藤井聡太(ふじい そうた)とは、将棋棋士である。2002年7月19日生まれ。愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。棋士番号307。
史上5人目の中学生プロ棋士であり、2021年現在、史上最年少でプロとなった棋士でもある。
棋歴
将棋との出会い~詰将棋の神童
5歳で祖母に教えられて将棋を始める。7歳でアマ初段として研修会に入会し、2012年に10歳(小4)で奨励会に入会する。すでにその時点で非凡ではあったが、藤井聡太の名は「詰将棋の神童」として将棋関係者の間で名を轟かせていた。
9歳で作成し「将棋世界」に投稿した作品が年間優秀作の一つに選ばれるなど、幼い頃より詰将棋作家として頭角を現す。一方、詰将棋の解答者としては2011年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦に小学2年生で初参加。大会の実行委員の1人でもあるプロ棋士の浦野真彦は「あんまり小さい子がいたんで(アマ初段レベルを対象にした)初級戦と間違えて来ちゃったのかな、と思ったら、(プロ棋士でも頭を悩ませる)超難問を普通に解けたので驚いた」と語る(この年、大阪会場で24人中13位)。
その後も小学4年で総合5位、小学5年で前半ラウンド1位と活躍し続け、2015年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦で並み居るトッププロや詰将棋解答の名手たちを差し置いてただ一人満点を取って優勝。この時、小学6年生でもちろん史上最年少優勝。その後も詰将棋解答選手権で活躍を続けている(後記)。
当時将棋連盟会長だった谷川浩司は、藤井の師匠である杉本に対して藤井の指導に関するアドバイスを送っている。将棋連盟会長が一奨励会員の指導方法にアドバイスをするのは極めて異例。その内容は「詰将棋は解くだけにして、作るのはプロ入りまで控えるように」というもの。詰将棋作りには独特の魅力があるため、作る方にはまりこんではいけない(解く方は棋力強化になるのでどんどん解いていい)という意味。谷川自身も詰将棋作家として非凡であり、この助言は真に迫ったものである。
奨励会入会~プロ入りまで
小学6年生で奨励会初段に入品し、小学生のうちにあっさり二段へ上る。そして2015年、史上最年少の13歳3ヵ月で三段昇段。2016年、初参戦となった第59回三段リーグを13勝5敗で1位通過。”地獄”と言われる三段リーグを1期抜けし、2016年10月1日付で14歳2ヵ月で四段昇段(プロデビュー)を果たした。師匠の杉本昌隆に「藤井聡太をプロに出来なかったら、私は責任を取ってプロを引退する」とまで言わしめた才能は、奨励会入会からわずか4年で大輪の花を咲かせた。
なお、初段から四段昇段まですべて史上最年少記録であり、特に14歳2ヵ月での四段昇段は「ひふみん」こと加藤一二三の持っていた最年少プロデビュー記録「14歳7ヵ月」を62年ぶりに更新する快挙であった。
“中学生棋士”は加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明に続いて史上5人目で、三段リーグ1期抜けは2013年の三枚堂達也以来、史上6人目となる。
プロデビュー、破竹の連勝記録
史上最年少棋士のデビュー戦は、現役最年長棋士・加藤一二三(当時76歳)との対局になった。62歳差の対局は日本将棋連盟の記録に残っている公式対局では最大の年齢差。この対局に勝利し、史上最年少勝利記録(14歳5ヵ月)も更新した。なお、加藤はこの時点で19世紀生まれの棋士と21世紀生まれの棋士の両方と対局した史上初かつ唯一(この時点で19世紀生まれの棋士と対局経験のある現役棋士が加藤ただ一人だったため)の棋士となった。
このデビュー戦から公式戦では一度も負けることなく連勝を続け、デビューからの連勝記録を更新(以前の記録は10連勝)、竜王戦・棋王戦で本戦トーナメントに進出。その後も勢いはとどまることを知らず、6月26日には神谷広志の持つ28連勝の記録を抜き去り、デビューから無敗のまま歴代連勝記録単独1位となる29連勝を達成。しかし、7月2日に竜王戦決勝トーナメントで佐々木勇気に敗れ、連勝記録は29でストップした。
連勝中はマスコミの報道も日ごとに過熱し、連日ワイドショーで取り上げられるなど“藤井フィーバー”の様相を呈した。藤井の連勝の影響で加藤一二三を筆頭にプロ棋士のメディア露出が劇的に増え、その注目度の高さは1996年に羽生善治が七冠制覇したとき以上とも。28連勝、29連勝を達成した際にはテレビ各局でニュース速報のテロップが流れ、街頭では号外が配られる事態となった。
連勝記録詳細
連続昇段、最年少棋戦優勝
連勝ストップ後も順位戦で勝利を積み重ね、2018年2月にC級2組を9連勝でトップ通過を決め、五段に昇段した。中学生のC級1組昇級・五段昇段は史上初。また、朝日杯将棋オープン戦では本戦トーナメントで佐藤天彦、羽生善治、広瀬章人ら強豪棋士を撃破し優勝。「全棋士参加棋戦優勝」の昇段規定により、五段昇段からわずか約2週間で六段に昇段した。なお、15歳6ヵ月での全棋士参加棋戦優勝、六段昇段はいずれも史上最年少。
この年度は史上3人目となる勝率・勝利数・対局数・連勝の記録全4部門での1位を達成。また、年度60勝と勝率8割の同時達成も史上3人目。その他、特別賞(最優秀棋士賞と同格)、新人賞、名局賞特別賞も受賞した。
さらに六段昇段後わずか3ヵ月の2018年5月に、第31期竜王戦5組ランキング戦準決勝にて船江恒平を破り、「竜王ランキング戦連続2回昇級」の条件を満たして七段に昇段した。15歳9ヵ月での七段は加藤一二三の17歳3ヵ月を大幅に更新した史上最年少記録。
2018年度の新人王戦は、七段に昇段したことにより自身最後の出場となった。この新人王戦で決勝に進出、決勝3番勝負では出口若武を2連勝で破り優勝した。16歳2ヵ月での新人王戦優勝は、森内俊之の17歳0ヵ月を更新して史上最年少。なお、後に行なわれた新人王戦優勝記念対局(非公式戦)では豊島将之(当時二冠)に快勝した。
2018年12月に、通算100勝を史上最年少・史上最速・史上最高勝率にて達成(100勝達成時、100勝18敗、勝率 .847)。
2019年、朝日杯将棋オープン戦の本戦トーナメントで稲葉陽、糸谷哲郎、行方尚史、渡辺明ら強豪を撃破して優勝。同大会では羽生善治以来2人目の大会連覇を果たし、一般棋戦連覇の史上最年少記録(16歳6ヵ月)を更新した。
2018年度(2018年4月~2019年3月)は早過ぎる昇段の影響で参加可能な棋戦が減り、また一部棋戦でシード枠を得たこともあり対局数や勝利数は減少したが、前年度に引き続き8割を悠々と超える圧倒的な高勝率を記録。2年連続で勝率一位賞を受賞した。また、AI超えの妙手として絶賛された石田直裕戦の「△7七同飛成」が評価され、升田幸三賞も受賞。
2019年の竜王戦4組ランキング戦決勝では、菅井竜也を破り優勝。竜王ランキング戦3期連続優勝は木村一基、永瀬拓矢に続く史上3人目であり、デビューからの3期連続優勝は史上初。王将戦ではタイトル挑戦直前までいくも、広瀬章人に逆転負けを喫し初のタイトル挑戦はならなかった。この敗局が同年度の名局賞特別賞を受賞した。また、同年度も勝率8割を達成。3年連続の勝率8割達成は史上初。さらに勝率一位賞も3年連続で受賞した。
最年少タイトル挑戦、獲得から二冠へ
2020年、ヒューリック杯棋聖戦で勝ち上がり、挑戦者決定戦では当時二冠だった永瀬拓矢を破り初のタイトル挑戦を決める。17歳10ヵ月20日でのタイトル挑戦は、屋敷伸之が1989年に記録した17歳10ヵ月24日を4日更新する史上最年少記録。番勝負では当時三冠の渡辺明棋聖を3勝1敗で降し、初タイトルの棋聖を獲得した。17歳11ヵ月でのタイトル獲得は屋敷伸之の持つ18歳6ヵ月を更新する史上最年少記録。
続く王位戦でも挑戦者となり、木村一基王位相手に4連勝で奪取。史上最年少二冠(18歳1ヵ月)となった。また、タイトル2期獲得の規定により八段に昇段。こちらも史上最年少八段となった。
竜王戦3組ランキング戦も勝ち上がり、決勝では杉本昌隆との師弟対決となる。この対局も勝利し、史上初の竜王ランキング戦4期連続優勝を達成。11月には、通算200勝を史上最年少で達成(達成時200勝40敗、勝率 .833)。
同年度の銀河戦では、決勝で糸谷哲郎を破り初優勝を果たした。また、順位戦ではB級2組を10連勝して、B級1組への昇級を決めた。朝日杯将棋オープン戦では、準決勝で渡辺明を、決勝で三浦弘行を破り、3回目の優勝を達成した。
2020年度は上記の活躍により、初の最優秀棋士賞を受賞。44勝8敗(勝率.846)の成績で、最多勝利賞、勝率一位賞を獲得した。4年連続かつ、4度目の勝率8割達成も史上初。また、終盤の長手数の連続王手をかわして逆王手に討ち取った棋聖戦第1局が名局賞に、タダ捨ての妙手「▲4一銀」が非常に大きな反響を呼んだ竜王戦2組ランキング戦準決勝(対松尾歩)が名局賞特別賞に選ばれた。さらに、棋聖戦第2局の「△3一銀」が升田幸三賞特別賞に選出された。
竜王戦2組ランキング戦では、決勝で八代弥を破り優勝。史上初の竜王ランキング戦5期連続優勝を果たした。
最年少タイトル防衛、五冠へ
2021年6月からは初となるタイトル防衛戦に臨んだ。棋聖戦では前棋聖の渡辺明を3連勝で降し、初防衛に成功。18歳11ヵ月でのタイトル防衛は史上最年少記録(以前の記録は屋敷伸之の19歳7日)。また、タイトル3期獲得の規定により九段に昇段。渡辺明の21歳7ヵ月を更新し史上最年少九段(18歳11ヵ月)となった。また10代での九段昇段は史上初となった。
王位戦では、当時竜王・叡王の二冠だった豊島将之が挑戦者となった。また、叡王戦では挑戦者決定戦で斎藤慎太郎を破り、豊島叡王に挑戦した。さらに、竜王戦では挑戦者決定戦で永瀬拓矢を破り、豊島竜王に挑戦した。王位戦は4勝1敗で防衛に成功。並行して行われていた叡王戦でも3勝2敗で奪取し史上最年少三冠(19歳1ヵ月)、更に竜王戦も4連勝で奪取し史上最年少四冠(19歳3ヵ月)となり、俗に「十九番勝負」とも呼ばれた3つの番勝負をすべて制する結果となった。
王将戦リーグ戦では開幕から5連勝し、最終局を待たずに挑戦を確定させた。渡辺明王将との番勝負に4連勝して王将位を奪取。四冠からわずか91日で史上最年少五冠(19歳6ヵ月)を達成。羽生善治の記録(22歳10ヵ月)を28年5ヵ月ぶりに更新した。
同年度の順位戦では10勝2敗の成績でB級1組をトップ通過。2022年よりA級順位戦に参加することになった。
一般棋戦”グランドスラム”達成、六冠達成、名人挑戦へ
棋戦 | 時期 | 結果 |
---|---|---|
名人戦 | (4-6月) | A級順位戦7-2名人挑戦へ |
叡王戦 | 4-6月 | vs出口若武 3-0防衛 |
棋聖戦 | 6-7月 | vs永瀬拓矢 3-1防衛 |
王位戦 | 7-8月 | vs豊島将之 4-1防衛 |
王座戦 | (9-10月) | 挑決T1回戦vs大橋貴洸負け |
竜王戦 | 10-12月 | vs広瀬章人 4-2防衛 |
王将戦 | 1-3月 | vs羽生善治 4-2防衛 |
棋王戦 | 2-3月 | vs渡辺明 3-1奪取 |
第7期叡王戦五番勝負では出口若武を3勝(1千日手)で下し、叡王位初防衛に成功する(叡王戦におけるタイトル防衛は史上初)。第93期棋聖戦五番勝負では永瀬拓矢を3勝1敗で下し2度目の防衛を果たす。
第63期王位戦七番勝負では豊島将之を4勝1敗で下し3連覇、通算タイトル獲得回数を10期とする。20歳1ヵ月での10期到達は最年少記録(羽生善治の記録・23歳4ヵ月を更新)で、更に初タイトル獲得から2年1ヵ月での10期到達は史上最速(中原誠の4年0ヵ月を更新)。
第35期竜王戦七番勝負では広瀬章人を4勝2敗で下し2連覇。第48期棋王戦では準決勝で佐藤天彦に敗れたものの敗者復活戦に回り、再び佐藤との挑決変則2番勝負を連勝し棋王戦初挑戦、3勝1敗で渡辺明から棋王を奪取。これにより羽生善治に次いで2番目となる六冠制覇を達成・最年少記録を更新した。第72期王将戦は勝てばタイトル通算100期となる羽生善治の挑戦を4勝2敗で退け防衛(棋王奪取は王将防衛後)。第81期A級順位戦は初参戦ながら7勝2敗で広瀬章人と同星の首位で終え、プレーオフに勝利して初となる名人挑戦を実現した。
2022年度の一般棋戦では銀河戦(2年ぶり2回目)、JT杯(初優勝)、朝日杯(2年ぶり4回目)、NHK杯(初優勝)を達成。前人未到の一般棋戦(全棋士参加が可能な棋戦)全棋戦制覇を達成した。また、2022年度に新設された非公式戦の新銀河戦も優勝している。
史上5人目の「竜王・名人」、史上初の八冠全冠制覇達成
棋戦 | 時期 | 結果 |
---|---|---|
名人戦 | 4-6月 | vs渡辺明 4-1奪取 |
叡王戦 | 4-6月 | vs菅井竜也 3-1防衛 |
棋聖戦 | 6-7月 | vs佐々木大地 3-1防衛 |
王位戦 | 6-8月 | vs佐々木大地 4-1防衛 |
王座戦 | 9-10月 | vs永瀬拓矢 4-1奪取 |
竜王戦 | 10-12月 | vs伊藤匠 4-0防衛 |
王将戦 | 1-2月 | vs菅井竜也 4-0防衛 |
棋王戦 | 2-3月 | vs伊藤匠 3-0防衛 |
第8期叡王戦は前挑戦者の兄弟子でA級唯一の振り飛車党である菅井竜也を挑戦者に迎え、最終局は2回の千日手局を含む3勝1敗(2千日手)で防衛し、連続獲得期数を3期に伸ばした(叡王戦の永世位規定が制定され、通算5期で永世叡王の資格が得られることが発表された)。第81期名人戦は渡辺明を4勝1敗で下し、羽生善治・谷川浩司・森内俊之・豊島将之に続く5人目の「竜王・名人」、羽生と並ぶ七冠を達成した。
第94期棋聖戦及び第64期王位戦はタイトル戦初挑戦となる佐々木大地を迎えての防衛戦となった。まず棋聖戦は3勝1敗で防衛し4連覇。王位戦も4勝1敗で防衛し、こちらも4連覇となった。
今までタイトル挑戦に縁が遠かった王座戦も初の挑戦権を獲得し、永瀬拓矢の名誉王座獲得か藤井の八冠全制覇かをめぐる五番勝負に。3勝1敗で奪取に成功し、前人未到の八冠全冠制覇を達成した(全冠制覇の史上最年少記録(21歳2ヵ月))。
竜王戦はその永瀬拓矢を挑戦者決定戦で破った伊藤匠が挑戦者となった。藤井と伊藤という合計年齢41歳の組み合わせでのタイトル戦は史上最年少記録(以前の記録は屋敷伸之と森下卓の第57期棋聖戦における合計42歳)。全8冠制覇後初となる防衛戦も伊藤を4-0で完封し大山康晴第十五世名人の持つタイトル戦19連勝の記録に並んだ。
24年1~3月の王将戦は今年度の叡王戦に続いて2度目の挑戦となる菅井竜也、棋王戦も今年度の竜王戦に続き2度目の挑戦となる伊藤匠がそれぞれ挑戦者となった。王将戦は4-0、棋王戦は3-0(1持将棋)で防衛し、前述の大山十五世名人の持つ記録を超えるタイトル戦21連覇の記録を樹立した。
一般棋戦ではJT杯は連覇。一方で、銀河戦・朝日杯・NHK杯はそれぞれ2年連続で決勝戦まで進出するも銀河戦は3年前の竜王戦決勝トーナメント(3組優勝により決勝T進出)で敗れた丸山忠久に、朝日杯は王座を奪った相手でもある永瀬拓矢に、NHK杯は昨年度と同カードとなった佐々木勇気にそれぞれ敗れ準優勝となった。なお、NHK杯で準優勝となったため年間勝利率歴代記録の更新は達成できなかった(歴代2位)。
最年少永世位獲得なるも、初の「八冠防衛」ならず
棋戦 | 時期 | 結果 |
---|---|---|
名人戦 | 4-6月 | vs豊島将之 4-1 (防衛) |
叡王戦 | 4-6月 | vs伊藤匠 2-3 (失冠) |
棋聖戦 | 6-7月 | vs山崎隆之 3-0 (防衛) |
王位戦 | 6-8月 | vs渡辺明 4-1 (防衛) |
王座戦 | 9-10月 | vs永瀬拓矢 3-0 (防衛) |
竜王戦 | 10-12月 | vs佐々木勇気(開催前) |
(対局相手、成績は2024年10月1日現在) |
4月から開幕する名人戦の対戦相手は名人1期の豊島将之が挑戦者として名乗りを上げ、4勝1敗で名人位初防衛を果たした。叡王戦は竜王戦・棋王戦に続き3度目のタイトル戦出場を果たした伊藤匠が挑戦者となった。前年度王座戦第2局から続いていたタイトル戦連勝記録が叡王戦第2局での敗北で16で途絶え、また、フルセットの上第5戦で敗北し初の失冠を経験することとなった。
6月から開催の棋聖戦は山崎隆之が約15年ぶりにタイトル挑戦となったが3戦全勝で防衛し最年少永世位(永世棋聖)資格を得た。王位戦は渡辺明がタイトル挑戦となったが4勝1敗で防衛し永世2冠(永世王位)を達成した。初となる王座戦防衛戦は前王座の永瀬拓矢が挑戦権を獲得してリベンジマッチが実現したが3連勝で防衛に成功した。
10月からの竜王戦は8月現在竜王1期の広瀬章人との決勝三番勝負を制し初のタイトル挑戦を実現したNHK杯選手権者でもある佐々木勇気が挑戦者となった。
棋風・人物
居飛車党の本格派で、特に角換わりを得意とする。後手番では初手で必ず△8四歩と飛車先の歩を突き、相手の得意戦型を真っ向から受けることが多い。詰将棋解答選手権5連覇に裏付けされた圧倒的な終盤力が持ち味だが、序盤・中盤も非常にミスが少なく緩急自在に指し回し、土俵際まで追い詰められてからの粘り腰も持ち合わせる。
指導した棋士がみんな口を揃えて「負けず嫌い」と評する程の負けず嫌い。師匠との練習将棋ですら負けて悔しがってたとか。母曰く「生活能力が低い」らしく、初めて1人で大阪の将棋会館に行った際には服と傘をすべて将棋会館に忘れてきたらしい。
集中力も凄まじいものがあるようで、風呂場のタイルを将棋盤に見立てて考えていたらのぼせた、将棋のことを考えながら歩いていたらドブに落ちた、などのおちゃめエピソードも。
50メートル走は6.8秒。幼いころは自宅の庭にある木によく登っていた。
かなりの活字好きらしく、沢木耕太郎や新田次郎、司馬遼太郎をよく読むとのこと。そのためかインタビューでは年齢離れした言葉のチョイスも光る(「望外の結果」「自分の実力からすると僥倖」など)。
将棋の研究に必要なパソコンを自分で作る自作パソコンが趣味のひとつで、CPUはAMDのRyzenをお気に入りに挙げている。当時AMDのCEOだったリサ・スーがそのことについて言及したツイートをしたこともあり、インタビューで「会ってみたい人」にリサ・スーと答えている。
29連勝中には日本将棋連盟から公式グッズとして揮毫入り扇子が発売され、販売開始からわずか1時間で売り切れた。新四段の公式グッズが作られるのは異例の事態である。藤井が幼い頃に遊んだ将棋セットや知育玩具に注文が殺到するなど、関連商品が次々に売れる現象も起きた。将棋そのものへの関心も高まり、子供向け将棋教室の申込みが急増した。
詰将棋解答選手権
詰将棋解答選手権では、2015年に史上最年少で優勝を果たして以降、2016年・2017年・2018年・2019年と優勝して5連覇(※大会記録)を果たしている。その勝ち方も圧倒的で、2016年には制限時間90分の前半ラウンドにて開始わずか20分で5問を全問正解。2017年にも開始わずか24分で前半ラウンド5問全問を解答(解答を誤記するケアレスミスで失点したものの、実質全問正解)して周囲を驚かせた。これではいけないと実行委員が気合の難問を用意した翌年も55分で前半ラウンド5問を全問正解し、「60分もたなかったか」「(詰将棋解答ルーチンを備えた将棋ソフトの)柿木将棋より速いのでは?」と関係者を嘆息させる。従来この大会の問題の難度は満点者が出ると驚きの声が挙がるほどであるが、2018年にはとうとうその反応もなくなった。
大会の実行委員長である詰将棋界のレジェンドこと若島正をして、「彼を発掘しただけでも、この会を開催していた甲斐があった」と言わしめたほど。自身も大会を連覇している斎藤慎太郎でさえ、「藤井くんの解答スピードは自分の3倍以上です」と脱帽している。
新型コロナウイルス感染症の流行のために2020年から2023年まで4年連続で大会中止となった間に八冠独占を果たしたため、大会が再開された2024年は開催日が棋王戦五番勝負の対局日と重なってしまい不出場で連覇が途切れる。ただし、自ら大会と同じ条件で問題に挑戦し、正解者はおろか部分点を獲得した者すらいなかった超難問として話題になった作品を「30分から40分で解いた」と報告している(その様子を実際に見分した者はいないものの、疑う者もいない)。
学校での姿
なお、世間が藤井フィーバーで湧いていた頃、彼が通う中学校では「えっ、フジイって将棋やってたの!?」という反応だったという。これは藤井聡太が、学校では一切将棋のことに触れていなかったためである。
そのころの藤井聡太といえば「普段から友人と鉄道の会話しかしていないただの鉄オタ」と周りに思われていたらしい。実際、筋金入りの鉄オタであり、本人も全く否定していないどころか、鉄道ファンを堂々と公言している。普段から、車掌の真似事をしたり、警笛音を録音しに行ったりと、いわば音鉄要素もあるが、本人はどちらかというと乗り鉄派だと言っている。またタモリファンである縁から、番組で彼と対談した際には並半端じゃない鉄道トークを繰り広げていた(タモリが鉄オタなのは有名)。ちなみに、一度鉄道に乗ったら、帰ったときは通過駅も含め、その駅名と巡行ダイヤを全て覚えて帰ったという信じられないような逸話がある。
なお、藤井聡太が初めてニコ生の解説に呼ばれたとき、待ってましたかのように鉄道に関する質問が来て、「好きな車輌は?」という質問に対し、笑顔で
「313系8000番台が来たら少しうれしいです」[1]
と答え、同席していた山崎隆之、貞升南含め、視聴者の大半が固まってしまった(そして、一部の鉄道ファンが「マニアックすぎるw」と苦笑コメを返していた)。
高校進学後も、学校での会話は鉄道に関するものが多いとの本人談。東京での対局後、新幹線ではなく敢えて在来線で名古屋へ帰ったり、学校の夏休みにはクラスメートと青春18きっぷで小海線に乗ったりしたという。2024年には、「鉄道の何に惹かれるのか」という問いにこう答えている。
「鉄道は社会を映しています。路線や車両は社会的要請を受けて造られたりしているので、その背景も含めていろいろと興味深いところが多いのかな、と思います」
「鉄道は当然、レールの上を走るので、例えば自動車などと比べると、ある意味で制約があるんですけど、その制約の中で公共交通としての輸送ニーズに応えられるかというところにいろいろな工夫があったり、社会との関わりの中にあるので興味深いなと思います」
高校卒業が間近になった1月末に高校を自主退学した。在学中にタイトルを獲得するなど多忙となり、卒業条件を満たすことが困難となったため。ただし、自主退学は高校進学を決めたときからの想定の範囲だったようで、「高校に2年間通い、棋士だけでは経験できないことをいろいろできた。だから卒業自体にこだわる必要もないのかなと。経験が生きる場面は、あると思います」と語った[2]。
中学高校時代のクラスメートには、後に囲碁のプロ棋士になったり男性アイドルになったりと、同じく技芸の道に進んだ者がいるのだが、クラスでは男子からも女子からも「フジイ」と呼ばれていた模様。
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/asahi_igo/status/1640615640305389568
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/info_smafla/status/1643358278372540416
成績
昇段履歴
- 6級(2012年9月)…奨励会入会
- 三段(2015年10月18日)
- 四段(2016年10月1日)…三段リーグ1位による昇段
- 五段(2018年2月10日)…順位戦C級1組昇級
- 六段(2018年2月17日)…全棋士参加棋戦優勝(第11回朝日杯将棋オープン戦)
- 七段(2018年5月18日)…竜王ランキング戦連続昇級
- 八段(2020年8月20日)…タイトル2期獲得
- 九段(2021年7月3日)…タイトル3期獲得
タイトル戦履歴
竜王 | 3期(第34期-2021年度~第36期) ※3連覇中(あと連続2期または通算4期で永世位資格) |
---|---|
名人 | 2期(第81期-2023年度・第82期) ※2連覇 |
王位 | 5期(第61期-2020年度~第65期) ※2024年度に永世王位資格取得 |
叡王 | 3期(第6期-2021年度~第8期) ※あと2期で永世位資格 |
王座 | 2期(第71期-2023年度~第72期) ※あと連続3期または通算8期で名誉王座資格取得 |
棋王 | 2期(第48期-2022年度・第49期) ※2連覇 |
王将 | 3期(第71期-2021年度~第73期) ※3連覇中 |
棋聖 | 5期(第91期-2020年度~第95期) ※2024年度に永世棋聖資格取得 |
一般棋戦優勝履歴
- 優勝回数:10回
将棋大賞受賞履歴
- 第45回(2017年度)特別賞・新人賞・最多対局賞・最多勝利賞・勝率一位賞・連勝賞・名局賞特別賞
- 第46回(2018年度)勝率一位賞・升田幸三賞
- 第47回(2019年度)最多勝利賞・勝率一位賞・名局賞特別賞
- 第48回(2020年度)最優秀棋士賞・最多勝利賞・勝率一位賞・名局賞・名局賞特別賞・升田幸三賞特別賞
- 第49回(2021年度)最優秀棋士賞・最多対局賞・最多勝利賞・名局賞
- 第50回(2022年度)最優秀棋士賞・最多勝利賞・勝率一位賞・名局賞・名局賞特別賞
- 第51回(2023年度)最優秀棋士賞・勝率一位賞・名局賞・名局賞特別賞
順位戦成績
期(開催年度) | 級 | 期首順位 | 勝敗 | 結果・備考 |
---|---|---|---|---|
第76期(2017年度) | C2 | 50人中45位 | 10戦全勝 | 成績首位でC級1組へ昇級 |
第77期(2018年度) | C1 | 39人中31位 | 9勝1敗 | 同星で4人並ぶも期首順位の差で昇級2枠を逃す (他3名は上位から近藤誠也・杉本昌隆・船江恒平) |
第78期(2019年度) | C1 | 36人中3位 | 10戦全勝 | 成績首位でB級2組へ昇級(2位は佐々木勇気) |
第79期(2020年度) | B2 | 25人中21位 | 10戦全勝 | 成績首位でB級1組へ昇級(2位は佐々木勇気) 第79期終了時点で順位戦21連勝中 |
第80期(2021年度) | B1 | 13人中11位 | 10勝2敗 | 順位戦連勝は22(史上2位)でストップ 成績首位でA級へ昇級(2位は稲葉陽) |
第81期(2022年度) | A | 10人中9位 | 7勝2敗 | 同星で広瀬章人と並びプレーオフ進出 プレーオフを制し名人挑戦。 |
名人 | 4勝1敗 | 渡辺明より奪取、名人就位(1期目)。 | ||
第82期(2023年度) | 名人 | 4勝1敗 | 挑戦者は豊島将之、名人防衛(2期目)。 | |
第83期(2024年度) | 名人またはA級 |
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
脚注
- 119
- 0pt