鍵のかかった部屋とは、
この記事では2と3、および防犯探偵シリーズ全体についても記述する。
小説(防犯探偵・榎本シリーズ)
防犯ショップ店長で防犯コンサルタント(本業は泥棒?)の榎本径と、弁護士の青砥純子のコンビが、様々な密室殺人事件の謎を解き明かしていく本格ミステリー小説シリーズ。貴志作品では珍しいシリーズものである。
もともとは第1巻『硝子のハンマー』のみで終わる単発作品の予定だったが、使わなかったネタをリサイクルした短編が雑誌『野性時代』に不定期に掲載され、それをまとめた短編集が続刊として刊行されている。
全作品が密室もの、というのが最大の特色。
硝子のハンマー
ビルの最上階、完全なセキュリティに守られた密室状態のフロアで、介護サービス会社の社長が撲殺された。社長室に繋がる専務室で仮眠をとっていた専務が逮捕され、弁護士・青砥純子は防犯コンサルタント・榎本径とともに専務の無実を証明するため密室の謎に挑む。
シリーズ第1巻となる長編作品。2004年4月刊。第58回日本推理作家協会賞受賞、『このミス』2005年版第6位。
前半は榎本と青砥がさまざまな仮説を提示して、あらゆる可能性をしらみつぶしに検証していくパズラー的趣向の強いミステリとなっている。後半は一転して犯人の視点から犯行の経緯が語られる倒叙ものとなっている。
狐火の家
シリーズ第2巻。2008年3月刊。『野性時代』に発表された短編3本に書き下ろし1編を加えた短編集。
鍵のかかった部屋
シリーズ第3巻。2011年7月刊。『野性時代』(『小説野性時代』)に発表された4編を収録した短編集。
本作のトリックは全て物理的に実行可能か実際に作者が検証したそうである。『硝子のハンマー』の頃には榎本と知的な推理合戦を繰り広げていた青砥はすっかりボケ要員と化し、榎本にも心配されるほどに……。
テレビドラマ
「密室は、破れました。」
2012年4月16日から、フジテレビ系列の月曜21時枠(いわゆる月9)にて『鍵のかかった部屋』のタイトルでドラマ化。全11話。主演は大野智(榎本径役)、戸田恵梨香(青砥純子役)、佐藤浩市(芹沢豪役)。
ストーリー、トリックはおおむね原作を踏襲している(一部エピソードは大幅に変更されている)が、原作からメインキャラとして佐藤浩市の演ずる弁護士(青砥の上司)の芹沢豪が追加され、主にコメディリリーフの役割を担っている。また榎本が「密室以外には全く興味が無い防犯オタク」に大きくキャラクターが変更されているため、原作では榎本が犯人を追い詰める場面で芹沢がその役割に回ることも。
場面の切り替え時、画面が急に暗転しBGMもぶった切られる、という独特の演出が多用されるのも特徴。
主題歌は嵐「Face Down」。音楽はKen Araiが手がける。
最終話は30分拡大放送。平均視聴率16.0%で、4~6月期のドラマではトップだった。
放映エピソード
- 佇む男 (4/16放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「佇む男」)
- 鍵のかかった部屋 (4/23放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「鍵のかかった部屋」)
- 盤端の迷宮 (4/30放映…原作『狐火の家』収録「盤端の迷宮」)
- 黒い牙 (5/7放映…原作『狐火の家』収録「黒い牙」)
- 鍵のかかっていない部屋 (5/14放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「歪んだ箱」)
- 密室劇場 (5/21放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「密室劇場」) ※ストーリーはドラマオリジナル
- 狐火の家 (5/28放映…原作『狐火の家』収録「狐火の家」)
- 犬のみぞ知る (6/4放映…原作『狐火の家』収録「犬のみぞ知る」) ※ストーリーはドラマオリジナル
- はかられた男 (6/11放映…原作「ゆるやかな自殺」(単行本未収録))
- 硝子のハンマー (6/18放映…原作『硝子のハンマー』)
- 硝子のハンマー (6/25放映…原作『硝子のハンマー』)
オープニングの仕掛け
毎回、放送開始10分前後で流れるオープニング映像には、その回のモチーフやトリックのヒントが仕込まれている。
トリックのネタバレを含むため白抜きで記述。
- 佇む男 … 死体に注射器が突き刺さり、最後の鍵にハエが止まる。
- 鍵のかかった部屋 … 赤い紙吹雪が飛び、ボイル=シャルルの法則の式が榎本の背後に書かれている。
- 盤端の迷宮 … 死体にナイフが刺さり、ドアにチェーン、芹沢のところで「16K」の文字。
- 黒い牙 … 榎本の背後に蜘蛛の巣、鍵が落ちていくところでぶら下がる蜘蛛、最後の左下に蜘蛛の足。
- 鍵のかかっていない部屋 … 画面全体がガラスが割れたようになり、青砥のところで黄色い玉が飛ぶ。
- 密室劇場 … 榎本の背後に冒頭の月の装置、オープニング中ずっと背景を白い人影がゆっくり歩き続けている。
- 狐火の家 … 死体の頭から血と①の文字、榎本の背後に狐火、金塊をくくられ落ちていく死体と②の文字、芹沢の背後に狐火、最後の鍵に止まる蜂。ヒントの大盤振る舞いである。
- 犬のみぞ知る … オープニング中ずっと画面を横切る青・赤・白の線、榎本の背後に時計、最後の画面に犬の顔。
- はかられた男 … 死体の頭に弾痕、赤い線と青い線を発する二丁の拳銃。
- 硝子のハンマー … 扉を開けた先に榎本がおらず手配写真、鳴り響くサイレンの音、提供画面で下から現れる男の目。
- 硝子のハンマー … 死体の頭にヒビ、榎本の頭上から落ちてくるダイヤ、背景にロボット、青砥のところで箱にぶつかる球体と衝撃波、顔に重なる目と【idintity】M.S.A.S.の文字(identityのスペルミス?)、芹沢のところで⑥⑨の数字とそれを弾く⓪、背景を飛ぶ飛行機、提供画面に榎本の眼鏡。
こぼれ話
- 第3話「盤端の迷宮」では、毒島竜王役で貴志祐介本人が出演している。
- 第6話「密室劇場」のゲストはV6リーダーの坂本昌行で、嵐のリーダーとV6のリーダーが共演した。
- 「密室劇場」のストーリーおよび作中の舞台「密室に囚われた男」はドラマオリジナルだが、パソコンの中身を探る場面で原作で上演された「彼方の鳥(ヨンダーバード)」のタイトルが見えている。
- 第8話「犬のみぞ知る」では、芹沢がめざましテレビに出演するシーンが描かれた。
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関連項目
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