概要
酒税は国税の一つで、平成20年度の税収は1.5兆円である。これは、租税及び印紙収入の3.3%を占め、国税の中では5番目に多い。
酒税の課税対象は酒類であり、酒類とはアルコール分1度以上の飲料である。なお、アルコール分とは摂氏15度におけるエチルアルコールの容量の割合をいう。酒類の製造、販売には免許が必要であるが、これは酒税の税率は他の税金と比べて高いため、酒税が確実に納付されるための措置である。免許を含めた酒類全般に関する監督官庁は国税庁となっている。
酒税は間接税であり、税金を負担する人と税金を納付する人が違う税金である。具体的には酒税を負担する人が消費者であるのに対し、酒税の納税義務者は酒類の製造者もしくは輸入者である。製造の場合は酒類を製造上から移出したとき、つまり作った場所から酒類を持ち出したら課税対象になり、税務署に申告して納付する。輸入の場合は保税地域から引き取ったときに課税対象となり、関税と一緒に税関に申告して納付する。なお、製造者が他の酒類を製造するため、別の倉庫に移動するため、海外に輸出するために製造場から移出した場合などには一定の書類を提出すれば免税になる。逆に、製造場から移出しなくても、製造場に置いて酒類を飲用した場合には課税対象となる。
酒類の分類
酒税において酒類は4種類17品目に分類されている。具体的には次のとおりである。なお、エキス分とは摂氏15度における容量100m3中の不揮発性分のグラム数をいう。
発泡性酒類
ビールに代表される低アルコールの発泡性酒類である。具体的には次の2品目とその他の発泡性酒類に分けられる。
- ビール
- 麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたものでアルコール分20度未満のものなど。麦芽重量の50%以下であれば麦などを原料の一部として含んでいてもよい
- 発泡酒
- 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有しアルコール分20度未満のもの
- その他の発泡性酒類
- ビール、発泡酒以外で発泡性を有しアルコール分10度未満のもの。いわゆる第3のビールなど。なお、その他の発泡性酒類は品目ではない。種類の上では発泡性酒類になるだけで、品目としてはビール、発泡酒以外の15品目のどれかになる。
- 例えば第3のビールの代表選手であるドラフトワンは品目としては「その他の醸造酒」になる。しかし、その他の発泡性酒類の条件をみたすので、種類としては「醸造酒類」ではなく「発泡性酒類」に分類される。このため、ドラフトワンは「その他の醸造酒(発泡性)①」などと記述される。
醸造酒類
発酵によって生じたアルコールを主とする酒類である。具体的には次の3品目に分けられる。
- 清酒
- 米、米こうじ、水を原料として発酵させた酒類やこれに類似するものでアルコール分22度未満のもの。いわゆる日本酒。
- 果実酒
- 果実又は果実及び水を原料として発酵させたものでアルコール分20度未満のもの。ワインやシードルなど。
- その他の醸造酒
- 穀類、糖類その他の物品を原料として発行させた酒類でアルコール分20度未満のもの。ただし、スピリッツ、リキュール、粉末酒、雑酒以外の品目に属するものは除く。紹興酒など。
蒸留酒類
アルコール含有物を蒸留して生じたアルコールを主とする酒類である。具体的には次の7品目に分けられる。
- 連続式蒸留しょうちゅう
- アルコール含有物を連続式蒸留機により蒸留した酒類で、アルコール分36度未満のもの。旧焼酎甲類。単式蒸留しょうちゅうと比べて低コストで大量生産に向いている。
- 単式蒸留しょうちゅう
- 穀類又はいも類、これらのこうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留器により蒸留したものでアルコール分45度以下のもの。旧焼酎乙類。伝統的な製法で香りと風味が良く、一定の条件を満たすものについては本格焼酎とも言われる。
- みりん
- 米、米こうじにしょうちゅう又はアルコールなどを加えてこしたものでアルコール分15度未満エキス分40度以上のもの。飲用のほか、料理に使われることも多い。なお、一般に「みりん」として販売されているものの多くは「みりん」ではなく「みりん風調味料」である。「みりん風調味料」はアルコール分1度未満で酒類ではない。「みりん風調味料」と区別するために、本来のみりんを「本みりん」と言うこともある。
- ウイスキー
- 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したものなど。
- ブランデー
- 果実もしくは果実及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの。
- 原料用アルコール
- 連続式蒸留しょうちゅう及び単式蒸留しょうちゅうの規定のうち、アルコール分の規定のみを「アルコール分が45度を超えるもの」に変えた物。
- スピリッツ
- エキス分2度未満の酒類。ただし、リキュール、粉末酒、雑酒以外の品目に属するものは除く。ラム、ウォッカ、ジンなど。
混成酒類
- 合成清酒
- アルコール、しょうちゅう、清酒などを組み合わせて製造される清酒のような色や香りがする酒類でアルコール分16度未満エキス分5度以上のもの。米をほとんど使わないで作った清酒のような酒類。
- 甘味果実酒
- 果実又は果実及び水に糖類やブランデーなどを加えて発酵させた酒類などで果実酒以外のもの。ポートワインなど。
- リキュール
- 酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類でエキス分2度以上のもの。ただし、雑酒以外の品目に属するものとみりん類似雑酒は除く。本来のリキュールの他にサワーやチューハイの一部なども含まれる。
- 粉末酒
- 溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状の酒類。愛知県にある佐藤食品工業株式会社が世界で始めて開発した。
- 雑酒
- 他の品目に該当しない酒類。灰持酒のようにみりんに類似する酒類でみりんではないものはここに入る。
税率
酒税の税率には種類ごとに定まった基本税率と特定の品目等について規定された特別税率がある。これをまとめると次の表のようになる。表は1キロリットル当たりの税金の額を示しており、表中の「度」とはアルコール度数のことである。なお、特例として税率の軽減措置がなされているものもあるが、これについては注にまとめて記述した。
発泡性酒類(基本税率220,000円) | ||
---|---|---|
ビール(注1) | 220,000円 | |
発泡酒(注2) | 10度未満で麦芽25%未満 | 134,250円 |
10度未満で麦芽25%以上50%未満 | 178,125円 | |
その他 | 220,000円 | |
その他の発泡性酒類 | 一定の条件を満たすもの | 80,000円 |
その他 | 220,000円 | |
醸造酒類(基本税率140,000円) | ||
清酒(注2) | 140,000円 | |
果実酒(注2) | 80,000円 | |
その他の醸造酒 | 140,000円 | |
蒸留酒類(基本税率 20度まで200,000円 以降1度ごとに10,000円加算)(注3) | ||
連続式蒸留しょうちゅう(注2) | 20度まで200,000円 以降1度ごとに10,000円加算 | |
単式蒸留しょうちゅう(注2) | ||
原料用アルコール | ||
ウイスキー | 37度まで370,000円 以降1度ごとに10,000円加算 | |
ブランデー | ||
スピリッツ | ||
混成酒類(基本税率 20度まで220,000円 以降1度ごとに11,000円加算) | ||
合成清酒(注2) | 100,000円 | |
みりん(みりん類似雑酒を含む) | 20,000円 | |
甘味果実酒 | 12度まで120,000円 以降1度ごとに10,000円加算 | |
リキュール(注3) | ||
粉末酒 | 390,000円 | |
雑酒(みりん類似雑酒を除く) | 20度まで220,000円 以降1度ごとに11,000円加算 |
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関連項目
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