花札(はなふだ)とは、日本の札遊戯(カードゲーム)である。主に花が描いてある札(カード)のため花札と呼ばれる。
概要
16世紀にポルトガルから伝わったカードゲームを「天正カルタ」として日本風にアレンジしたものが原型。江戸初期には「うんすんかるた」と形を変え、庶民に広く遊ばれた。これらは賭博に使われることが多く、たびたび規制が掛けられた。その度にデザインなどを変更していった結果、花鳥風月や動物をデザインしたものが登場。これが「花かるた」と呼ばれるようになり、後の「花札」へと姿を変えた。
このような経緯から歴史上は様々な種類の花札が存在した(一部は現在「地方札」として残っている)が、現在一般に広まっているのは明治時代に成立した「八八花(はちはちはな)」と呼ばれる種類の花札である。
その内訳は全48枚の札に対し、20点札(光) - 5枚、10点札(種) - 9枚、5点札(短冊) - 10枚、1点札(カス) - 24枚。また基本となる絵柄が12種類(松、梅、桜、藤、菖蒲、牡丹、萩、芒、菊、紅葉、柳、桐)あり、それぞれが12の月のどれかに対応している。
競技種目は多数あるが、有名なものは「八八」「花合わせ」「こいこい」「おいちょかぶ」など。こいこい・花合わせなどで共通して使われる出来役はこちら。ここに載っていないものでは月見酒、花見酒なども良く使われる。
月 | 植物 | 光札(20点) | 種札(10点) | 短冊札(5点) | カス札(0点) |
1月 | 松 | 松に鶴 | 松に赤短 | 松のカス(×2) | |
2月 | 梅 | 梅に鶯 | 梅に赤短 | 梅のカス(×2) | |
3月 | 桜 | 桜に幕 | 桜に赤短 | 桜のカス(×2) | |
4月 | 藤 | 藤に不如帰 | 藤に短冊 | 藤のカス(×2) | |
5月 | 菖蒲 | 菖蒲に八橋 | 菖蒲に短冊 | 菖蒲のカス(×2) | |
6月 | 牡丹 | 牡丹に蝶 | 牡丹に青短 | 牡丹のカス(×2) | |
7月 | 萩 | 萩に猪 | 萩に短冊 | 萩のカス(×2) | |
8月 | 芒 | 芒に月 | 芒に雁 | 芒のカス(×2) | |
9月 | 菊 | 菊に盃 | 菊に青短 | 菊のカス(×2) | |
10月 | 紅葉 | 紅葉に鹿 | 紅葉に青短 | 紅葉のカス(×2) | |
11月 | 柳 | 柳に小野道風 | 柳に燕 | 柳に短冊 | 柳のカス |
12月 | 桐 | 桐に鳳凰 | 桐のカス(×3) |
ただし、「桐のカス」のうち下部分が黄色となっている1枚については種札(10点)扱いとする場合がある。
任天堂と花札
ゲーム会社として知られる任天堂の原型は花札屋「山内商店」であり、任天堂は現在も花札の製造を続けている。
製造規制が撤廃された明治初期、山内商店を含む花札屋たちが京都を中心に創業。山内商店はその品質の高さで人気を集め、後に骨牌税(トランプ類税)が導入されて多くの同業者が店を畳んでも生き残り続けた。
その理由の一つは、花札が賭博とは切っても切れない関係にあったことにある。
江戸時代には既に規制されていたものの、賭博は水面下で横行していた。花札も例に漏れず、麻雀やトランプと共にギャンブルの道具として広く使われていた。高度成長期以前まで、小さな賭け事は(違法だが)大人の男性の間では一種の「嗜み」のようなものであったし、いわゆる「賭場」もまだ生き残っていたのである。
そんなギャンブルの場(特に、命を賭した真剣勝負の場)でご法度だったのがイカサマ。花札では札に傷や凹みを付ける=「ガン」をつける(麻雀でも同様に言う)イカサマが可能であり、それを防ぐため真剣な勝負師は毎回新品の花札を買うのである。勝負師にとって札の品質は何よりも重要なことだったのだ。
任天堂でゲーム&ウオッチなどを手がけた横井軍平曰く、「怖い形相の団体さんが『うちらの賭場をどうしてくれんのじゃ。お前らの作った花札のせいやぞ』と乗り込んできた」こともしょっちゅうだったそうな(※自身が最初に担当した花札製造工程の改良を説明するときに出た話で、冗談の可能性もあり)。
ちなみにタバコ屋で花札が売られていることが多いのは、山内商店がタバコ業界の流通網を借りて全国展開をしていた名残である。これは花札が職人の手作りだった当時としては、画期的な試みであった。
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