近鉄名古屋線とは、近畿日本鉄道(近鉄)の所有する路線である。
概要
名古屋市の近鉄名古屋駅から、三重県北中勢の主要都市を通り、伊勢中川駅へと至る路線である。伊勢中川駅で近鉄大阪線及び近鉄山田線に接続しており、運行形態としてはそれら路線と一体化している。
この路線は、他の路線に直通する電車がほとんどである。(特に山田線・鳥羽線)
各駅停車(呼称は「普通」)の他、準急・急行・特急といった優等系列が存在している。
歴史
近畿日本鉄道を代表する大幹線の一つであるが、かなり複雑な経緯をたどって開通した路線である。
一番最初に開業したのは、1924年4月に津新地駅から四日市駅までを開業させた伊勢鉄道である。この時点では地域輸送を担う一ローカル線でしかなかったが、1926年9月に社名を伊勢電気鉄道に改め、同年12月に全線の電化を完了させた。次いで揖斐川電気から四日市~桑名間の免許を譲受し、1929年1月に桑名駅までの路線を開業させた。四日市駅から延伸する際、一度西に進んでから桑名に向かうようにしたため(四日市鉄道・三重鉄道を買収して一部区間を用地に転用)、ほぼ直角に近いカーブが生まれてしまった(善光寺カーブ)。
これとは別に、大阪から進出してきたのが参宮急行電鉄(大阪電気軌道の子会社)である。まず参急中川駅(現:伊勢中川駅)から久居駅までが1930年5月に開業し、さらに1932年4月に官設鉄道の津駅に乗り入れた。
伊勢電気鉄道は過剰投資がたたって経営破綻し、1936年9月に参宮急行電鉄と合併した。伊勢電気鉄道は名古屋までの免許を取得しており、この区間を開業させるための子会社として関西急行電鉄が1936年1月に設立された。1938年6月に関急名古屋駅(現:近鉄名古屋駅)が開業し、念願の名古屋乗り入れを果たした。
伊勢電気鉄道は津駅に乗り入れておらず、参宮急行電鉄との乗り換えが不便だったため、関急名古屋駅開業に併せて津駅から江戸橋駅までの延伸工事が行われた。しかし、参急中川駅から江戸橋駅までは大阪電気軌道と同じ標準軌で建設されたため、狭軌で建設された旧伊勢電気鉄道と関西急行電鉄とは直通出来なかったため、この区間を狭軌に改軌する工事が同年12月に行われた。こうして、現在の近鉄名古屋線にあたる路線が全通した。
1940年1月に関西急行電鉄は参宮急行電鉄と合併し、さらに1941年3月に参宮急行電鉄は大阪電気軌道と合併し、社名も関西急行鉄道となった。そして国策により関西急行鉄道は南海鉄道と合併することになり、1944年6月に近畿日本鉄道が誕生した(南海鉄道は戦後に分離し、南海電気鉄道に)。
上述の「善光寺カーブ」が車両の大型化などの輸送力増強の大きな妨げとなっていたため、近畿日本鉄道は四日市駅へ乗り入れない短絡線の建設を決定した。1956年9月に完成し、諏訪駅付近に近畿日本四日市駅(現:近鉄四日市駅)が新たに開業した。
名阪直通運転は近畿日本鉄道の宿願であったが、軌間が異なるため実現不可能であった。そのため1958年9月より改軌工事の計画が進められていたが、翌1959年9月に伊勢湾台風が直撃し、近鉄名古屋線は甚大な被害を受けた。台風による水没区間復旧を機に、近鉄名古屋線80キロ標準軌化を一挙に(11月19日~27日)完工する大事業を完了し、62日間で全線復旧、標準軌化を成し遂げた。
駅一覧
【凡例】
●:停車 / ▲:一部列車が停車 / 空白:通過 / ※:備考参照
駅名 | し ま か ぜ |
甲 特 急 |
乙 特 急 |
急 行 |
準 急 |
普 通 |
有 効 長 |
備考 ■乗換路線(近鉄系) / ◆乗換路線(他社) ★周辺施設 |
近鉄名古屋駅 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | (8) | ◆JR 東海道新幹線 ◆JR 東海道本線・中央本線・関西本線 ◆名古屋高速臨海鉄道 西名古屋港線(あおなみ線) ◆名古屋市営地下鉄 桜通線・東山線 ◆名古屋鉄道 名古屋本線(名鉄名古屋駅) |
米野駅 | ● | 3 | ★愛知大学 | |||||
黄金駅 | ● | 3 | ||||||
烏森駅 | ● | 3 | ||||||
近鉄八田駅 | ● | 6 | ◆JR 関西本線 ◆名古屋市営地下鉄 東山線 |
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伏屋駅 | ● | 3 | 高架化工事中 | |||||
戸田駅 | ● | 3 | ||||||
近鉄蟹江駅 | ● | ● | ● | 6 | ||||
富吉駅 | ● | ● | (6) | ★富吉車庫 | ||||
佐古木駅 | ● | ● | 5 | |||||
近鉄弥富駅 | ● | ● | ● | 6 | ◆JR 関西本線 ◆名鉄尾西線 |
|||
近鉄長島駅 | ※ | ● | ● | 6 | ※なばなの里向け期間限定臨時停車あり | |||
桑名駅 | ● | ● | ● | ● | 8 | ◆JR 関西本線 ■養老鉄道 養老線 ■三岐鉄道 北勢線(西桑名駅) ★ナガシマスパーランド(バスで約20分) |
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益生駅 | ● | ● | 6 | |||||
伊勢朝日駅 | ● | ● | 5 | |||||
川越富洲原駅 | ● | ● | 5 | |||||
近鉄富田駅 | ● | ● | ● | 6 | ◆三岐鉄道 三岐線 | |||
霞ヶ浦駅 | ● | ● | 6 | |||||
阿倉川駅 | ● | ● | 6 | |||||
川原町駅 | ● | ● | 5 | 高架化工事中 | ||||
近鉄四日市駅 | ● | ● | ● | ● | ● | 8 | ■湯の山線 ■四日市あすなろう鉄道内部線・八王子線 (あすなろう四日市駅) ★三重銀行本店 ★アニメイト四日市店 |
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新正駅 | ● | 3 | ||||||
海山道駅 | ● | 3 | ||||||
塩浜駅 | ● | ● | 6 | ★塩浜検修車庫 | ||||
北楠駅 | ● | 3 | ||||||
楠駅 | ● | 3 | ||||||
長太ノ浦駅 | ● | 3 | 終日無人駅 | |||||
箕田駅 | ● | 3 | 終日無人駅 | |||||
伊勢若松駅 | ● | ● | 6 | ■鈴鹿線 | ||||
千代崎駅 | ※ | ● | 6 | ★鈴鹿医療科学大学 終日無人駅 ※センター試験向け臨時停車あり |
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白子駅 | ● | ● | ● | (8) | ★鈴鹿サーキット(バスで約20分) | |||
鼓ヶ浦駅 | ● | 6 | 終日無人駅 | |||||
磯山駅 | ● | 3 | 終日無人駅 | |||||
千里駅 | ● | 3 | 終日無人駅 | |||||
豊津上野駅 | ● | 3 | ||||||
白塚駅 | ● | 4 | ★白塚検車区・白塚車庫 | |||||
高田本山駅 | ● | 4 | 終日無人駅 | |||||
江戸橋駅 | ● | ● | 6 | ★三重大学 | ||||
津駅 | ● | ● | ● | ● | 8 | ◆JR 紀勢本線 ◆伊勢鉄道 伊勢線 ★三重県庁 |
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津新町駅 | ● | ● | 6 | ★津市役所 | ||||
南が丘駅 | ● | 4 | ★運転免許センター 一部時間帯無人駅 |
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久居駅 | ▲ | ● | ● | 8 | ||||
桃園駅 | ● | 4 | 終日無人駅 | |||||
伊勢中川駅 | ● | ● | ● | (10) | ■大阪線 ■山田線 |
【備考】
・甲特急・特急は、最長で大阪難波駅(難波線)・賢島駅(志摩線)まで直通する。大阪方面へ直通する甲特急・特急は、中川短絡線を通る関係で伊勢中川駅は経由しない。
・特急の久居駅停車は、朝ラッシュ上り・夕ラッシュ下りの名伊特急の一部のみ。
・大阪難波行き特急に、大和西大寺行き/発特急が併結運転される列車が土・休日ダイヤに存在する。
・急行は、最長で鳥羽駅(鳥羽線)まで直通する。朝ラッシュ上りに1本のみ、名張駅(大阪線)から直通の名古屋行き急行が、平日朝に1本のみ、近鉄四日市駅発の平田町(鈴鹿線)行き急行が設定されている。
・準急は近鉄四日市駅で普通列車に/から変更して継続運転する列車も多い。
・普通は近鉄名古屋駅発は最長で伊勢中川駅までであるが、白塚駅からは賢島駅(志摩線)まで直通する列車が設定されている。白塚以南ではワンマン運転が行われている列車もある。
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関連項目
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