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薬剤師(やくざいし)とは、医薬品の販売、開発、改良、安全管理、情報提供などを行う薬の専門家である。
概要
その重要性から、多くの国家で薬剤師に相当する職業には資格制度が敷かれている。日本においても薬剤師は国家資格となっている。
医師(医学部)、歯科医師(歯学部)を除く、医療系の国家試験では圧倒的に難しいと言われている。
国家資格ランキングなどでは歯科医師と同じぐらいのレベルにされていることが多い。しかしながら、薬剤師と管理栄養士の難易度を比較した場合、実際には圧倒的に薬剤師の方が難関ではあるが、サイトによっては同じような難易度になっていることもあるため、あくまでもランキングは参考程度にとどめよう。
ドラッグストアなどの小売業においては全ての薬を販売できる最強の資格で、病院に薬剤師が医療チームの一員として登場し始めたのは割と最近であり、昔の薬剤師は病院にはほとんどいなかった。歴史が浅いため病院においては医師や看護師が依然として立場が強い影響がある。しかし、今では病院薬剤師もかなりメジャーな就職先となったため、臨床で活躍する薬剤師も出てきている。
医師、歯科医師、獣医師が作成した処方せんに基づいて、医薬品を調剤、また供給することができる。ただし、処方せん医薬品を処方せんなしに、販売や授与を目的とした調剤はできない(薬剤師法第23条)。登録販売者とは違い、すべての薬を販売する権利を持っている。当たり前だが、登録販売者は処方せん医薬品を扱えないので疑義照会も調剤もできず、処方せん医薬品以外の医療用医薬品を販売する際も薬剤師による対面販売が必須となる。つまり、医療用医薬品は医師と薬剤師のみが扱える医薬品であり、一般用医薬品(OTC医薬品)、要指導医薬品(OTC医薬品)、医療用医薬品の全てを扱えるのは薬剤師のみである。また、医師の処方せんに唯一、異議を唱えることができる職種である。
医師も本来できる検査や治療行為の一部は、看護師、理学療法士、放射線技師、検査技師など各専門ごとのコメディカルに委託する形をとっているが、薬剤師の業務は独占業務である。そのため、独立した6年制課程必須の医療系資格の医師、歯科医師、薬剤師を医療3師と呼ぶこともある。つまり、薬剤師は医師とは違う分野で活躍する存在であり、例えば医師は病院・診療所で医療用医薬品を処方することはできるが、零売として薬局で医療用医薬品を販売、又は調剤できない。つまり、病院(処方)と薬局(販売、調剤)というように医師と薬剤師の権限と活躍する場所は異なっている(病院薬剤師はチーム医療のコメディカルであり、独立した形をとっているのは薬局やドラッグストア薬剤師のことである)。
ちなみに欧米などでは登録販売者に代わる資格がなく、OTC含めた医薬品販売、OTCの相談は薬剤師の役割であり、セルフメディケーションは薬剤師の仕事である。それぐらい日本はセルフメディケーションの意識が低いともいえる。アメリカはOTCを販売する資格はないが、OTCに関しての薬学的アドバイス、受診勧奨などを行うことは薬剤師以外は禁止されている。
処方せんに疑わしい点(併用禁忌や用量の誤りや不備など)がある場合、疑義照会を行う(処方せんを交付した医師に問い合わせ、必要ならば処方内容を変更してもらう)義務がある(第24条)。また、調剤の求めがあった場合、正当な理由なしに(たとえば医薬品の在庫がないなどを理由として)、これを拒むことができない(第21条)[1]。調剤した医薬品が適正に使用されるよう、患者側に情報提供や指導を行う義務もある(第25条の2)。さらに、患者などの個人情報を知り得た場合、これを正当な理由なしに漏らしてはいけないという守秘義務もある(刑法第134条)。
日本以外の薬剤師、特に先進国の薬剤師は地位が高い。例えばイギリスやアメリカなどの薬剤師は処方権を持っていたり、更にどこまで変更できるかは病院により決まりがあるが、薬剤師による処方の変更には医師の許可は必要ない。 また台湾やフランスなどは全ての薬の販売には薬剤師が必ず関与することとなっている(薬剤師以外は薬を販売できない)、ドイツなどでは医師は例外なく調剤が一切できないなど、挙げたらキリがない。
特に患者が医師の再診を受けることなく、処方箋1枚で繰り返し薬を受け取ることができるリフィル処方せんによる薬剤師の依存型処方権は海外では当たり前である。(病状が安定した患者において医師が期限を決め、処方箋を書き、その期限内であれば、医師を介することなく直接薬を渡す。薬剤師はモニタリング結果を薬歴や調剤録に記録をとり、薬剤師が再受診を必要とすると判断した場合は調剤は行わない。患者はその後主治医に受診をするという流れ。)
しかし、最近日本でも薬剤師の地位が向上しているのでリフィル処方せんはいつか導入されるかもしれない。
→導入されました。(2022年の診療報酬改定にて導入であり、実際の運用は2022年4月からとなる。)
疑義照会
主な業界
薬局薬剤師
※働き先としては人気で、給料も安定している。先生と呼ばれることも。海外では当たり前だが、日本で議論されているピルの販売などが認められた場合、薬局の重要性は高くなり、薬局薬剤師の地位向上に繋がることが予想されている。薬剤師のみにしか販売できない医療用医薬品を処方箋なしに扱う零売薬局も最近増加している。また、漢方薬局では漢方の販売が中心で、零売やOTC販売同様、カウンセリングに特化している。漢方の調合は薬剤師の独占業務である。
病院薬剤師
- 調剤業務 -特に薬剤師の抗がん剤の調製・監査は重要で、薬剤師が担当するようになってから事故の件数が明らかに減っている。
- 疑義照会
- 病棟業務 - 服薬指導やチーム医療など。
- 治療薬物モニタリング(TDM)業務 -薬剤師が医師に測定値の他に薬の具体的な服用量などのアドバイスのコメントを載せるように実施してから患者が有効血中濃度になっていることが非常に多くなり、薬物動態を習っている薬剤師ならではの仕事となった。
- 製剤業務 - 院内製剤… など
※仕事内容は高度であるが、一番給料が安く、薬剤師の立場も良くはない。基本的に先生は医師。一部病院などでは薬剤師が医師に処方提案を行っている。
ドラッグストア薬剤師
- OTC医薬品の管理
- お客さんの症状にあったオススメOTC医薬品の紹介
- 販売責任者としての役割
- 調剤併設型なら調剤、疑義照会も担当
- OTC医薬品や医療用医薬品に対する相談アドバイス
- 登録販売者へ医薬品知識の教育、指導…など
※一番給料が高く、薬剤師の立場も高い。先生と呼ばれることも。更に薬剤師に対する客からの信頼もドラッグストアでは高い傾向にある。登録販売者という資格がなかった2009年以前は全ての一般用医薬品の販売には原則的に薬剤師が必須であった。現在はむしろ、給料が高い薬剤師はドラッグストアでは貴重な存在となり、大半は低賃金で雇える登録販売者が多くを占めるようになった(しかし、ドラッグストアは薬剤師を高い給料で積極的に募集しており、薬局や病院に行く薬剤師もいるため単純に薬剤師不足な面もある)。会社によって程度や方針は異なるが、市販薬のみのドラッグストアで薬剤師がいる場合、登録販売者はレジや雑用を担い、薬剤師を薬のスペシャリストとして医薬品販売の接客に集中させることが多い。
免許
薬剤師の免許は厚生労働省による薬剤師国家試験合格者に与えられる(薬剤師法第3条)。薬剤師国家試験の受験資格は、薬学部の6年制課程を修了、卒業することで得られる。外国の薬学校を卒業、あるいは外国の薬剤師免許を受けた方で、規定された要件を満たした方にも受験資格は与えられる(第15条)。
薬学部は勉強が大変で科目が選択ではなく、ほぼ必修で全て埋められる。特に偏差値50以下の薬学部は留年率と退学率が非常に高く、強制的な転部も少なくない。更に肝心の国試合格率も非常に低い。
とは言っても、偏差値60以上の普通に頭が良い私立大学でも他の学部に比べると留学率はかなり高いため油断はいずれにせよ出来ない模様。
また私立の学費は6年間でだいたい1,300万円と医学部程ではないにしろ高いので、お金持ちでないと基本的に無理である。
合格率
薬剤師国家試験は、2011年度の出題基準の改定以降、難しくなったと言われ、合格率が下がっていることからも確認できる。ただし、2011年度の合格率は高く、前年、前々年に薬剤師が不足したことが影響しているとも言われる。近年(2016年時点)の合格率は全国平均で約60%だが、2016年の第101回目は易しく、合格率が高い。しかし厚生労働省によって公開されている大学別合格率によると合格率は大学によってかなり差があり、合格率100%の大学があるかと思えば、受験者の半分以下しか合格できていない大学(第101回時)などもある。
また、CBT(4年次に国内全ての薬学部で実施される共用試験。合格しなければ実務実習に臨む準備ができていないとみなされ留年する)や卒業試験なども実施されているため、公表されている合格率よりも真の合格率を見る必要もある。つまり、一定の基準を満たさないと見なされた学生は進級や卒業ができないため、そもそも国家試験の受験資格が与えられないのである。
4年制時代の薬学部には今ほどFランはなく、6年制になった今はFランと呼ばれる大学が新設としてたくさんできたが、4年制の時に比べて明らかに国家試験自体は難関になっており、暗記だけでは太刀打ちできない思考重視の試験となっている。また、偏差値60以上ある薬学部も6年制になってから、留年率がかなり高くなっているので、6年制薬剤師が難関となったというのはFランのことを踏まえても事実である。
合格率の操作
上記のように薬剤師国家試験は大学別の合格率が公開されている。そのため、「『この大学は国家試験合格率が低い』と見なされることを恐れる一部の大学では、国家試験に受からなさそうな学生を卒業試験で落とすことに熱心になる」と噂されてきた。
これが真実ならば、「知識が不十分な学生をそのまま世に出さず卒業試験で篩い落とす」「卒業試験のハードルを高めることで学生らの勉強への必死さを高める」という大義名分はあれど、ある意味「見かけ上の合格率の操作」にあたり、薬剤師を目指して受験大学を選ぶ学生や保護者の判断を歪める元にもなってしまう。だが問題視されつつも、そういった行為が実際にどの程度行われているのかは不透明であった。
しかし2015年の第100回国家試験からは厚生労働省によって出願者数と受験者数が公開されるようになり、実態が白日の元に晒された。それによると、一部の大学では確かに異常に出願者数に比べて受験者数が少なかった。最も甚だしい幾つかの学校では、卒業見込み出願者数のうちなんと約4割しか受験していなかった。つまりそれらの大学では「6年生の約6割が卒業試験で落とされ国家試験の受験資格が得られなかった」という背景があったと思われる。その学校が仮に新卒者国家試験合格率7割を誇っていたとしても、出願者全員を分母とした場合で考えると「出願した6年生の3割未満しか薬剤師資格を得られなかった」ことになる。
免許取得後の進路
"難関"の国立薬学部卒は薬剤師免許を取りながらも、製薬会社(医薬品メーカー)の研究職などに勤めることが多く、私立薬学部卒は薬剤師免許を取って、薬剤師として働く場合が多い。しかし、MRなら私大卒でも薬剤師にはならずにまずはMRとして働く場合もある。また、薬局、病院、ドラッグストア以外にも学校薬剤師などもある。
時給800円程度の薬局やドラッグストアのアルバイトでも、薬剤師免許を取っていると時給が約3,000円〜4,000円になり、条件が良ければ時給5,000円の場所もある。安くても大体時給2500円以上である。そのため薬剤師とは全く関係ない仕事をしながら、バイトで働く人もいるようだ。
このように薬剤師及び薬学部卒の働き先は多種多様である。
一覧
ニコニコ大百科に記事のある薬剤師の一覧。薬剤師としてではなく、他の分野での活動で有名な人物の記事が多い。
- いわし@超ビビリ(薬物(解説)中毒の人)
- 岩永徹也
- オオキノブオ
- オットー・カリウス
- ケツメイシ - 音楽グループ。メンバー4名のうち、Ryoと大蔵が薬剤師免許を有している。
- サポニン
- 武内直子
- はお(薬剤師)
- ppパナップ
- 松本純
- 薬師るり
- 横溝正史
関連動画
関連商品
関連項目
外部リンク
脚注
- *調剤を拒否できる正当な理由とは、処方箋に疑義があるが処方した医師に連絡がつかない場合、薬剤師の不在や病気、あるいは災害などによって調剤ができない場合、病院の調剤所において院外処方箋による調剤を求められた場合などと考えられる
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