親学(おやがく、「しんがく」ではない)とは、伝統的価値観に基づいた子育てのために、親が学ばねばならないとされているものである。
概要
提唱者は明星大学教授で、「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長でもあり、靖国神社崇敬奉賛会(会長は扇千景)が主催する「やすくに活性塾」の塾長を務める、男女共同参画会議員の高橋史朗。
日教組教育を厳しく批判し、戦前の教育を再評価する考え方の下、家庭の子育て力が減退していることに警鐘を鳴らし、伝統的な子育てに回帰するためにまず親を教育しなければならない、として考え出されたのが親学である。
「親学推進協会」という団体が結成されており、同団体を中心に親学を広める活動が行われている。
また、平成24年4月には、民主、自民など衆参両院の81議員による超党派議員連盟「親学推進議員連盟」が発足した。参加議員には、安倍晋三、鳩山由紀夫、森喜朗など自民・民主の現・元総理大臣を含むそうそうたる顔ぶれが揃っている。この議員連盟は、親学に基づいた「家庭教育基本法(仮称)」の制定や、青少年の健全育成のための有害情報の遮断、有害表現の禁止、インターネットの規制などを目指して活動している。
平成24年の5月に、大阪維新の会によって「家庭教育支援条例」が提出されたのもこの活動の一環であったが、発達障碍や自閉症関連の団体などから強い抗議を受け、橋下市長(当時)の支持を得られなかったために否決された。
その後、同5月には「親学推進議員連盟」の勉強会でも発達障害の原因が親の教育にあると受け取られかねない内容の講演がなされたとのことであり、その件について抗議が寄せられたため同年6月に議員連盟が謝罪した。
主な内容
主な主張の内容としては下の通り。他にも様々な項目があるので、興味のある人はググってください。
- 赤ん坊には子守唄を聞かせ、母乳で育てなければならない。粉ミルクは使わない。
- 授乳中はテレビをつけてはいけない。子供にテレビやビデオはなるべく見せない。
- 子供には早寝早起きさせ、朝食を必ず食べさせる。
- インターネットのフィルタリングを徹底し、有害情報から子供を守る。
- テレビやゲームなどのバーチャルから子供を遠ざけ、親子で演劇などを見る。
- PTAに父親も参加する、また教科書もチェックする。
- 遊び場確保のため、一般道路を解放。
- 企業は授乳休憩を設け母親を守る。
- 乳幼児健診などの機会に自治体が「親学」講座を実施。
- 幼児段階で基本的な道徳、思春期到来前に社会性を身につけさせる。
- 思春期以降は自尊心が低下しないように講じる。
- 発達障碍やアスペルガー、自閉症は親の愛情不足が原因で、伝統的子育てでは発生しない。
など。
特に問題視される事が多いのは、発達障害に関する内容である。現在の小児科学・精神科学では「発達障害は先天性の、あるいは幼少期の疾患・外傷に起因する、脳機能障害である」という学説が主流となっている。「子育て」に原因を求める主張がなされていた場合、こうした医学的知見を無視しているとの批判は避けられない。冷蔵庫マザー論との関連性も指摘される。
(なお母乳による育児の過剰評価についても、やや疑問符のつく点である。母乳育児は多くのメリットが指摘されてはいるが、粉ミルクを全く使用しない「完全母乳育児」となるとデメリットもまた多い。代表的な物のみを挙げても、母乳の出が悪い場合の栄養不良を招く場合があるし、また母乳は元々特定の栄養素が不足気味である。)
懐古主義に過ぎないとする批判もある。これは親学の教義が現実の忙しさと合致しないためである。また「女性の社会進出」に対する反発で、女性を押し込めたいものであるとも主張される。実際に日本会議は親学を男女共同参画社会への対案としている。
主な提言者である高橋史朗氏は精神科・小児科・産婦人科を専門とした医学者ではなく、教育政策や教育史を専門としている教育学者である。そのために、こういった医学的根拠の曖昧な内容が主張に混在してしまっているものかと思われる。こういった点について、森昭雄氏の「ゲーム脳」等との類似を指摘されることも多い。
実際、Wikipediaの森昭雄氏のページの記述(2014年3月20日閲覧)によると「高橋史朗が会長を務める感性・脳科学教育研究会の顧問となっている。その一方、森が主宰する日本健康行動科学会では、高橋が理事となっている。」とのことで、両者の間の高い親和性が認められる。また誕生学協会顧問で、胎内記憶があると主張する池川明氏も親学推進協会特別委員を務めるなどしており、池川氏も高橋氏と接点を持っている可能性がある。
また高橋氏の著作「家庭教育の再生」において、「星空を美しいと感じられないのはある働きかけをしていないためだ。遺伝子がオンにならない」として、村上和雄氏のサムシンググレート論を登場させていたりもする。この村上和雄氏の「サムシンググレート論」とは、「感情や祈りが遺伝子の発現に影響を与える」という話と、「人間の力を超えた大いなるものへの宗教的畏敬を持つべきだ」という倫理規範を組み合わせたもの。遺伝子の発現云々の部分は科学と言えなくもない点はあるのだが、それを「倫理」に結び付けようとしている点などは、親学と同様に科学的妥当性が疑問視されることがある。また村上氏自身は天理教の信者で、本人も自著でサムシンググレートが天理教の信仰対象「親神様」であると認めたことがあるとも言われる。
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関連項目
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