藤沢和雄とは、JRA・美浦トレーニングセンター所属の元調教師である。戸籍名は「藤澤和雄」。JRAでは人名表記を新字体に限定しているが、地方競馬やNHKの番組を中心に用いられる。
概要
1951年生まれの北海道苫小牧市出身。
元々ホースマンになるつもりはなかったというが、父の友人の牧場で馬産を手伝ううちに調教師を志すようになり、イギリスで厩務員として働く傍ら競馬について学んだ。
帰国後は調教助手となり、菊池一雄厩舎で二冠馬カツトップエースを手掛けた。しかし菊池が病死し厩舎が解散、藤沢は「ミスター競馬」野平祐二の厩舎に誘われ籍を移す。ここで巡り合ったのが皇帝シンボリルドルフ、そして岡部幸雄騎手であった。藤沢は当初ルドルフの調教もしていたが、野平があまりに楽しそうに騎乗するので調教を遠慮するようになったという。
1987年に独立して調教師となり、88年に厩舎を開業。93年にシンコウラブリイで初GⅠ制覇を遂げると、その後も破竹の勢いで活躍馬を量産。97年にはタイキシャトルの大活躍などもあり年間重賞13勝という新記録を樹立する。95年から2009年の間に調教師リーディングに輝くこと11回。まさしく無敵を誇った。2009年には史上13人目の通算1000勝を達成。現役ではただ一人の1000勝トレーナーである。
しかし2005年に主戦の岡部が引退すると、歩調を合わせるように藤沢厩舎の勢いにも陰りが見え始め、2006年のヴィクトリアマイルから8年もの間GⅠから遠ざかることとなる。2008年には95年から継続していた連続年重賞勝利もストップ。そうはいってもリーディングでは上位に来るし一流厩舎なのは変わらなかったが、一時の快進撃を思えば、という話である。
2014年に8年ぶりのGⅠ制覇を果たすと、2016年には管理馬のソウルスターリングが阪神JFを、サトノアレスが朝日杯FSを連勝。そして2017年、管理するレイデオロが日本ダービーを勝利し、厩舎開業から29年目にして悲願のダービー制覇を遂げた。
2019年からは管理馬のグランアレグリアがマイル路線で活躍。最強馬・アーモンドアイを2020年安田記念で下すなど、GⅠ4勝を挙げる。翌2021年、この年度をもって藤沢は70歳定年を迎えることとなっていた中で、グランアレグリアはヴィクトリアマイルを勝利、引退レースとなった第39回マイルチャンピオンシップでも有終の美を飾った。このマイルCS制覇を手土産とし、2022年2月28日に定年を迎え引退した。積み重ねた勝ち数1,570勝は、戦前の「大尾形」こと尾形藤吉に次ぐ歴代2位の記録である。管理馬は新規開業となる蛯名正義厩舎に大多数が引き継がれた他、藤沢自身は翌3月1日からJRAとアドバイザリー契約を締結し、競馬運営についての助言を行っていく予定となっている。
特徴
主戦騎手であった岡部幸雄と同様に「馬優先主義」を標榜し、馬に決して無理をさせないスタイルで知られる。そこには、開業5年目、まだ実績のない藤沢厩舎で「ダービーが取れる」と期待されたヤマトダマシイという馬が2戦目で予後不良となったことへの後悔が影響していると言われている。「一勝より一生」とは彼の言葉であり、1500勝を記念して美浦トレセンに建てられた石碑にもこの言葉が刻まれている。一方、一回の調教で強い負荷をかけない分毎日のように歩行運動をするなど、総合した運動量自体はけっこう多かったりする。
上記の影響もあってか、長らくクラシックに縁がなかった。2歳GⅠやNHKマイルカップは比較的早くに勝ったが、期待されたバブルガムフェローは骨折、スティンガーはずっこけ、シンボリクリスエスもゼンノロブロイもダービー2着。2004年にダンスインザムードで桜花賞を勝ちようやくクラシック勝利は果たしたが、牡馬クラシックは藤沢ダービー青葉賞からのローテーションに拘っていたこともあり(青葉賞からダービーを勝った馬はいない)、なかなか勝てなかった。しかし前述の通り2017年にレイデオロがダービーを勝ったことで、ようやく牡馬クラシックのタイトルを獲得した。
本人は常に笑顔を絶やさず、語り口も穏やか。TVなどではジョークを挟みながら軽妙なトークも見せる。
主な管理馬(GⅠ馬のみ)
- シンコウラブリイ('93マイルCS)
- バブルガムフェロー('95朝日杯3歳S、'96天皇賞(秋))
- タイキブリザード('97安田記念)
- シンコウキング('97高松宮記念)
- タイキシャトル('97-98マイルCS、97'スプリンターズS,98'安田記念,98'ジャック・ル・マロワ賞)
- スティンガー('98阪神JF)
- シンボリインディ('99NHKマイルC)
- ゼンノエルシド('01マイルCS)
- シンボリクリスエス('02、'03天皇賞(秋)、有馬記念)
- ダンスインザムード('04桜花賞、'06ヴィクトリアマイル)
- ゼンノロブロイ('04天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念)
- スピルバーグ('14天皇賞(秋))
- ソウルスターリング('16阪神JF、'17優駿牝馬)
- サトノアレス('16朝日杯FS)
- レイデオロ('17東京優駿)
- グランアレグリア('19桜花賞、'20安田記念、スプリンターズS、マイルCS、'21ヴィクトリアマイル、マイルCS)
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関連項目
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