基礎データ | |
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正式名称 | 自由惑星同盟 Free Planets Alliance |
国歌 | 自由の旗、自由の民 |
国是 | 自由、自主、自律、自尊 |
公用語 | 同盟公用語 |
首都 | ハイネセン/ハイネセンポリス |
人口 | 約150億人(銀河第2位) |
通貨 | 同盟ディナール |
自由惑星同盟とは、銀河英雄伝説における恒星間国家の名称。
略称はフリー・プラネッツ、同盟。
概要
宇宙暦527年(帝国暦218年)に建国され、宇宙暦800年(新帝国暦2年)2月20日まで273年間存続した恒星間国家の名称である。
政治形態は民主共和制。元首は最高評議会議長で、大統領に相当する。
多数の星系による連邦制を採るが、恒星間への展開が可能な軍事力はバーラト星系の中央政府のみが保有する。
政治体制
原作で直接説明されている内容はあまり多くない。以下の記述は原作及びOVA作品の描写を元にしたものである。
中央政府は大統領制と議院内閣制の折衷。
正確な選挙方式は不明だが、少なくとも小選挙区制は採用されている。
中央政府の最高評議会が最高意思決定機関。ロイヤル・サンフォード政権時の定員は9名(議長+評議員8名)。最高評議会は議長のみ公選で、他の評議員は議長もしくは議会による議員からの指名制と思われる。
最高評議会議長が首席行政官でもあるほか、議長および書記以外の評議員は必ず一人一分野の委員会の委員長(大臣に相当)を兼ねる。この委員会は単なる議会の委員会にとどまらず、担当中央行政府を下部組織として融合させている(例えば、安全保障を司るのは「国防委員会」であり、この一語で議会の委員会と行政府の双方を表す)。委員会は国務、国防、財政、情報交通、法秩序、天然資源、人的資源、経済開発、地域社会開発の9つ。国務委員長は副議長を兼ね、議長不在時の対応にあたることがある(例:ジョアン・レベロ議長誘拐時のシャノン国務委員長)。
最高評議会の政策決定は多数決を原則とする珍しい形式で、担当委員長でも抵抗することが出来ない強制力を持つ。また、評議員の投票行動は全て一般公開される。そのため、政策の失敗などで政権交代がおきた際に、投票行動から責任が小さいと判断された評議員のみが慰留されるケースが見られる(例:サンフォード政権崩壊時のジョアン・レベロ財務委員長、ホワン・ルイ人的資源委員長、ヨブ・トリューニヒト国防委員長)。
特徴として、議長と政策方針が全く異なる評議員が度々登場する。
末期の統制国家化した状況でも、議長と全面的に対立している評議員が表だって排除されることはなかった。さらに外伝では、議長選挙の当選者が次点候補を重要ポストの委員長に指名している。劇中では政治勢力、特に政党の存在形態について言及がないが、議会の勢力などに応じて評議員ポストを割り当てることにより、最高評議会と委員会の強大な権力による多数派の暴走を抑止する仕組みが制度化されているものと思われる。
地方政府のシステムは原作中では言及されていないが、トップは首相と呼ばれており、地方政府首相から中央政界に進出するケースもみられる。
軍事体制
国防委員会の統制のもと、自由惑星同盟軍として大規模な防衛軍を組織する。軍政を統括する国防委員会の下部には作戦を担当する統合作戦本部、補給を担当する後方勤務本部、それに技術科学本部の3つの本部と防衛、査閲、経理、情報、人事、装備、教育、施設、衛生、通信、戦略の12部を擁し、そのトップ(本部長・部長)にはいずれも中将以上の軍人が任命される。
この中で統合作戦本部は他の本部に優越しており、統合作戦本部長は制服組軍人の最高ポストとされている。
いっぽうこれらの他に実戦を管轄する宇宙艦隊総司令部が存在し、宇宙艦隊司令長官が制服組軍人の第二位にあたる。そのため統合作戦本部長と宇宙艦隊司令長官の二名がともに元帥位にあることも多い。
宇宙艦隊総司令部の下部に存在する実戦部隊は常置12個の正規艦隊に分けられるが、予算などの都合上、一時に前線で戦闘するのは3個艦隊程度が基本のようである。その他、各星系の警備部隊、辺境星域分艦隊などが存在し、帝国領侵攻の際など、正規艦隊とともに出征することもある。
その他、同盟領内には警備管区が設けられ、少将クラスが管区司令官となる。また同盟全土に小惑星などを利用した補給基地、工廠といった設備が広がっている。
歴史概略
ゴールデンバウム朝の成立~「血のローラー」
"大帝"ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは当初こそ立憲君主制を敷き、自身が銀河連邦末期に首相兼大統領として開始した社会改革に邁進した。
しかし、その強引な手法が半ば盲目的に圧倒的支持を受け続けた結果、彼は即位数年後には早くも自己神格化に傾倒していった。帝国暦9年に発布された「劣悪遺伝子排除法」とその反対運動の弾圧を経て議会と連邦憲法は停止され、政治手法は専制君主制による恐怖政治へと変貌。「血のローラー」と呼ばれる共和派の粛清は40億人の犠牲者を出し、ルドルフ死去後に起こった残党の一斉蜂起では直接参加した5億人が殺害され、縁者100億人が基本的人権を剥奪されて奴隷階級が復活した。
「長征一万光年」~同盟建国
奴隷や共和派残党による帝国領脱出の試みは数多かったが、大半は宇宙船調達の段階で社会秩序維持局に察知されて無残な失敗に終わった。唯一反帝国勢力の形成に成功したのがアルタイル星系第7惑星のグループで、実に帝国成立から1世紀半が経過していた。
宇宙暦473年(帝国暦164年)、奴隷労働者の若者アーレ・ハイネセンをリーダーとする40万人が、氷河を丸ごと切り出して即席の宇宙船に用いるというアイディアにより、極寒の監獄惑星アルタイル星系第7惑星からの脱出に成功した。彼らは辿り着いた小惑星帯で密かに恒星間移民船団を建造し、民主主義国家復活の地を求めて、後に「長征一万光年」と呼ばれる苦難の行程に出発した。
後にイゼルローン回廊と呼ばれることになる危険宙域を手探りで進む途上、ハイネセンは事故死した。後を継いだ親友グエン・キム・ホアの下、宇宙暦527年(帝国暦218年)、ついに居住可能な安定した惑星を含む恒星群を発見。半世紀にわたる過酷な旅を生き延びた16万人が「バーラト星系/第4惑星ハイネセン」と名付けられた星を中心に開拓を開始し、自由惑星同盟の建国を宣言した。
ダゴン星域会戦…量的な膨張と変容
建国後の同盟は急速に国力を充実させながら周辺宙域を開拓し、マヌエル・ジョアン・パトリシオ政権下の宇宙暦640年(帝国暦331年)、反対側から生存圏を拡大していた帝国とついに接触。防衛戦争を予期して1世紀に渡り準備してきた同盟軍は、リン・パオ総司令官とユースフ・トパロウル中将の指揮により、ダゴン星域で帝国軍と激突。組織的な軍隊との戦闘経験が1世紀以上なく、単なる反乱鎮圧の延長という感覚で侵攻してきた帝国の「討伐軍」を、約半数の戦力で殲滅した。
以後同盟の存在を知った帝国内の共和主義者らが多数亡命し、量的にも人口増加が図られて2大国家対立の構図が形成される。ただし、単なる刑事犯や帝国内で政争に敗れた貴族などが身の安全を守るためだけに亡命する例も多かった。
この過程で、「帝国の圧政から脱し、銀河連邦初期の理想的民主主義を取り戻す」ことを目的とした当初の理念は、次第に硬直した「反帝国」へと変質していった。
衰退
銀河連邦時代からの先進地域を独占し国力に優る帝国との長期にわたる戦争は、名将ブルース・アッシュビー提督を中心とした前線指揮官グループ"730年マフィア"が活躍した740~50年代を過ぎると膠着状態に陥ってゆく。帝国が多大な労力をかけてイゼルローン要塞の建設を成功させたことにより戦場が回廊の同盟側に限定されると、その傾向は加速していった。
780~790年代には、イゼルローン回廊の同盟側出口に散在する星系群を長期の展望もなく奪い合う、大規模な小競り合いに終始するようになる。788年のエル・ファシル星系失陥を最後に、会戦を含む数多くの衝突にもかかわらず有人惑星や大規模軍事拠点の支配権が全く移動せず、戦況の大きな変化が起こらない消耗戦に陥っていった。
戦闘規模のみが拡大の一途をたどり、成人の死亡原因第一位が「戦死」などという状態が長期にわたって続いた結果、宇宙暦790年代になると、中年層の特に男性が一般社会から欠落した状態が固定化された。徴兵前の若年層と除隊した傷兵・高齢者が大半を占める社会構造は活力の低下と効率の悪化を招き、首都星ハイネセンのインフラ維持にも支障をきたす程国力が疲弊していった。
戦力の崩壊と体制の変質
ロイヤル・サンフォード政権下の宇宙暦796年(帝国暦487年)5月、ヤン・ウェンリー提督の奇策によりイゼルローン要塞を帝国から奪取することに成功し、状況に変化が訪れた。しかし政権は議会選挙を前にして支持率回復を目論み、無謀な帝国領逆侵攻作戦を実施してしまう。これはアムリッツァ星域会戦における決定的な敗北をもたらした。年初のアスターテ星域会戦を含めるとこの一年で常設12艦隊のうち10艦隊が壊滅し、同盟の国力・軍事力は致命的な損害を被った。
後を継いだヨブ・トリューニヒト政権は翌年の救国軍事会議によるクーデターの収拾、銀河帝国正統政府への支援を経て全体主義化し、同盟はプロパガンダ戦術と軍・官・マスメディアのトリューニヒト翼賛体制による統制国家へと変質してゆく。この過程で救国軍事会議によるクーデターとその失敗によってさらに1艦隊を失った同盟軍は、首都直衛の第1艦隊とヤン提督のイゼルローン駐留艦隊のほかにまとまった機動戦力を持たないありさまとなった。
滅亡
宇宙暦798年(帝国暦489年)8月、帝国宰相ラインハルト・フォン・ローエングラム公爵が自由交易惑星フェザーン自治領を占領、イゼルローン・フェザーンの両方面から攻撃を開始する。二正面作戦に対処するだけの兵力と情報処理能力を失っていた同盟軍の防衛はついに破綻した。
首都直衛の第1艦隊と残存部隊をかき集めた第14、第15艦隊はランテマリオ星域会戦で惨敗。その後ヤン提督のイゼルローン駐留艦隊がゲリラ戦ののちにバーミリオン星域会戦でローエングラム公本隊を追い詰めるが、帝国軍別働隊がハイネセン上空を制圧すると、トリューニヒト議長は同盟を見限ることを決断する。ヤン提督に後を託す形で徹底抗戦を主張する最高評議会を、トリューニヒト議長は逆クーデターで制圧。強引に停戦を受諾した。翌年5月25日に「バーラトの和約」という事実上の降伏文書に調印し、同盟はローエングラム朝銀河帝国の属国となる。
しかし、同年11月にはジョアン・レベロ新議長による延命努力が裏目に出て、帝国から派遣されていたレンネンカンプ高等弁務官の死亡、ヤン提督の独立勢力化という事態を招いてしまう。皇帝となっていたラインハルトは再宣戦を宣言し、和約は事実上破棄された。宇宙暦800年(新帝国暦2年)1月のマル・アデッタ星域会戦の結果、同盟軍はビュコック司令長官と共に事実上消滅し、レベロ議長も統合作戦本部長ロックウェル大将らに保身目的で暗殺され、同盟は事実上崩壊した。
同年2月20日、惑星ハイネセンにある国立美術館内の冬バラ園にて、ラインハルトによる勅令、いわゆる「冬バラ園の勅令」が発せられた。この勅令で自由惑星同盟は過去の存在を追認されると同時に銀河帝国への完全併合が宣言され、名実ともに消滅し滅亡した。
関連動画
関連項目
- 銀河英雄伝説
- ゴールデンバウム朝銀河帝国 - 敵対していた勢力の一つ
- ローエングラム朝銀河帝国-解体の法的根拠、冬バラ園の勅令を発布
- フェザーン自治領 - 事実上の第三勢力
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