譚腿単語

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譚腿(弾腿)とは、武術の一種である。

概要

東トルキスタン(新疆)のトルファンで発生したムスリム武術

弾腿、譚腿、潭腿など複数の表記方法があるが、読みはどれも同じ(tan2tui3)である。
日本では"たんたい"と読むのが一般的で、「弾腿」と表記する場合には"だんたい"と読まれることもある。
西洋ではおもにピンインのまま「Tan Tui」と呼ばれる。

練習する上でのテキスト代わりであり、また自トレーニング材料ともなる套路(日本武道でいう"形"に近いもの)は元々アラビア文字で28路に区分されており、後年に12路、10路などに短縮され、一路ごとの内容がやや複雑化した。
現在では中国北方を中心に様々な場所で学ばれている。

 

特徴

シンプルで実直な技法、格を持つ。

その練習体系は身体的な基礎を育む点において評価されており、拳、八極拳、通備拳など北武術導者が基本プログラムとして好んで取り入れる。ただしそれぞれの本門に役立ち易いようアレンジされている場合がほとんどで、細部を見れば導者や団体ごとに内容が異なっている。
(例えば六合大の達人として有名だった李書文は、劈掛門の彪に通備十路弾腿を習い、晩年にはそれを独自に簡略化した六路弾腿の套路を、八極拳の基礎トレーニングとして息子婿、懐いてくる近所の子供たちなどに練習させていた)
そのようなことから様々な種類の譚腿が存在するが、論どれが優れているということはない。

また、北では時たま「譚腿の練習武術の初学に向いている」などと言われる。
これは習得が易であるという意味ではなく、訓練が武術的な身体操法を理解するのに適しているからである。

特定の蹴り技をの一つとしていることも大きな特徴であるが、これについては「技名としての譚腿」の項で述べることにする。

 

左右反復

どの系統にも共通する分かり易い特徴としては、架式(歩形)の変化が明確であることのほかに、套路に終わりがいことが挙げられる。

この武術の套路は、套路というよりは数動作ずつがまとまった移動稽古、つまり直線上で延々と同じ動きを繰り返しながら前進してゆくトレーニングプログラムである。その稽古が10通りにまとめられていれば十路譚腿、12通りにまとめられていれば十二路譚腿というような名前がその譚腿に付くこととなる。

套路はどれも左右両面の動きを交互に繰り返すよう作られており、練習者が右利きであろうと左利きであろうと、必ず表裏の動作を訓練することになる。
よって一連の動作が奇数回で終わることはなく、必ず偶数回をもって進み終え、収式を行う。

このような特性ゆえか、演武の場においてはあまり好まれない。

なお、譚腿を基本功の一環として取り入れている場合には上述の套路のみを練習することも多いが、他の武術がそうであるように、套路の動作はあくまで套路の動作であって技とイコールではない(外見的な動きすら違ってくる)ため、譚腿を一個の武術として身につける場合には、言うまでもなく別に招式を習得する訓練が必要となる。
もっとも先述の通り、基礎として取り入れられた譚腿の套路は導者の考えでアレンジされていることが多く、また、譚腿の技法が北武術としてはきわめてオーソドックスなこともあって、本門の練習と併せればその必要がい場合も往々にしてある。
またそのような場合には、単にこの套路をして譚腿と呼び、独立した技術体系としては意識しないケースも見られる。

※余談であるが、多くの譚腿門に共通する開門式(套路の開始時に行う儀礼的動作)は、その出自ゆえ「コーランイスラム教の経典)を読む仕を表している」と説明される場合がある。
かしこの開門式は、ごく基本的で応用のきく技撃(パリィパンチ)の記号として成立しており、コーラン説はあくまで一説の域を出ない。
ただし、本来読書の仕であったものが、時を経て技術的記号へと変化した可性も全には否定できない。

 

技名としての譚腿

また譚腿とは、この武術徴する基本的な蹴り技の名称でもある。
これをす場合には、「弾腿」との表記がよりイメージしやすい。

文字通り足を低く弾き出すシンプルな蹴りで、時に相手の体を掴みながら、時に拳で突きながらというように様々な招式があるが、技の特性上、現代の格闘技術としてみれば危険行為に分類されるようなパターンも多く、そうした招式は、今日々にとってはかえって非実用的であるとも言える。

ただし体軸や下半身を鍛える基本功としての有用性はいまだ変わりなく、現代的なコンセプトを持った団体でも、これを単独で練習させることがある。
基本功としてこの技のみを練習する場合も、両手はに構えたままであったり、套路の一部を切り取った複合動作であったりと、その方法はさまざまである。

また、他門や表演長拳等では、足の甲を下から当てる蹴りを総じて譚腿・弾腿と呼ぶ場合もある。

 

その他の技法

上記の技に代表されるように、この武術は譚"腿"という字面の割には足技が地味で、二起脚、旋腿などの一般的な技をのぞいて、見栄えの良い蹴りはほとんど使わない。
蹴りの種類自体も多いとは言い難く、単純にバリエーションのことをいえば、一般的に足技の少ないことで知られる八極拳などと同等かそれ以下である。
つまり、較的蹴りを重視する武術ではあるが、特定の蹴りに重きをおき、その使い方が多というだけで、決して多な蹴りがあるわけではない。

蹴り以外の技も、少なくとも見たには簡素、訥で直線的といえる。

 

体育としての譚腿

はからずも譚腿の套路は、一つ一つの動作を伸びやかに行うこと、それが簡潔であること、加えて左右両面の動きを満遍なく行うことから、純な体育としても有用なものとなっている。

そのため今日では、対打(二人ひと組での練習)や招式の訓練をカリキラムから省き、要易にした套路や簡単な基本功のみを選んで、単に運動める人向けに教える場合がある。

類似的スタンスとして、北武術への入門をたすけることを的に、套路のみを練習させる所もある。

そのような形での練習める場合、特定の武門に所属せずとも、太極拳架拳と同様に町のカルチャーセンターなどで学ぶことができる。清朝弾圧下の東トルキスタンならまだしも、現代の日本におけるそうした体育的向は、むしろ現実に即した武術の在り方ともいえるかもしれない。

もっとも、套路のみであろうと紛れもなく武術の一部(考えようによっては根幹)であり、教え方、教わり方によっては基礎も付くため、「武術としての譚腿」と「体育としての譚腿」の間に明確な線を引くことは難しい。

 

フィクションにおける譚腿

フィクションにおいては、映画カンフーハッスル」で行シンユー)が譚腿の使い手として登場するなどしている。

 

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譚腿

1 ななしのよっしん
2014/08/12(火) 16:55:34 ID: kQY63zk+IV
ウィキペディアにすら項としてないのにこんなに細かく・・・
ですッ!
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2 ななしのよっしん
2015/03/19(木) 13:58:45 ID: tdpufBEXqq
びっくりするほどの良記事
実際に習っている方かな?
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3 ななしのよっしん
2015/03/19(木) 14:06:16 ID: OT33pW04Nm
最近レスが…の所から来たがこれは良記事
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4 ななしのよっしん
2019/03/03(日) 15:23:13 ID: konDEOlAab
「千招有るを怖れず、一招熟するを怖れよ」
をまさに形にしたような武術だね
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5 ななしのよっしん
2019/10/16(水) 06:53:00 ID: ayCp5wvVzT
この記事、練習者が書いてますね(^^)
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6 ななしのよっしん
2020/06/19(金) 22:43:28 ID: 9zjTamnd2D
びっくりするくらいの良記事でお世話になりました!
映画ベストキッド2010』でモブ少年たちが鍛練してたのもたぶんこれですね。
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