途中下車とは、乗車券の区間内の途中駅で、乗車券が有効のまま改札を出ることである。
制度としての途中下車
各鉄道事業者の旅客営業規則において、乗車券の区間内の途中駅で改札を出た場合に乗車券が有効のままである条件と乗車券の残りの区間が無効になって回収される条件が定められている。乗車券が有効のままである条件を満たしている駅(途中下車が可能な駅)においては、乗車券を所持したまま何回でも改札を出ることができる(ただし、定期券以外の乗車券では一度通ったルートを再度通ることはできない)。その一方で、ICカード乗車券で定期券区間外を乗車する場合は、改札外乗り換えなどの例外(後述)を除いて改札を出るたびに運賃計算が打ち切られるため、途中下車の概念が存在しない。また、フリー乗車券を使用してフリー区間内の駅で改札を出る場合は、「途中下車可能」という効力の行使ではなく「乗り降り自由」という効力の行使に該当するため、行為の内容としては同じであるが厳密には途中下車ではない。
JR各社において、乗車券の残りの区間が無効になって回収される条件に該当する駅(途中下車が不可能な駅)は以下の通り。
- 片道の営業キロが100km以下の普通乗車券を使用する場合における、区間内の全駅
- 全区間が大都市近郊区間内(東京、大阪、福岡、新潟、仙台)の普通乗車券を使用する場合における、区間内の全駅
- 「○○市内」または「東京都区内」または「東京山手線内」を発着エリアとして表示している普通乗車券を使用する場合における、発着エリア内の駅
- 普通回数乗車券を使用する場合における、区間内の全駅
- 企画乗車券において、途中下車を禁止している駅
JR各社の急行券、特急券、グリーン券、指定席券は、区間内の途中駅で改札を出た場合は無条件にその券の残りの区間が無効になって回収される。
私鉄・公営鉄道・第三セクター鉄道においては、定期券以外の乗車券での途中下車を原則として認めていない所がほとんどである。
ただし以下の事業者では特定状況下で認めている。
特記事項記載が無い場合は基本的に普通乗車券のみ。磁気プリペイドカード乗車券・IC乗車券は以下の例にあてはまらないので要注意。(自動券売機で普通乗車券に引き換えた場合は可能。)
以下の並びはあいうえお順。
- IRいしかわ鉄道
条件:営業キロ片道100km以上の普通乗車券。
ソース:普通乗車券 | きっぷ・利用案内 | IRいしかわ鉄道株式会社
備考:100km以上でその普通乗車券の有効期限が2日間になり途中下車が可能になる。なお、IRいしかわ鉄道線単独では101kmを超えることは無いので、必然的に他社連絡・通過連絡普通乗車券(JR・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道)のみとなってしまう。 - 会津鉄道・野岩鉄道・東武鉄道
条件:会津鉄道単独の普通乗車券 湯野上温泉駅・塔のへつり駅のみ無条件で可能。若しくは連絡乗車券で会津・野岩・東武3社の合計で片道100kmを超える場合のみ。
ソース:4社線連絡片道乗車券 | 会津鉄道
備考:会津鉄道のみを利用する場合では、事前に乗車券を発券して乗車する場合に限り上記ルールが適用。ワンマン列車で運賃箱に現金投入する場合は対象外。※上記ソース内に「湯野上温泉・塔のへつりは除く」の文字列の記載あり。
また、JR東日本只見線~会津鉄道~野岩鉄道~東武鉄道の連絡乗車券も発売されており、2日間有効。会津若松駅、浅草駅、とうきょうスカイツリー駅、北千住駅、春日部駅、栃木駅、新鹿沼駅、下今市駅、東武日光駅、鬼怒川温泉駅にて当該4社連絡普通乗車券も発売されている(勿論これも全区間で途中下車可能)。 - あいの風とやま鉄道
条件:営業キロが片道100kmを超える普通乗車券。
ソース:きっぷの種類 | きっぷ・ICカード | あいの風とやま鉄道株式会社
備考:片道100kmを超えると有効期限が2日間になり途中下車が可能になる。他社連絡普通乗車券(JR・IRいしかわ鉄道・えちごトキめき鉄道)の場合はその区間も合算される。 - 青い森鉄道
条件:営業キロが片道101km以上の普通乗車券。
ソース:普通乗車券・回数券・入場券 | 青い森鉄道株式会社
備考:青い森鉄道線内単独で2710円以上の区間が101km以上の区間である。 - 伊豆急行
条件:JR線連絡普通乗車券のみ適用。営業キロ片道100kmを超え、なおかつJR線の部分がJR東日本 東京近郊区間内で完結していないこと。
ソース:よくいただくお問い合わせ|伊豆急-おすすめ電車旅<観光・海・リゾート・温泉>
備考:例として東京駅→伊豆高原駅の乗車券を発券する場合、在来線経由の乗車券では途中下車出来ないが、東京駅~熱海駅間を東海道新幹線経由で発券すると、JR線の部分が東京近郊区間内完結の乗車券ではないと判定される(途中でJR東海を利用している扱い・新幹線は大都市近郊区間の効力を打ち消す)ので途中下車可能になる。この乗車券でも選択乗車制度の恩恵により在来線経由で乗車が可能で、サフィール踊り子号等に乗車しても問題ない。
以前は伊豆急行線内のみの普通乗車券でも営業キロ片道24km以上の乗車券であれば途中下車が可能だったが、2019年10月1日からはこの制度が廃止され有効期限も発売当日限り・下車前途無効となってしまった。ソース - 一畑電車
条件:普通乗車券は一畑口駅・雲州平田駅に限り無条件で途中下車可能。
ソース:一畑電車|出雲観光ガイド【出雲観光協会公式ホームページ】
備考:2011年から実施。 - 伊予鉄道
条件:松山市駅は無条件で途中下車可能。
ソース:電車・バス情報 | 伊予鉄の電車・バスの乗り方 | 伊予鉄
備考:紙の切符だけでなく、IC乗車券も途中下車対象。駅係員への申し出が必要。 - えちごトキめき鉄道
条件:切符発売時の営業キロが片道101km以上で、なおかつJR線の部分がJR東日本 新潟近郊区間内で完結していないこと。
ソース:よくある質問 | えちごトキめき鉄道株式会社
備考:片道100kmを超えると有効期限が2日間になり途中下車が可能になる。なお、えちごトキめき鉄道線単独(日本海ひすいライン・妙高はねうまライン両方を足しても)では101kmを超えることは無いので、必然的に他社連絡普通乗車券(JR・あいの風とやま鉄道・しなの鉄道)のみとなってしまう。 - 小田急電鉄
条件:普通乗車券の場合、新宿駅・登戸駅・新松田駅・小田原駅連絡かつJR+小田急の営業キロ総計が片道101km以上。
小田急の企画乗車券のうち、「箱根フリーパス」「丹沢・大山フリーパス」「江の島・鎌倉フリーパス」「江の島1dayパスポート」「宮ヶ瀬ダムハイキングパス」「登山電車・ロープウェイデジタル大涌谷きっぷ」「登山バス・海賊船デジタル芦ノ湖きっぷ」「日帰り温泉箱根湯寮クーポン」に限り、フリーエリア出入口駅⇔小田急の出発駅の間は戻りさえしなければ途中下車可能。
ソース:JR-小田急連絡乗車券で途中下車 - ブルガリア産商品調査記 ― エキセントリック自由帳
タカタカB 「一枚のキップから」:小田急電鉄の乗車券(4)
小田急のお得なきっぷ - 近畿日本鉄道
条件:宝山寺駅のみ無条件で途中下車可能。
ソース:近畿日本鉄道|運賃と使用時のご注意
「生駒ケーブルのりのりきっぷ」の発売について
備考:宝山寺駅は生駒鋼索線宝山寺線・山上線の乗り換え駅。なお、生駒鋼索線⇔奈良線・生駒線方面へ連絡する普通乗車券は近鉄には存在しない。かつては近鉄全線で普通乗車券の途中下車が認められていたが、2001年の磁気プリペイドカード乗車券導入を機に途中下車が不可能になり、現在では宝山寺駅のみとなっている。 - しなの鉄道
条件:切符発売時の営業キロが片道101km以上。
ソース:普通乗車券 | 時刻表・運賃・各種乗車券 | しなの鉄道株式会社
Fuwacchi - しなの鉄道〜JR東日本 連絡乗車券VOL.1 - Powered by LINE
備考:片道101km以上になると有効期限が2日間になり途中下車が可能になる。なお、北しなの線・しなの鉄道線単独では101kmを超えることは無いので、必然的に他社連絡・通過連絡普通乗車券(JR・えちごトキめき鉄道)のみとなってしまう。 - 島原鉄道
条件:駅窓口・駅券売機で買える普通乗車券に限り、発売当日であれば何回でも途中下車可能。
ソース:【営業規則系】 フリー切符がわりに使える西日本鉄道(福岡県)の乗車券。島原鉄道(長崎県)はもっとすごかった。 - 旅と鉄道の美学
島原鉄道 乗り鉄&補充券収集 | にゃっぽりんごの鉄マガ
備考:無人駅で乗車し整理券で精算する場合はその恩恵を受けられない。 - 高松琴平電気鉄道
条件:普通乗車券かつ以下の指定駅で所持している普通乗車券と同一金額区間内でないことが条件。
ソース:よくあるご質問:きっぷと運賃のルール -ことでん-
指定駅:片原町駅・瓦町駅・栗林公園駅・三条駅・太田駅・仏生山駅・一宮駅・岡本駅・滝宮駅・岡田駅・花園駅・木太東口駅・高田駅・平木駅・学園通り駅・今橋駅・潟元駅・琴電屋島駅・八栗駅・大町駅 - 智頭急行
条件:切符発売時の営業キロが片道101km以上。
ソース:お客様の声と対応について - 智頭急行
備考:片道101km以上になると有効期限が2日間になり途中下車が可能になる。なお、智頭線単独では101kmを超えることは無いので、必然的にJR線連絡・通過連絡普通乗車券のみとなってしまう。 - 南海電気鉄道
条件:極楽橋駅のみ無条件で途中下車可能。
ソース:“はじまりの聖地、極楽橋。” - 南海電鉄
備考:普通乗車券・IC乗車券・VisaカードのNFC決済いずれも可。駅窓口にて申し出が必要。 - 西日本鉄道
条件:片道17km(大人340円・子供170円)を超える普通乗車券で、なおかつ乗車券の運賃と同一運賃の駅でない場合のみ。
ソース:乗り越し・途中下車|きっぷ・定期|電車情報|西鉄グループ
備考:駅窓口にて申し出が必要。 - 比叡山鉄道(比叡山坂本ケーブル)
条件:普通乗車券は無条件で途中下車可能。
ソース:ポストを読み込み中です
https://twitter.com/sakamoto_cable/status/1283261754101788673
備考:乗車時に車掌に申し出が必要。また、途中駅のほうらい丘駅・もたて山駅から再乗車する場合はプラットホーム上のインターホンで駅に連絡する必要あり(事前連絡が無い場合は列車が通過する規定となっている為)。 - 北越急行
条件:切符発売時の営業キロが片道101km以上。
ソース:よくあるご質問|ほくほく線 北越急行株式会社
備考:片道101km以上になると有効期限が2日間になり途中下車が可能になる。なお、ほくほく線単独では101kmを超えることは無いので、必然的に他社連絡・通過連絡普通乗車券(JR・えちごトキめき鉄道)のみとなってしまう。
かつて普通乗車券での途中下車が行えた私鉄・3セク鉄道
- 近江鉄道
かつては駅窓口で買える普通乗車券(硬券)に限り、発売当日であれば何回でも途中下車可能だった。2015年制度廃止。 - 京阪電鉄
指定された駅かつ、所持している普通乗車券と同一金額区間内でないことが条件だった。1995年制度廃止。 - 名古屋鉄道
1970年頃まで可能だったらしい。 - 箱根登山鉄道
かつては普通乗車券全てが2日間有効で途中下車が可能だった。2002年制度廃止し、有効期限も発売当日限り・下車前途無効となってしまった。 - 阪急電鉄
1970年頃まで宝塚駅に限り可能だったらしい。 - 北海道ちほく高原鉄道
JR池北線の時と同様、営業キロ片道100kmを超える場合に途中下車が可能だった。2006年全線廃止。
乗り換えのための途中下車
規則上は途中下車扱いではないが、一度改札を出ないと乗り換えできない駅で改札を出ることを広義の途中下車と考える事もできる。
- 大阪市内発着の乗車券で、大阪駅⇔北新地駅を徒歩連絡する場合。
- 神戸市内発着の乗車券で、山陽新幹線を利用する場合のみ新神戸駅・三ノ宮駅・元町駅・神戸駅(JR西日本)・新長田駅で途中下車可能。
※神戸市内には新幹線駅⇔在来線駅へ直接乗り換えられるJRの駅は存在しないことから。上記の駅は全て神戸市営地下鉄に乗り換えることになっている(地下鉄は別運賃)。 - 浜川崎駅で鶴見線と南武線を乗り換える場合。
※歴史的経緯により両線の駅舎が離れた場所にあるため、東京近郊区間内完結の乗車券でも改札外に出られる。ICカードで乗り換える場合は簡易改札機にタッチしないように案内されている。 - 新橋駅以遠(浜松町駅方面)⇔八丁堀駅以遠(越中島駅方面)の乗車券または左記の条件に該当する駅の入場記録があるICカードで、有楽町駅京橋口⇔東京駅京葉地下丸の内口を徒歩連絡する場合。
ちなみにかつて折尾駅では鹿児島本線水巻駅以西 or 若松線本城駅以北⇔福北ゆたか線東水巻駅以南方面を乗り継ぐ際徒歩連絡が存在した。駅構造の関係上、本駅舎と鷹見口間とで改札が分かれていた。高架化工事の完成に伴い2022年3月11日の最終列車をもってこの措置が廃止された。
大手私鉄(後述の地下鉄は除く)では近畿日本鉄道で、生駒線王寺駅⇔田原本線新王寺駅・橿原線田原本駅⇔田原本線西田原本駅の徒歩連絡が該当するが、時間制限は設定されていない(当日中であればOK)。
以下は主に地下鉄線で見られる。路面電車等、無人駅のワンマン列車でもそれに近いものがある。路面電車の場合、途中駅で打ち切る列車の場合乗り継ぎ券を渡したりして、通し運賃で次の列車に乗れる制度がある。
大抵の事業者では、1日乗車券などを除き一定以内に再入場しないとその乗車券・乗り継ぎ券は無効になり、普通乗車券や回数券であれば回収されてしまう(磁気プリペイドカード乗車券・IC乗車券では一旦打ち切ってその駅で下車した扱いとし、新たに乗り換え駅からの運賃を課金する)というルールが設定されている。
公営(元公営含む)の地下鉄での時間制限は主に以下のとおり。[1]
路面電車での乗り換え・乗り継ぎの制限時間は主に以下のとおり。
- 函館市企業局交通部:時間制限無し(当日中であればOK)
- 豊橋鉄道:時間制限無し?[3]
- 阪堺電気軌道:1時間
- 広島電鉄:IC乗車券のみ30分、現金払い者は制限時間無し(当日中であればOK)[4]
- とさでん交通:制限時間無し(当日中であればOK)
- 長崎電気軌道:IC乗車券のみ適用 30分[5]
- 熊本市交通局:20分
- 鹿児島市交通局:1時間
例外として、紙の連絡乗車券を使用して異なる事業者間を改札外で乗り換える場合および定期券を使用する場合は規則上も途中下車扱いとなり、有効期間内であればいつでも再入場できる(磁気プリペイドカード乗車券・IC乗車券のSFを使用して異なる事業者間を改札外で乗り換える場合は上記の時間制限を受ける)。
旅の目的・手段としての途中下車
旅行において途中下車は旅の醍醐味とされることも多く、駅の周辺を散策したり、その土地の文化や雰囲気を味わうなど、様々な楽しみ方がある。中には駅で降りることそのものが目的とされることもある。これらの目的の場合は必ずしも上記の制度に限定されることはなく、青春18きっぷや鉄道会社の1日乗車券などを使用する場合が多い。
日本テレビの「ぶらり途中下車の旅」など、途中下車をテーマの1つとした旅番組もポピュラーな存在となっている。
関連動画
関連項目
脚注
- *仙台市地下鉄・横浜市営地下鉄・名古屋市営地下鉄・京都市営地下鉄は改札外乗り換え駅が存在しないためそもそもそういう制度が無い。
- *東京メトロと都営地下鉄を乗り継ぐ場合も、ICカードに限り同様に1時間とされている(切符の場合は制限は無い。なお、改札外乗り換えルートが存在しない白金高輪駅・九段下駅は切符でもICカードでも乗り換えのための途中下車は不可である)。2020年6月5日までは30分間であった。
- *井原停留場 or 競輪場前停留場で乗換券を発券するようになった。
- *ちなみに以前は現金払い者も乗り換え制限時間が30分であり、乗り換え券が磁気カードだったが、2016年から紙方式に変わり制限時間がなくなった模様。
- *2021年4月1日より適用。
- 4
- 0pt