「銃夢」(ガンム、GUNNM)とは、ビジネスジャンプで連載されていた、木城ゆきとによるSF漫画である。また、「銃夢 LastOrder」と「銃夢火星戦記」はその続編である。
グロテスクな表現が多いため苦手な人は注意。
概要
銃夢
遠い未来の地球のとある場所にある、空に浮かぶ巨大都市「ザレム」と、ザレムから廃棄されるゴミをリサイクルしザレムに物資を輸送するために存在する「クズ鉄町」が主な舞台。貧民街のすさんだ雰囲気と高度に発展したサイバネ技術が融合したサイバーパンクな世界観が魅力。
脳みそさえ生きていればどうにでもなるレベルでサイバネ技術が発展しているが、クズ鉄町は治安も悪く他人から強奪した生体組織やサイボーグのパーツが取引されている。また、人命が非常に軽く、殺人事件が多発していたり過激で危険なスポーツ「モーターボール」の大会で毎回のように死者が出たりする。
最新の科学やよくある未来予想だけでなく、サイコメトリーやスカラー波、吸血鬼といったオカルト・エセ科学も多く登場しているが、それらに科学的な根拠を持たせてあるため世界観に無理なく溶け込んでいる。運命と業(カルマ)、熱力学第二法則からの克服を目的としたオリジナルの理論「業子力学」はその最たるものであると言える。
サイバネ技師として働く「イド」は、ザレムの廃棄物が積もった鉄くずの山から少女のスクラップを発掘し蘇生することに成功した。イドは彼女を「ガリィ」と名付け、共に生活する事になる。
主な登場人物
- ガリィ
ゴミの山に埋もれていた謎の少女。記憶を喪失しており、イドの飼っていた雄猫の名前からガリィと名づけられた。火星で発展しこの時代には断絶したと思われていた格闘術「機甲術(パンツァークンスト)」を非常に高いレベルで使いこなす。賞金首ハンターとなったりモーターボールの選手になったり追われる身となったりザレムの傭兵をやったりと忙しい。殺戮の天使の異名を持ち、ダマスカスブレードを武器に戦う。
- イド・ダイスケ
クズ鉄町に住む腕の良いサイバネ技師。ガリィをゴミの山から拾い上げ、蘇生させた。ジェット付きハンマーを武器に、ハンターとして賞金首を狩り資金を稼いでいる。
ザレムを追放されたマッドサイエンティスト。生きる事とはなにか、の答えを求め日々人体実験を繰り返している。独自の理論「業子力学」を築き上げた。プリンが好物。
ガリィが町で出会った少年。ガリィはその考え方に魅力を感じ好意を抱く。他人からパーツや生体組織を強奪してパーツ屋に売り払う事を生業としている。ザレムに行くことをベクターと約束し、そのための資金を貯蓄している。
クズ鉄町の流通を表も裏も取り仕切る人物。ユーゴに大金を稼げばザレムに送ってやると口約束した。薄汚い仕事も多く取り扱っているが私利私欲に溺れてはおらず、町の維持のために難度の高い交渉を数多くこなしている。
- マカク
生まれてすぐ下水道に遺棄されたが、死の直前でノヴァに命を救われた。「ウジ虫のような」ボディを持ち、他人のボディを乗っ取ることができる。
- ザパン
賞金首ハンターの一人。バー「カンサス」でガリィに手ひどくやられ、復讐心を燃やす。
- ジャシュガン
帝王の異名を持つモーターボール最強の選手。脳をノヴァに改造してもらい、人体の限界を超えた運動を可能にしたが、副作用で脳が徐々に崩壊する病に冒されている。対サイボーグ戦闘術の極意「機」を体得し、ガリィと互角以上に戦った。
- フォギア・フォア
生身の体でサイボーグと互角以上に戦うための武術「対サイバネ骨法」を習得している。傭兵任務の途中でガリィに助けられた。
- 電(デン)
要塞を思わせるほど巨大な体躯の鎧武者のようなサイボーグ。人形態とケンタウロスのような形態がある。ザレムへ反逆するため「バーシャック(馬借)」という軍団を率い、80cm列車砲のレプリカ「ヘング」でザレムを狙撃する計画を立てる。その巨体からは考えられないほど高度な戦闘技術を持ち、「機」とそれをさらに発展させた「機兆(きざし)」を自在に操りガリィを圧倒した。ウエディングドレスを着たガリィとの戦闘は圧巻の一言。
- ケイオス
ノヴァの息子だが彼の手から逃れようとしている。放送機材を積んだ車からファクトリーの目を盗んでラジオを勝手に放送している。手に触れたものから情報を得る超能力「サイコメトリー」を持つ。名前の由来は渾沌(カオス)。電とは深い関係がある。
ガリィの記憶と戦闘データ、ボディをコピーしたザレムの人型兵器。No.1からNo.12までいる。生身の脳みそを持たず人工脳チップで動いているので脳震盪が起こらず、彼女らはオリジナルより強いと自負している。ガリィが「自分とは何か」という問いに思い悩む原因になった。記憶を含めほぼ完全なコピーではあるが、それぞれに人格があるためゼクスのように勝手な行動をとる個体もいる。
銃夢 LastOrder
ウルトラジャンプとイブニングで連載されていた。略称は銃夢LO。
銃夢のラスト手前のある時点から分岐するストーリー。ガリィはとある事情からザレムに運よく侵入し、そのまま宇宙へと進んでいく。ガリィの出生の秘密や運命が徐々に明らかになっていくが、途中から森羅天頂武闘大会(略称ZOTT、天下一武道会のようなもの)が始まりバトル中心に変わっていく。サイボーグの装備がよりSFチックになっていったり他の惑星の住民なども登場する。また、機甲術の源流が明らかになるがその関係者がSFというよりファンタジー色が強い(ただし単なるオカルトやファンタジーではなく科学的根拠を持たせてある)。
主な登場人物
- ガリィ
前作から続投。歴戦の兵士らしい冷徹な判断を下すこともあれば、少女のようにとまどったり感情的になったりもする。ケンカ的な意味で挑発するのが好き。破壊と再生を繰り返し、超人っぷりに磨きがかかった。
独自理論「業子力学」を元に、何度死んでもどこかで再生する技術「ステレオトミー」を完成させた。本作では彼のコピーが多数登場し、ガリィと共に行動する協力的な個体もいれば敵対する個体もいる。しかしどの個体も基本的には自分の知識欲を満たしたいという欲求で動く。
GRシリーズ12体のNo.6。他のGRシリーズとは異なり男性の人格を持つ。闘い強くなることが自分の存在理由だと考えている。ゴムのように伸縮するフィジロイ体を手に入れ、ガリィとは異なる独自の格闘術を模索している。
GRシリーズのNo.11とNo.12。ガリィと異なりブリっこ。2人で協力し、ワイヤーを使って戦う。
- ピング・ウー
かつて不老不死技術を盗み出し全世界にばらまいた凄腕ハッカー。左手に会話可能なAI「ケイル」を搭載した義手を装備している。
- アガ・ムバディ
太陽系条約調停議会( LADDER )の議長補佐。かつて警察軍事組織ORDERの隊長として活躍。冥王星での戦いは伝説となっており、太陽系各星でドラマ化されるほど。しかし現在は陰からLADDERを牛耳る存在。
- リメイラ
火星の女王。常にぬいぐるみを抱いている。腹話術?を使ってぬいぐるみに重要なことをしゃべらせる。
- ザジ
リメイラに忠誠を誓うボディガード。銃火器の達人で徒手格闘も強い。
宇宙空手連合軍のリーダー。超電磁空手八段、虐殺士の称号を持つ。真の強者たちから見ればまだまだ発展途上らしい。
- 絶火(ゼッカ)
フィジロイ体を持つ伝説の空手家。ゼクスに「その場に居ながら音速を超える」という難題をつきつけた。拳に集中させた反物質で自分含め周囲まるごと消し飛ばす「屠龍破骨」が必殺技だが、技を繰り出す前の牽制で相手を殺してしまうので使った事がなかった。
かつて絶火と共に鍛錬し競い合った、超電磁空手の創始者。悟りの境地に至り、別次元の宇宙を漂っていた。殴った対象をワームホールでワープさせる「是空掌」、ブラックホールを打ち出し広範囲を消滅させる「是色拳」が必殺技。
- カエルラ・サングウィス
「吸血鬼」の生き残りで、一見すると普通の若い女性だが非常に長命。あらゆる武術を納め、敵の行動を正確に予測する知覚を持つ。極めて強靭な肉体を持ち、再生能力も高い。サブタイトルの「Last Order」に関係する重要人物。偽名を複数使っており、カエルラも仮の名前。
数あるノヴァの複製体の一人。暗黒面に落ちたノヴァであり、オリジナルに近い個体からも危険視されるほどマッド。
銃夢火星戦記
現在イブニングで連載中(2019年3月)。ガリィの幼少期と、LastOrderの続編を描く。
アリータ: バトル・エンジェル
銃夢を原作とした2019年2月公開のハリウッド映画。R12指定。
監督:ロバート・ロドリゲス
制作:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー
制作総指揮:デビッド・バルデス
モーターボール編、ハンター編、ユーゴ編を組み合わせたような内容。主な設定やストーリーは銃夢を踏襲しているが、名前や登場人物の関係など随所に変更点がある。原作のように生体組織を狙った犯罪は明確には描かれていないが殺人やパーツ強盗は頻繁に起こる様子。
主な登場人物(カッコ内はキャスト)
本作主人公。イドによってザレムのゴミ山から拾い上げられ蘇生された。記憶喪失であり、イドに仮の名前としてアリータと名付けられた。由来は飼い猫ではなくイドの娘。心配ゆえに何かと口を出すイドに対し、自分はイドの娘の代わりではないと反発する。心臓になぜか火星由来のロストテクノロジーが使われており、今は失われてしまった火星の格闘術「機甲術(パンツァークンスト)」を操ることができる。危機が迫ると過去の記憶が蘇るから、とイドの反対を押し切ってハンターになった。
アリータを発掘した本人。助手の女性と共にクズ鉄町の腕利きサイバネ技師として働く傍ら、ジェット付きハンマーを武器に賞金首ハンターとして夜な夜な出歩いている。始めはアリータの記憶が戻ることにあまり賛成しておらず、普通の少女として新しい人生を歩んでほしいと思っていた。
アリータが町で出会った青年。アリータはその生き方や考え方に好意を抱き、恋に落ちる。しかしパーツ泥棒という彼女の知らない一面もある。ザレムへ送ってもらう約束をベクターとし、そのための資金を稼いでいる。
賞金首ハンターの一人。自慢のダマスカスソードで犯罪者狩りをする腕利き。酒場でアリータに手ひどくやられ、復讐心を燃やす。
ベクターお抱えの下手人兼ボディガード。3m近い巨体を持ち、頻繁に殺人事件を起こしているが賞金首にはなっていない。アリータと何度も闘い、撃退されるたびに強化改造を受ける。2度目の襲撃でアリータのボディを破壊し戦闘不可能まで追い込んだが手痛い反撃を受け、イドや他のハンターたちが駆け付けたため逃亡した。
イドの元妻でありサイバネ技師兼医者。元ザレム人であり、ザレムへ帰還する事を目的としている。目的のためには手段を選ばない冷徹な人物。
クズ鉄町を取り仕切る人物。モーターボールの主催者でもある。ヒューゴをそそのかして汚い仕事をさせている。天界の平民より下界の王様である方が性に合っているとのこと。ノヴァの命令でアリータを殺害しようと企てている。
本作の黒幕。ザレム人科学者であり、アリータを知っている様子。終始ザレムから高みの見物をしている。人体実験を繰り返すマッドサイエンティストであることは変わらない。
- ジャシュガン
モーターボールの圧倒的チャンピオン。ストーリーには大きく関わらないが、彼の試合の中継がアリータの心を揺さぶった。下界から生身でザレムに上がる唯一の手段がモーターボールチャンピオンになることであるため、次回作があれば打倒するべき相手となるかもしれない。
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