蒸気船ウィリー(原題:Steamboat Willie)とは、ディズニー短編アニメーションの一作品。
ミッキーマウスを主演とする記念すべき第一作目である。
概要
よく世界初の音声つきアニメーション(トーキー・アニメーション)と呼ばれていたが、実際にはこれが誤りであることが近年広まっている。実際に音声との調和はそれ以前に別のディズニー外の作品でいくつか行われていたのである。
この作品の歴史的な功績は、音楽のアニメーション映像をミックスさせたサウンドトラックアニメーションを確立させた点にある。
ちなみに元々の本作もサイレント映画として作られていた。しかし世界初トーキー映画「ジャズ・シンガー」の登場を見たウォルトは、今後トーキー映画が時代の主流になることを見越し、本作をサウンド付きアニメーションへと昇華させたのである。
また、本作は厳密に言うと第一作目ではない。それ以前に「プレーン・クレイジー」「ギャロッピン・ガウチョ」という作品が制作されており、それらにもミッキーマウスは出演している。ただし先に公開されたのは本作品であるため、ミッキーマウスのスクリーンデビュー作品という意味では誤りではない。
監督、制作、声優を全てウォルト・ディズニーが行なっている。作画はもちろんアブ・アイワークスを始め様々な人物が関わっているが、ミッキーマウスというキャラクターをスターに仕立てあげたのは紛れもなくウォルトのプロデュース力にあったと言っても過言ではないだろう。
先の『しあわせウサギのオズワルド』騒動から、ウォルトは本作品の配給会社を探すのには困難を極めたが、その末にいざ公開されると観客達のハートは瞬く間に奪われていき、ミッキーマウスのデビューを鮮烈に印象付けた。
その後、ミッキーマウスの短編アニメーションは既に制作されていた上記の二作にサウンドを付けて公開、こうしてミッキーマウスはスーパースターへの階段をあっという間に駆け上がっていくのであった。
ちなみに日本では2024年以前からパブリックドメインとなっている可能性がある(弁護士の福井健策氏によると、厳密には6つの説があり、そのうちの4説で既に著作権切れとなったと考えられている)が、ミッキーマウスのキャラクター自体にはしっかり著作権があるので、ソフト化が自由に出来るわけではないことを留意されたし。
アメリカ合衆国では2024年1月1日に著作権切れとなり、その影響でニコニコ動画にも動画が投稿されている。
内容
蒸気船ウィリーの乗員となったミッキーマウスが、調子に乗って船長の真似事をして怒られたり、オウムに馬鹿にされてキレたり、お仕事をしたり、いろんなものを楽器に見立てて演奏会を作り上げたり……。
ウォルト達の奇抜な発想から生まれる映像の数々は本作からありありと表現されている。
中には猫を振り回して悲鳴で音を作ったり、豚の乳をつついて母豚に声をあげさせたりなど残酷でブラックな内容もあるが、それは当時のミッキーマウスのやんちゃな性格を表しているに過ぎない。
ちなみにこれらのシーンは残酷が過ぎることから、販売会社の都合によってはカットされることもある。
しかしそんな残酷さの中にもしっかりとユーモアが確立されていたからこそ、人気が出たのだとも言える。
現在でも本作はミッキーマウスの存在にとって重要な位置を占めており、ミッキーマウスのゲーム化の際にはステージのモチーフになることが多い。ニコニコユーザーにはキングダムハーツⅡのタイムレス・リバーでお馴染みだろう。
ちなみにキャラクター「ピート」が食べている黒い塊は、「噛みタバコ」と呼ばれる、口の中で噛み砕いて摂取するタバコの一種である。当時の船内は火気厳禁であるため、船員の間で嗜まれていた。口の中に残った不要な唾は飲み込まず、外に吐き出して捨てる。
関連動画
関連項目
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