西澤保彦単語

ニシザワヤスヒコ

西澤保彦(にしざわ やすひこ)とは、日本推理小説

概要

1960年高知県生まれ。アメリカのエカード大学卒。1990年、第1回鮎川哲也賞に「聯殺」(のちの『たちの』の原)を投稿、最終選考に残る。受賞は逃したが、招待された授賞パーティ島田荘司と知り合う。その後も賞に応募するものの落選が続いたが、島田に送った『解体諸因』が講談社宇山日出臣に渡り、1995年に同作で講談社ノベルスからデビュー

を構成する要素を端的に挙げていくと、特殊設定安楽椅子探偵ジェンダー論変態狂気。多作な作家で、作品によって方向性は異なるものの、大まかに分類すると、

  1. SF的な特殊設定の本格ミステリ (『七回死んだ男』『人格転移の殺人』《チョーモンインシリーズなど)
  2. 安楽椅子探偵もの (『麦酒の冒険』『聯愁殺』《腕貫探偵シリーズなど)
  3. 青春ミステリー (《タック&タカチ》シリーズ、『色の祈り』『幻視時代』など)
  4. 変態性癖や人間の狂気を全面に出したもの (『収穫祭』『狂う』など)

に分けられる。もちろん全作品がこれで分類できるわけではないし、複数の傾向を併せ持つ作品も多い。

一般的には西澤保彦といえば1のSFミステリ作家という側面がおそらく一番有名で、タイムループを本格ミステリに持ち込んだ代表作の『七回死んだ男』はSF設定ミステリとして名高い。SF的な特殊設定や超能力ルールを厳密に設定することで、そのルール上で論理的な推理を成立させる、という今では普通になった手法を広めた作家と言える。初期の頃はまだこの手法が一般的でなかったため、「ヘン格」とか「アチャラカ・パズラー」とか褒めてるんだか貶してるんだかよくわからない呼ばれ方をされていた。

SF要素のない作品でも、正統派のパズラーから、怒濤の推理合戦が繰り広げられる安楽椅子探偵もの、フェチシズム異常心理に基づいた異様なホワイダニットなど、多で意欲的、そしてクセのある作品を書き続けている。思わぬところでの論理の飛躍が西澤ミステリ読みどころ。

登場人物の苗字は一見では読めない名が非常に多い。

フェチシズムの話が多いのは、本人がわりと特殊な性癖を持っているため(具体的には『小説家 子の麗なる事件簿』のあとがき参照)。そのへんもあってレズSM小説家子を師と仰いでおり、そのまま子を主人公にしたシリーズまで書いている。ジェンダー論への言及も多く、シリーズの『両性具有迷宮』で第2回センスオブ・ジェンダー賞特別賞を受賞している。

本人く「質より量」ということで多作な部類に入り、作品は60作をえ、現在コンスタントに作品を発表し続けている。そのため今から全作品を追いかけるのはけっこう大変。SFミステリ方面なら代表作の『七回死んだ男』『人格転移の殺人』、安楽椅子探偵ものなら較的とっつきやすい《腕貫探偵シリーズから入るのがいいだろう。《タック&タカシリーズ時系列的に最初になる『彼女が死んだ』から時系列順に読むのを強く推奨したい(後述)。

主なシリーズ作品

《タック&タカチ》シリーズ(匠千暁シリーズ)

安槻大学に通う大学生(タック)、高瀬千帆(タカチ)、辺見(ボアン先輩)、羽迫由起子(ウサコ)の4人組が様々な事件に遭遇する青春ミステリーシリーズ。本筋にあたる長編シリーズでは、子癒着やジェンダー論をテーマにしたイヤミス的な側面もある。既刊10巻(長編6冊、連作長編1冊、短編集3冊)。

刊行順と作中の時系列が必ずしも一致せず、さらに版元がバラバラに分かれているため、読む順番が難しい。デビュー作『解体諸因』がシリーズ第1作だが、これはシリーズでは番外編にあたるのでなおさらややこしい。現在幻冬舎から出ている7冊がおおむね本編ストーリー講談社文庫の2冊と祥伝社文庫の1冊が読まなくても本筋に影はない番外編、と理解しておけば良い。

具体的に長編の時系列は、

  1. 彼女が死んだ幻冬舎文庫) ※角川文庫版もあり
  2. 麦酒の冒険 (講談社文庫) ※番外編
  3. たちの幻冬舎文庫) ※角川文庫版もあり
  4. スコッチゲーム幻冬舎文庫) ※角川文庫版もあり
  5. 依存幻冬舎文庫)
  6. 身代わり (幻冬舎文庫)
  7. 解体諸因 (講談社文庫) ※番外編

という順番になる。シリーズでは『依存』の評価が最も高いが、いきなり『依存』から読むのは断じてオススメしない。特に本編ストーリーは各巻のテーマの関わり合いや、4人の関係性の変化も読みどころなので、可な限り時系列順に読むのを強く推奨する(番外編はいきなりそこから読んでも可)。短編集2冊は収録作の時系列バラバラなので、長編を一通り読んでからの方が良い。

2000年に出た『依存』でシリーズとしてはだいたい決着がついており、2001年に『亭論処』、2003年に『貴婦人』と短編集2冊が出たあとはしばらく音沙汰がなく、2009年に9年ぶりの長編『身代わり』が刊行。そこからまた長くストップしていたが、2016年に3冊の短編集となる『悪魔を憐れむ』が刊行された。

《チョーモンイン》シリーズ(神麻嗣子の超能力事件簿)

ミステリ作家保科緒の元に現れた美少女麻嗣子は《超能力者問題秘密対策委員会》、略して《チョーモンイン》の見習い出張員。美人女警部・緒を加えた3人が、超能力者が起こした事件のを追うSFミステリーシリーズ。既刊8巻(長編3冊、短編集5冊)。一部の初刊本を除いてイラスト水玉螢之丞が手がける。

SFミステリ作家としての西澤保彦の看シリーズミステリ超能力を出すのは普通は反則だが、本作は超能力の存在を前提に、「なぜわざわざ超能力を使ったのか」というホワイダニット、「超能力の使用によって何が起こったのか」というホワットダニットを中心とした解きを、あくまで論理的に行う本格ミステリである。

これまた時系列若干乱れており、長編1冊の『幻惑密室』が第1話ではなく、刊行順では3冊の短編集『念密室!』の第1話が一番最初の話。なので刊行順ではなく『念密室!』から読むのもいいかもしれない。

シリーズとしても色々と伏線られ、作者本人は途中まで完結させる気満々でいたようだが、後半は番外編的なエピソードが多くなり、2006年に出た第8巻を最後に刊行はストップ現在は全巻新品では入手できなくなってしまっている。水玉螢之丞2014年に亡くなってしまい、今や完結は望み薄。

《腕貫探偵》シリーズ

櫃洗のあちこちに、「市民サーヴィス課臨時出張所」のとともに現れる、腕貫をはめた没の公務員。彼は相談者の話から、驚くべき推理を組み立てる……。コミカル安楽椅子探偵連作シリーズ。既刊6巻(長編1冊、短編連作4冊、番外編1冊)。

安楽椅子探偵ものは西澤保彦が得意とするジャンルで、同系統の作品の中でもコミカル読みやすく、西澤作品にありがちなジェンダー論や異常心理や怒濤の推理合戦といった濃い要素は(他にべれば)控えめなので、西澤初心者にもとっつきやすい作品。そのためか、初刊時にはあまり話題にならなかったが、実業之日本社文庫で文庫化されてから売れ始め、今ではひょっとしたら一番売れている西澤作品かもしれない。

『モラトリアム・シアター』は長編、『必然という名の偶然』は櫃洗舞台だが腕貫探偵の出てこない番外編

作品リスト(刊行順)

は《タック&タカチ》シリーズは《チョーモンインシリーズ、◆は《腕貫探偵シリーズ

斜体現在新品で入手できないもの。

  1. 解体諸因1995年講談社ノベルス1997年講談社文庫)
  2. 欠の名探偵1995年講談社ノベルス1998年講談社文庫)
  3. 七回死んだ男1995年講談社ノベルス1998年講談社文庫→2017年講談社文庫[新装版])
  4. 殺意の集う1996年講談社ノベルス1999年講談社文庫)
  5. 人格転移の殺人1996年講談社ノベルス2000年講談社文庫)
  6. 彼女が死んだ1996年カドカワノベルス2000年角川文庫2008年幻冬舎文庫)
  7. 麦酒の冒険1996年講談社ノベルス2000年講談社文庫)
  8. 死者は黄泉が得る1997年講談社ノベルス2001年講談社文庫)
  9. 瞬間移動死体1997年講談社ノベルス2001年講談社文庫→2012年講談社文庫[新装版])
  10. 複製症候群1997年講談社ノベルス2002年講談社文庫)
  11. たちの1997年カドカワノベルス2001年角川文庫2008年幻冬舎文庫)
  12. 幻惑密室 麻嗣子の超能力事件簿1998年講談社ノベルス2003年講談社文庫)
  13. スコッチゲーム1998年カドカワノベルス2002年角川文庫2009年幻冬舎文庫)
  14. ストレートチェイサー1998年カッパノベルス2001年光文社文庫)
  15. 猟死の果て1998年、立書房→2000年ハルキ文庫)
    → 殺す2011年幻冬舎文庫[題])
  16. 実況中死 麻嗣子の超能力事件簿1998年講談社ノベルス2003年講談社文庫)
  17. ナイフが町に降ってくる1998年、ノン・ノベル2002年祥伝社文庫)
  18. 密室! 麻嗣子の超能力事件簿1999年講談社ノベルス2004年講談社文庫)
  19. 色の祈り1999年文藝春秋2003年、文文庫→2014年、中公文庫)
  20. 夢幻巡礼 麻嗣子の超能力事件簿1999年講談社ノベルス2004年講談社文庫)
  21. 依存2000年幻冬舎2001年幻冬舎ノベルス2003年幻冬舎文庫)
  22. なつこ、孤に囚われ。2000年祥伝社文庫)
  23. 転・送・密・室 麻嗣子の超能力事件簿2000年講談社ノベルス2005年講談社文庫)
  24. 亭論処 の事件簿2001年、ノン・ノベル2008年祥伝社文庫)
  25. 2001年カッパノベルス2005年光文社文庫)
  26. 異邦人 fusion2001年集英社2005年集英社文庫)
  27. 両性具有迷宮2001年双葉社2005年双葉文庫)
    → 小説家 子の妖艶なる事件簿 両性具有迷宮2015年実業之日本社文庫[題]) 
  28. 聯愁殺2002年、原書房→2010年、中公文庫)
  29. 人形幻戯 麻嗣子の超能力事件簿2002年講談社ノベルス2005年講談社文庫)
  30. ファンタズム2002年講談社ノベルス2006年講談社文庫)
  31. リドルロマンス 迷宮浪漫2003年集英社2006年集英社文庫)
  32. ロジック 人間マジック2003年文藝春秋2006年、文文庫)
  33. 笑う怪獣 ミステリ劇場2003年新潮社2007年、新潮文庫→2014年実業之日本社文庫)
  34. 貴婦人2003年幻冬舎2005年幻冬舎文庫)
  35. いつか、ふたりは二匹2004年講談社ミステリーランド2013年講談社文庫)
  36. ズラー 論理エンタインメント2004年集英社2007年集英社文庫)
  37. 方舟は2004年カッパノベルス2007年光文社文庫→2016年双葉文庫)
  38. 生贄を抱く 麻嗣子の超能力事件簿2004年講談社ノベルス2007年講談社文庫)
  39. 腕貫探偵2005年実業之日本社2007年ジョイノベルス2011年実業之日本社文庫) ◆
  40. フェティッシュ2005年集英社2008年集英社文庫)
  41. キス2006年徳間書店2011年、徳間文庫)
  42. 魔法のおすそわけ2006年、中央論新社→2011年、中公文庫)
  43. ソフトタッチ・オペレーション 麻嗣子の超能力事件簿2006年講談社ノベルス2010年講談社文庫)
  44. 収穫祭2007年幻冬舎2010年幻冬舎文庫[上下巻])
  45. 腕貫探偵、残業中2008年実業之日本社2012年実業之日本社文庫) ◆
  46. 夢は枯れ野をかけめぐる2008年、中央論新社→2010年、中公文庫)
  47. スナッチ2008年光文社2011年光文社文庫)
  48. マリオネットエンジン2009年講談社ノベルス
  49. 動機、そして沈黙2009年、中央論新社→2012年、中公文庫)
  50. 身代わり2009年幻冬舎2012年幻冬舎文庫)
  51. こぼれおちる刻の2010年講談社
  52. からくりがたり2010年新潮社2017年幻冬舎文庫)
  53. 幻視時代2010年、中央論新社→2014年、中公文庫)
  54. 必然という名の偶然2011年実業之日本社2013年実業之日本社文庫) ◆
  55. 赤い糸の呻き2011年東京創元社2014年、創元推理文庫)
  56. 彼女はもういない2011年幻冬舎
    → 狂う2013年幻冬舎文庫[題])
  57. 幻想姉妹探偵 ショパン2012年、中央論新社→2015年、中公文庫)
  58. モラトリアム・シアター produced by腕貫探偵2012年実業之日本社文庫) ◆
  59. ぬいぐるみ警部の帰還2013年東京創元社2015年、創元推理文庫)
  60. 探偵が腕貫を外すとき2014年実業之日本社2016年実業之日本社文庫) ◆
  61. 下戸は勘定に入れません2014年、中央論新社→2016年、中公文庫)
  62. さよなら明日約束2015年光文社2017年光文社文庫)
  63. 小説家 子の麗なる事件簿2015年実業之日本社文庫) ※2241の合本
  64. 回想ぬいぐるみ警部2015年東京創元社2017年、創元推理文庫)
  65. 帰ってきた腕貫探偵2016年実業之日本社) ◆
  66. 悪魔を憐れむ2016年幻冬舎
  67. 幽霊たち2018年幻冬舎
  68. 夢の通い路2019年光文社

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