銀の匙 Silver Spoonとは、荒川弘による漫画作品である。掲載は『週刊少年サンデー』にて2011年19号から2019年52号(同年11月27日発売)まで連載された。単行本は全15巻。
作者の荒川弘自身が農家・農業高校出身のため、過去の体験談を存分に生かして描かれていると思われる、農業青春コメディ(作者いわく『フィクション…とも言いがたい学園漫画です』)。同作者による同じテーマを扱った作品として、作者の農業についての実体験や薀蓄を描いたエッセイコミック「百姓貴族」があり、他誌で連載されている。単行本収録分は「春の巻」「夏の巻」。
「マンガ大賞2012」大賞、「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」2位受賞。
ストーリー
家族と不仲で、将来の夢も特に無いが札幌の進学校で学業の成績だけは良かった主人公、八軒勇吾は、中学の担任教師である白石の勧めにより「大蝦夷農業高校」(略称:エゾノー)酪農科学科へ一般受験で入学する。
何故に都会の普通科からわざわざ日本北端の農業高校へ? という選定の理由は、『高校に寮があり、実家からの距離も十分あるため、今は不仲な家族とも顔を合わせずに済む生活ができるから。』との事。
だが、いざ入学してみたまでは良かったものの、農業高校における”通常の学生ライフ”は、一般の学業を行う普通科・進学校のそれとは、想像以上に全くの別世界であった。
価値観の違いにカルチャーショックを受けながらも、自分の将来の夢を探すため、八軒は農業高校で奮闘する。
登場人物
各人物の出身校は、実在の地名を捩っているがすべて架空のものである。
- 八軒勇吾(CV:木村良平)
- 主人公。愛称は「ハチ」。学業の成績は優秀で、ペーパーテストの成績はダントツで1位。お人好しな性格で、「人に構って損するタイプ」と同級生には言われている。『将来の夢なんか無くて、ただ家族に会わずに済むから、先生に勧められたから』という後ろ向きな理由でこの学校を選んだことに、今も後ろめたさを完全には拭いきれずにいる。また、そんな自分と比べて、ブレない将来の夢をきちんと描いているクラスメイト達に時折コンプレックスを抱きつつも、農業高校という別世界で汗と涙と土にまみれながら自分の夢を探すため成長していく。
新札幌中学校出身。苗字の元ネタは札幌市西区に実在する地名から。 - 御影アキ(CV:三宅麻理恵)
- ハチと同じクラス。家は牛と馬を飼っている小規模農家で、駒場とは幼馴染。稼業を継ぐため推薦受験でエゾノーに入学した。大の馬好きで、春休みから馬術部に所属している。八軒が一目惚れ中の本作メインヒロイン。
清水第一中学校出身(同名の中学校が静岡県に実在するがおそらく無関係)。苗字の元ネタは上川郡清水町に実在する地名から。 - 相川進之介(CV:島崎信長)
- ハチと同じクラス。将来の夢は獣医だが、解剖手術や屠畜場面など、獣医なら避けては通れないグロテスクな光景に弱く、目にしてしまうとすぐ倒れる。『獣医になるための覚悟とは、経済動物を相手にし、目の前にして「殺れるかどうか」だ』という現役獣医からの言葉をハチ経由で聞かされて、自分にその覚悟があるのかと思い悩む。
幕別東中学校出身。苗字の元ネタは中川郡幕別町に実在する地名から。 - 駒場一郎(CV:櫻井トオル)
- ハチと同じクラス。ガチガチに鍛え抜かれた農筋ボディの肉体派で、御影とは幼馴染。春休みから野球部に所属している。将来の夢はプロ野球選手になって、引退するまでに稼いだ金で実家をもっとデカい農場にすること。だったのだが・・・(以下ネタバレ:甲子園への切符は予選決勝敗退で夢と消え、更に追い打ちでその夢を賭けてまで支えたかったはずの実家の農場は経営破綻で離農が決定。全ての夢と生きる目標を失い退学し、以後しばらく肉体労働系アルバイトで家に稼ぎを入れるだけの目標のない生活を送っていたが、おせっかい八軒らの不屈の干渉の結果徐々に立ち直り、自分だけの出来ることを模索しに海外へと発つ。)
アキと同じく清水第一中学校出身。苗字の元ネタは清水町からは離れているが、河東郡音更町に実在する地名と思われる。 - 稲田多摩子(CV:高垣彩陽)
- ハチと同じクラス。愛称は「タマゴ」。(名は「タマコ」だが、その太ましく肉付きの良い身体のフォルム・シルエットが正に鶏卵そのものである事から)。実家はギガファームを営んでおり、将来の夢は農業経営を学んで世界に出ても負けない日本農業を目指すこと。お金が大好き。輪郭こそタマゴだが個々の顔のパーツは美形。
- 同誌繋がりだと、モンキーターンの城ヶ崎ありさを思わせる、濃い見た目と計算高さを持ち合わせる女。
帯広川西中央中学校出身。苗字の元ネタは帯広市に実在し、本作の舞台モデルとなった北海道帯広農業高等学校の所在地でもある稲田町。 - 常磐恵次(CV:庄司将之)
- ハチと同じクラス。将来の夢は実家のニワトリ農家を継ぐこと。学業の成績は悪く、特に数学は万年1。ハチに教えてもらってもすぐ忘れ、「ニワトリ農家出だからニワトリに似て3歩歩くと忘れる」など散々な言われようである。また、特に悪気はないのだが口が軽かったり、誤解したまま噂を広めたり、金の使い方が如何にもダメダメだったりと、色々と残念な子ポジションである。エゾノーには農家の長男というだけの理由で推薦入学で入った。
中札内南中学校出身。苗字の元ネタは河西郡中札内村に実在する地名から。
エゾノーの特徴
実習農地、実習農林を含めた敷地面積は高校では全国一で、一周20kmある。学生生活は部活必須。文化部はなく、全部運動部。普通の学業はできなくても農家出身の生徒は知識が異様に偏っているため、農業の知識に限っては学業優良であったハズのハチが聞いても、「呪文レベル」。酪農科学科は特に実習が多く、農場では様々な家畜を飼っているため、基本農場が休みということはない。朝五時起床。生徒はローテーションで家畜の世話をするが他の科の仕事にも動員されたりする。学生でありながら、もはや肉体労働者でもある。
寮の食堂の入り口には「銀の匙」の飾りが掲げられている。これは中世ヨーロッパにおいて"銀の匙をくわえて生まれてくる"(≒良い家柄(貴族or金持ち)の家に生まれる事の喩え)という言葉に庶民があやかったもので、子どもが生まれた時に銀の匙を買ってくることで、将来その子が食うに困らないだけの豊かさに恵まれますように、という願いが込められたものであるらしい。転じて、エゾノーの食堂にこれが掲げられているのは「農業やってればきっと将来食うに困ることはありません(≒百姓こそが貴族だ!)」という理念と願望を込めたものであり、もう1つの連載「百姓貴族」とコンセプトがここで重なるわけである。
ちなみにこの架空農業高校のモデルは、北海道帯広市に実在する「北海道帯広農業高等学校」であり、
作者の荒川弘の母校でもある。
単行本にも監修として、学校名と学科名などが記入されている(3巻172pなど)。
舞台設定
札幌などの北海道に実在する地名が登場することからもわかるとおり、舞台は現実の北海道をモデルにしており、作者の荒川弘は北海道中川郡幕別町出身(帯広市の隣)である。時折北海道の有名スポットが背景として登場することがあるほか、作中に北海道あるあるネタが仕込まれているのも本作の特徴である。たとえば、
- 最寄のショッピングセンターまで100km離れていて、車で1時間かかる(このエピソードは、単に距離の遠さを示しているだけではない。100km離れた場所に所要時間1時間で到着するということは、時速…)
- 交通事故の相手が鹿(や熊)だった
- そしてその場合、解体して食べる
余談だが、登場人物の名字の多くは、そのキャラクターにゆかりのある北海道の地名にちなんで付けられている。
例として、ハチの名字は北海道札幌市西区に実在する地名「八軒」、ハチの中学時代の担任だった白石は札幌市に実在する行政区名「白石区」から。エゾノーの生徒の多くは十勝、帯広市周辺の地名が多い事から、キャラの出生地辺りとシンクロしていると思われる。ハチの実家の住所「札幌市西区山の沢」は実在しないが、これも札幌市西区に実在する地名「宮の沢」と「山の手」を合わせたものであろう。
テレビアニメ
第1期は2013年7月からフジテレビ「ノイタミナ」枠ほかで放送された。「ノイタミナ」枠としては初となる分割2クール作品であり、第2期は2014年1月より放送。また今作は轟先生役の内海賢二氏の遺作でもある。
スタッフ
- 原作: 荒川弘(小学館「週刊少年サンデー」連載)
- 監督: 伊藤智彦(第1期)→出合小都美(第2期)
- 副監督: 出合小都美(第1期)
- 脚本: 岸本卓
- キャラクターデザイン・総作画監督: 中井準
- 動物デザイン: 室井康雄
- プロップデザイン: 須藤智子
- 美術監督: 高木佐和子(Studio Wyeth)
- 美術設定: 杉山晋史(Studio Wyeth)
- 色彩設計: 茂木孝浩(第1・2期)・土居真紀子(第2期)
- 撮影監督: 青嶋俊明
- CG監督: 雲藤隆太(第1期)→門間和弥(第2期)
- 編集: 西山茂(Real-T)
- 音響監督: 伊藤智彦
- 音響効果: 今野康之
- 音楽: 村井秀清
- アニメーション制作: A-1 Pictures
主題歌
- 第1期オープニングテーマ「Kiss you」
歌:miwa - 第1期エンディングテーマ「Hello Especially」
歌:スキマスイッチ - 第2期オープニングテーマ「LIFE」
歌:フジファブリック - 第2期エンディングテーマ「オトノナルホウヘ→」
歌:Goosehouse
放送局
第1期
放送局 | 放送開始日 | 放送時間 |
---|---|---|
フジテレビ | 2013年7月11日 | 木曜日 25:45~25:15(初回 25:10~25:40) |
テレビ静岡 | 木曜日 25:40~26:10(初回 26:05~26:35) | |
東海テレビ | 木曜日 26:05~26:35(初回 26:20~26:50) | |
サガテレビ | 2013年7月12日 | 金曜日 25:05~25:35(初回 25:15~25:45) |
テレビ西日本 | 金曜日 26:05~26:35(初回 26:15~26:45) | |
さくらんぼテレビ | 2013年7月13日 | 土曜日 25:05~25:35(初回 25:40~26:10) |
秋田テレビ | 土曜日 25:35~26:05(初回 26:10~26:40) | |
鹿児島テレビ | ||
テレビ熊本 | 土曜日 26:05~26:35(初回 26:40~27:10) | |
北海道文化放送 | 2013年7月14日 | 日曜日 25:00~25:30 |
福島テレビ | 2013年7月15日 | 月曜日 25:10~25:40(初回 25:25~25:55) |
テレビ新広島 | 月曜日 25:30~26:00(初回 25:45~26:15) | |
テレビ愛媛 | 2013年7月16日 | 火曜日 24:40~25:10 |
新潟総合テレビ | 火曜日 25:35~26:05 | |
仙台放送 | 火曜日 25:45~26:15(初回 26:05~26:35) | |
関西テレビ | 火曜日 25:58~26:28 | |
岩手めんこいテレビ | 2013年7月17日 | 水曜日 25:50~26:20(初回 26:05~26:35) |
岡山放送 | 2013年8月6日 | 火曜日 25:45~26:15 |
山陰中央テレビ | 2014年1月13日 | 月曜日 25:10~25:40(初回 25:25~25:55) |
第2期
放送局 | 放送開始日 | 放送時間 |
---|---|---|
フジテレビ | 2014年1月9日 | 木曜日 24:50~25:20 |
テレビ静岡 | 木曜日 25:40~26:10(初回 25:35~26:05) | |
東海テレビ | 木曜日 26:10~26:40 | |
サガテレビ | 2013年1月10日 | 金曜日 25:05~25:35 |
テレビ西日本 | 金曜日 26:05~26:35 | |
さくらんぼテレビ | 2013年1月11日 | 土曜日 25:05~25:35 |
秋田テレビ | 土曜日 25:35~26:05 | |
鹿児島テレビ | 土曜日 25:35~26:05(初回 25:50~26:20) | |
テレビ熊本 | 土曜日 26:05~26:35 | |
福島テレビ | 2014年1月13日 | 月曜日 25:10~25:40(初回 25:25~25:55) |
テレビ新広島 | 月曜日 25:30~26:00(初回 25:55~26:25) | |
テレビ愛媛 | 2014年1月14日 | 火曜日 25:10~25:40(初回 25:25~25:55) |
新潟総合テレビ | 火曜日 25:45~26:15(初回 25:55~26:25) | |
仙台放送 | 火曜日 25:45~26:15(初回 26:00~26:30) | |
関西テレビ | 火曜日 25:59~26:29(初回 26:14~26:44) | |
岩手めんこいテレビ | 2014年1月15日 | 水曜日 25:50~26:20 |
北海道文化放送 | 2014年1月19日 | 日曜日 25:00~25:30 |
岡山放送 | 2014年1月21日 | 火曜日 25:45~26:15 |
関連動画
関連生放送
関連商品
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アニメ
関連CD
関連チャンネル
関連項目
フジテレビ「ノイタミナ」 上段 | ||
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2013年4月~6月 | 2013年7月~9月 | 2013年10月~12月 |
刀語 (再放送・1時間1枠) |
銀の匙 Silver Spoon | ガリレイドンナ |
2013年10月~12月 | 2014年1月~3月 | 2014年4月~6月 |
ガリレイドンナ | 銀の匙 Silver Spoon (第2期) |
ピンポン THE ANIMATION |
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