開立法とは、立方根の値を求める方法である。ここでは筆算について記述する。
概要
立方根は、今となっては関数電卓などで簡単に計算できるが、そんなものなんかなくても紙と鉛筆さえあれば計算できる。3種類の筆算を同時進行で行うが、実際に立方根の計算を行うのはその中の1つで、あとの2つは補助的な計算を行っている。
手順
ここでは、例をあげて説明する。3√2525を計算する。計算する上で着目する箇所を赤字、新たに書く箇所を太字で書く。
準備
まず、3√2525を右側に書く。それより左側は補助的な計算のため空けておく。
3√2525 |
小数点を基準に、3桁ずつ区切る。この例では、2と525に区切られる。
第1ステップ
ここでは一番上の位を立てる。手順は比較的簡単である。
準備段階で区切ったときの先頭が2なので、3乗して2以下になる最大の整数、1を立てる。
1 3√2525 |
1を立てたので、左側に1を縦に3つ並べて書く。
1 1 1 |
1 3√2525 |
それらを足す。
1 1 1 3 |
1 3√2525 |
中央に、1の2乗を縦に3つ並べて書く。(左側は立てた数をそのまま、中央は2乗していることに注意)
1 1 1 3 |
1 1 1 |
1 3√2525 |
それらを足す。
1 1 1 3 |
1 1 1 3 |
1 3√2525 |
右側で、1の3乗を計算して書く。
1 1 1 3 |
1 1 1 3 |
1 3√2525 1 |
右側で、2-1を計算する。
1 1 1 3 |
1 1 1 3 |
1 3√2525 1 1 |
第2ステップ
ここでは2番目の位を立てる。第1ステップと比べると手順がかなり複雑になるが、1個1個の計算は手計算でも十分対応できる。
中央の3の隣に、00を書く。
1 1 1 3 |
1 1 1 300 |
1 3√2525 1 1 |
右側で、次の3桁である525を降ろす。
1 1 1 3 |
1 1 1 300 |
1 3√2525 1 1525 |
ここで、1の位を立てる。具体的に何を立てればよいかをここで確定するのは面倒なので、ひとまず概算で立ててみる。1525÷300を計算し、その整数部分である5を立てる。
1 1 1 3 |
1 1 1 300 |
1 5 3√2525 1 1525 |
左側で、5を3つ縦に並べて書く。
1 1 1 35 5 5 |
1 1 1 300 |
1 5 3√2525 1 1525 |
左側で、35+5+5を計算する。
1 1 1 35 5 5 45 |
1 1 1 300 |
1 5 3√2525 1 1525 |
中央に、35×5を計算して書く。
1 1 1 35 5 5 45 |
1 1 1 300 175 |
1 5 3√2525 1 1525 |
1 1 1 35 5 5 45 |
1 1 1 300 175 475 |
1 5 3√2525 1 1525 |
右側に、475×5を計算して書く。
1 1 1 35 5 5 45 |
1 1 1 300 175 475 |
1 5 3√2525 1 1525 2375 |
2375が1525を上回ったので、概算して立てた数が大きすぎた。そこで、5ではなく4を立てて再度計算する。
1 1 1 3 |
1 1 1 300 |
1 4 3√2525 1 1525 |
左側に、4を3つ並べて足す。
1 1 1 34 4 4 42 |
1 1 1 300 |
1 4 3√2525 1 1525 |
34×4を計算し、中央の300に足す。
1 1 1 34 4 4 42 |
1 1 1 300 136 436 |
1 4 3√2525 1 1525 |
右側に、436×4を計算して書く。
1 1 1 34 4 4 42 |
1 1 1 300 136 436 |
1 4 3√2525 1 1525 1744 |
まだ大きすぎた。そこで、立てる数を3に直して計算し直す。ここでは結果だけ書いておく。
1 1 1 33 3 3 39 |
1 1 1 300 99 399 |
1 3 3√2525 1 1525 1197 |
今度は1525以下になったので、これで立てる数は確定。右側で1525-1197を計算する。
1 1 1 33 3 3 39 |
1 1 1 300 99 399 |
1 3 3√2525 1 1525 1197 328 |
中央に、3の2乗を書く。(忘れやすいので注意)
1 1 1 33 3 3 39 |
1 1 1 300 99 399 9 |
1 3 3√2525 1 1525 1197 328 |
中央で、99+399+9を計算する。(間違いやすいので注意)
1 1 1 33 3 3 39 |
1 1 1 300 99 399 9 507 |
1 3 3√2525 1 1525 1197 328 |
第3ステップ
ここでは、さらに次の位を立てる。小数点をまたぐので、立方根も小数部分に突入する。やる事は第2ステップと変わらないので、ここでは結果だけ書く。暇な人は自分で計算してみて、要領を掴めているか確かめてみよう。
1 1 1 33 3 3 396 6 6 408 |
1 1 1 300 99 399 9 50700 2376 53076 36 55488 |
1 3 . 6 3√2525 1 1525 1197 328000 318456 9544 |
原理
立方根を求めるのは、図形的に言うと、体積のわかっている立方体から1辺の長さを求めることと同じである。開立法は、立方体の1辺の長さを求めるために、少し小さい立方体を用いて近似していくのである。ここでは、元の立方体の体積をVとする。筆算では次のように書く。
3√V |
準備段階では、桁数を決めている。立方根の桁数は、元の数を3桁ずつ区切ったときの数と一致している。
第1ステップでは、最も上の位で近似する。前述の例では、10単位で近似している。ここでは、近似する立方体の1辺の長さをaとする。図に表すと次のようになる。
aの値は、赤い立方体の体積が外側の立方体を超えないような最大のものである。前述の例で言えばa = 10である。さて、筆算ではどのようになるか。aを立てて計算すると次のようになる。
a a a 3a |
a2 a2 a2 3a2 |
a 3√V a3 V-a3 |
左側では、赤い立方体の1辺の長さの3倍、中央では赤い立方体の1面の面積の3倍、右側では外側の立方体から赤い立方体を除いた部分の体積が求められる。左側と中央は、次のステップでの計算に使われる。
第2ステップでは、桁数を1桁下げて近似する。前述の例では1単位で近似している。このとき、近似する立方体の1辺の長さの、前のステップからの増分をbとする。図で表すと次の通り。
bの値は、青い部分の体積が赤くない部分を超えないような最大のものである。青い部分の体積は、式で表すと(a+b)3-a3 = 3a2b+3ab2+b3 = {(3a+b)b+3a2}bとなる。3aの値とと3a2の値はわかっているので、bを足したり掛けたりすることで青い部分の面積を求めることができる。
では、仮にbの値が立てられたものとして、実際にbを使って筆算を進めてみよう。
a a a 3a+b b b 3a+3b = 3(a+b) |
a2 a2 a2 3a2 3ab+b2 3a2+3ab+b2 |
a + b 3√V a3 V-a3 3a2b+3ab2+b3 |
このように、左から順々に計算していくと、青い部分の体積を計算することができる。左側でbを3回足しているのは、次のステップで使える形にするため。赤くない部分の体積(V-a3)と比べて、青い部分のほうが上回っていれば、bを減らして再度計算する必要がある。そうでなければ、引き算を行う。
a a a 3a+b b b 3(a+b) |
a2 a2 a2 3a2 3ab+b2 3a2+3ab+b2 |
a + b 3√V a3 V-a3 3a2b+3ab2+b3 V-a3-3a2b-3ab2-b3 = V-(a+b)3 |
これで、右側では残りの部分の体積が求められた。次のステップに進むために、中央もそれに見合った形にする必要がある。これは結果を見たほうがわかりやすいと思うので、実際にb2を書き加えて下3行を合計してみよう。
a a a 3a+b b b 3(a+b) |
a2 a2 a2 3a2 3ab+b2 3a2+3ab+b2 b2 3a2+6ab+3b2 = 3(a+b)2 |
a + b 3√V a3 V-a3 3a2b+3ab2+b3 V-(a+b)3 |
このように、第1ステップが終了したときと比べると、aがa+bに置き換わった形になる。次のステップ以降もやってる事は同じ。さらに位を下げて立方体の増分を求め、残りの体積から引いている。
概算について
実際の計算ではbの値を具体的に立てなければならない。暗算が瞬時にできる人なら苦労しないが、そうでない人が全通り試すのはかなり骨が折れるものである。実際、前述の例でも1の位を概算して立てていた。では、なぜあのような計算をするのかを解説する。
まず、3a2の図形的意味から説明しよう。a2は赤い立方体の1つの面の面積である。その3倍ということは、3つの面の面積ということになる。図では6つの面のうち、3つは内側に向いているので、赤くない部分に接している面積と捉えることもできる。
ここで、次のような図をご覧いただきたい。
もし、緑色の部分の体積がわかれば、3a2で割ることでbの値を容易に求めることができる。しかし、実際にわかっているのは赤くない部分全体の体積である。これは緑色の部分を含むので、体積は緑色の部分以上の値になる。aの値は外側の立方体の1辺にできる限り近似しているので、実際は赤くない部分全体は緑色の部分より“少し”大きい値になる。よって3a2で割ると、求めるべきbの値より“少し”大きい値になる。
このように、赤くない部分の体積(筆算で言うと右側)を3a2(筆算で言うと中央)で割ると、bの値を概算することができるのである。初めのうちは誤差が大きいが、桁数が増すごとに精度が上がってくる。
関連項目
- 11
- 0pt