階級社会とは、次のものを指す。
本項目では2.について記述する。
概要
定義
類似語と反対語
階級社会の類似語は格差社会である。階級社会と格差社会は密接な関係があると考えられる。
階級社会の反対語は無階級社会である。無階級社会に類似した言葉は平等社会であり、無階級社会と平等社会は密接な関係があると考えられる。
階級社会の特徴その1 強弱により階級間の序列が生まれる
階級社会では2つ以上の階級が発生するが、その階級に強い者が揃っているか弱い者が揃っているかによって階級間の序列が決まる。権力を握っていて強い者が揃っている階級は上位階級と呼ばれ、権力を握っておらず弱い者が揃っている階級は下位階級と呼ばれる。
小学校や中学校の男子社会において、身体能力が高くて殴る蹴るの懲罰的暴行を行いやすく権力を握りやすい人物がいる。そうした人物が揃っている階級が上位階級になる。
小学校や中学校の女子社会において、ある程度の身体能力を保持しつつ容姿が可愛くて、教師という絶対的権力者や「身体能力が高くて殴る蹴るの懲罰的暴行を行いやすく権力を握りやすい男子」という権力者に支援される可能性が高く、権力を握りやすい人物がいる。そうした人物が揃っている階級が上位階級になる。
小学校・中学校・高校・大学といった学校に通う人々は、学年が1つ上になるだけで身体能力が大きく強化されることが多い。このため、学校の体育会系部活動において学年が高くなるほど「身体能力が高くて殴る蹴るの懲罰的暴行を行いやすく権力を握りやすい人物」になりやすい。学校の体育会系部活動において高学年の階級は権力が強くなって上位階級になり、低学年の階級は権力が弱くなって下位階級になる。
大人の社会において、資産家は権力を握りやすい。資産家が属する階級が上位階級になる。
所得税・相続税・贈与税の累進課税が弱体化するなどの理由で所得格差が拡大して社会の成員が富裕層と貧困層にはっきりと分かれる社会のことを格差社会という。格差社会はそのまま階級社会に変容する可能性が高い。
階級社会の特徴その2 所属する階級が異なる人同士の交流の消滅
階級社会においては社会の成員が2つ以上の階級に分かれるのだが、所属する階級が異なる人同士の交流が極めて少なくなったり皆無になったりする。
階級社会では「人の社会的評価は『誰と交際しているか、誰と会話しているか、誰に相手してもらっているか』で決まる」という考えや「劣った人を友人にすると『劣った人の仲間』という社会的評価を受けてしまう」という考えや「友人は選び抜くべきである」という考えが広まる。
階級社会では「所属する階級が自分よりも低い者を友人にすることを絶対に避けよう」という考えが広まり、所属する階級が自分よりも低い者が話しかけてきても無視したり極めて少ない言葉だけであしらったりすることが一般的になる。
「人の社会的評価は『誰を友人にしているか』で決まる。ゆえに友人を選び抜くべきである」というコバンザメのような考えを美化した考え方として、「人の成長は友人に強く影響される。ゆえに友人を選び抜くべきである」という考え方がある。後者の考え方はいかにも求道的で、向上心があるような装いをしていて、イメージの良い考え方である。後者の考え方を強く支持している書物の代表例というと、サミュエル・スマイルズの『自助論』である。
階級社会の特徴その3 表現の自由が制限され、情報の流通が少ない社会になる
階級社会において、下位階級に属する者が上位階級に属する者に対して話しかけると、無視されたり、極めて少ない言葉だけであしらわれたり、「話しかけるな」と言われたり、「話しかけないように懲罰してやる」という態度で殴る蹴るの懲罰的暴行を受けたりする。あるいは、下位階級に属する者が「上位階級に属する者は自分とは違う世界に住んでいる人だ」と思い込むようになり、上位階級に属する者に対して話しかける気力を持たなくなる。
このため階級社会において、下位階級に属する者は上位階級に属する者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使することをためらうようになる。
階級社会において、上位階級に属する者は「自分が下位階級に属する者に話しかけると、下位階級に属する者と自分が同格であることを周囲に示してしまうことになり、自分の社会的評価が落ちてしまい、自分が下位階級に降格する危険性が高まる」と思い込むようになり、下位階級に属する者に話しかける気力を持たなくなる。
このため階級社会において、上位階級に属する者は下位階級に属する者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使することをためらうようになる。
上位階級と中位階級と下位階級の3つに分かれる階級社会があり、Aという人物が中位階級に属しているとする。Aは上位階級に属する人に対しても下位階級に属する人に対しても積極的情報提供権(表現の自由)を行使することをためらうようになり、中位階級に属する人に対してだけ積極的情報提供権を気兼ねなく行使できるようになる。
以上のように、階級社会においては積極的情報提供権(表現の自由)が大きく制限され、情報の流通が大きく阻害される。
階級社会において何か問題が発生しても、そのことに関する情報が上手く流通せず、問題点が気づかれることがなくなり、問題点が延々と放置され、社会が発展しなくなり、社会が悪い状態で停滞するようになる。
ビジネス雑誌に出てくるような表現を用いると、「階級社会は個人の意見を出しにくい社会であり、風通しが悪い社会である」となる。
階級社会の特徴その4 下位階級が騒ぐことを弾圧する
階級社会において、上位階級に属する人だけが公然と楽しく騒いだり目立つようなことをしたりする特権を享受すると考えられており、下位階級に属する人が公然と楽しく騒いだり目立つようなことをしたりすると厳しく弾圧される。
たとえば、スクールカーストの下位階級に属する人が公然と楽しく騒ぐと上位階級に属する人から「騒ぐな、うるさい」と怒鳴られつつ制止されたり、殴る蹴るの懲罰的暴行を受けたりする。
下位階級に属する人が公然と楽しく騒いだり目立つようなことをしたりすると、上位階級に属する人が「あの下位階級の者が上位階級のように振る舞っていて、自分があの者よりも下の階級であるかのように見られてしまう」と憤怒し、「自分が下の階級に降格してしまう」という危機感を感じる。そのため下位階級に属する人が公然と楽しく騒いだり目立つようなことをしたりすると上位階級が様々な形で制裁をする。
一部の階級社会の特徴 上位階級が下位階級に無償労働を要求する
一部の階級社会において、上位階級が下位階級に対して無償労働を一方的に要求することがある。その場合「上位階級が支配して下位階級が服従する」という関係性が発生する。
上位階級が下位階級に対して無償労働を一方的に要求することが頻繁に行われる階級社会の例は、日本の体育会系部活動や、カルト宗教団体である。
階級社会の例
日本で見られる階級社会は次の通りである。
スクールカースト | 学校で発生する階級社会 |
ママカースト | ママ友の集まりで発生する階級社会。Wikipedia記事あり |
体育会系部活動における年齢カースト | 大学の体育会系部活動の一部では「1年奴隷・2年平民・3年天皇・4年神様」と呼ばれるほどの厳しい階級社会になる |
カルト宗教団体 | 教祖を上位階級とし、幹部を中位階級とし、一般信徒が下位階級となる |
男尊女卑 | 男性の方が身体能力が高いので出現する階級社会。社会が男性階級と女性階級に2分される。2021年3月に発表された世界経済フォーラムの「男女格差報告書(ジェンダー・ギャップ指数)2021」で日本は156カ国中120位になっている。日本は世界に冠たる男尊女卑国家である。 |
階級社会を生み出す税制
階級社会を出現させるためには格差社会を出現させればよい。
格差社会を出現させるには、所得税・相続税・贈与税の累進課税を弱体化すればよい。詳しくは格差社会の記事を参照のこと。
階級社会と相性のよい政治体制
貴族政治・エリート主義・君主主権
ある国で階級社会が成立した場合、国会議員や地方議員が上位階級に属することになる。
階級社会において国会議員や地方議員は、下位階級に属する人に「あの人は私とは住む世界が違う人で、声をかけられない」と思われる存在であり、下位階級からの情報を上手く吸収できず、民意を吸収できず、民主主義を実行できない。
階級社会において国会議員や地方議員は、「下位階級に属する人は私とは住む世界が違う人で、声をかけるべきではない」と思う傾向が強まり、民意を吸収することに価値を感じない傾向が強まり、「民意に振り回されず大局を見据えた政治」とか「民意から超然としている政治」とか「民意に惑わされない政治」とか「民意に足を引っ張られない政治」というものを志向するようになる。「民意から超然としている政治」は貴族政治(アリストクラシー)と呼ばれるものである。
「民意に振り回されず大局を見据えた政治」というものは、「知性のある優秀なエリートに政治のすべてを任せればいいのであって、愚かな民衆からの民意を吸収する必要などない」という考えに非常によく似たものである。そういう政治はエリート主義と呼ばれる。
さらに階級社会において国会議員や地方議員は、大日本帝国憲法のような君主主権を志向するようになる。君主主権というのは、「知的エリートに囲まれた君主が国家の主権を握る」というものである。そして「日本国憲法の国民主権を尊重しなくてよい」などと放言するようになり、「憲法を改正して国民主権を憲法から削除してしまおう」と主張するようになる。
制限選挙・議員歳費の削減
階級社会が成立した国では、下位階級の民意を吸収して政治に反映させることを重視しなくなり、上位階級の民意だけを重視して政治に反映させることを重視するようになる。
このため階級社会が成立した国では、下位階級の選挙権や被選挙権を制限する制限選挙を支持する人が増える。「納税額に応じて票を増やすべきだ」とか「所得税を納税していない者には選挙権と被選挙権を与えるな」などと主張する人が増える。
また、階級社会が成立した国では、「議員歳費を目一杯削れ」とか「議員歳費をゼロにしろ」と主張する人が増える。議員歳費をゼロにすると、貧困層すなわち下位階級から出馬する人がほとんどゼロになることが予想され、下位階級の人の被選挙権を剥奪する制限選挙を行うことと同じ効果を得られる。
「行政や立法や司法に影響を与える目的で行う表現」の制限・請願権の制限
階級社会では、下位階級に属する者が上位階級に属する者に対して話しかけることが禁じられるし、下位階級に属する者が上位階級に属する者に対してなにかを要求することなど当然のごとく厳禁される。
このため階級社会が成立した国では、下位階級に属する者が「行政や立法や司法に影響を与える目的で行う表現」をすることを禁止したり、下位階級に属する者が請願権を行使することを禁止したりする。
下位階級に属する者がデモ行進やビラ配りといった「行政や立法や司法に影響を与える目的で行う表現」をすると、警察が出動してそうした表現行為を制止する国になる。
下位階級に属する者がSNSに書き込みをして「行政や立法や司法に影響を与える目的で行う表現」をすると、政府機関が検閲してそうした書き込みを削除する国になる。
下位階級に属する者が政府に対して請願をしようとしても、政府に門前払いされる国になる。
「行政や立法や司法に影響を与える目的で行う表現」や請願のことをインフォーマルな政治参加という。詳しくは参政権の記事を参照のこと。つまり階級社会は、下位階級に属する者のインフォーマルな政治参加を厳しく禁止する社会である。
労働三権の制限・「自由及び権利には責任及び義務が伴う」の思想の強要
階級社会では、下位階級に属する者が上位階級に属する者に対して話しかけることが禁じられるし、下位階級に属する者が上位階級に属する者に対してなにかを要求することなど当然のごとく厳禁される。
このため階級社会が成立した国では、団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)という労働三権を否定する風潮が強まり、労働組合や労働運動を否定する風潮が強まる。労働運動というものは、下位階級に属する労働者が団結して上位階級に属する経営者・株主に賃上げなどを要求する行為だからである。
階級社会が成立した国では、「憲法を改正して労働三権を削除しよう」と言う者や、「自由及び権利には責任及び義務が伴う」と連呼して下位階級に属する人たちが労働三権を行使することを控えるような風潮を作る者や、「憲法を改正して『自由及び権利には責任及び義務が伴う』の文言を入れよう」と言う者が増える。
夜警国家
先述のように、階級社会が成立した国では労働三権を否定しようとする政治的風潮が色濃くなる。
そのため、階級社会が成立した国は夜警国家に変貌していく。夜警国家とは、政府の雇用の中で、自衛隊・海上保安庁・刑務所・警察・消防といった治安部門の雇用の割合が大きく、治安部門以外の雇用の割合が小さい国である。
自衛隊・海上保安庁・刑務所・警察・消防といった治安部門は法律によって労働三権が完全に否定されており、階級社会が成立した国に適合しやすい政府雇用である。
治安部門以外の政府雇用というと国鉄や郵便局などが代表例だが、これらの職場では労働三権のなかの団体行動権(争議権)だけが法律で禁じられていて、団結権・団体交渉権が法律で認められている。そして、これらの職場の労働組合は「親方日の丸、政府は決して倒産しない」の意識があるので遠慮せずに労働運動をする傾向があり、世の中の労働運動の先頭に立つことが常である。民間企業の労働組合は「労働運動をしすぎると会社が倒産する」という危機感と隣り合わせであり、労働運動に対して遠慮するところがあるので、世の中の労働運動の先頭に立つことができないのであるが、「治安部門以外の政府雇用の職場の労働組合」は遠慮も危機感も一切持たずに存分に労働運動をすることができる。つまり、治安部門以外の政府雇用というものは、階級社会が成立した国でもっとも敵視される職場である。
関連項目
- 差別
- カースト
- 新自由主義(市場原理主義) - 格差社会や階級社会の出現を導くとされる思想
- 自助論 - 階級社会につながる思想が随所に見受けられる思想書
- 租税財源説(税金は財源) - 階級社会との親和性が高い税制思想
- 自由及び権利には責任及び義務が伴う - 階級社会との親和性が高い思想
- 優生思想(優生学) - 階級社会との親和性が高い思想
- 格差社会 - 階級社会の類似語
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