超伝導とは、ある物質が極低温になると電気抵抗がなくなる現象のことである。
電磁気工学の分野などでは、「超電導」と表記されることもある。
概要
超伝導は、ある特定の物質(超伝導体)がある温度(転移温度、臨界温度)まで下げると相転移を起こし、電気抵抗が“0”になる現象である。1911年に発見された[1]。
近年では、液体窒素の沸点である77 K(-196 ℃)以上の温度でも超伝導になる物質が発見され、その物質を高温超伝導体と呼んでいる。
超伝導は、リニアモーターカーやMRI、SQUID、SMESなどに応用されている。
超伝導体が示す様々な特徴
完全導電性
超伝導体の最もよく知られている特徴は、この完全導電性、即ち電気抵抗が0になる事だろう。
電気抵抗が極端に小さくなるのではなく、完全に0である。
通常、電気を流すと電気抵抗により電流の一部が熱に変換され、徐々に電流の量が下がっていく。
一方、超伝導状態にしたリング状の鉛に電流を流してやると1年後にも電流が全く衰えていない事からも分かる。
ただ、無限に電流を流せる訳では無く、臨界電流と呼ばれるその物質特有の値以上の電流を流すと超伝導は壊れてしまう。
マイスナー効果・ピン留め効果
マイスナー効果とは外部から磁場をかけても超伝導体内部の磁場が常に0になる現象である[2]。
外部か侵入した磁場に反応して超伝導体内部に超伝導電流が流れ、それが発生させる磁場が外部磁場を打ち消し、内部磁場は0に保たれる。ただこれもまたある程度(臨界磁場)以上の磁場をかけると超伝導は壊れてしまう。
ピン止め効果とは、超伝導体の一部がなんらかの影響で常伝導状態になってしまい、
常伝導部分に磁力線が侵入し、ピン止めされたような状態になる現象である。
ジョセフソン効果
まあ、分かると思うけど、ジョセフソンさんが最初に(理論的に)発見した効果である[3]。(その後ちゃんと実験的にも実証されました)
これは、普段ランダムに動いている電子たちが超伝導転移したことで、1つの大きな量子力学的な系になったことから説明できる代表的な例である。
2個の超伝導体の間に薄い絶縁体を挟んで十分に近づけてやる。
そうすると、絶縁体(電気を通さない物質)があるにも関わらず、更には電圧をかけてやらなくても2つの超伝導体間に電流が流れるのである。
この効果はSQUIDなどに応用されている。
このジョセフソン効果を用いた超伝導接合実験は、超伝導の異方性を調べる方法の中でも有力的なものであり、現在でも利用されている。具体的には、銅酸化物高温超伝導の超伝導対称性がd波(普通の超伝導とは違っていた、程度でおkです)であることを決定した手法にもこの方法が使われた。
どうしてこんな効果が起こるの??
ちゃんと説明しようとすると、量子力学がモロに必要なのでさわりだけ。
低温で起きる似たような現象に超流動というものがあります。
これは液体ヘリウム4を2.2K以下に冷やすと、超流動状態となり様々な特徴を示す様になります。
その中の一つに粘性抵抗0というものがあります。
どんな物質にも摩擦抵抗というものがありますが、超流動状態では摩擦抵抗が0になり、液体ヘリウムは速度を減衰させる事無く動き続けるのです。
超伝導状態では電子が(クーパー対と呼ばれる対を形成して)超流動状態になってると考えられます。
この超伝導を導いた理論がBCS理論(バーディーン、クーパー、シェリーファー)です。電子はフェルミ粒子でありフェルミ準位で示されたある伝導帯を様々なエネルギー状態で金属中を動いています。また、電子はパウリの禁止則があり同一状態の電子はなく、スピンは1/2と-1/2を持ちます。この理論では、逆向きスピンで電子対(クーパー対)を作ります。そうすると、フェルミ粒子ではなく、ボース粒子となるのでパウリの禁止則を逃れて、より低いエネルギー状態に落ち込むことができます。そこで、位相をそろえた新しい量子状態、ボース-アインシュタイン凝縮相となります。
従来の超伝導では、格子振動(フォノン)が媒介して電子間に引力が生じるようになっていることから微視的に超伝導の性質を導き出すことが出来ます(BCS理論[4])。しかし、これは従来の電子相関の弱い普通の金属のみに適用される理論で電子相関の強い金属などでは反強磁性揺らぎなど異なる起源が存在すると考えられており、BCS理論のみではすべてを説明できず、超伝導の理論としての統一はまだされていません。
最近の超伝導
1911年にドイツの物理学者K. Onnesによって水銀の超伝導が発見されてから、超伝導の研究はどんどん進歩して来ました。
特に銅酸化物超伝導体(Cuprate)はそれまでの超伝導転移温度を一気に押し上げ、液体窒素温度での超伝導を可能としました[5]。
しかし、超伝導の本を持ってる方は分かると思いますが、超伝導転移温度の最高は20年以上も前に発見されてから更新されていません(現在の最高温度は、1993年C. W. Chu氏の発見したHgBa2Ca2Cu3O8+δの圧力下で測定された150 K以上)。
ただ、超伝導の研究が全く進んでいないという事ではなく、この20年にも様々な発見がされています。
最近ではCeやU化合物の重い電子系(U原子の最外郭電子である5f-electronが伝導電子であるような系)と呼ばれる強相関物質(電子と電子の反発が強いため、クーパー対が作れず超伝導は起きないと考えられていた)または反強磁性と超伝導が共存している系、Feという代表的な強磁性物質(磁性と超伝導は非常に相性が悪い)でも超伝導(しかも比較的高温)になる事が発見され、また酸素のような気体も超高圧下では金属化し、超伝導になる事が分かっています。
有機物も金属化することで超伝導転移を示し、その超伝導の対称性が異方的であることが実験より報告されています。しかしながら、有機物は物質を構成する力が金属結合に比べて弱いため振動に大きく影響され、その性質の追究は他の超伝導に比べて困難であります。
また、磁場をかけると超伝導が一旦消失するが、磁場を強めるとまた超伝導が復活するといった(リエントラント超伝導)面白い物質も見つかっており、まだまだ研究の進歩は続いていきそうです。
超伝導の将来への工学的な応用の一例して、量子コンピューターに用いる固体デバイスに採用できないか、各研究機関で検討されています。また、超伝導ネットワークやジョセフソンネットワークと呼ばれる回路を用いた技術開発や要素開発も行われています。
最近では学問的にも、超伝導は電子のみならず、カラー超伝導など素粒子の分野でも予測されており、素粒子と物性の対応が期待されています。素粒子における理論では、対称性の破れた超伝導があるのではないかとして、今後の発展に期待されています。
参考文献
超伝導の発見:
[1] H. K. Onnes, Commun. Phys. Lab. Univ. Leiden 12, 120 (1911).
[2] W. Meissner and R. Ochsenfeld, Naturwissenschaften 21, 787 (1933).
[3] B. D. Josephson, Phys. Let. 1, 251 (1962).
[4] J. Bardeen, L. N. Cooper and J. R. Schrieffer, Phy. Rev. 106 ,162 (1957).
[5] J. G. Bednorz and K. A. Mueller, Zeitschrift für Physik B 64, 189 (1986).
関連動画
関連項目
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