開かずの踏切とは、他所から車で来た人が陥りやすい孔明の罠である。
概要
- 主に、開かずの踏切は大都市に存在する。土木技術が未発達で平面交差しかできなかった時代の遺物や、古くから存在した踏切が後に交通量が増加した場合に産まれ、土地不足で対応策が取れない場合等に対策されずに残る。
- ピーク時に、1時間あたり40分以上遮断されている踏切は開かずの踏切と呼称される。
- 歴史的建造物の多さからそもそも地上に建設できず都心部が殆ど地下鉄文化として発達したヨーロッパ、開発時期が遅く近年に最初から高架で建設したアジア諸国等、外国の方が却って立体化が徹底されている場合がある。韓国ではソウル市内を走る鉄道の地上区間の9割以上を地下化する計画がある。
- 元国鉄であるJRは専有された土地が多く、地平を走っていても踏切が少ない(そもそも設置してくれていない)が、元が街中の路面電車等から発達した私鉄では踏切が多く問題になりやすい。JRも箇所は少ないが、列車本数が多いので踏切がある場合は開かずである事が多い。
- 歩行者や自転車は踏切で待たなくても、併設の歩道橋で抜けれることが多い。でも、自動車はそうも行かないので、遅刻の原因になる。
- 古くから存在する踏切では何らかの裏道がある事が多く、地元民はそちらを利用し、実際に踏切で引っかかっているのは非地元民である事が多い。故に一度渋滞すると余計にモタつきを起こしやすい。
- 駅に隣接する踏切はホームに列車が到着・停車中の時点から踏切が閉まるので特に閉塞時間が長い。場合によっては踏切内で列車が信号停止する。駅に停車しているなら発車直前になるまで開放しておけば良いではないかと思うかもしれないが、仮にそれでホームに停まる際にオーバーランすると大事故になる。実際に発生したので現在は殆どが予め閉めておくようになっている。なお、周辺交通を考慮して発車直前まで閉めないでおく駅もあるが、そのような駅はオーバーラン防止の為の特別な装置を導入しており、列車も徐行運転で入線し所要時間が犠牲になる等デメリットがある。
- 開かないからと言って無理に渡ってはいけない。自分自身に身の危険が及ぶのはもちろん、開かずの踏切で踏切支障が起きると影響が広範囲に及んでしまうからである。たとえ轢かれずに渡りきれたとしても、踏切は侵入者を感知する仕組みがあるので、反応した時点で影響が出てしまう。何路線も通る踏切だと、最悪その複数路線全部が運転の見合わせ等を行い、多くの利用者に迷惑がかかってしまう。もう一度表記するが、開かないからと言って渡るのは絶対にやめてください。
- 主要道路の場合、踏切の開時間を確保するように列車の通行タイミングを調整するよう、線路だけでなく道路事情までもが予めダイヤに組み込まれている場合もある。ただし過密路線ではそのような余裕があるとは限らず、遅延した場合も保障の限りではない。
- 踏切内の敷地は鉄道会社の土地なので、踏切が開かず周辺交通に支障が出たとしても、そういった権利を訴える事は原則できない。また鉄道1編成あたりの乗車人数は歩行者や自家用車より遥かに多いので、列車のダイヤを優先するのは社会的に見ても合理的と言える。しかし乗用車はまだしも、緊急車両が来ても融通できない点は宜しくない。
- 後年の新規建設路線は予め全区間が立体交差で作られ、平面部分でも踏切は設置しないようにしてあるのが一般的。ただしこれは建設費増大と新線・延伸計画の鈍化の背景にもなっている。
- 地上路線が高架化工事を行う理由の大半は踏切廃止のためで、自治体側から鉄道会社に高架化を要請する事が多い。鉄道会社にとっては事故防止のメリットに対して工事費が高すぎて割に合わないが、踏切廃止により主に恩恵を享受する立場である国や自治体は、高架化を行う鉄道会社に補助金支給という形で建設費の一部を負担する。これにより積極的に高架化工事が進められる。
代表例
現存
- 井頭踏切・根岸踏切 - 東京都北区 - JR6線の踏切。東十条駅と王子駅の間にある一方通行の踏切。朝のラッシュ時は1時間ほど閉塞している。
- 菖蒲池8号踏切 - 奈良県奈良市 - 近鉄大和西大寺駅北方にある踏切。ダイヤがよく乱れ、踏切の閉塞時間が長い。
- 相生踏切 - 福岡県福岡市博多区 - JR九州の鹿児島本線南福岡駅付近にある踏切。入出庫、緩急接続などで遮断時間が長い。2013年10月に歩道橋が完成。
廃止済み
- 総持寺踏切 - 神奈川県横浜市鶴見区 - JR8線の大踏切。以前は鶴見線や京急も地上だったが高架化した。
(2012年4月1日に廃止となった。人道橋が架けられているが、自動車は迂回する必要がある) - 神宮前踏切(御田踏切) - 愛知県名古屋市熱田区 - JRと名鉄の踏切で、名鉄神宮前駅の隣にある。
(2012年6月30日に廃止となった。歩道橋は踏切廃止前から存在するが、新たに自転車が通行可能な歩道橋が2016年度に完成する予定) - 国道1号踏切 - 神奈川県横浜市戸塚区 - 戸塚駅に隣接する踏切。朝のラッシュ時は1時間以上閉塞している。
(2015年3月25日に廃止となった。2014年1月に「戸塚大踏切デッキ」が、2015年3月に地下道「戸塚アンダーパス」が開通) - 竹ノ塚踏切 - 東京都足立区 - 東武伊勢崎線竹ノ塚駅に隣接する踏切。2005年の踏切死傷事故が発生した踏切。当時は第2種踏切であったが、事故後は自動化されて更に待ち時間が長くなった。東武線の往来が多いうえに付近に東京メトロ日比谷線の検車区があり、出入庫があるため閉塞時間が長い(ちなみに東武伊勢崎線が高架化が行われたにも関わらず、当駅前後だけ地上のままとなったのは、この検車区が存在していたためである)。2022年度に高架化が完了し姿を消した。
関連動画
総持寺踏切
関連項目
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