近畿日本鉄道[きんきにっぽんてつどう]とは、日本で営業路線距離を最も長く保有・運営している私鉄である。一般的な通称は「近鉄(きんてつ)」。
2015年4月に持株会社制に移行し、それまでの「(旧)近畿日本鉄道」を「近鉄グループホールディングス」に、2014年に設立されていた準備会社を「(新)近畿日本鉄道」に社名変更した上で鉄道事業を継承した。
概要
名前の通り近畿地方を中心に、愛知県・三重県・京都府・大阪府・奈良県の2府4県という長大な路線を保有する大手私鉄である。かつては和歌山県と岐阜県も営業エリアに収めていた(詳細は後述)。
近鉄の前身となった「大阪電気軌道」は、大阪と奈良を直線で結ぶ路線(現在の奈良線)を軌間1,435mm(「標準軌」。大多数の在阪私鉄および、新幹線・京急―都営浅草線―京成とその他取り巻き、欧米の鉄道の大多数などと同一規格)で敷設したのが最初の出発点であった。その際、とても苦労した話はwikipediaや、刊行されている書籍に詳しいので参照していただきたい。続いて、伊勢参拝の旅客輸送のために1927年に子会社「参宮急行電鉄」を設立し伊勢(宇治山田駅まで)への進出を果たし(現代で例えるなら、新幹線やリニアを新規敷設するようなものであったといわれる)、1939年には競合会社の「伊勢電気鉄道」を買収して、名古屋進出の足がかりを作った。名古屋へは別の子会社の「関西急行電鉄(関急)」によって進出した。後にこの三社は合併して「関西急行鉄道」となる。
現在の近鉄南大阪線系統を営業していた「大阪鉄道」を1943年に合併した後、翌年には国策により現在の南海電気鉄道の前身である「南海鉄道」とも合併し、社名も「近畿日本鉄道」に改められた。
戦後、南海が離脱し和歌山が営業エリアから外れたが、1963年に「奈良電気鉄道」を買収し、自社の近鉄京都線とすることで、京都(京都府)進出を果たした。
伊勢電気鉄道が狭軌(線路幅が1,067mm、現在の大多数のJR線と同一規格)路線であったため、関急(→のちの近鉄名古屋線)も狭軌で建設されたのだが、大阪線・山田線との相互直通運転が出来ず、伊勢中川で乗客に乗り換えを強いることがネックとなっていたが、1959年の伊勢湾台風で被災したのを機に改軌工事を敢行し、標準軌化することで宿願であった乗り換えなしでの名古屋直通運転が可能になった。
南大阪線系統が狭軌のまま改軌されていないのは、昭和50年代まで国鉄(当時)と貨物列車の連絡輸送を行っていたためである。
総営業距離は501.2km(2015年4月1日現在)になり、これは旧国鉄を源流に持つJR以外の全鉄道会社の中で最長である。それでもピーク時に比べると、総路線長はかなり短くなっている。2003年に近鉄北勢線を移譲(三岐鉄道へ譲渡)し、2007年には近鉄伊賀線と近鉄養老線を切り離し(それぞれ「伊賀鉄道」「養老鉄道」を設立)、2015年には近鉄内部・八王子線を切り離したためである(「四日市あすなろう鉄道」を設立)。
同じく近畿圏の大手私鉄である阪神電気鉄道(大手私鉄では相模鉄道に次ぐ営業距離の短さ)と比べると、その距離は10倍以上である。
営業収益における鉄道依存率は約65%と、関西私鉄の中ではもっとも高い。
路線の長さゆえか、輸送密度は関西私鉄最低値で、阪急電鉄の5分の1程度である。
基本的に鉄道事業の運営自体は良好で、路線の多くは、競合路線がないか他社が注力していないエリアであるため、安定して利益を上げている。
特に三重・奈良は、JR線があるにも関わらず、最早近鉄の天下といっても過言ではない。
もっとも、ここまで拡大したことで前述の路線切り離し等それ相応に巨大な債務を負っているため、パ・リーグに属していた「大阪近鉄バファローズ」を手放したり何なり…といった対策をとらなくてはいけない状況が続いている。特に伊勢志摩関連のリゾート事業は、とてつもない負債を抱えている。
自己資金比率・経常利益率の数字だけで見てみると、残念ながら関西大手私鉄の中でドン底の経営状態である。例えば2015年3月期連結決算においては、自己資本率は16.3%(他社関西大手私鉄は概ね21~29%)、連結売上高約1兆2,337億円に対して純利益は約278億円であり、近年の純利益は2%台前半を推移しているが、売上規模の相違はあるものの他の在阪大手私鉄は概ね5~10%を計上していることから、経常利益率は大手私鉄としては低い水準と言わざるを得ないだろう(ちなみに純利益率2%台と言えば、大赤字の粟生線存続問題で揺れている神戸電鉄の前年度・前々年度決算とほぼ同じ数値であり、その神戸電鉄ですら今年度では5%近い純利益率を上げている)。さらに鉄道の利用客減に歯止めがかからない状況から、2012年3月期のダイヤ改正では計4.8%減となる運転本数の大幅削減を行った。
それでも、近鉄百貨店本店(あべの橋)を、横浜ランドマークタワーを抜く日本最高の高層ビル(「あべのハルカス」)に建て替えたり、伊勢志摩への豪華観光特急「しまかぜ」をデビューさせたり、大阪市から海遊館を買い取ったりするなど、大胆な金遣いを続けている。
そんなこともあってか2023年4月に10%超えの運賃値上げを行った。
略称は今でこそ近鉄が公式となっているが、当初は近鉄(おうてつ)と略される近江鉄道が既に存在していたために、近日を公式な略称としていた。しかし、近鉄という略称が広まっていったことから、新球団設立時に球団名を近鉄パールスとしたり、百貨店を近鉄百貨店としたりしていた。
それでも本業の鉄道については、社名がつく駅名はしばらく近畿日本○○(駅)を正式な駅名としており、「近鉄○○」となったのは1970年になってからと、かなり遅かった。
車両形式一覧
莫大な数+見た目は同じなのに全く別形式で見分けがつかず沼と化しているためここでは記載しない。
当社比で新型車両はシリーズ21を参照(2024年秋には新型一般車両が登場する予定)
特急は近鉄特急を参照
路線一覧
- けいはんな線は、長田駅から大阪市高速電気軌道中央線に直通運転を行っている。中央線は第三軌条方式のため、この路線も大阪市高速電気軌道標準規格の第三軌条・直流750Vで建設されている(大阪市高速電気軌道や「都市交通審議会」が計画した地下鉄路線を、大阪市が市外へ自力で延伸することに消極的であったため、市外延伸部の運営を北大阪急行同様に担っているのが実状)。近鉄線内では、第三軌条方式の鉄道として国内最速の95km/h運転を実施している。
ちなみに地下鉄中央線の延伸先である夢洲には統合型リゾート(IR)が誘致中であり、近鉄にはこのIR会場と近鉄沿線の観光地を近鉄特急で結びたい……と言う計画がある。ただ、第三軌条方式と架空電車線方式の直通になるため海外メーカーと共同で車両開発中。2022年には可動式第三軌条用集電装置の試作品が完成し、実現に向かって進みつつある。 - 京都線は、竹田駅から京都市営地下鉄烏丸線に直通運転を行っている。こちらは地下鉄の方が近鉄の規格に合わせて造られているため、烏丸線に入れる近鉄側の車種に制限はあるものの、そのまま直通出来る。
- 2009年3月20日より、阪神なんば線を介して阪神電鉄と直通運転を開始した。こちらも双方ともに充当車種の制限があるが、ここでは割愛。また、近鉄特急の乗り入れや神戸高速鉄道・山陽電気鉄道と直通運転を開始する計画もある。これにより、名古屋市から姫路市まで私鉄の路線で一本に結ばれたこととなる。同時に、近鉄・阪神・阪急・神戸高速・山陽・能勢電・大阪市交・京都市交の8社局が接続する標準軌の一大路線網が完成した。ただし、保安装置や車両の規格などの絡みがあり、例え団体貸切であっても、烏丸線の10系電車で進行方向を取っ替え引っ替えして阪急宝塚駅まで遊びに行ったり、同じことをやって堺筋線の66系電車で賢島まで行ける…というわけではない。阪神なんば線関連で、現時点で実現している一般旅客対象の最長距離列車は「阪神三宮仕立て、天理ゆき臨時急行(大阪難波まで快速急行、天理教月次祭の特定日に運転、片道のみ。すべて近鉄主眼・近鉄用語で記述)」。
- 名古屋線と名古屋市営地下鉄金山線(計画中)との相互直通が計画されている。実現すれば、3都市の地下鉄に乗り入れることになるが、計画が事実上凍結されているのが実情である。
標準軌(1,435mm)
難波・大阪線系統
名古屋線系統
山田線系統(支線は無いが、歴史的経緯により路線名が異なる)
奈良・京都線系統
けいはんな線系統
狭軌(1,067mm)
ケーブルカー・ロープウェイ
かつて近鉄が資本参加していた企業
削除状況
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関連動画
迷列車で行こうシリーズ
大変な途中下車シリーズ
関連コミュニティ
関連項目
- 近鉄特急
- シリーズ21
- KTクオリティ
- 大阪近鉄バファローズ
- 逝てまえダイヤ
- KNT-CTホールディングス - 近鉄傘下の大手旅行代理店。
- 神のみぞ知るセカイ(登場人物の大半は路線や駅名を由来としている)
- 咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A
- 境界の彼方
- 大仏(職人)
- 鉄道関連項目一覧
- 鉄道事業者・路線一覧
- 鉄道車両一覧
- 動画を削除した権利者一覧
外部リンク
大手私鉄一覧 |
東武鉄道-西武鉄道-京成電鉄-京王電鉄-京浜急行電鉄-小田急電鉄-東京急行電鉄-東京メトロ-相模鉄道-名古屋鉄道-近畿日本鉄道-南海電気鉄道-京阪電気鉄道-阪急電鉄-阪神電気鉄道-西日本鉄道 |
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