路面電車とは、軌道法という法律に基づいて建設された、原則として道路上の線路(軌道)を走行する電車のことである。
概要
電車大国となって久しい日本において、最初の電車は京都に開通した市電であった。そのため日本の「電車」のルーツは「路面電車」にあるといってよい。
「チンチン電車」などとも呼ばれ、親しまれているが、正確には軌道法に則った「軌道」という扱いなので、狭義の鉄道には含まれないことが多い。
かつては、東京はもちろん三重県伊勢市(三重交通神都線)などの小規模な都市でも路線があったが、道路を独占し交通渋滞を引き起こすとされて特に大都市圏では次々と廃止され、バス路線や地下鉄に変更されてしまった。どちらかというと中規模の都市で生き残っていることが多い。
近年では、環境問題が声高に叫ばれているためか、ライトレール(LRT)として復権の兆しがある。宇都宮ライトレールがその走りとなっている。
普通鉄道に比べると旧型車が使われている場合が多い。あまり速度を出さないことと整備が簡単であるが故、吊り掛け車両がバリバリ現役で活躍しており、そのサウンドを気軽に楽しめる。
特に阪堺電気軌道のモ161形は昭和初期生まれと、日常的に運転されている電車としては最古参(ただし非冷房車であるが故、夏場は臨時列車を除き運行しない)である。
一方で車体だけ更新して見かけを新しくされたもの(例:函館市企業局交通部8000形/8100形・とさでん交通2000形)や、逆に明治期のレトロな外観に復元したイベント車(例:東京都交通局9000形・熊本市交通局8800形101号・鹿児島市交通局100形)なども存在する。
廃止された東京の都電、名古屋や京都の市電などはノスタルジーの象徴として紹介される場合もある。
一般の鉄道に比べ小回りが効くおかげか車両を借り切ってイベントが開かれることが多い。しかも貸切料金も結構安い(阪堺の場合、2015年10月現在 天王寺駅前~浜寺駅前を1往復 1.5時間コースで1両55200円 定員35人程度迄)。
なぜか分からないがイベント列車では酒がらみの電車(例:豊橋鉄道『おでんしゃ』、岡山電気軌道『MOMO de ワイン電車』・とさでん交通『おきゃく電車』)が運行されることが多い。札幌では雪ミク仕様のの路面電車が走っていたりするとか。
法律上の定義
軌道法は第二条において「軌道ハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ道路ニ施設スヘシ」と定めており、原則として路面電車は道路上に建設しなければならない(併用軌道)。ただし、道路外に線路を敷設することも例外的に認められている(新設軌道(専用軌道))。例外とはいうものの、東急世田谷線のように全線が専用軌道の路線も存在する。
逆に、鉄道は鉄道事業法第六十一条において「道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)による道路に敷設してはならない。」と定められている。ただし、これにも例外があり、江ノ島電鉄や熊本電鉄は軌道法で建設された後に鉄道に移行したため、鉄道でありながら併用軌道を有する路線となっているのである。
路面「電車」は、文字通り「電車」で運転される場合がほとんどである。過去には札幌の路面ディーゼル車、現在では伊予鉄道の「坊っちゃん列車」のようなディーゼルエンジンを搭載し自走するものがあり、これは路面「電車」といえるのか?とたびたび話題になる。
しかし、道路交通法第二条十三において、路面電車は「レールにより運転する車をいう」とだけ定義されている。これに基づけば、少なくとも道交法上は、電気で走ろうが蒸気機関で走ろうが原子炉積んで走ろうが、レールの上を走る限りは「路面電車」と呼べることになる。
ちなみに、トロリーバスは同条十二で「架線から供給される電力により、かつ、レールによらないで運転する車をいう」と、はっきり定義されている。
現存する日本の路面電車
太字は単独記事のあるもの。
廃止された路線・撤退済事業者は鉄道事業者・路線一覧の記事等を参照されたし。
都道府県 | 事業者名 | 名称・愛称等 | 利用出来るICカード |
北海道 | 札幌市交通事業振興公社 | 札幌市電 | SAPICA、Suicaなどの全国相互利用サービス対応カード |
北海道 | 函館市企業局交通部 | 函館市電 | nimocaなどの全国相互利用サービス対応カード |
栃木県 | 宇都宮ライトレール株式会社 | 宇都宮ライトレール | PASMO、Suicaなどの全国相互利用サービス対応カード |
東京都 | 東京都交通局 | 都電荒川線 | PASMO、Suicaなどの全国相互利用サービス対応カード |
東京都 | 東急電鉄 | 東急世田谷線(※1) | PASMO、Suicaなどの全国相互利用サービス対応カード |
愛知県 | 豊橋鉄道株式会社 | 市内線 | manaca、Suicaなどの全国相互利用サービス対応カード |
富山県 | 富山地方鉄道 | 富山市内軌道線 富山港線(※2) |
Ecomyca、passca |
富山県 | 万葉線 | 高岡軌道線 | なし |
福井県 | 福井鉄道 | 福武線(※3) | なし |
滋賀県 | 京阪電気鉄道 | 大津線 | PiTaPa、ICOCAなどの全国相互利用サービス対応カード |
京都府 | 京福電気鉄道 | 嵐山本線 北野線 |
らんでんカード、PiTaPaなどの全国相互利用サービス対応カード |
大阪府 | 阪堺電気軌道 | 阪堺線 上町線 |
PiTaPa、ICOCAなどの全国相互利用サービス対応カード |
岡山県 | 岡山電気軌道 | 東山本線 清輝橋線 |
Hareca、PiTaPa、ICOCAなどの全国相互利用サービス対応カード |
広島県 | 広島電鉄 | 市内線 | PASPY、ICOCAなどの全国相互利用サービス対応カード |
高知県 | とさでん交通 | 土電・土佐電 | ですか |
愛媛県 | 伊予鉄道 | 松山市内線 | ICい〜カード |
長崎県 | 長崎電気軌道 | 長崎電鉄 | nimocaなどの全国相互利用サービス対応カード |
熊本県 | 熊本市交通局 | 熊本市電 | nimocaなどの全国相互利用サービス対応カード、くまモンのIC CARD |
鹿児島県 | 鹿児島市交通局 | 鹿児島市電 | RapiCa、いわさきICカード |
※1:東急世田谷線は路面電車であるが、併用軌道が一切存在しない。
これは、かつて国道246号線上を走っていた東急玉川線のうち、全線専用軌道の支線部分のみが生き残ったためである。ちなみに、途中の「若林踏切」は遮断機がなく道路信号に従って通行するため、路面電車の雰囲気がある。
※2:富山駅から奥田中学校前までの区間のみ軌道法に基づく軌道路線である。
※3:田原町から商工会議所前-赤十字前の中間地点にある鉄軌分界点までの区間と福井城址大名町から福井駅の区間のみ軌道法に基づく軌道路線である。
最近開業した路線
上記の他、路面電車に類似する路線
- 江ノ島電鉄線 - 一部併用軌道が存在するが、鉄道事業法の適用を受けているれっきとした鉄道路線である。
- 広島電鉄宮島線 - かつては電車タイプの車両も運行されていたが、現在は全て市内線直通の路面電車用車両で運行されている。
- 筑豊電気鉄道線 - 路面電車っぽい車両が走っているが、2000年に軌道法適用路線から鉄道事業法適用路線へと切り替えられたため、現在は一般の鉄道路線として扱われている。
- 熊本電気鉄道藤崎線 - 江ノ島電鉄線と同様、軌道法適用時代の名残として一部区間に併用軌道が残る。
関連動画
関連項目
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