近親相姦とは、禁じられた恋愛模様の1つである。
概要
近親相姦とは平たく言えば、近しい血縁の者同士で性的関係を持つ事である。具体的には親子間(父娘、母子)、兄弟姉妹同士(兄妹、姉弟、etc･･･)、伯父姪や伯母甥など。
近親相姦によって生まれた子供が普通の子供以上に遺伝による病気や異常を発症しやすいと言われる事や、近親相姦という行為自体が普通の人にとって嫌悪感を催すといった原因から一般的には関係が殆ど公にされないケースも多々ある。誤解されやすいが、「関係が公にされない」というだけで滅多にないケースであるということでもなく、様々な国で人口の数％以上が近親姦の経験を持つという研究結果もある。[1]
さらに、近親相姦という行為・現象自体は最近に始まった珍しい事例なのかというとそんな事も全くなく、神話や人類の歴史でもこの類の話は探すといろいろ出てきたりする。具体的な例については後述するが、時代や身分を問わずにさして珍しい事例でもなかった。特に貴種の場合は「近親婚なら地位継承の際に介入してくる外戚はいない」というごく冷徹な狙いもあった。しかし一方で近親相姦をタブーとする考えもまた古くから少なからず存在しており、本格的にその考えが広まったのは近代になってきてからであると言われるようだ。
現代でも、ネットでググッてみると結構な数の「告白談」が見つかる事だろう。実話にしろ作り話にしろ、結構生々しい話もあるので閲覧は自己責任で。
法的にアウト？セーフ？
日本の場合、同性であれ異性であれ近親相姦そのものを取り締まる法律がないのでセーフである。[2]それどころか前例は少ないが近親相姦によってできた子供の認知が認められたケースが複数ある
。とはいえその子がその後の人生で差別されかねないので認知届を出す利益となると…
ただし、自分が養っている18歳未満の子と性交したりわいせつなことをすると(脅迫の有無にかかわらず)児童虐待にあたるということで、強制性交や強制わいせつと同じように罰せられる(刑法第179条)。
相手が13歳未満の児童だった場合は、全てのケースで強姦罪が適用され、3年以上・20年未満の懲役に課される。（刑法第177条）
実親でも養親でも、弟を養う年の離れたお姉ちゃんでも、犯罪は成立する。娘に就寝時に逆強姦されたらどうなるんだとか心配しているお父さんは頭を冷やしてください。
海外では？
家族法が密接にかかわることから、お国柄が如実に出ている。日本並みに許されているところから、死刑になるところまであり、禁止されているところも、半血[3]兄弟姉妹はセーフだったり(オーストリア)、傍系ならセーフだったり(ギリシャ)、男女で最高刑が違っていたり(アイルランド)してさまざまである。
- 合法・非犯罪化：フランス、スペイン、ロシア、ブラジル、インド、中華人民共和国、大韓民国、ロードアイランド州、ニュージャージー州[4]など
- 有期刑[5]：ニュージーランド[10年]、ドイツ[3年]、中華民国[5年]、シンガポール[5年]、ハワイ州[5年]、ニューヨーク州[25年]など
- 無期刑：アイルランド(男性のみ)、ウガンダ(未成年相手の時のみ)、アイダホ州、ネバダ州、ケンタッキー州など
- 死刑：イラン、アラブ首長国連邦、ブルネイ、サウジアラビアなど
文化的には？
少なくとも倫理的・宗教的には罪であるとして、忌避され非難されることがほとんどである。現代日本も寛容な方ではあるが非難は免れない。ただし、国と地域によってその度合いが違ってくる。
畜産業において、近親交配を繰り返すと畸形の発生率が目に見えて上がっていく。こうした経験からか畜産が盛んな地域ほど近親相姦への忌避が他の地域よりも強い傾向にあり、それをテーマにした神話などもみられなくなる。[6]
一方で近親相姦や近親婚が善行だとする文化も存在する。ペルシア(今のイラン)で紀元前1000年頃に成立した宗教ゾロアスター教は親子や兄妹姉弟相手の結婚をこの上ない善行だとする教義で、聖典「アヴェスター」のヤスナに記された信仰告白文では最近親婚（フヴァエトヴァダタ）に従うことを誓う一節が記されている。[7]
結婚について
近親者同士の法律的な結婚は現代では多くの場合不可とされているが、範囲は国によって差があり、日本は直系及び3親等まで禁止(自分の祖先と子孫及び両親の兄弟)で、他の国では概ね2～4親等程度が多い。しかし、儒教の影響がある中国や朝鮮は同じ本貫(その一族の発生場所)かつ同じ名字の人は結婚できないというしきたりがあった。現代でも韓国・北朝鮮の法律では8親等以内は禁止と厳しい。中国でもかつては厳しかったが、今は日本並に緩和されている。一方、古代ペルシャなどでは親子及び兄弟姉妹の近親者同士の結婚が認められていた。
注意しなければならないのは、近親相姦はその性質上(少なくとも日本の場合)「血縁」が問題となるため、養子などの理由で当人同士の血が繋がっていなければ普通に結婚可能である。
それなんてエロゲ？と言いたいところだが旧民法の家制度の都合上珍しいことではなく、婿養子という「法律上、兄妹かつ夫婦に同時になる」という手続きが規定されていた。今でも「相手側の家を継ぐ必要」がある場合は相手側の養子になってから結婚するということが行われることがある。
神話・歴史上における近親相姦の一例
神話
- 日本神話では、イザナギとイザナミの兄妹が「国産み」「神産み」を行ったとされる。
- 沖縄や中国、東南アジアなどには「ほとんどの人が死に絶えるような大洪水の後に、生き残った兄妹が子供を作り、そこから人類が再生していく」といったタイプの神話が各所に伝わっており、「洪水型兄妹始祖神話」という一類型とされている。
- エジプト神話では、オシリスとイシスの兄妹が近親相姦によってホルスを儲けたとされる。イシスは共に母の子宮にいる時から、オシリスという兄を敬愛していたという描写がある、
- ギリシャ神話では、クロノスとレアーが、またはゼウスとヘーラーがそれぞれこの関係にあった(ちなみに双方とも姉弟の関係)。また母子関係のものでは、ガイアとウラノスなど。
- 旧約聖書では、ロトとその娘たちが子を設け、その子らがモアブ人やアモン人の祖になったとされる。また、預言者アブラハムとその妻サラは異母兄妹であった。
歴史上の人物
- 『古事記』『日本書紀』において、允恭天皇の皇子である木梨軽皇子と皇女の軽大娘皇女が情を通じたことにより、罪に問われたとされる。
- 然し古代日本では、同母兄弟姉妹での性交は禁忌であったが、異母兄弟より遠ければ問題ではなかった。初代の神武天皇からして、鸕鶿草葺不合尊と玉依姫（叔母甥婚）の子なのだが、それ以後も血の濃さや母親の出身が皇位継承順位に影響を及ぼすために、皇族間では頻繁に近親婚は行われた。雄略天皇と草香幡梭姫皇女（伯母甥）、欽明天皇と石姫皇女（叔父姪）、敏達天皇と推古天皇（異母兄妹）、用明天皇と穴穂部間人皇女（異母兄妹）、舒明天皇と斉明天皇（伯父姪）、天智天皇と倭姫王（叔父姪）、天武天皇と持統天皇（叔父姪）、元明天皇と草壁皇子（伯母甥）、聖武天皇と光明皇后（叔母甥）、平城天皇と朝原内親王・大宅内親王・甘南美内親王（異母兄妹）、嵯峨天皇と高津内親王（異母兄妹）、淳和天皇と高志内親王（異母兄妹）など多数の例がある。従兄弟姉妹婚まで含めると、ほぼ全ての天皇及び天皇に近い皇族で行われていた。特に淳和天皇と高志内親王の間に恒貞親王が生まれたことで皇位継承問題が発生している。
流石に平安時代となると、藤原氏の娘との婚姻が多数を占めたため、（現代でいう）近親婚はなくなったが、従兄弟姉妹での婚姻が変わらず行われ続けた。 - 古代エジプトでは、王族たちは代々近親相姦を繰り返している。ファラオの継承権はファラオの娘に属し、その娘と結婚したものが次代のファラオとなる。つまり、ファラオの息子はファラオの娘(＝実の姉妹)と結婚することで初めて王位を継承できるようになっていた。とはいえ、ファラオになってしまえば側室を持つことは許されるため、ほとんどの場合は子供は側室との間に残した。だが、兄妹婚・姉弟婚の結果生まれた子供が継承した例もある。
有名な近親婚をしたファラオとしてクレオパトラが挙げられる。女王クレオパトラは自らの弟・プトレマイオス13世と結婚している。後年はその下の弟・プトレマイオス14世とも結婚した。ただし、前述したとおり、これは王家の継承儀式を兼ねたものであり、クレオパトラ自身はユリウス・カエサルやアントニウスを相手に子供を残している。
王族以外の人々も王族の慣習に倣ったので、当時のエジプトではあらゆる階級の人々で全血[8]・半血の兄妹の間で近親婚が行われた。 - アルメニア王国アルタクシアス王朝のティグラネス四世は妹のエラトーと結婚した。この近親婚はアルメニア人の間でも根強く広まっていた。
- 古代ローマの皇帝カリギュラは、自身の3人の妹達とそれぞれ関係を持っていたとされる。
- キリスト教では近親婚が戒められた。場合によっては、従兄弟姉妹婚やそれ以上の遠い関係であっても、教会から否定されることがあった。
- 一方で、教会が認められれば叔父姪や伯母甥などの関係でも婚姻関係と成れることがあった。その一大例がハプスブルク家である。しかし、代々近親婚を重ねた結果、虚弱性質を受け継いでしまったためにマリア・テレジアの死をもって嫡系男系は絶えてしまった。なお、カール5世やフェリペ2世などは文書から確認できるだけでも相当数の愛妾や庶子がおり、そちらが絶えていない可能性は有る。
- 19世紀のドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンとその姉ファニーの関係もまた、場合によっては姉弟愛を超えて近親相姦の関係にあったのではないかと言われる事も多い。事実、彼はファニーが死亡した後精神病にかかり、後を追うように死亡している。
- 島崎藤村も自らの姪と関係を持っていた。姪を妊娠させた後、留学の名目のもとに国外へ逃亡を図ったという。
- アドルフ・ヒトラーは自らの姪と愛人関係にあったが、姪がある時自殺を図った事からヒトラーの性格が変貌したとも言われている。
- 『宋襄の仁』の故事成語で知られる、古代中国の斉の国の襄公は実妹の文姜と肉体関係があった。それは文姜が魯の国の桓公のもとへ嫁いだ後も続いた。そしてついに襄公は文姜の夫桓公を殺し、文姜を連れ帰った。
フィクションにおける近親相姦
恋愛ゲームや官能小説などといったフィクション作品でも度々登場するテーマで、文字通りの「家族同士の恋愛」を扱ったものから、直接の血縁が無い家族同士での「擬似的な近親相姦」とでも言える恋愛模様を扱ったものなどが知られる。フィクションの中でも多少の問題はあるとはいえ、描写自体は存在している。
上記の通り世間的に疎まれる事例であるためか、現実と同じく幸せとは言い難い結末を迎えるパターンが少なくない。
- 心中する
誰にも認めてもらえないため、天国で一緒になろう…。 - 離ればなれにされる
一緒の学校に通っていたのに突然親戚に預けられる、家庭崩壊し離婚などで強制的に引き剥がされる、など。 - 駆け落ちする
ある意味幸せなパターンではある。ただし上記の2つに派生するパターンもある。
最悪なケースは子供がいた場合で、下手したら目の前で子供を殺されたりする（近親者同士の子供なんて穢らわしいから殺してしまえ）。この場合は精神崩壊を起こし上記の心中か、下記の破滅へと発展するケースもある。 - 失恋する（高確率で、男性側がフラれる）
最も現実的な解決策。近親への恋愛感情など一時の気の迷いであり、思春期を経てごく普通の恋愛を経験すると、急速に愛が冷めるというパターン。この場合、フラれた側はとても惨めな思いをするが、心中なんかよりはよほどマシな気がしないでもない。 - 破滅する
最も悲劇的と言えるパターン。歪な恋愛関係がエスカレーションし、暴行・恐喝・監禁・殺人など、更に直接的な犯罪に走ってしまう。このパターンでは、殆どの場合、加害者は男性側である。 - ハッピーエンド（ただし恒久ではない）
TLなど、女性向けの作品に比較的多く見られる結末。例え褒められた関係でなくても、お互いに自分の立場を受容し、束の間の青春を享受するという少し変わった恋愛関係に落ち着くという結末。
現実的に考えれば、遠からず上記の５つのバッドエンドのいずれかに移行することは想像に難くないが、ストーリーの締めとして使われることは意外と多い。
エロゲにおける近親相姦
かつては血縁のあるもの同士(例：実兄妹)の描写がソフ倫の規定で規制されていたが、2004年10月頃に撤廃され、今のとおり何でもアリになった。[9]
エロゲや官能小説などのR-18作品では、妊娠させるのが目的の作品以外では妊娠しない事も多い（そこまで年月を経過させない）。逆に妊娠させるのが目的の場合は妊娠したり、また子供を儲けて以降の話まで描写される場合もある。
両親が生きている場合は上の離ればなれにされたりするが最終的には再会する、両親が死んでいる場合は止める人がいないのでそれぞれの望むままに生きていく、という結末を迎えることが多い。
もちろんプリズム◇リコレクション！のように事情が事情だけに認めている場合も少なからずあるが、作品内の世界観にもよるところが大きい。
現代社会では禁忌とされる近親相姦だが、逆にファンタジー要素が強い作品では意外と寛容である。（まあ神話とかだと別に珍しくもないしね。）
また、近親相姦の間柄が兄妹(姉弟)である場合は、それぞれが近親相姦の末誕生した(両親も近親相姦の間柄であった）という設定が存在する場合もある。(最初から情報がオープンになっているか、ネタバレ的な扱いでストーリーの佳境にて明かされていくかは作品次第だが。)
妊娠はしたくない（させたくない）が愛し合いたい、との事情からアナルセックスの描写がある場合も見られる。いや、避妊しろよ。
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関連項目
- 恋愛
- タブー
- レイプ
- ヨスガる
- Overflow
- 沢越止
- 関係性萌え
- 民法第734条
- あきそら
- レッツ背徳
- 近親婚
- 近親愛
- インブリード
- 危険な配合
- ウェスターマーク効果
- ジェネティック・セクシュアル・アトラクション
- コンサングィナモリー
- ロト（旧約聖書）
- 洪水型兄妹始祖神話
脚注
- *もっともこれについては強制性交・強制わいせつ・性的無知に付け込んだ姦淫・親の支配力を利用した姦淫などといった各種児童虐待を多分に含む点に注意。
- *明治最初期に導入されたが、直後の旧刑法制定時にお雇い外国人の反対でホモ性交の罪と共に削除された。現代でも平成29年の刑法改正前に法制審議会で言及があった程度で、近々に近親相姦罪が制定される見込みはない。
- *親の片方だけが同じ(兄弟姉妹の)こと
- *合衆国は総じて近親相姦に厳しい。いとこ同士の結婚も認めない州が非常に多い。
- *[]内は最高刑
- *近代的な社会では優生学自体が黒歴史化したことから、この見地からの非難が表立ってされることはほぼなくなっている。
- *ただし、シーア派ムスリムが多数を占める今のイランで法的・社会的に承認が得られているかは怪しいところではある。
- *両親が同じ(兄弟姉妹の)こと
- *逆に18歳未満のキャラクターが出てこなくなった。今のエロゲの登場人物はすべて18歳以上ですので、なんかちっちゃく見えたりしてもそれは気のせいです。
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