行列とは、
- 列を組んで並んでいる様 (queue)。日本人は諸外国と比べきれいに順番を守って列に並ぶ特徴があり、大規模な行列を自発的に組むことで知られている。ラーメン屋、正月の福袋、電車の乗り降りなどの待機列や、コミケなどの大規模なイベントでよく観察される現象である。
また、長い行列をつくる動物として蟻が代表的。 - 数字を方形に並べたもの (matrix)。当記事で説明。
- テレビ番組『行列のできる相談所』の略称。2021年9月までは『行列のできる法律相談所』。
2. の概要
1 | 2 | 3 | 4 | ||
5 | 6 | 7 | 8 | ||
9 | 10 | 11 | 12 |
上記の行列は (3×4) 行列である。 (1, 2, 3, 4) のような水平成分を行、 (2, 6, 10) などの垂直成分を列という。各成分を行と列の番号で指定できる。例えば7は (2, 3) 成分である。ベクトルは水平または垂直の成分のみからなる行列と見ることができる。
この記事では行列を表記するとスペースを取るので、(m×n)行列の成分表示A=[aij]m×nをする。明らかな場合は[aij]m×n=[aij]と書く。
行列同士の演算は以下のように定義される。i, j, k, l, m, nは自然数、x, aij, bijは通常は複素数もしくはその部分体である。
- 和 A+B=[aij]m×n+[bij]m×n=[aij+bij]m×n
- スカラー倍 xA=x[aij]m×n=[xaij]m×n
- 積 AB=[aij]m×n[bij]n×k=[a1jbi1+a2jbi2+…+anjbin]m×k=[Σl=1naljbil]m×k
このとき、次が成り立つ。
和に関してA, Bがともに(m×n)行列である必要がある。積に関してAが(m×n)行列である場合はBは(n×k)行列である必要がある。したがって、k=mでない場合はABが定義できてもBAは定義できない。また、k=mであってもm≠nである場合、行列のサイズが異なるので一般に交換法則AB=BAは成り立たない。さらに、k=m, m=nであっても交換法則は一般には成り立たない。
なぜこのような厄介な積になっているかというと、線形変換という変換があるためである。
(x2, y2)は(x1, y1)の線形結合(つまり定数倍したものの足し算)で表すという変換である。もう一度作用させる。
この時、(x3, y3)は(x1, y1)で表すと以下のようになる。
x3=(ea+fc)x1+(eb+fb)y1
y3=(ga+hc)x1+(gb+hd)y1
これは行列とベクトルで書くと以下のようになる。
x3 | = | e | f | a | b | x1 | ||
y3 | g | h | c | d | y1 |
つまり、行列の積は線形変換の合成を表現するのに都合がいいように定義されているのである。
k=m, m=nの場合である正方行列は座標系の変換を表現するのに都合がいいため、数学や物理で非常に重要な役割を持つ。理系の大きな壁となっているが、そのほかにも都合のいい性質を多く持つため、純粋数学はもとより、物理数学のほぼ全ての方面で当然のように現れる基本的概念である。しっかりと理解し習得しておきたい。
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関連項目
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