葵徳川三代(あおい とくがわさんだい)とは、2000年に放送された第37作目の大河ドラマである。
全49話、平均視聴率18.5パーセント。脚本はジェームス三木。
大河ドラマ史上、初めて全編ハイビジョン撮影が用いられた作品である。
概要
秀吉死後・関ヶ原直前から、徳川家康→徳川秀忠→徳川家光と主人公を交代しつつ、江戸初期までのドラマを描く。家康が主人公の大河ドラマは、1983年の徳川家康(大河ドラマ)以来13年ぶり。平均視聴率は高くなかったが、家康役の津川雅彦を中心とした俳優陣の円熟した演技は絶賛を受けた。
全49話のうち実に12話までを「関ヶ原前~関ヶ原」で占めるが、大坂の陣の後は合戦の描写がほとんどなくなり政治劇が多くなるため、物語前半と後半では印象が大きく変わるドラマでもある。
「忍従の人」という徳川家康のイメージから180度反対の「短気で押しが強く野心家」という家康像を演出した。また浅井三姉妹に着目したドラマでもあり、特に江(崇源院)に関しては非常に細かい描写がされている。
特徴と反響
一般的にあまり知られていない「猪熊事件」「大久保派vs本多派の幕府内権力闘争」などの事件もきちんと描かれており、脇役の没年も知らせるなど「年表的なドラマ」と評される。石田三成も「奸臣」としてではなく好意的に描き、徳川礼賛ではない、平等な視点で製作されたようだ。全体として武家言葉を多用しており、史実の甲冑の再現率も高いなど、歴史ファン・時代劇ファンにとっては嬉しい要素も多い。
(ただし、例外や脚本家の創作、ドラマ的な演出の場面ももちろんある。真田幸村が大坂の陣で六文銭の旗を使用している、猪熊事件で中心人物となった猪熊教利が登場しない、など)。
キャストの平均年齢が高く、40代前半で死去した石田三成を当時50代半ばの江守徹が、40代半ばで死去した淀殿を当時50代後半の小川眞由美が演じるなどしたため「老人大河」と揶揄された。しかし上述の通り演技・脚本の素晴らしさにおいてそれを補って余りあるほどにカバーしているドラマである。また配役には、俳優と声優を兼業としている役者も多かった(ささきいさお、磯部勉、てらそままさき、菅生隆之など。また、名義は違うが後に声優となる黒沢ともよ、尾崎由香も子役として出演していた)。
ただし上述の武家言葉に関しては、歴史ファンからの評価は高いものの、「言葉遣いが難しいので何を言っているかわからない」というクレームがあったとされている。さらに歴史をある程度知らないと分からない部分も多く(諱の概念、官位・官職についてなど)、視聴率的に苦戦した理由はこのあたりにあると見られる。
さらに、徳川家康の癖である「爪をかんで吐き出す」という仕草(史実でも家康は爪を噛む癖があった)に関しても「食事時に気分の悪いものを見せるな」というクレームがあり、この仕草は物語の進行と共に姿を消していった。家康役の津川雅彦は、「そもそもテレビを見ながら食事をするな」と反論している。
物語の要所要所で、中村梅雀演じる徳川光圀が注釈を入れるのだが(これは上述の歴史をあまり知らない層へのフォローの意味もある)、「サッカーでたとえればペナルティエリア」「フェイント作戦」など横文字を使った注釈もあり賛否両論であった。物語に解説役を設ける手法は、同じジェームス三木作品である「八代将軍吉宗」でも用いられている。
登場人物とキャスト
徳川家康:津川雅彦
徳川家当主で、物語前半の主人公。
上述の通り、天下獲りをしたたかに進める野心家として描かれ、そのためには朝廷をも恐れない。
秀忠を叱り飛ばす場面が多いがなんだかんだで仲がよく、死に当たっては秀忠の「下手くそな鼓」を所望した。癖は爪を噛むこと。津川雅彦は、ジェームス三木が担当した3つの大河ドラマ全てに出演している。
徳川秀忠:西田敏行
家康の三男で嗣子。二代将軍。
物語前半ではドジっ子で父に叱られてばかりで、地位に器量が追いつかない描写が多かったが、次第に天下人として成長していく。子煩悩で恐妻家。趣味は鼓を打つことだが、家康に「女々しい」と止められている。
脚本家のジェームス三木は「真の主人公は秀忠である」と語っており、実際ドラマ全体を通して秀忠の成長物語としてみることができる。
演じた西田敏行は「八代将軍吉宗」で徳川吉宗、「功名が辻」で徳川家康を演じている。
徳川家光:尾上辰之助(現:尾上松禄)
秀忠の子で三代将軍。
女の子ばかりが生まれていた秀忠夫妻に授かった待望の男子で、幼い頃から将軍嗣子として厳しく養育される。そのせいか化粧をするなどの奇行が目立ち、特に両親の手許で育てられた弟・忠長を露骨に嫌う。
またある事件から女嫌いとなり、なかなか子供が出来ず秀忠を悩ませる。金魚を眺めるのが好き。
結城秀康:岡本富士太
松平忠吉:寺泉憲
武田信吉:横堀悦夫
松平忠輝:岩渕幸弘→山田一統→阪本浩之
徳川義直:柿沢俊太→神木隆之介→木崎大輔→碓氷和憲→赤羽秀之
徳川頼宣:平野裕貴→川田浩太→村上耕平→本郷弦
徳川頼房:上坂巧→岡田祥世→福田勇介→大柴邦彦
徳川忠長:向江流架→今村優太→飯塚恭平→高杉瑞穂
松平忠直:中林大樹→梅沢勇太→北直樹
保科正之:佐藤慶季→松本伸夫→浜田学
於大の方:山田五十鈴
阿茶局:三林京子
家康の側室。
子供には恵まれなかったが、その才知を家康に愛でられ、大坂冬の陣の和議の使者として召し出される。
家康の死後も落飾せず、秀忠夫妻の五女・和子姫の入内に同行し、従一位民部卿の地位を賜る。
家康の死と同時に側室達の多くが物語から退場する中、物語後半まで登場する。
於万の方:長内美那子
西郡局:岩本多代
於茶阿の方:五大路子
お梶の方:森口瑤子
お亀の方:床嶋佳子
お夏の方:松尾あぐり
お万の方:尾上紫
お六の方:菊池麻衣子
振姫:未來貴子
市姫:黒沢朋世
お江:岩下志麻
秀忠の正室で、浅井三姉妹の末妹。
世間のイメージどおり気が強く嫉妬深い人物として描かれ、舅である家康を気迫で圧倒するほど。同時に夫を慕い子供達に強い愛情を注ぐ母親でもある。
なお岩下志麻は、大河ドラマでの出演は「独眼竜政宗」で義姫(保春院)、「草燃える」で北条政子と、3作品で3役とも烈女役を演じている。
志乃:櫻井淳子
お静:高橋かおり
千姫:大田ななみ→近内里緒→松本まりか→大河内奈々子
珠姫:磯野すず→仲根紗央莉
勝姫:臼井佑香→月見恭子
初姫:碇由貴子→森下涼子
和子(東福門院):新井葉月→尾崎千瑛→松田彩香→井上麻衣→酒井美紀
鷹司孝子:中村有里
お振:木内晶子
お万:持田理沙
お楽:仲間由紀恵
本多正信:神山繁
家康の腹心で、秀忠が将軍に就任すると目付として秀忠に近侍する。
演じた神山繁は、同じジェームス三木作品である「独眼竜政宗」でも主君の腹心として登場する。
大久保忠隣:石田太郎
秀忠の腹心であったが、幕府内権力闘争に敗れ失脚する。秀忠とのコミカルなやり取りには定評がある。
本多正純:渡辺いっけい
本多忠勝:宍戸錠
井伊直政:勝野洋
榊原康政:清水紘治
鳥居元忠:笹野高史
板倉勝重:鈴木瑞穂
村越直吉:阿南健治
土井利勝:林隆三
秀忠の側近で、老中、のちに大老となる。秀忠に諸葛孔明に擬せられる程の政治的才能を持つ。家光が将軍に就任すると家光の補佐役となり、最終回まで登場する。
酒井忠世:岩崎ひろし
酒井忠勝:丹波義隆
板倉重宗:西田聖志郎
板倉重昌:てらそままさき(寺杣昌紀名義)
青山忠俊:石倉三郎
松平信綱:宮本大輝→山本一輝→飛田航介
井上正就:天宮良
稲葉正勝:小林宏至→今津壮太→緒形幹太
大姥局:草村礼子
春日局(お福):樹木希林
福島正則:蟹江敬三
豊臣秀吉の子飼いで武断派武将の一人。
三成とは不仲で、三成襲撃事件の中心人物。蟹江敬三の怪演ぶりに注目。
細川忠興:ささきいさお(佐々木功名義)
武断派武将の一人。史実での苛烈な性格は描かれず、あくまで普通の東軍加担武将として登場する。
関ヶ原の戦いの後、嫡子・忠隆を廃嫡し、忠隆の妻・千世を離縁するが、その理由も史実とは異なっている。
伊達政宗:すまけい
東軍武将の一人。ただし、慶長出羽合戦は作中描かれず、物語中盤から登場する。
家康の子・忠輝を婿として迎えている。すまけいの飄々とした演技に注目。
藤堂高虎:田村亮
東軍武将の一人。関ヶ原で奮戦しただけではなく、家康・秀忠の信頼を得て近侍するまでになる。
他の東軍武将たちの多くが関ヶ原後に物語から退場するのに対し、物語中盤まで登場する。
黒田長政:山下真司
加藤清正:苅谷俊介
浅野幸長:渡辺裕之
加藤嘉明:早坂直家
山内一豊:斉藤暁
田中吉政:斎藤志郎
京極高次:小野寺昭
京極高知:大橋吾郎
池田輝政:磯部勉
織田有楽:平松慎吾
結城晴朝:大木正司
前田利長:長谷川初範
蒲生秀行:清水邦彦
小早川秀秋:鈴木一真
稲葉正成:石川武
平岡頼勝:たかお鷹
細川ガラシア:鈴木京香
お初(常高院):波野久里子
京極高次の正室。浅井三姉妹の次姉であるが、子供に恵まれなかったためお江の娘を養女とする。
夫の死後、落飾し常高院となる。豊臣家の滅亡後はしばしば江戸城に登場し、おせっかいおばさん的な役割を担うことが多くなった。
松の丸殿(京極竜子):河原崎有稀
石田三成:江守徹
五奉行の一人。
秀吉の死後、その遺命を守らず台頭する家康に憤慨し、豊臣家の世を守るため挙兵する。
家康にも「主君のためなら平然と泥をかぶる男」と敵ながら忠節を評価されているが、大名を呼び捨てにするなど人望に欠ける面がある。
物語前半のもう一人の主人公とも言える人物で、「ちょっとめんどくさい義の男」として描かれている。
石田正澄:津嘉山正種
石田正継:内藤武敏
石田重家:崎本大海
島左近:夏八木勲
蒲生郷舎:竜雷太
大谷吉継:細川俊之
西軍武将の一人。史実どおり、病のため頭巾をかぶり、手袋をしている。
石田三成とは旧くからの友人であるが、同時に家康派でもあり、挙兵を打ち明けられた際はこれを制止する。しかし三成との友情のため、三成に加担する。
吉継が三成の下に馳せ参じるシーンは、作中屈指の名シーン。
立花宗茂:大和田伸也
西軍武将の一人。大河ドラマへの登場は非常に珍しい。
西軍に加担したことにより所領を失うが、家康によって大名に返り咲き、秀忠によって旧領・柳川に復帰する。
毛利輝元:宇津井健
毛利秀元:小林健
小早川秀包:仲恭司
吉川広家:なべおさみ
宇喜多秀家:香川照之
坂崎直盛:新井康弘
安国寺恵瓊:財津一郎
上杉景勝:上條恒彦
増田長盛:佐藤慶
長束正家:黒澤年男
前田玄以:神山寛
島津義弘:麿赤兒
島津豊久:山口祐一郎
小西行長:菅生隆之
長宗我部盛親:冨家規政
伊藤盛正:鵜沢秀行
おりん:高橋惠子
豊臣秀頼:大高力也→小林良也→尾上菊之助
秀吉と淀殿の次男で豊臣家当主。
英邁で物分りの良い性格であるが、それ故に家康に危機感を抱かせる。
淀殿:小川眞由美
豊臣秀吉の側室で、秀頼の母。お江とお初の姉。
物語当初は家康との仲は悪くなかったが、家康が征夷大将軍となるとあくまで徳川家への臣従を拒むようになる。秀頼の成人後も秀頼と共に上座に座るなど、やや驕慢な面もある。
DVDパッケージ裏面のあらすじでは蔑称である「淀君」が用いられている。
国松丸:高崎慶佑
結姫:福田麻由子
大野治長:保坂尚輝(現:保坂尚希)
豊臣家の家臣。淀殿の乳兄弟。大坂冬の陣では真田幸村の案を退け、あくまで篭城にこだわる。作中では淀殿との男女の関係も描かれた。
大野治房:高橋和也
大蔵卿局:馬渕晴子
淀殿の乳母で、大野兄弟の母。馬渕晴子は「春日局」でも大蔵卿局を演じている。
片桐且元:小林稔侍
秀頼の傅役。関ヶ原の戦いでは中立を貫くが、大坂冬の陣の前に家康の離間の計にはまり、豊臣家を追い出されるかたちで家康に加担する。秀頼の死後、殉死した。
木村重成:畠中洋
薄田隼人正:湯浅実
渡辺糺:梨本謙次郎
真田幸村:西郷輝彦
真田昌幸の子。史実では「信繁」であるが、知名度の関係か作中では「幸村」の呼称が用いられる。
後藤又兵衛:重松収
毛利勝永:福中勢至郎
明石掃部:松橋登
塙団右衛門:須藤正裕
後陽成天皇:木下浩之
後水尾天皇:大場泰正
明正天皇(女一宮興子内親王):大塚桃子→原田舞美→藤原ひとみ
近衛信尋:野地将年
二条昭実:寺田農
九条忠栄:山下規介
五摂家のひとつ、九条家の公卿。関白などを歴任する。
お江の長女・完子姫を妻に迎えており、徳川と朝廷を結ぶ貴重な人材として活躍。猪熊事件(作中では「宮中重大事件」)の際は容赦なく公卿を断罪する。
演じる山下規介は、脚本を担当したジェームス三木の息子。
広橋兼勝:石橋雅史
武家伝奏。幕府の圧力と朝廷の板ばさみになり苦労する姿は視聴者の涙?を誘った。
娘は後陽成天皇の女官である広橋局。
三条西実条:森田順平
中院通村:井川哲也
勧修寺光豊:井上倫宏
中和門院(近衛前子):山口果林
前田利家:北村和夫
高台院(北政所、まんかか様):草笛光子
完子:野村知沙→前田亜季→小川範子
天海:金田龍之介
金地院崇伝:大河内浩
林道春:寺尾繁輝
神龍院梵舜:杉崎昭彦
見性院:丹阿弥谷津子
徳川光圀:中村梅雀(幼年期:タモト清嵐)
ナレーター兼物語の解説役。徳川頼房の三男で、家康の孫。
史書「大日本史」を編纂しながら歴史を振り返っているという設定で、しばしば時空を超えて物語中にも登場。横文字を使った解説をするなどいろいろカッ飛んだ人物。
「歴史は公平でなければならない」という信念を持ち、祖父であり、東照大権現として祀られる家康を批判することも憚らない。口癖は「今宵もお馴染みの顔でござる」。
中村梅雀は「八代将軍吉宗」で徳川家重、「功名が辻」で徳川秀忠を演じている。
佐々介三郎:浅利香津代
安積覚兵衛:鷲尾真知子
ニコニコ動画の中の「葵徳川三代」
ニコニコ動画の中では、映画並みの予算とセットを投じて作られた関ヶ原の戦いの映像がつとに有名である(ちなみにこの映像は後の大河ドラマやNHKの歴史番組にも流用されている)。
関連動画
関連項目
- 6
- 0pt