貴志川線とは、和歌山市・和歌山駅と紀の川市貴志川町・貴志駅を結ぶ和歌山電鐵の鉄道路線である。
要項
終着駅に猫駅長がいるローカル線。全線単線で最高速度は60km、総延長14.3km。楽しい電車もある。
詳しい概要
1914年、日前宮・竈山神社・伊太祁曽神社の参拝客輸送(三社参り)を目的に開業した。
2003年、乗降客減少による営業不振を理由に南海電鉄が廃止を検討していることが明らかになる。当時の貴志川線は営業係数200台後半で、毎年4~8億円の赤字を垂れ流すという切羽詰まった危機的状況にあった。翌年貴志川線存続を求める任意団体「貴志川線の未来を”つくる”会」が発足。この団体の活動がNHK総合テレビの番組「難問解決!ご近所の底力」内で、当団体の活動が取り上げられたことで一躍有名になり、会員数が増加。活動が活発化。
2004年、南海電鉄が廃止表明。同時に自治体が第三セクターを公募する。
2005年、公募により事業主として岡山電気軌道が選ばれる。和歌山電鐵株式会社を設立。第三セクターとしてではなく、岡山電気軌道の100%子会社として再出発した(ただし現在も、保線作業や乗務員育成は未だ南海電鉄に委託している。)。自治体は資本参加しないものの、10年間で総額8億2千万円の財政支援を行うことで合意。
2007年、小山商店の飼い猫を駅長や助役に任命。たま駅長が誕生した。
2015年6月22日、たま駅長が急性心不全のため死去。和歌山電鐵が24日に発表。
享年16。人間の歳に換算するとおよそ80歳である。
19日より鼻炎の治療で療養していたが、22日に病院で死亡した。既に葬儀は近親者のみで行われ、6月28日午後0時半より社葬が営まれる。[1][2][3][4]
2015年11月、自治体からの財政支援を10年間延長することが発表された。営業成績は南海貴志川線時代と比べると飛躍的に改善し、財政支援額を足すと黒字化したものの単独では未だ年間数千万円の赤字を出しており、単独収支の黒字化には未だ至っていない。車両や設備の老朽化による修繕・更新費や安全対策費の出費が重くのしかかっているためであり、自治体側はこれを受けて車両や設備の修繕・更新費用に用途を限定する形で財政支援の延長が行われる。
電車
南海電鉄から引き継いだ和歌山電鐵2270系電車を2両6編成を運用。元々は高野線用ズームカーとして製造された南海電鉄22000系のうち、当初非冷房で落成したグループ(1975年頃に冷房改造を実施、その後1993年にワンマン改造が行われ2270系となったもの)である。
6両編成のうち4両が水戸岡鋭治がデザインした塗装・内装の列車に仕立てられている、また1両が2015年開催の国体PR電車としてラッピングされていた。それ以外は従来通り南海時代のままである。愛称は以下の通り。
- いちご電車:ラッピング車両第一号。いちごは旧貴志川町の特産品。色は白を基調にしており、赤のアクセント。別名いちごの練乳ミルクがけ電車。
- おもちゃ電車:色は赤。かつてのスポンサーの宣伝用車両(TJクロスネット。破産して今は存在しないが、車両は残った)の名残。当初はガンダムの模型やらガチャポンが置いていたが、今は紀州てまりなどの郷土玩具を飾っている。
- たま電車:白を基調に、たま駅長をキャラデザイン化したラッピング車両。内装も凝っており、中には自由に読める犬や猫にまつわる図書「たま文庫」が置いてある(なぜかドラえもんもある…狸のはずな…うわ、何するやめr)。シートは一部木製で、今ひとつ座り心地が良くない。後に、なぜか外装に耳まで付けられ、猫度がアップした。
- うめ星電車:和歌山の特産品である梅に星をイメージした、県外客向けの観光列車。梅を筆頭に、和歌山の特産が紹介されている。沿線は梅の産地ではないけどね。窓に木製の格子があったが、メンテナンスの問題かすぐに撤去された(案の定である)。
- きいちゃん電車(運行終了)…国体開催の宣伝用にラッピングしていた。内装はそのまま。これがうめ星電車となった。
- また、従来の南海車両でも吊り広告の部分に鉄道や猫にまつわる作品が展示されることが多い(猫の写真コンテストとか小学生の絵画コンクールなど)。
ただし全利用者に好評ではない。特にきいちゃん電車以外は、観光客向けオブジェクトを配置している為に座れる席数を減らしている。また、一部の車両は木製のゴツゴツした椅子であり、座り心地はすこぶる良くない。
そして、キャラクター強調などを施したコテコテな車両が、”公共交通”にふさわしいのか、という議論もあるが、通勤路線として黒字なら、こんなことしてねーよ!………沿線の人口減少、幹線道路の整備によるマイカーシフトなどもあり、観光路線で少しでも利用者を増やさないと、運営が厳しい事情をもっと知ってほしい。
更に、沿線には向陽高校、信愛女子短大、東高校など学校が多く、万が一廃線になったりすると、数百人以上の通学定期利用者が非常に困ることになり、また幹線道路はあるが路線バスが通っていないため、車の運転ができない交通弱者たちのライフラインもストップしてしまうのである(特に吉礼、山東あたりは幹線道路からも外れており、完全に孤立する)。
発車標・方向幕
長らく発車標が存在しなかったが、2015年3月29日、デジタルディスプレイ(LCD)式の発車標が設置された。貴志駅と和歌山駅に設置された。行き先・発車時刻の他に電車の種類が、日本語・英語で切り替わる。
方向幕は2010年頃迄は、黒地白抜きの和歌山-貴志と和歌山-伊太祈曽の2種類だった。
現在は、[和歌山][貴志][伊太祈曽]と行き先ごとに表示されるタイプに変更されている。
ダイヤ
日中は30分に1本運転。ラッシュ時には17~20分に1本、最大1時間4本運転される。
ラッシュ時の増発分4本中2本は、全て伊太祁曽始発・終着となる。
ただし貴志川線は途中交換可能駅が少ないため、線路容量的に和歌山駅~伊太祈曽駅間は17分間隔、伊太祈曽駅~貴志駅間は約30分間隔が運行可能本数の上限となる。このため完全に毎時4本運転とはならず、ラッシュ時の伊太祈曽駅~貴志駅間の運転間隔は逆に35~40分間隔と日中よりも少し間が空いてしまう。
略歴
- 1914年 山東軽便鉄道として開業
- 1931年 和歌山鉄道に社名変更
- 1957年 和歌山電気軌道が和歌山鉄道を合併
- 1961年 南海電気鉄道が和歌山電気軌道を合併。南海電鉄貴志川線となる。
- 1999年 「たま」が誕生
- 2005年 南海電気鉄道が廃止表明
- 2006年 岡山電気軌道が和歌山電鐵株式会社を設立し「和歌山電鐵貴志川線」として引き継ぐ
- 2007年 「たま」が駅長に就任
- 2015年 「たま」駅長が死去
駅一覧
全駅ICカード非対応である。関西私鉄のPiTaPa、岡山電気軌道発行のHarecaも利用できない。
ただし和歌山駅9番線の和歌山電鉄線出入口のみ改札が設置されている。これは阪和線からの乗換乗客が随一JRの改札を出ることがないようにする配慮である。
交換可能駅は3駅で、日中は基本的に日前宮駅と伊太祈曽駅で交換が行われる他、ラッシュ時などに伊太祈曽駅折り返しの区間運転列車を挟む際に岡崎前駅でも交換が行われる。
駅名 | ローマ字 | 駅員 | 交換 | ホーム | 接続路線 | |
---|---|---|---|---|---|---|
和 歌 山 市 |
和歌山駅 | WAKAYAMA | ◯ | | | 単式1面2線 9番線 |
JR西日本 和歌山線・阪和線・紀勢本線 |
田中口駅 | TANAKAMACHI | × | | | 単式1面1線 | ||
日前宮駅 | NICHIZENGŪ | × | ◯ | 島式1面2線 | ||
神前駅 | KŌZAKI | × | | | 単式1面1線 | ||
竈山駅 | KAMAYAMA | × | | | 単式1面1線 | ||
交通センター前駅 | KŌTSU-CENTER-MAE | × | | | 単式1面1線 | ||
岡崎前駅 | OKAZAKIMAE | × | ◯ | 島式1面2線 | ||
吉礼駅 | KIRE | × | | | 単式1面1線 | ||
伊太祈曽駅 | IDAKISO | × | ◯ | 島式1面2線 | ||
山東駅 | SANDO | × | | | 単式1面1線 | ||
紀 の 川 市 |
大池遊園駅 | OIKEYŪEN | × | | | 単式1面1線 | |
西山口駅 | NISHIYAMAGUCHI | × | | | 単式1面1線 | ||
甘露寺前駅 | KANROJIMAE | × | | | 単式1面1線 | ||
貴志駅 | KISHI | × | | | 単式1面2線 |
各駅の詳しい要項
廃駅
関連動画
関連リンク
- 和歌山電鐵株式会社
- 貴志川線の未来を”つくる”会。
- えきから時刻表 - [わかやま電鉄]貴志川線(和歌山~貴志)
- 接続コミュニティバス情報
- 紀の川コミュニティバス(岩出市と紀の川市を結ぶ循環コミュニティバス)
- 紀の川市地域循環バス(紀の川市内のみを結ぶ循環コミュニティバス)
関連項目
脚注
- *和歌山の駅長 三毛猫の「たま」死ぬ(NHK・2015年6月24日)
- *三毛猫「たま駅長」死ぬ 和歌山電鉄、28日に社葬(朝日新聞デジタル・2015年6月24日18時48分)
- *「たま」駅長死ぬ…16歳、5月に体調崩し入院(読売新聞・2015年06月24日19時21分)
- *「たま駅長」死ぬ―和歌山電鉄の名物駅長、心不全で 16歳、人間なら80歳 28日に社葬(産経ニュース・2015年6月24日18時26分)
- *貴志川線の未来を”つくる”会「貴志川線なんでも辞典・津秦駅」2015年1月6日閲覧
- 2
- 0pt