軌間とは、鉄道の線路における2本のレールの内側と内側の間の幅である。英語では「ゲージ」という。
概要
鉄道は元々イギリスで発祥したため、軌間についてもヤードポンド法が使われている。国際的にはイギリスで標準的に使われていた1435mmを「標準軌(スタンダードゲージ)」と呼び、それより広いものを「広軌(ブロードゲージ)」、狭いものを「狭軌(ナローゲージ)」と呼ぶ。
しかし、日本においては歴史的な経緯から欧米の実情とは異なる状況になっている。日本では主に762mm、1067mm、1372mm、1435mmの4種類が一般的であり、広軌は現存しない。
JR(国鉄)では多くの在来線で1067mm、新幹線で1435mmの軌間が使われている。私鉄でも多くが1067mmを採用してきたが、例外も多い。また近鉄や東京都交通局など、一つの鉄道会社で複数の軌間の線路を保有しているところもある。
代表例
9mm
762mm(2フィート6インチ)
世界中の多くの軽便鉄道で使われている軌間。「二六軌間(ニブロク、ニロク)」とも呼ぶ。日本ではこの軌間をさして「ナローゲージ」と呼ぶ事も多いが、英語では「狭軌」という意味なので本来は誤りである。
地方路線の充実のために施行された軽便鉄道法によって建設ブームが起こり、かつては日本中に数多くのナローゲージの路線が存在した。しかし、速度の遅さや輸送力の低さが難点となり、殆どの路線が淘汰されてしまった。
現在では三岐鉄道北勢線、四日市あすなろう鉄道内部線・八王子線、黒部峡谷鉄道で使われている。
1067mm(3フィート6インチ)
日本の鉄道の多くが採用する軌間。「三六軌間(サブロク)」「ケープゲージ」とも。日本ではこの軌間をさして「標準軌」と呼ぶ事も多かったが、国際標準軌とは異なるので注意が必要である。近年はむしろ「狭軌」と呼ばれる事が多い。
もともとはイギリスの植民地で使われていた軌間で、日本に鉄道が伝わった際に理由には諸説あるが、イギリスの技師が「日本は地形が悪いので1067mmの方がいい」と判断したことで使われ始め、その後鉄道網が広がり鉄道国有化法で国鉄が誕生したあとも継続して採用され、現在のJR路線に至る。
しかし軌間が狭いために車両の大きさに制約があったり、安定性や動力装置架装の問題から列車のスピードが速く出せないため、輸送力の増強にいろいろな障害が生まれてしまった。なお新幹線の誕生時は、1067mmでの限界は約時速160kmといわれていたが、現在は時速300km程度までは出せる事が判明している。(但し軌間が狭い分キチンと保線しないと乗り心地が大変なことになりそうだ・・・曲線での速度制限も標準軌よりキツく掛かるし、300km/hどころか200km/h出す狂気路線が日本に無いことから察しは付くだろう。ちなみに実際の世界最速は営業用の列車でクイーンズランド鉄道の車体傾斜式電車で210km/h程、東海道新幹線の0系並である。高速試験とかでは1978年に南アフリカ共和国で記録された時速245 kmらしい、上越新幹線200系並である。)
1372mm(4フィート6インチ)
「馬車軌間」「スコッチゲージ」と呼ばれる。「四六軌間(シロク)」とは呼ばない。日本では一般的だが、海外ではスコットランドでしか見られなかった異端のものである。とはいえ世界的には狭軌の代表格としてよく知られてはいる。
客車を牽く馬が二頭並んで跨いでも転ばない幅という説があったため、日本では東京馬車鉄道(現在の都電)で採用され、その後多くの路面電車に広まり、現在ではその路面電車を発祥とするごく一部の私鉄が使用している。
1435mm(4フィート81⁄2インチ)
いわゆる世界的な「標準軌」である。ただし日本では1067mmが一般的であった事から「広軌」と呼ばれる事も多かったが、本来は間違いのため、近年はほとんど使用されなくなった。
蒸気機関車の登場で急激に鉄道網が広がりつつあった当時のイギリスで、蒸気機関車の父ジョージ・スティーブンソンらが広め統一を進めたものである。
日本国内では狭軌ゆえの輸送力増強の障害から、古くから国鉄線の標準軌への改軌論が何度も提案され消えていった。1964年に標準軌を採用し完成した新幹線は、多くの鉄道技術者の夢の実現だった。
また国内の私鉄が採用する例もある。路面電車の根拠法である軌道法は規制が緩く、また一部でも軌道が路面上にあればよかったため、この規則を利用して路線を建設する会社が現れたのである。軌道法にはゲージの制限がないため、多くの会社で標準軌が採用された。最速では574km/hまで出せるらしい。
ちなみに路面電車で標準軌が多いのは軌道法の他、路盤の状況が荒く、交差点などで急カーブがあり揺れやすいから、トラックなどに側面衝突されても踏ん張りが効きやすいからという説がある。
ライブスチーム・鉄道模型用
- 6.5mm - Zゲージ、Njゲージ
- 9mm - Nゲージ(先述)
- 16.5mm - HOゲージ、OOゲージ
- 32mm - Oゲージ
- 45mm - 1番ゲージ、Gゲージ 実はこれくらい大きくなると庭園鉄道として人間も乗れる
- 89mm - 3.5インチゲージ
- 127mm - 5インチゲージ
その他の日本国内で使われていた軌間
- 500mm - 明神電車などで使用されていた。日本最狭の軌間。
- 508mm - 別子銅山など、鉱山・工場で使用されていた。
- 576mm - 群馬馬車鉄道(後の東武伊香保軌道線)で使用されていた。営業用鉄道としては日本最狭の軌間。
- 600mm(1フィート115⁄8インチ) - 別名「ドゴービルゲージ」。フランスのドゴービル社が簡易鉄道、第一次世界大戦中の塹壕鉄道として広めた軌間。日本では陸軍鉄道連隊が使用していた軌間の一つで、その払い下げで開業した千葉県営鉄道八街線(後の成田鉄道八街線)、多古線(後の成田鉄道多古線)で使用されていた。
- 606mm - 城東馬車鉄道(後の堀之内軌道)で使用されていた。
- 610mm(2フィート0インチ) - 主にイギリスやアメリカの簡易鉄道で多く見られる。日本では陸軍鉄道連隊が使用していた軌間の一つで、また人車軌道、産業鉄道、工事用軌道、鉱山内軌道などで使用されていた。現在では立山砂防工事専用軌道と釧路コールマインで使用されている。現存する日本最狭の軌間。
- 660mm - 本郷軌道で使用されていた。
- 666mm - 山梨馬車軌道で使用されていた。
- 792mm - 羽幌森林鉄道で使用されていた。
- 838mm(2フィート23⁄4インチ) - 工部省釜石鉄道(後の釜石鉱山鉄道)、阪堺鉄道(現在の南海電鉄)で使用されていた。
- 914mm(3フィート0インチ) - 主にアメリカや中南米の一部の簡易鉄道で使用されている。日本では九州北部や石川県の馬車鉄道及びそれに由来する軽便鉄道で多く見られたほか、岡山県の西大寺鉄道で採用されていた。現在ではケーブルカーであるが、青函トンネル竜飛斜坑線で使用されている。
- 1000mm(3フィート33⁄8インチ) - 別名「メーターゲージ」。主に東南アジアを中心に使用されている。日本ではケーブルカーであるが、1995年まで箱根登山鉄道鋼索線で使用されていた。
- 2200mm - 琵琶湖疏水インクラインで使用されていた。
その他の海外で一般的な軌間
- 891mm(2フィート11.1インチ) - 別名「スウェーデン狭軌」。かつてスウェーデンで一般的だった。
- 950mm(3フィート13⁄8インチ) - 別名「イタリアンメーターゲージ」。かつてイタリアで一般的だった。
- 1520mm(4フィート11インチ) - 別名「ロシアンゲージ」。主に旧ソ連や東欧を中心に使用されている。 5⁄6
- 1588mm(5フィート21⁄2インチ) - 別名「ペンシルバニアントロリーゲージ」。主にペンシルバニア州を中心に使用されている。
- 1600mm(5フィート3インチ) - 別名「アイリッシュゲージ」。主にアイルランドを中心に使用されている。
- 1668mm(5フィート5 2⁄3インチ) - 別名「イベリアンゲージ」。主にスペイン・ポルトガルで使用されている。
- 1676mm(5フィート6インチ) - 別名「インディアンゲージ」「カナディアンゲージ」。主にインド・パキスタンを中心に使用されている。かつてはカナダでも一般的だった。
違う軌間の列車同士を直通運転するには・・・
日本を含む世界では、多くの軌間が地域内で併用されている。異なる軌間の路線をそのまま直通することは、物理的に不可能である。
直通運転を実現するために、次のような方法がある。
台車を履き替える
異なる軌間の線路に移る際に、車両の台車を履き替えさせる方法。特殊な技術は不要。大陸内やヨーロッパなどで複数国家を跨ぐ列車の多くはこの方式をとる。近鉄南大阪線の電車も検査時は台車を履き替えて検査設備のある五位堂まで事業者に引っ張られてご移動する。
しかし、ジャッキアップ等交換作業に手間がかかるため、接続駅での停車時間が長くなってしまう。(当たり前だが南大阪線の電車が五位堂にご移動する際は回送で乗客は乗せない)
車両の上に車両を載せる
主にスイスの貨車で採用。幹線を走ってきた貨車を、支線(スイスは異端軌間の私鉄が非常に多い)用の貨車の上に載せて目的地まで運行する。貨車を載せて海峡を行き来した鉄道連絡船の縮小版とでも言えるだろうか。青函トンネルを北海道新幹線が通る際速度向上の為に貨物を専用の車両に載せるトレインオントレインが検討された。
1本の線路に2つの軌間のレールを置く
ひとつの軌間のレールを一組置き、さらにその外側に別の軌間に対応するレールを置く方法。日本国内では1067mmと標準軌の2つに対応した「三線軌条」を見ることができる。日本では秋田新幹線(奥羽本線)の一部区間、箱根登山鉄道の一部区間や車両工場などで採用。
フリーゲージトレイン
別名「軌間可変車両」。特殊な機構を持つ台車を使用し、異なる軌間を結ぶ装置の上を走行しながら軌間を変える。
スペインのタルゴ(客車)はこの方式を採用してきた。日本は電車での実用化(動力装置を持つため非常に難しい)を目指し研究を進めていたがランニングコストが掛かること、重量が増えすぎること、試験運転で不具合が多発したこと、新幹線区間で通常の車両ほどスピードが出せなかった事から新在直通用としては諦めた(採用予定だった西九州新幹線・北陸新幹線では乗り換えをご強制という形になった。やくもは普通に狭軌専用の273系を導入した)。近畿日本鉄道が京都↔橿原神宮前↔吉野の直通運転様に技術を流用し開発を進めているが2022年の鉄道技術展で公表された以外特に音沙汰がない。
改軌する
線路を敷きなおすか、広げる或いは狭くして軌間を変えてしまうこと。大規模な土木工事や車両の改造が必要なほか、運休も止むを得ない大事業となる為、特に現代においては困難と言える。
しかしながら京成は1959年、全線の1372mmから標準軌への改軌を1日の運休もなく実施した。このことは歴史的大工事であるはずだが、あまり語られることが無いのは残念である。
近畿日本鉄道では名阪直通特急を実現するため、狭軌だった名古屋線の改軌工事準備を進めていたが、1959年の伊勢湾台風による台風被害の復旧と同時に、全線標準軌化を断行。11月19日から28日の僅か9日間で全線80kmを標準軌化している。
近年では、奥羽本線及び田沢湖線を改軌したミニ新幹線の山形新幹線と秋田新幹線が開業している。
関連動画
改軌
関連項目
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