概要
航空機は旅客・貨物を載せて飛行するため、輸送力や航続距離、それに快適性や経済性の観点から機体を極力軽量化し、その強度を安全率を含めた上で問題ないレベルギリギリまで抑えているのが一般的である。
そして最も一般的な航空機である飛行機(推進装置を持つ固定翼機)の場合、その巡航高度は地表10~12kmにも及び、また巡航速度は600~1000km/h、離発着時でさえ200~300km/hにも達するのが普通である。
そのため飛行中に墜落や衝突等の重大事故が発生した場合、機体が衝撃によって原型を留めることなく大破し、乗員乗客が全滅するなど、その被害が甚大なものとなるケースが多い。
1950~60年代以降、機材の大型化が進んだことにより、一つの事故によって生じる被害も増加する傾向にある。
事故の発生場所によっては、機内のみならず地表にも被害が及ぶケースも有る。
航空事故によって死亡する可能性はアメリカの調査によると、自動車事故で死亡する可能性の1/30を下回っていると言われている。
しかしながら、一度重大事故が発生すると上述のような理由で被害が大きくなりやすいため、報道で大々的に取り上げられ、人々の印象にも残りやすい傾向がある。
そして航空事故は一度発生すると、その原因にもよるが航空機の運行会社や製造メーカー、ケースによっては航空産業そのものへ重大な悪影響を与えることがある。
そのため、ブラックボックス(フライトレコーダー)の導入を始めとして航空産業の黎明期より事故調査と事故の再発防止には甚大な労力と資金が費やされている。
航空事故調査を行う組織は国ごとに異なり、日本では運輸安全委員会(Japan Transport Safety Board , JTSB)が現在その役目を担っている。
他国ではアメリカの国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board , NTSB)、英国の航空事故調査局(Air Accidents Investigation Branch , AAIB)、フランスのフランス航空事故調査局(Bureau d'Enquêtes et d'Analyses pour la Sécurité de l'Aviation Civile , BEA)などが代表的な存在である。
これら航空事故調査を行う組織は、自国内の事故のみならず、自国製の航空機が他国で起こした航空事故においても事故発生国の調査組織に協力する形で捜査に加わることがある。
そのため、ボーイングが本社を構えるアメリカのNTSB、エアバスやATRがあるフランスのBEAが捜査に関与することは多い。
航空事故の中には、テロによる爆破やハイジャック等の犯罪行為、撃墜など戦闘・誤射・迎撃行為に起因するものも存在する。これら事件に関しては、偶発的な事故とは別に扱うことも多い。
事故分類
- 事象による分類
- 墜落 …… 飛行機など重航空機の場合は揚力、軽航空機の場合は浮力を失うなどして地表に落下すること。
- 空中分解 …… 飛行中に航空機が分解し地表に落下するもの。
- 地表衝突 …… 航空機が高度が不十分であったことにより地表へ追突するもの。
- 地上衝突 …… 航空機同士が滑走路・誘導路などで衝突すること。
- 空中衝突 …… 航空機同士が飛行中に衝突すること。
- 火災 …… 航空機が何らかの理由で発火し、炎上するもの。飛行中の場合、操縦困難となり墜落や空中分解に発展することもある。
- 離陸失敗 …… 離陸時に何らかの問題が生じ、地表に衝突するもの。
- 過走 …… オーバーラン。離陸中止や着陸時に滑走路上で静止できず逸脱すること。
- 不時着 …… 何らかの問題により、目的地以外の場所に緊急着陸すること。
- 胴体着陸 …… 降着装置の不具合などにより機体そのもので着地すること。
- 爆破 …… テロ組織等の仕掛けた爆弾により航空機が破壊されるもの。
- ハイジャック …… 航空機を武力等を持って強奪するもの。
- 撃墜 …… 地表または軍用機からの武力攻撃により、航空機が墜落ないし不時着させられるもの。
- 原因による分類
- 操縦ミス …… 機長・副操縦士等が機体の操縦、必要な手順の省略、機械操作や状況判断を誤った事によるもの。
- 管制ミス …… 航空管制が適切な指示を与えなかったことによるもの。
- 機械的故障 …… 機材の欠陥、老朽化、不具合、製造過程での不良、整備の不良等によるもの。
- その他人為的要因 …… 意思疎通や言語、人間関係等に問題があった事によるもの。また過積載、不適切な積載、燃料の不足、不良燃料の使用など。
- 運航会社の問題 …… パイロットとして不適格な人物を雇用する、充分な教育を施さない、安全よりも経営や定時運航を優先させ、必要な経費や手順を省略する。予算不足で賃金の未払い、充分な整備がなされないことなど。
- 悪天候 …… 落雷、強風(ダウンバースト等)、噴火、降雪など自然災害に巻き込まれるもの。
- 破壊行為 …… ハイジャックや爆破テロ、撃墜などが該当するが、機長や副操縦士が故意に墜落させた事例も存在する。
- その他 …… 鳥衝突(バードストライク)など。
事故原因で見た場合、操縦ミスが全体の半数以上を占めており、機械的故障や悪天候がそれに次いでいる。ただし、それ一つが原因で事故になるというケースは少なく、大半は複数の要因が絡み合って発生するものである。
航空事故死者数ワースト10
ここに記載していないが、2001年9月11日に発生した民間旅客機4機を巻き込み、乗員乗客246名のほか地表で2,700名以上、計3,000名余りを犠牲にしたアメリカ同時多発テロ事件(9.11)を最悪の航空事件・事故とみなすこともある。
順位 | 事 故 | 発 生 年月日 |
発生箇所 | 死者数 | 備 考 |
1 | テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故 | 1977年 3月27日 |
スペイン領 カナリア諸島 |
583 | KLMオランダ航空4805便・パンアメリカン航空1736便 世界最悪の航空事故・複数機による最大事故 パンナム側生存者数61名・KLM側生存者数0名 |
2 | 日本航空123便墜落事故 | 1985年 8月12日 |
日本 群馬県上野村 |
520 | 単独機による最大事故 生存者数4名 |
3 | ニューデリー旅客機空中衝突事故 | 1996年 11月12日 |
インド ニューデリー |
349 | カザフスタン航空1907便・サウジアラビア航空763便 空中衝突による最大事故 |
4 | トルコ航空981便墜落事故 | 1974年 3月3日 |
フランス オワーズ県 |
346 | |
5 | インド航空182便爆破事件 | 1985年 6月23日 |
北大西洋 (アイルランド沖) |
329 | 航空機爆破テロによる最大事故 |
6 | サウジアラビア航空163便火災事故 | 1980年 8月19日 |
サウジアラビア リヤド国際空港 |
301 | 航空機内火災による最大事故 |
7 | マレーシア航空17便撃墜事件 | 2014年 7月17日 |
ウクライナ ドネツィク州 |
298 | 民間機撃墜による最大事故 |
8 | イラン航空655便撃墜事件 | 1988年 7月3日 |
ペルシャ湾 (イラン沖) |
290 | |
9 | イラン革命防衛隊Il-76MD墜落事故 | 2003年 2月19日 |
イラン ケルマーン |
275 | |
10 | アメリカン航空191便墜落事故 | 1979年 5月25日 |
アメリカ シカゴ |
271 |
ニコニコ大百科に記事がある航空事故一覧
- 日本航空350便墜落事故(1982年2月9日/機長、やめてください!!)
- エアカナダ143便滑空事故(1983年7月23日/もう助からないゾ♡)
- 日本航空123便墜落事故(1985年8月12日)
- イラン航空655便撃墜事件(1988年7月3日)
- LAPA航空3142便離陸失敗事故(1999年8月31日)
- 日本航空機駿河湾上空ニアミス事故(2001年1月31日)
- クロスエア3597便墜落事故(2001年11月24日/ハンス・ウルリッヒ・ルッツ)
- ユーバーリンゲン空中衝突事故(2002年7月1日)
- USエアウェイズ1549便不時着水事故(2009年1月15日/ハドソン川の奇跡)
- エールフランス447便墜落事故(2009年6月1日/ボナン)
- アシアナ航空214便着陸失敗事故(2013年7月6日)
関連動画
関連項目
- ナショナルジオグラフィック
- メーデー!:航空機事故の真実と真相
- フィクションじゃないのかよ!騙された!(航空事故に関する専門用語、ニコニコ動画特有のコメントについての解説記事)
- 航空業界の厄年
- ブラックボックス
- 交通事故
- 鉄道事故
- 海難事故
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