蕃神とは、
- 蕃人(外国人)が信仰する神、すなわち外来の神を意味する言葉で、日本への仏教公伝(仏教伝来)について論じる際に言及されることが多い
- ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの短編小説『The Other Gods』の日本語訳題名の一つ
- クトゥルフ神話における諸存在の分類の一つで、英語名は2.と同じ。別訳語は異形の神々
1の概要
外来の神の呼称としては他に今来神がある。また、神社の主神とは別にお客様扱いで祭られている神を客神と言うが、この用語も海外の神に使用されることがあった。京都には渡来系の人びとが信仰していた今木神の神社が存在する。
日本への仏教公伝の最初期には、仏は蕃神(あだしくにのかみ・となりのくにのかみ)と呼ばれ、新来のカミの一柱として認識されていた。
日本書紀によれば、欽明天皇の代に、試しに蘇我稲目に仏像を礼拝することを許したところ、疫病が発生し多くの死者が出た。蕃神を祀れば国神の祟りがあるとして仏像の礼拝に反対していた物部尾輿と中臣鎌子は、天皇の許可を得て仏像を難波の堀江に捨て寺を焼いた。
この後に風雲もないのに天皇の宮殿が炎上しており、これは仏罰というより「仏という神の祟り」として理解されていたのだろう。
崇仏論争と呼ばれた仏教導入派と反対派の対立は、次の代に当たる敏達天皇・蘇我馬子・物部守屋でも繰り返されたが、その記録中でも「仏神」は一貫して祟り神として認識されていた。
この代に、善信尼・恵善尼・禅蔵尼が日本における最初の出家者となった。
三人ともが尼僧なのは「仏という神に仕える巫女」としての役割を持っていたのではないか、と考えられている。
2の概要
『蕃神』は大瀧啓裕による訳題で、ラヴクラフト全集第6巻収録。新訳クトゥルー神話コレクション4に収録された森瀬繚訳もこれに準じている。他の邦題は、
- 『異形の神々』(山中清子訳、真ク・リトル・リトル神話大系5)
- 『異形の神々の峰』(山中清子訳、定本ラヴクラフト全集1)
- 『神々の山』(隅田たけ子訳、ミステリマガジン1970年11月号)
- 『べつの神々』(南條竹則訳、アウトサイダー -クトゥルー神話傑作選-)
1921年執筆、同人誌ファンタジー・ファンの1933年11月号に初掲載、のちにウィアード・テールズ1938年10月号に掲載された。
夢幻境ドリームランドを舞台にしたファンタジー・寓話物短編。
短編『北極星/Polaris』が初出の魔道書ナコト写本が再び登場し、『ウルタールの猫/The Cats of Ulthar』のアタルが成長して重要な役割を演ずる。
魔道書フサンの謎の七書(The seven cryptical books of Hsan)はこの作品が初出だが、ファンタジー・ファン掲載版では大地の謎の七書(The Seven Cryptical Books of Earth)と誤植されてしまった。
アタルと謎の七書は『未知なるカダスを夢に求めて/The Dream-Quest of Unknown Kadath』でも再登場することになる。
3の概要
ラヴクラフト御大が直接使ったにもかかわらず、クトゥルフ神話の成立と発展が進んだ結果、現在ではやや影が薄い用語となっている。
蕃神は簡単に言えば外宇宙から到来した異形の神々のことで、地球本来の神である大地の神々(gods of earth、大いなるもの)と区別される意味合いで用いられることが多い。
いわゆる外なる神と呼ばれている神々とほぼ同義(旧神を含む可能性も)であると説明されることもあるが、神々の分類に関する設定は作家によって違うことに留意すべきだろう。
この語の作品中の用法としては、ドリームランドの弱き大地の神々に干渉しようとする者を攻撃する恐ろしい存在(現在の主要設定ではナイアルラトホテップ)がまずひとつ、そしてアザトースの周囲で踊り狂っている盲目の神々(いわゆる外なる神の従者やその他の有象無象)がもう1つである。
クトゥルフ神話TRPGの古い版ではナイアルラトホテップ、及び実質ゲームオリジナル神であるグルーンがこれに分類されていた。後の版ではゲーム用語としては取り除かれている(NPCなど作品内の登場人物が使うことは可能性として当然ありえる)。
関連項目
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