装甲車とは、装甲を備えた自動車のことである。一般的には投石や拳銃弾等から車内の人員を防護できる装輪車両を指し、装軌車両は装甲車両と呼ぶが、広義の意味では戦車や自走砲等も包括する。
装甲車には、
- 軍隊によって運用される装甲車両。通常は小銃(アサルトライフル)[2]以上の火器や、爆弾や砲撃の衝撃、破片からから車内を防護できる自動車を指す。(直撃には耐えられない)
- 暴動、騒乱の鎮圧、施設警備、重要防護対象人物の周辺警備にあたる、警察用の装甲車両。投石、拳銃弾、猟銃、火炎瓶等から車内や車両を盾とする機動隊等を防護できる程度の装甲を持つ自動車を指す。日本も含めて、現在ではバスやトラックを改造した威圧感を持たないように配慮された外観の装甲車が一般的だが、三菱F5形(日本)やキャデラック・ゲージV100のバリエーション(アメリカ)等、当初よりこの目的で開発された車両もある。武装は放水銃や催涙弾発射機等、非殺傷兵器である場合が殆どであるが、一部の治安が極度に悪化した地域では、機関銃やグレネード・ランチャーを装備した物騒なものもある。
- 消防・救助用の用途において、火災の熱や有毒ガスから車内を防護できる自動車で通常は耐火消防車と呼ばれるもの。通常は装甲車とは呼ばないが、大規模火災に投入することが前提の車両には、瓦礫等から防護するために装甲車に準じた防護能力を持った車両が存在する。そういった車両を区別して特に装甲車と呼ぶ場合がある。有毒ガスの発生やバイオハザード、火山災害で発生する高温の放出物質、放射線や放射性物質等の放出といった事態にも対応できるきわめて防護能力に優れた車両も存在する。また、軍用装甲車両から武装を撤去した上で消防、救出作業に必要な装備を施した車両も存在する。
- 現金輸送や要人輸送を目的として、武装を持たない民間用や文民用に特化した装甲車両。通常は拳銃弾やライフル、猟銃等による攻撃から車内を防護できる自動車を指す。その目的に使用するための改造キット(イギリスのアマゾンシリーズ等)も販売されている。極度に治安が悪化した地域では、武装を施したり、軍用装甲車両をその武装ごと投入している場合がある。
ここでは1.について解説する。
概要
軍隊や憲兵等の軍事組織で使用される装甲車は、積極的な戦闘を目的とする装甲戦闘車両と、戦闘以外の輸送任務を主目的としながら、砲撃等の攻撃から最低限防護できる装甲を施した車両に分けられる。一般に、装甲戦闘車両は比較的装甲が厚く、搭載する兵器も強力であることが多いが、輸送や後方警備を主任務とする装甲車は装甲、武装ともに軽便である場合が多い[3]。
また軍用の装甲車は、
走行装置がタイヤである装輪装甲車
走行装置を無限軌道とした装軌装甲車 …の2つに分類できる。[4]。
安心
- 「いつ突然撃たれても安心」といった心理的余裕がある。
- 撃たれながらもそのまま応戦・撤退、物陰に隠れるといった幅広い選択肢を取ることができる。
- 車両自体を盾として援護・前進・救出・撤退といった用途も可能。
- 最も簡単なものでは装甲の箱の車体+機関銃をポン付けした程度で、構造が単純。
- 既存の非装甲車両を装甲化するキットも発売されている。
非装甲車両と比較したデメリット
防御のための装甲に起因した欠点が多い。
- 通気性が悪く蒸し暑く乗り心地も良いとは言えない。
- 人間だけでなく、真夏の車内の照準装置・電子機器などは放熱に問題がある。
- 覗き窓自体が小さく視界が狭い。(操縦席の窓のみ大きい装甲車も存在する)
- もちろん、対戦車兵器に対しては戦車未満の防御力しかないため撃破されやすい。
- 重装甲なものほど燃費が悪い。
- 装甲があるぶん車体が大型化しがちで、状況によっては「ただのでかい的」になる場合もある。
装輪装甲車
軍事用途の装甲車のうち、装軌式ではなく、タイヤで走行する装甲車全般のことである。
軍事用途に用いられる車両としては、現在はたいてい専用設計である。ただし、本来は汎用ソフトスキン車両であったM998ハンヴィー(HMMWV高機動多用途装輪車両)を装甲化したM1113やそのシャシーや走行装置を流用したイーグル(スイス)やコブラ(トルコ)、トヨタのランドクルーザーや、日産のパトロール、ランドローバーといったクロスカントリーヴィーグルを改造した車両、或いはそのシャシーや走行装置を流用した車両、トラックを改造した車両や或いはそのシャシーや走行装置を流用したMRAPやコマンドウシリーズ(アメリカ)といった車両等も存在する。
戦車も含めた現用型戦闘車両という意味での装甲車としては、本来はそういった類の魔改造車が始祖であり、由緒正しい兵器である。
詳しくは「装輪装甲車」を参照のこと※執筆中
装軌装甲車
軍事用途の装甲車のうち、無限軌道(いわゆるキャタピラ)で走行する装甲車両全般のことである。
これらの始祖は、第一次世界大戦において開発投入された菱形戦車(イギリス)であり、そのプロトタイプとなったリトルウィリーもまた、ソフトスキン装軌車両を装甲化した闇改造車であった。
菱形戦車開発時の極初期の段階で既に、装甲兵員輸送車の開発も平行して進んでおり、当初の目的はどうあれ、自走法的な運用構想のサンシャモン戦車(フランス)、偵察や戦果拡大を企図した突破戦闘用のルノーFT戦車(フランス)等が戦車(どころか装甲車両全体)の揺籃期に相次いで開発されたことは興味深い。
以降、戦間期を経て第二次世界大戦になると、様々な任務を担う各種の車両が投入されることになる。
装甲兵員輸送車
APC(Armoured Personnel Carrier)と略される事も多い。
砲弾やその衝撃派と破片、銃弾等から歩兵を防護しつつ戦場に送り届けることを主任務とした装甲車両である。
歩兵戦闘車
大口径機関砲や60~120ミリクラスの主砲を備え、対戦車ミサイル等を装備し、車体にガン・ポートと呼ばれる銃眼を設けて歩兵の乗車戦闘を可能とし、歩兵を降車させた後も歩兵を戦場で火力支援することを可能とした、装甲兵員輸送車である。
装甲偵察車
後掲の偵察戦闘車と区別しがたいが、大体において、装軌装甲車の場合は2~4人程度の偵察要員を搭乗させて、戦場を偵察する装甲車両。
西側諸国でも装輪式(たいていは4×4や6×6程度の小型車両)が多いが、アメリカ軍にM114という装軌式の影の薄い正式車両が存在していた。
詳しくは「装甲偵察車」を参照のこと※執筆中
偵察戦闘車
車両固有の乗員のみを乗せて、機関砲や中口径(76~105ミリ程度)砲を搭載し、そういった武器を使って敵に攻撃し、相手の反撃を誘って戦闘力や規模を測る威力偵察任務等に使用される装甲車両である。対戦車ミサイルを搭載した車両は戦車を撃破することすら可能である。
指揮統制車
大隊規模以上の装甲化戦闘集団において、指揮官やその幕僚が乗車して、部隊の統率を図る目的の装甲車両である。
当初は、強力な通信機や地図、書類等を積載する程度で、大勢の人間が立って作業をするのに都合がいいように天井が高い程度が外見上の特徴であった。
しかし、電子技術の進歩により、大量のパーソナルコンピューターや上級指揮所とのやり取り、さらには配下の小隊レベルへの直接指揮などが可能になるとその搭載場所やその防護(それらに使われる装備品はたいていデリケートな使用を要する)、発熱に対応した強力なエアコン、それらの電子機器に供給する電力等で、従来、装甲兵員輸送車の改造でまかなってきた状況が許されなくなった。そのため現在では各種専用車両が開発されつつある。
他にも多数の種類の装甲車両が存在する。
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関連項目
脚注
- *自走榴弾砲、自走対空ミサイル、自走対戦車ミサイル、自走迫撃砲等。当初より車載を前提として開発された兵器を搭載している物も存在するのでややこしい。
- *これ以下の防護力を持たない車両のことを軍隊においては「ソフトスキン」と呼ぶ。
- *これらの境界は曖昧である。特に最近では戦車並みの装甲や戦車そのものの車体を流用した強防御でありながら軽度の武装しか施されていないアチザリットやナグマホン(イスラエル)や機関砲に耐えられる程度の防御能力ながら主力戦車も撃破できるチェンタウロ(イタリア)、戦車も含めたすべての装甲車両を撃破可能ながら従来のカテゴリーに含めがたいBTR-T(ロシア)などがある。
- *過去にはハーフトラックと呼ばれる旋回装置をタイヤで行いつつ、駆動と載荷重量を受け持つ装軌部分を持った車両が存在した。
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