走ルンです[はしルンです]とは、JR東日本が開発した次世代通勤形電車の試作車両「901系電車」(のちに量産化がなされ、「209系電車」になる)以降の通勤・近郊形電車などに対する蔑称である。以下にて詳解する。
概要
「価格半分・重さ半分・寿命半分」というコンセプトを掲げて導入された901系電車であったため、「寿命半分」の部分を13~15年程度で廃車すると解釈した鉄道ファンや、このコンセプトに衝撃を受けたマスコミ記者などが、当時広く普及していた富士写真フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」をもじり、いささかセンセーショナル気味に使用したことに始まる。
参考までに、新幹線を除く一般的な鉄道車両の事実上の耐用年数は、同一形式を製造・投入する時期の長短にもよるが、一般的に25~30年程度である。それ以上の期間使用され続けている車両も多いが、それらの車両も製造後20~30年に「車体更新工事」という延命措置が行われるのが通常であり、「新造→車体更新工事」までの期間が耐用年数と考えられるからである(新造→廃車までの期間が耐用年数であるとは限らない)。税法上の耐用年数は電車が13年、気動車が11年となっているが、これは床下機器の換装や内装の改修時期を想定した年数と考えられており(60万円を超える大規模な修繕は、経理上修繕費ではなく減価償却費に計上する「資本的支出」となる可能性が高いため)、車両そのものが10数年で取替時期を迎えるからという訳ではない。
「2ちゃんねる 鉄道掲示板(当時)」において、ライトな鉄道愛好者層へ大々的に拡散された言葉であるという向きもあるが、「写ルンです」の商品としての全盛期は1980年代後期から1990年代末期、901系電車の実車登場は1992年、JR東日本が鉄道趣味誌や業界誌などへ構想(後述)・またプレスリリースなどを発表したことはそれ以前であろうこと、更に「2ちゃんねる」の創設は1999年であることを鑑みると、遅くとも1995年頃までに、鉄道ファンに加えてJR東日本の営業エリアである首都圏の居住者にもある程度認知されていた言葉と思われるので「2ちゃんねる(の鉄道板)から広まった」という俗説には、いささか疑問点がある。
「寿命半分」の本来の意味は、減価償却期間である13年間、大規模な補修無しで使用できるということであるため、減価償却期間終了後、直ちに廃車しても経営的には問題ない、ということとされている。もちろん、故障予防的な定期点検類を省くことができる、というコンセプトではない。ただし、209系910番台(901系B編成として竣工)の晩年は外板の凹凸が素人目にも目立つようになり、2006年末に営業線上から真っ先に引退している。
主に209系のほか(想定寿命とは関係なしに)E217系、E127系、701系、E501系、E231系、E531系、E233系などJR東日本が提唱する「新系列車両」群の各電車、および一種の「風評被害」として設計思想・車体構造や外観・工法が共通・類似の他社局鉄道車両(相模鉄道10000系電車・りんかい線70-000系電車・東急電鉄〔新〕5000系電車系列・小田急電鉄〔新〕4000系電車・東京都交通局10-300系電車など)がそう呼ばれることが多いようだ。209系以降の車両については、寿命の長短云々に関係なく「(209系の設計を源流とした)画一的な設計思想の(鉄道ファンとしてはいささか面白みに欠ける?)車両」と言う意味で「走ルンです」と言われている傾向にあり、言葉の意味合い自体が当初のものとかなり変わってしまっている。
近年は車両群の定着とともに、ネガティブなイメージ抜きにして一般的に使われたり、語源であるレンズ付きフィルム自体がデジタルカメラや携帯端末のカメラ機能などに取って代わられ、一部の特殊用途を除き写真市場からは駆逐されているため、もはや使い古された「ネタ」「死語」などとして飽きられている面もある表現でもある。
ちなみに、209系0番台の次に登場した「209系500番台」や、近郊型である「E217系」からは寿命半分の項が削られ、車体外板が標準的な厚さに戻されるなど、極端なコスト削減を追求する方針は改められている。これら209系0番台および、同番台から改番された2200番台以外の新系列車両には具体的な廃車計画が出されていないことからも「走ルンです」全体が特に劣る構造というわけではないのだろう。209系2200番台についても、暴走房総地区からさらに伊豆急に譲渡され第3の人生を送っているのでそこまで劣る構造では無いと感じる。
余談ではあるが「走ルンです」「写ルンです」ともに、登場時は「大量消費時代における典型的物品」のような印象を振りまいていたものの、実際には使用材料のリサイクルに配慮された設計思想である点も両者共通である。実際、E217系以降は想定使用年数を25年程度としているが、E231系以降の転配計画において余剰となった中間車を先頭車化改造せず製造後20年未満で廃車している。しかし、可能な限り部品をリサイクル活用することで合理化を図っており、この点においては209系の思想を受け継いでいると言えるであろう。また2020年代以降「既存車両を手入れしつつ長期間使う方式にシフトする」とJR東日本が発表している上、近年の在来線の新型車両の導入は横須賀線E235系を除くとE131系シリーズを中心とした短編成の地方線区向けが多いので、今後は首都圏の車両を一部廃車or先頭車化改造で短編成化して地方に回すと言った流れは見られなくなるかもしれない。(主要路線に新車を導入して地方線区向けに大掛かりな改造して20年程度しか使えない車両用意したりするより最初からその線区向けの車両製造したほうが40年使い倒せるし製造両数も少なくて済むしな)
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関連項目
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