資本剰余金とは、企業の財務に関する言葉の1つである。
概要
定義
資本剰余金とは、貸借対照表の「純資産の部」にある項目であり、資本準備金とその他資本剰余金から構成される。
資本準備金とその他資本剰余金の定義についてはそれぞれの記事を参照のこと。
会社法での分類
企業会計では、貸借対照表の「純資産の部」において資本剰余金の項目を設け、その中に資本準備金とその他資本剰余金を位置させている。
会社法の準備金は、資本剰余金の中の資本準備金と利益剰余金の中の利益準備金の両方を指す。会社法の剰余金は、資本剰余金の中のその他資本剰余金と利益剰余金の中のその他利益剰余金の両方を指す。
以上のことを表にまとめると次のようになる。
資本剰余金 | 資本準備金 | 会社法の準備金 |
その他資本剰余金 | 会社法の剰余金 | |
利益剰余金 | 利益準備金 | 会社法の準備金 |
その他利益剰余金 | 会社法の剰余金 |
資本準備金は、企業会計の実務では「資本剰余金の一部である」と扱われ、会社法では「準備金であって剰余金ではない」と扱われる。
性質その1 資本金に比べて株主の配当にしやすい
資本剰余金は、株主総会の普通決議を1回または2回行うことによって株主への配当にすることができる。
その他資本剰余金は株主総会の普通決議を1回行うだけで株主への配当にすることができる。
資本準備金を株主への配当にするためには、株主総会の普通決議を行って資本準備金を「その他資本剰余金」に変化させ(会社法第448条)、株主総会の普通決議を行って「その他資本剰余金」を原資に配当する(会社法第453条)。
資本金を株主への配当にするには株主総会の特別決議が必要でハードルが高いのだが、資本剰余金を株主への配当にするには株主総会の普通決議だけで済みハードルが低い。
性質その2 資本金に比べて事業の基礎にしにくい
資本剰余金は株主から「配当にせよ」と要求される可能性が比較的に高い。このため、資本剰余金の見合いとなる資産は、銀行預金や現金といった流動資産の形態にしておくことが望ましい。
資本剰余金の見合いとなる資産は、土地・建物・機械といった固定資産の形態の形態にすることが望ましくないし、在庫といった流動資産の形態にしておくことも望ましくない。つまり、企業の事業の基礎として使うことが望ましくない。
資本剰余金の見合いとなる資産を土地・建物・機械といった固定資産の形態にして設備投資した後に株主から「資本剰余金の見合いとなる資産を配当にせよ」と要求されたら、即座に換金できない可能性があり、株主に「資本剰余金を固定資産にするのだから判断力の悪い経営陣だ」と判断される可能性があり、経営陣が株主によって更迭される可能性がある。
性質その3 企業の経営に理解がある株主が議決権比率の半数を占めているのなら、事業の基礎に使われる
企業の経営に理解があって自己の利益追求を抑制する株主が議決権比率の半数を占めているのなら、そうした株主が「資本剰余金を配当にせよ」と要求する普通決議を阻止する可能性が高いので、企業が資本剰余金の見合いとなる資産を事業の基礎に使うことができる。
関連項目
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