名前の読みは「おう」でも「ひろし」でもなく「よう」。また「芹沢」と間違われることも多いが、「芦沢(あしざわ)」である。
概要
1984年東京都生まれ。小説家になる前に会社員勤めを経験していた。
2012年、会社を退職後に投稿した『罪の余白』が第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞。角川書店から単行本化され作家デビューを果たす。同作は2015年に映画化されている。
アマチュア時代、純文学を志向しながらの投稿生活は結果に繋がらなかった。そこで「自分を楽しませる」というテーマに切り替えて執筆した作品が心理描写を軸にしたミステリー『罪の余白』であった。デビュー後はそのままミステリーを中心に執筆するようになる。
ミステリーの傾向としては、いわゆる「どんでん返し」を仕掛けている作品が非常に多い。この「どんでん返し」を期待して彼女の著作を読んでいる人も少なくない程、イメージとしては強いものになった。
一般的に「どんでん返しがある作品は、どんでん返しがあると明かす事が既にネタバレ」と言われることが多く、そのため騙されないように気構えて読む読者も多い。しかし、上手く読者の先入観を利用し、高く上がったハードルを越え続ける綿密なプロットや文章におけるミスリードは非常に高く評価されている。また、それに伴った意味深なタイトルを見事に回収していく技は非常に鮮やかであり、それが小説に心地のよい余韻を残している。
ミステリーはいわゆるイヤミス的要素が含まれている作品が多く、『告白』の湊かなえ、や『暗黒女子』『絶対正義』の秋吉理香子などとも並べて語られる。とはいえ、「イヤミス」や「どんでん返し」ばかりの作品ではなく、どんでん返しを爽やかなラストを演出するために使用していたり、ミステリー的な仕掛けを少なくし心理描写をメインとした作品も上梓している。
デビュー後、しばらくはミステリー好きや読書好きの間では知られていたが、なかなか一般的な知名度は高くならなかった。しかし、2015年に発表された短編『許されようとは思いません』が第68回日本推理作家協会賞候補。また同作が収録された単行本が週刊文春ミステリーベスト10、このミステリーがすごい!にランクイン。そして第38回吉川英治文学新人賞候補になる。また、2016年に文庫化された『悪いものが、来ませんように』の角川文庫版がじわじわと売れはじめ、2020年現在、20万部を超えるヒットになる。
続けて2018年に『ただ、運が悪かっただけ』で再び第71回日本推理作家協会賞候補。2019年には『火のないところに煙は』で第32回山本周五郎賞候補、本屋大賞ノミネートと怒涛の快進撃を続けており、さらには2020、21年には『汚れた手をそこで拭かない』で第164回直木賞、第42回吉川英治文学新人賞候補と一気に知名度・注目度が高くなり、今最も勢いのある、今後が期待される作家の1人になったと言ってもいいだろう。2023年、『夜の道標』で第76回日本推理作家協会賞を受賞。
まだ彼女の著作を読んだことがない人は軽めに読め、かつ1話1話に驚きのある短編集(『今だけのあの子』『許されようとは思いません』など)から読んでみることを勧めたい。
受賞・候補歴
直木賞
野性時代フロンティア文学賞
日本推理作家協会賞
- 『許されようとは思いません』...第68回短編部門候補。
- 『ただ、運が悪かっただけ』...第71回短編部門候補。
- 『埋め合わせ』...第72回短編部門候補。
- ★ 『夜の道標』...第76回長編及び連作短編集部門受賞。
山本周五郎賞
- 『火のないところに煙は』...第32回候補。
吉川英治文学新人賞
本屋大賞
- 『火のないところに煙は』...第16回ノミネート、9位。
作品リスト
- 罪の余白 (2012年、角川書店 → 2015年、角川文庫)
- 悪いものが、来ませんように (2013年、角川書店 → 2016年、角川文庫)
- 今だけのあの子 (2014年、東京創元社ミステリ・フロンティア → 2018年、創元推理文庫)
- いつかの人質 (2015年、KADOKAWA → 2018年、角川文庫)
- 許されようとは思いません (2015年、新潮社 → 2019年、新潮文庫)
- 雨利終活写真館 (2016年、小学舘)
- 貘の耳たぶ (2017年、幻冬舎 → 2019年、幻冬舎文庫)
- バック・ステージ (2017年、KADOKAWA → 2019年、角川文庫)
- 火のないところに煙は (2018年、新潮社 → 2021年、新潮文庫)
- カインは言わなかった (2019年、文藝春秋 → 2022年、文春文庫)
- 僕の神さま (2020年、KADOKAWA → 2024年、角川文庫)
- 汚れた手をそこで拭かない (2020年、文藝春秋 → 2023年、文春文庫)
- 神の悪手 (2021年、新潮社 → 2024年、新潮文庫)
- 夜の道標 (2022年、中央公論新社 → 2025年、中公文庫)
- 魂婚心中 (2024年、早川書房)
- 嘘と隣人 (2025年、文藝春秋)
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 相沢沙呼
- 青崎有吾
- 青山文平
- 赤川次郎
- アガサ・クリスティ
- 芥川龍之介
- 浅暮三文
- 芦辺拓
- 飛鳥部勝則
- 綾辻行人
- 鮎川哲也
- 有川浩
- 有栖川有栖
- 泡坂妻夫
- アーサー・C・クラーク
- 池井戸潤
- 伊坂幸太郎
- 石川博品
- 石田衣良
- 石持浅海
- 伊藤計劃
- 稲見一良
- 乾くるみ
- 井上真偽
- 井上夢人
- 今邑彩
- 今村翔吾
- 今村昌弘
- 岩井志麻子
- 歌野晶午
- 内田幹樹
- 浦賀和宏
- 江戸川乱歩
- エラリー・クイーン
- 円城塔
- 大沢在昌
- 大山誠一郎
- 岡嶋二人
- 小川一水
- 荻原規子
- 奥田英朗
- 小栗虫太郎
- 乙一
- 小野不由美
- 折原一
- 恩田陸
- 海堂尊
- 梶尾真治
- 上遠野浩平
- 加納朋子
- 紙城境介
- カルロ・ゼン
- 川原礫
- 神坂一
- 神林長平
- 貴志祐介
- 北方謙三
- 北村薫
- 北森鴻
- 北山猛邦
- 桐野夏生
- 久住四季
- 倉知淳
- 黒川博行
- 黒田研二
- グレッグ・イーガン
- 古泉迦十
- 甲田学人
- 古処誠二
- 小林泰三
- 小松左京
- 紺野天龍
- 今野敏
- 呉勝浩
- 佐々木譲
- 笹本祐一
- 細音啓
- 佐藤究
- 三田誠
- 時雨沢恵一
- 品川ヒロシ
- 篠田節子
- 島田荘司
- 島本理生
- 斜線堂有紀
- 朱川湊人
- 殊能将之
- 白井智之
- 真藤順丈
- 真保裕一
- ジョージ・オーウェル
- 水野良
- 須賀しのぶ
- 瀬名秀明
- 高木彬光
- 高村薫
- 竹本健治
- 田中慎弥
- 田中啓文
- 田中芳樹
- 田辺青蛙
- 月村了衛
- 月夜涙
- 辻堂ゆめ
- 辻村深月
- 土屋隆夫
- 都筑道夫
- 恒川光太郎
- 天藤真
- 遠田潤子
- 鳥飼否宇
- 中村文則
- 中山七里
- 仁木悦子
- 西尾維新
- 西澤保彦
- 西村京太郎
- 西村賢太
- 西村寿行
- 似鳥鶏
- 貫井徳郎
- 沼田まほかる
- 野崎まど
- 法月綸太郎
- 長谷敏司
- 羽田圭介
- 初野晴
- 早坂吝
- 林真理子
- はやみねかおる
- 氷川透
- 東川篤哉
- 東野圭吾
- 広瀬正
- ピエール・ルメートル
- 深水黎一郎
- 藤井太洋
- 船戸与一
- 方丈貴恵
- 星新一
- 誉田哲也
- 舞城王太郎
- 牧野修
- 万城目学
- 町井登志夫
- 松本清張
- 円居挽
- 麻耶雄嵩
- 真梨幸子
- 三崎亜記
- 道尾秀介
- 三津田信三
- 皆川博子
- 湊かなえ
- 宮内悠介
- 宮城谷昌光
- 宮部みゆき
- 森岡浩之
- 森博嗣
- 森見登美彦
- 矢樹純
- 山田風太郎
- 山田正紀
- 山本巧次
- 夕木春央
- 横溝正史
- 横山秀夫
- 米澤穂信
- 詠坂雄二
- 連城三紀彦
- 魯迅
- 若竹七海
▶もっと見る
- 1
- 0pt