蜜蜂と遠雷(みつばちとえんらい)とは、恩田陸の音楽小説である。
非常によく間違われるが、「蜂蜜(はちみつ)と遠雷」ではない。「蜜蜂(みつばち)と遠雷」である。
概要
国際的なピアノコンクールに挑む4人の若者たちをメインに葛藤や成長などを描いた青春群像小説。作者の恩田陸は以前から「音楽コンクールの最初から最後までをまるまる小説にする」というアイデアを持ってはいたが、実際には構想から12年という年月がかかり、この間に浜松国際ピアノコンクールを4度も取材したという(ちなみに、同コンクールは3年に1度の開催である)。
幻冬舎のPR誌『星星峡』で2009年に連載開始し、休刊後は『PONTOON』に移動して2016年まで足かけ8年に渡って連載され、2016年9月に同社から刊行された。2019年に幻冬舎文庫にて上下巻で文庫化。
本作の評価は非常に高く、2017年に第156回直木賞と第14回本屋大賞をダブル受賞した。恩田陸の本屋大賞受賞は『夜のピクニック』以来12年ぶり2度目で本屋大賞の2度受賞は史上初、同一作品での直木賞と本屋大賞の二冠も史上初。恩田陸の数ある作品の中でも代表作のひとつと言えるだろう。
2019年には石川慶監督により実写映画化もされた。また同年、映画化にあわせてスピンオフ短編集『祝祭と予感』が刊行された。
あらすじ
3年に一度開催される芳ヶ江国際ピアノコンクールは、若手ピアニストの登竜門として世界的に有名である。2週間にわたる同コンクールの第6回大会には、栄伝亜夜、高島明石、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、風間塵を始め多くの若手ピアニストたちが参加していた。第1次予選から2次・3次予選、そして本選へと進む過程で、4人のライバルたちは互いに刺激しあい成長していく。
主な登場人物
- 栄伝亜夜【演:松岡茉優】
20歳。幼少の頃からコンサートを開くほど有名なピアニスト少女だったが、13歳のとき母親の死をきっかけに消えた天才となった。今回7年ぶりに表舞台に現れ再起を図る。 - 高島明石【演:松坂桃李】
28歳。楽器店勤務の妻子持ちサラリーマンだが、自宅に練習室を作るなどピアノへの情熱は途絶えていない。年齢制限ギリギリでコンクールに応募し、"生活者の音楽"で勝負をかける。 - マサル・カルロス・レヴィ・アナトール【演:森崎ウィン】
19歳。ジュリアード音楽院在学中で、コンクールの優勝候補筆頭とされるイケメン。一時期日本に住んでいたことがあり、亜夜と一緒に練習もしていた。 - 風間塵【演:鈴鹿央士】
16歳。養蜂家の息子で、音楽教育を受けていないどころかピアノの所有すらしていないが、ホフマンに発掘され彼の最終兵器となる。その野性的な演奏は審査委員たちの間で物議を醸した。 - ユウジ・フォン=ホフマン
この2月に死去したピアノの神様で風間の師匠。晩年、「爆弾を仕掛けた」と述べて周囲を挑発していた。 - ナサニエル・シルヴァーバーグ【演:アンジェイ・ヒラ】
審査委員。ジュリアード音楽院の教授としてマサルの指導もしている。 - 嵯峨三枝子【演:斉藤由貴】
審査委員長。自身も有名なピアニストである。ちなにみシルヴァーバーグは元旦那。 - 仁科雅美【演:ブルゾンちえみ】
女性カメラマン。ドキュメンタリー番組の取材でコンクールに密着する。
なお、作中では登場人物たちがピアノを演奏するシーンがあるが、映画化の際はそれぞれ日本を代表する4人のピアニストが音の部分を担当(栄伝亜夜…河村尚子、高島明石…福間洸太朗、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール…金子三勇士、風間塵…藤田真央)。また第2次予選に登場する楽曲「春と修羅」は架空のものだが、映画化に合わせて藤倉大がカデンツァ(即興)部分も含めて実際に作曲している。
関連動画
関連項目
外部リンク
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 2
- 0pt