概要
黎明期の一時期を除いて、東北地方にある釜石線の急行列車として運行されていたのが陸中である。
1961年のサンロクトオと呼ばれたダイヤ改正で上野駅と仙台駅を常磐線経由で結んでいた気動車急行みやぎのの運行区間が盛岡駅まで延長された事に伴い、新たに陸中の列車名が与えられた。これが陸中の名称の初出である。ちなみにみやぎのの列車名は新たに東北本線経由で上野駅と仙台駅を結ぶ急行列車として使われるようになった。
10月のダイヤ改正で誕生した急行陸中は12月に早くも変化が訪れた。花巻駅で一部の編成を分割・併合し釜石線を経由し山田線宮古駅発着の編成が連結されるようになったが、花巻駅以東は支線故に急行だと利用客が少なくなると踏んだのか準急陸中として運行されていた。このように一部区間で種別が変わるという例は当時としては珍しくなく、他には函館駅から小樽駅経由で旭川駅まで結んでいたアカシヤが小樽駅以西は急行アカシヤとして運行され小樽駅以東は準急アカシヤとして運行されていたといった例がある。
しかし1965年に上野駅から盛岡駅・青森駅を経由して奥羽本線大鰐駅発着の急行みちのくが設定された事から、急行陸中の盛岡駅発着編成は大船渡線盛駅(さかり駅)発着に変更された。
1966年には仙台駅と秋田駅を東北本線・釜石線・山田線・東北本線・花輪線・奥羽本線経由で結んでいた大回り急行さんりくの名称が上野駅発着の急行三陸に使われるようになったので、仙台駅と秋田駅を結んでいた急行の列車名が陸中に変更された。ただでさえ運行区間が奇抜であった急行陸中は1968年に合計5列車と分割・併合するという他に例の無い奇抜な多層建て列車になった(詳細は後述)。このような経緯により急行陸中は国鉄時代に東北を中心に行われていた気動車急行の多層建て列車の代表格として扱われる事が多い。
1972年には仙台駅と宮古駅間を運行していた急行さんりくの統合で急行陸中は2往復に増発されるが、宮古駅と秋田駅の区間を花輪線急行よねしろに分離したので、急行陸中は大回り列車から仙台と三陸を結ぶというシンプルな列車に変更された。
1982年に東北新幹線が大宮駅まで開業すると、新幹線と運行区間が被っている北上駅以南が廃止され急行陸中は北上駅発着となった。しかし県都盛岡市を無視するのは問題があったのか、1985年の東北新幹線が上野駅まで延伸開業したダイヤ改正で新花巻駅が開業した事もあり急行陸中は北上駅発着から盛岡駅発着になった。その結果、盛岡駅と釜石駅を結んでいた急行はやちねと運行区間がほとんど同じになってしまった事から1986年に急行はやちねを統合し急行陸中は3往復に増発された。
国鉄が民営化され運行会社がJR東日本になった1990年には、急行陸中にJR新車のキハ110系が投入された。21世紀になっても細々と3往復運転されていた急行陸中であったが、2001年になると盛岡駅発の1本が快速はまゆりに格下げされた。ただし使用車両や停車駅に大差がある訳でもなく、快速はまゆりとの違いはキハ110系3両中2両が自由席でその中の1両で喫煙出来るか否かの違い程度であった(快速はまゆりは全車禁煙)。
そして2002年の東北新幹線の八戸駅延伸開業に伴い東北地方で大規模なダイヤ改正が行われた結果、急行陸中は全列車が快速はまゆりに格下げされる事により廃止された。急行陸中は秋田駅と花輪線鹿角花輪駅を結んでいた急行よねしろ(ただし大館駅以東の花輪線内は各駅停車)と共にJR東日本最後の昼行急行であった。
廃止直前の運行形態
停車駅
参考として同区間を運行していた快速はまゆり1本の停車駅も記載、快速はまゆりは釜石駅以北の山田線内各駅停車。
駅名 | 盛 岡 駅 |
花 巻 駅 |
新 花 巻 駅 |
土 沢 駅 |
宮 守 駅 |
鱒 沢 駅 |
遠 野 駅 |
陸 中 大 橋 駅 |
松 倉 駅 |
小 佐 野 駅 |
釜 石 駅 |
鵜 住 居 駅 |
大 鎚 駅 |
陸 中 山 田 駅 |
宮 古 駅 |
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急行陸中1号 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||
急行陸中3号 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||
快速はまゆり | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 各駅に停車 | |||||
急行陸中2号 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||
急行陸中4号 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||
急行陸中6号 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
ヨンサントオ(1968年10月1日ダイヤ改正)時点の併結相手
区間 | 併結相手 | |
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仙台駅~一ノ関駅 | むろね(仙台駅~盛駅) | くりこま(仙台駅~青森駅) |
一ノ関駅~花巻駅 | さかり(盛駅~青森駅) | |
花巻駅~釜石駅~盛岡駅 | --- | |
盛岡駅~十和田南駅~大館駅 | みちのく(上野駅~※弘前駅) | |
大館駅~秋田駅 | むつ(青森駅~秋田駅) |
※急行みちのくの運行区間は上野~鳴子・宮古・弘前間で、小牛田駅・花巻駅でそれぞれ分割・併合していた。
列車名の由来
年表
1961年10月 上野~水戸~仙台間の急行みやぎのの運行区間の変更で上野~仙台~盛岡間に急行陸中が設定される。
1961年12月 急行陸中の運行区間を上野~花巻~盛岡・宮古間に変更。ただし釜石線・山田線内は準急として運行された。
1965年10月 運行区間を上野~仙台~一ノ関~宮古・盛間に変更。
1966年10月 運行区間を仙台~宮古~盛岡~大館~秋田間に変更。
1972年3月 運行区間を仙台~北上~宮古間に短縮し2往復に増発。
1982年11月 東北新幹線大宮開業のダイヤ改正で運行区間を北上~花巻~宮古間に短縮。
1985年3月 東北新幹線上野開業のダイヤ改正で運行区間を盛岡~花巻~宮古間に変更。
1986年11月 盛岡~花巻~釜石間の急行はやちねを統合し急行陸中3往復に。
2002年12月 東北新幹線八戸開業のダイヤ改正で残り2.5往復も快速はまゆりに格下げされ急行陸中廃止。
関連動画
関連項目
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