概要
1991年~1996年にかけて、老朽化の進んでいた100形、203形と役に立たなかったLE10形を置き換える目的で登場。自社の彦根工場で1年1両のペースで新造された。…という事になっているが、実際は床下機器は置き換え形式の100形、203形(+131系)、車体は廃車体(西武701系)、台枠は近江鉄道200系と203形から持ってきたもので、運転台は新規製造し、それらを切断、つなぎあわせたという形になっており、実質上は車体更新である。なんというリアル鉄道模型
近江鉄道初の冷房電車であり、近江鉄道の近代化に貢献した名車である。しかし・・・。
魔改造
VVVFインバータが主流になった平成の時代に製造された車両ながら、近江鉄道お得意の床下機器を在来車から流用した結果、主電動機は鉄道省が戦前に設計したMT15、コンプレッサーはコアなファンから人気のあるAK-3形、制御器は旧国ファンにはお馴染みCS5を装備してしまっている。
つまり、吊り掛け駆動なのである。
しかし、ブレーキはHRD電気指令式ブレーキ化されていて、さらに台車は空気バネのFS40を履いているという近代的な一面もあり、鉄道界の中でも1、2を争うほどの魔改造車である。人に限らず、見た目で判断してはいけない。
登場の背景
しかし、なぜわざわざこんな博物館級の古い電装品を使い回したのか、という疑問が生じる。西武701系から車体を貰ってきたならついでに電装品も持ってくりゃあ良かったのに…と思う方も多いだろう。
端的に言ってしまえば、近江鉄道は本線の貴生川~日野間や多賀線のような比較的乗客が少ない区間用に1両で走れる車両(近江鉄道ではこのように単行運用可能な車両を「単車」と呼ぶ)が欲しかったのである。しかし西武701系のようなカルダン駆動の車両は2両以上でしか運行出来ないものが多い。それなら、従来の100形、203形のような単車の機器を流用して自分たちで1両で走れる車両を作ってしまおうじゃないか!という日曜大工のような発想に至った訳である。電装品だって傍から見れば旧型の代物かもしれないが、近江鉄道では過去何十年も使ってきた実績があるのだし、特段扱いに困る事もない。
こうして出来上がったのがこの220形である。しかし、旧型の電装品を使ってしまったせいで裏側では戦前の旧形国電とだいたい同じ性能になってしまっているが・・・。
近江鉄道にとって、そんなこと、どうでもよかった 迷列車シリーズより
デザイン
当時の近江鉄道は、湘南顔や500系のような旧型スタイルの車両が多く、さすがの近江鉄道もイメチェンを図ることにした。時はすでに平成である。
220形は、前述したとおりこれまでの近江鉄道車両のイメージをひっくり返す形となった。前面は大型の運転台窓を三枚(行き先表示機の部分も含めると計4枚)取り付け、それらの枠の部分からライト上まで黒く塗装することにより、大きな1枚の運転台窓に見えるようにし、一体感を持たせた。ライトはLE10形のような角型コンビネーションランプを採用。これらは時期からして、JR221系の影響だろうと思われる。この’’近江顔’’は800系にも受け継がれた。さらに側面は近江鉄道初の両開きドアを導入。これは西武701系由来のもので、窓が固定式になったのと運転台後ろの戸部窓が埋められた以外は、車内にも面影を残している。冷房装置も架線から直接得た1500Vの電気で稼動する冷房装置を採用し、外観上は近江鉄道のイメージを一新できた訳である。
主電動機について
ところで、本系列が鉄道省設計のMT15を主電動機として装備していることは前述したが、このMT15が戦前に製造されたものかどうかは実は怪しい。というのも、本系列が装備しているのはMT15の中でも「MT15E」という種類のものだが、鉄道省が製造したのは「MT15D」までなのである。ではこの「E」というのは一体どこから来たのか?という疑問が生じるが、実はこれがよく分からないのである。
未確認情報として「MT15Eは戦後に西武鉄道が製造したもの」という真偽不明の噂があり、仮にこれが本当だとしたら本系列が装備している主電動機は戦前ではなく戦後に製造されたものとなる。
これについては情報が不足しており現状では何とも言い難いが、ともかく本系列が装備しているのが戦前設計の主電動機であるという事は確実である。
各車両ごとの主な特徴
モハ221
1991年製。車籍上は203形モハ205からの改造となっている。連結器周りの形状が他車とだいぶ異なっており、車籍流用元のモハ205のそれに酷似している。それって、もしかして…
2006年頃に長らく入れ替えや工臨に使われてきた電気機関車の代わりとして、ジャンパ管増設、抵抗器変更などの改造が施され、ホキなどを引く電気機関車として使用されている。そのため前述のとおり、旅客運用には入れない。
モハ222(除籍済)
1992年製。車籍上は203形モハ203からの改造となっている。貴生川方のレオマークがかすれ、さらにヘッドマーク(以下HM)を取り付けるための穴が、貫通扉両サイドにあいている。そのほか他車と比べ少し前面形状が異なっており、ライトが若干内側に寄っている模様。
2014年3月のダイヤ改正(後述)以降運用入りが確認されておらず、彦根駅構内での入れ替えの際は他車に牽引されている様子が目撃されていたが、実は後述の224と共に除籍されていた事が判明した。除籍日は224と同一と思われる。
モハ223
1993年製。車籍上は100形モハ101からの改造となっている。特徴がないのが特徴。かつて、中日新聞のラッピング車両になっていたことがある。
2013年下半期頃に一度故障したものの後述の226の故障により入れ替わりで運用復帰していたが、2014年5月に226が復帰して以降は再び隠居状態となってしまい、彦根駅構内での入れ替えの際は222と同じく他車に牽引されている模様。
モハ224(除籍済)
1994年製。車籍上は100形モハ102からの改造となっている。現在、びわこ環境関連塗装になっており、地元の人々には「青電」と呼ばれている。
2013年5月時点で故障(フラッシュオーバー)を起こして本線走行が不可能になり、長らく運用離脱していた。彦根駅構内では自走する姿が度々目撃されていたものの、残念ながら2014年3月31日付で除籍されてしまったようである。
モハ225
1995年製。車籍上は100形モハ103からの改造となっている。モハ223よりも前に中日新聞のラッピング車両になっていたが、現在、伊藤園「お~いお茶」のラッピング車両になっている。
2014年3月のダイヤ改正以降、主に定期運用で使用されているのはこの車両である。
モハ226
1996年製。車籍上は131系モハ132からの改造となっているが、同車は2001年頃に大半の電装品が残された状態で彦根車庫に放置されているのが確認されており、モハ226とどこまで関わっているかは不明。
近江鉄道のラッセル車両代わりにするためスノープロウが取り付けられている。このスノープラウについては「大型のスノープロウ」という説明が時折見受けられるが、元はといえばLE10形が装備していた物の流用品であるため別にそこまで大きい訳ではない。またモハ222と同じように、HMを取り付けるための穴があいている。ちなみに形式内で一番モーター駆動音が大きく、また他車と比べて台車が若干外側に寄っているなど220形の中でも少し個性的な車両である。
2014年1月時点で故障を起こして運用離脱していたが、同年5月に運行された団体臨時列車への充当をきっかけに稼働可能な状態に復元された。その後は貸切列車での運用を中心に活躍しているが、稀に225の代走で定期運用に充当される事もある。
運用
単行車両(単車)で小回りがいいことから、老朽化した機関車の代わりとして、旅客運用以外に入れ替え作業に使われることが多い。
2009年以降は基本的に八日市線には入線せず、電気機関車代用のモハ221以外の5両は専ら多賀線や本線の八日市以南(一部米原まで乗り入れる運用もあった)で活躍していた。しかし、2014年3月のダイヤ改正で本系列の運用が大幅に削減され、平日は午前中の彦根・多賀大社線(米原~高宮~多賀大社前間)の一運用のみ、土休日に至っては全ての運用が消滅した。2015年3月のダイヤ改正ではこの最後の1運用も2両編成に置き換えられる可能性があるため、記録はお早めに…。
引退
長らく、隠れた名脇役的な存在として活躍を続けてきた本系列だが、1両編成の車両ではさすがにラッシュ時の輸送には耐え切れず、また冷房装置の効きが悪く夏場はサウナ状態であったため乗客からも次第に嫌われるようになっていった。そのため、西武新101系改造の2両編成の新型車両の投入により本系列は置き換えられる事となり、順次運用から離脱していく。2013年6月にはその第一編成である900形901Fがデビューし、故障により運用離脱していたモハ224を実質的に置き換える形となった。更に2014年には上記の通り運用が激減し、余剰となっていた222と224が前述の通り遂に除籍されてしまった。近江鉄道の縁の下の力持ちであった単車の生き残りである本系列から除籍車が出た事は、近江鉄道にとっても一つのピリオドと云えよう。
今後は900形の後継である100形(2代)の増備とともに222、224以外の車両も順次運用落ち(≠即解体)していくと思われるが、可能性として、機関車代用であるモハ221と、ラッセル車代わりであるモハ226は離脱せず、他の車両が順にリタイヤしていくものと思われる。
形式名称について
また、本系列の形式名については現在正式な名称は明確には判明していない。2013年までの公式時刻表の形式紹介欄には何と221形と記されており(2014年3月の物から220形に修正されている)、この記事での呼び方はあくまでこの記事での名称と受け入れたほうがいい。
とりあえず、220か221の数字と近江鉄道の字さえそろえておけば意味は通じるはずである。
関連動画
220形について詳しく説明されている。
関連コミュニティ
関連項目
近江鉄道の車両(引退車両は斜体で表記) |
旅客車両: LE10形 - 1系・131系 - 100形 - 200系・203形 - 500系 - 220形(今ここ) - 700系 - 800系・820系 - 900系 - 100系(2代) |
電気機関車: - ED31 - ED4000形 - |
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