスモデルである。企業側は一時的に多額のキャッシュを手にできるが、それは将来提供すべきサービスに対する「負債」に他ならない。新規顧客から得た前受金で、過去の顧客へのサービス費用を賄う…という構造は、破綻と隣り合わせなのである。
医療脱毛の価格破壊と顧客流出
かつては「高価だが効果は確実」という立ち位置だった医療脱毛だが、近年、湘南美容クリニックなどの大手美容クリニックが、サロンと遜色ない、あるいはそれ以下の低価格で医療脱毛を提供し始めた。これは、脱毛を赤字覚悟の「集客商品(フロントエンド商品)」と位置づけ、来院した顧客に利益率の高い他の美容施術(バックエンド商品)を勧めることで、クリニック全体で利益を出す戦略である。
結果、「同じくらいの値段なら、効果の高い医療脱毛の方がいい」と考える消費者が増え、脱毛サロンから顧客が流出。サロンの経営をさらに圧迫する大きな要因となった。
主な倒産・事業停止事例
一度倒産してしまうと、前払いした料金が返還される可能性は極めて低い。まさに「泣き寝入り」状態となるため、契約前のサロン選びが非常に重要となる。
| サロン名 | 時期 | 概要 |
|---|---|---|
| 脱毛ラボ | 2022年8月 | 自己破産。コロナ禍での客足減少や広告費の増大が影響したとされる。 |
| キレイモ | 2022年9月頃~ | 経営が悪化し別会社へ事業譲渡。返金遅延や予約困難などが頻発し問題化。 |
| シースリー(C3) | 2023年9月 | 自己破産。「永久メンテナンス保証」を掲げていたが、経営が悪化した。 |
| 銀座カラー | 2023年12月 | 自己破産。負債総額約58億円。10万人以上の契約者が影響を受けたとされる。 |
| ミュゼプラチナム | 2025年8月 | 2015年に経営危機が表面化し任意整理。その後スポンサー支援のもと事業を継続していたが、破産手続きを開始。 |
賢いサロンの選び方
では、消費者はどうすれば倒産リスクから身を守れるのだろうか。100%安全な方法はないが、以下の点をチェックすることでリスクを低減できる。
- 長期・高額な一括契約を避ける
これが最も重要。「通い放題」や「36回コース」といった契約は、倒産時に失う金額が大きくなる。可能な限り「都度払い」や、回数の少ないコースを選ぶのが賢明。 - 極端な安売りキャンペーンに注意
「全身脱毛が月々1,000円!」といった広告は、あくまでローンを組んだ場合の支払い額の一例であることが多い。総額はいくらになるのか、追加料金は発生しないかしっかり確認する。安すぎる価格設定は、無理な経営の裏返しである可能性も。 - 契約書を隅々まで読む
中途解約の条件や、返金に関する規定は必ず契約前に確認する。「よくわからないから…」でサインするのは絶対にNG。クーリング・オフ制度についても説明があるかチェック。 - SNSや口コミを鵜呑みにしない
インフルエンサーによるPR投稿(ステマ)や、業者によるサクラレビューも多い。良い口コミだけでなく、悪い口コミにも目を通し、総合的に判断することが大切。特に「予約が全く取れない」といった声が多い場合は要注意。
主な脱毛方法
脱毛サロンで主に行われている光脱毛には、いくつかの種類がある。サロンによって採用している方式が異なる。
IPL脱毛 (インテンス・パルス・ライト)
多くのサロンで採用されている最もポピュラーな方式。黒いメラニン色素に反応する光を照射し、毛根にダメージを与える。濃くて太い毛に効果が高いとされるが、日焼けした肌や色素沈着がある部位には照射できない場合がある。痛みは比較的少ない。
SSC脱毛 (スムース・スキン・コントロール)
抑毛効果のある専用ジェルを肌に塗り、その上から光を照射する方式。ジェルと光の相乗効果で抑毛を促す。光の出力自体は弱く、肌への負担が少ないのが特徴。美肌効果を謳うサロンも多い。
SHR脱毛 (スーパー・ヘアー・リムーバル)
「蓄熱式脱毛」とも呼ばれる。毛根ではなく、発毛を促す「バルジ領域」という部分に弱い熱を連続で与えてダメージを蓄積させる方式。毛周期に関係なく施術でき、日焼け肌や金髪・産毛にも効果が期待できる。痛みはほとんど感じないとされる。
関連項目
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